第6話 眠らなくても良い薬 6−6
6
翌朝、真理は薬を飲まなかった。
すると、昼過ぎには強烈な眠気が襲ってきた。
真理は、悠太が保育園に行っている間に、少しだけ昼寝をした。
久しぶりの睡眠だった。
そして、夢を見た。
真里と悠太があの2羽の折り鶴にそれぞれ乗って飛ぶ夢。真里も悠太も笑っている。
折り鶴に乗ったふたりは空から草原を眺めている。
温かい夢だった。
目が覚めたとき、真理は涙を流していた。
ああ、これだ。
これが、自分に足りなかったもの。
夢。安らぎ。感情の整理。
真理は立ち上がり、薬の瓶を手に取った。
ゴミ箱に捨てた。
「ありがとう、そしてさようなら」
真理は深呼吸した。
時間は減るだろう。でも、それでいい。
悠太と一緒に過ごす時間。悠太の笑顔に癒やされる時間。
それが、真理の活力なのだから。
7
その夜、真理は悠太と一緒に早めに寝ることにした。
午後9時。悠太と一緒にベッドに入る。
「ママ、今日は一緒に寝るの?」
「うん。ママ、悠太と一緒に寝たくなった」
「やったあ!」
悠太は嬉しそうに真理に抱きついた。
真理は、悠太の温かさを感じた。
そして、感情が戻ってくるのを感じた。
ああ、愛おしい。この子が、何より大切。
真理は悠太を抱きしめた。
「悠太、大好きだよ」
「ママも大好き!」
二人は笑い合った。
真理は、幸せを感じた。
これだ。これが、自分が求めていたもの。
時間じゃない。お金でもない。
悠太との、この温かい時間。
真理はゆっくりと眠りに落ちた。
そして、夢を見た。
悠太と手をつないで歩いている夢。二人とも笑っている。
温かくて、幸せな夢だった。
8
今宵薬局。
店の奥で、店主は水晶球を眺めていた。
球の中には、真理の姿が映っている。悠太と一緒に眠っている真理。穏やかな顔をしている。
店主は微笑んだ。
水晶球の中で、真理が悠太を抱きしめている。二人とも、幸せそうだ。
「時間を増やすことが、必ずしも幸せにつながるわけではありません」
店主は静かに言った。
「大切なのは、何のために時間を使うか。そして、何から活力を得るか」
水晶球の中で、真理が微笑んでいる。
「あなたは、それを思い出しました」
店主は水晶球を布で覆った。
「どうぞ、お幸せに」
第6話 眠らなくて良い薬 -了-




