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今宵薬局  作者: 蟷螂
24/65

第5話 才能の目薬 5-3

3


個展の日。


ギャラリーには、予想を上回る人が集まった。


拓海の絵に人々が惹きつけられている。


「この絵、作者の思いを描き切っているね」


「何か、感情が伝わってくる」


「この画家、今まで知らなかったけど才能感じるよ」


拓海は、人々の声を聞きながら、幸せを感じていた。


ついに、認められた。


個展は大成功だった。8枚の絵は、全て売れた。


個展に来ていた美術評論家も、拓海の絵を賞賛した。


「新進気鋭の画家、安藤拓海。彼の絵は、見る者の心を掴む力がある。まるで、描かれたものが実体化するかのような表現力だ」


拓海の名前は、美術に造詣のある人たちの間で一気に広まった。


次の個展も決まった。美術誌の取材も来た。


拓海は、徐々に有名になっていった。


でも、少しずつ、何かが変わり始めていた。


ある日、拓海は目薬を使わずに絵を描こうとした。


キャンバスに向かい、筆を取る。


でも、描けなかった。


キャンバスに絵が浮かばない。

それでも筆を動かすも、キャンバスには自分の思い描くものが浮かばなかった。


拓海は焦った。


目薬を差す。すると、すぐに描けるようになった。


拓海は気づいた。


もう、目薬なしでは描けない。


恐怖が、拓海を襲った。


このまま、目薬に依存し続けるのか。もし、目薬がなくなったら、自分はまた何も描けなくなるのか。それは自分の才能や実力とは違う何かなのではないだろうか。


拓海は目薬を確認した。残り、半分ほど。


毎日使っていたら、あと2ヶ月ほどで終わる。


拓海は不安になった。


でも、止められなかった。次の個展が控えている。期待されている。描かなければならない。


拓海は、目薬を使い続けた。


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