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今宵薬局  作者: 蟷螂
33/63

第6話 眠らなくても良い薬 6−6

6


翌朝、真理は薬を飲まなかった。


すると、昼過ぎには強烈な眠気が襲ってきた。


真理は、悠太が保育園に行っている間に、少しだけ昼寝をした。


久しぶりの睡眠だった。


そして、夢を見た。


真里と悠太があの2羽の折り鶴にそれぞれ乗って飛ぶ夢。真里も悠太も笑っている。

折り鶴に乗ったふたりは空から草原を眺めている。


温かい夢だった。


目が覚めたとき、真理は涙を流していた。


ああ、これだ。


これが、自分に足りなかったもの。


夢。安らぎ。感情の整理。


真理は立ち上がり、薬の瓶を手に取った。


ゴミ箱に捨てた。


「ありがとう、そしてさようなら」


真理は深呼吸した。


時間は減るだろう。でも、それでいい。


悠太と一緒に過ごす時間。悠太の笑顔に癒やされる時間。


それが、真理の活力なのだから。


7


その夜、真理は悠太と一緒に早めに寝ることにした。


午後9時。悠太と一緒にベッドに入る。


「ママ、今日は一緒に寝るの?」


「うん。ママ、悠太と一緒に寝たくなった」


「やったあ!」


悠太は嬉しそうに真理に抱きついた。


真理は、悠太の温かさを感じた。


そして、感情が戻ってくるのを感じた。


ああ、愛おしい。この子が、何より大切。


真理は悠太を抱きしめた。


「悠太、大好きだよ」


「ママも大好き!」


二人は笑い合った。


真理は、幸せを感じた。


これだ。これが、自分が求めていたもの。


時間じゃない。お金でもない。


悠太との、この温かい時間。


真理はゆっくりと眠りに落ちた。


そして、夢を見た。


悠太と手をつないで歩いている夢。二人とも笑っている。


温かくて、幸せな夢だった。


8


今宵薬局。


店の奥で、店主は水晶球を眺めていた。


球の中には、真理の姿が映っている。悠太と一緒に眠っている真理。穏やかな顔をしている。


店主は微笑んだ。


水晶球の中で、真理が悠太を抱きしめている。二人とも、幸せそうだ。


「時間を増やすことが、必ずしも幸せにつながるわけではありません」


店主は静かに言った。


「大切なのは、何のために時間を使うか。そして、何から活力を得るか」


水晶球の中で、真理が微笑んでいる。


「あなたは、それを思い出しました」


店主は水晶球を布で覆った。


「どうぞ、お幸せに」


第6話 眠らなくて良い薬 -了-

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