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今宵薬局  作者: 蟷螂
32/63

第6話 眠らなくても良い薬 6-4

5


次の日、真理は仕事を減らすことにした。


2つのバイトのうち、深夜清掃を辞めた。


でも、薬は飲み続けた。まだ、睡眠は必要ないと思っていた。


ある週末、真理は悠太と公園に行った。


悠太はブランコに乗りながら、嬉しそうに笑っていた。


「ママ、見て! 高く揺れてるよ!」


真理は笑顔を作った。でも、顔の筋肉をそう動かしているだけ、何も嬉しくない。


悠太の笑顔が、遠くに感じられた。


まるで、ガラス越しに見ているような感覚。


真理は気づいた。


自分は、悠太の笑顔に何も思うことがない、感情が動かない。


以前は、悠太の笑顔を見るだけで、疲れが吹き飛んだ。悠太の「ママ、大好き」という言葉が、何よりの活力だった。


でも、今は違う。


何も感じない。


真理は、自分が空っぽになった気がした。


その夜、真理は薬の瓶を手に取った。


残り、10錠ほど。


真理は考えた。


時間は増えた。お金も増えた。生活も楽になった。


でも、眠らないことで感情が欠落してしまったようだ。


悠太への愛情。生きる喜びも感じなくなった。


自分は、何をしているんだろう。


悠太のために頑張っているはずなのに、悠太の笑顔に癒やされなくなっている。


それは、本末転倒じゃないか。


真理は悠太が寝ている寝室に行った。


悠太は、すやすやと眠っていた。


真理は、悠太の寝顔を見つめた。


可愛い、愛おしい、はずなのだ。


でも、その感情が、起きない。


このままではいけない。


真理は決心した。


薬を、やめよう。


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