第5話 才能の目薬 5-2
2
家に帰った拓海は、試しに「才の目薬」を試した。
小箱から目薬を取り出し、両目に差す。
少し沁みた。でも、すぐに馴染んだ。
拓海は鏡を見た。目は、いつもと変わらない。
でも、視界が、クリアになった気がする。色が、より鮮やかに見える。感覚が鋭敏になったようだ。
拓海はキャンバスに向かった。
新しいキャンバス。真っ白な画布。
拓海は筆を取り、絵の具をパレットに出した。
何を描こうか。
拓海は窓の外を見た。夜の街並み。街灯の光。遠くに見えるビルのシルエット。
拓海は筆を走らせた。
不思議だった。いつもと同じように描いているのに、明らかに違う。
まっさらになキャンバスに自分の描きたい絵が浮かび上がっている。
拓海はそこをなぞるように筆を動かす。
筆の動きが滑らかだ。色の選択が、迷いなくできる。構図がすでにそこにあるのだから。
拓海は夢中で描き続けた。
気づけば、朝になっていた。
拓海は筆を置き、キャンバスを見つめた。
そこには、夜の街並みが描かれていた。でも、ただの街並みじゃない。
街灯の光が、まるで本当に光っているかのように輝いている。ビルの窓に映る月が、冷たく美しい。路地の影が、深く、神秘的だ。
自分の中にあるイメージがそのまま投影できている。
「すごい……」
拓海は自分の絵に、驚いた。
これが、自分が描いた絵なのか。
拓海は興奮した。これなら、評価される。絶対に。
翌日、拓海は絵をギャラリーに持って行った。
昨日断られたのと同じギャラリーだ。
オーナーは、拓海の絵を見て、目を見開いた。
「これ……安藤君が描いたの?」
「はい」
「すごいじゃないか! これなら、すぐに展示できるよ!」
オーナーは興奮した様子で言った。
「次の個展、安藤君にやってもらおう。」
オーナーはそう言うと机からスケジュール表を取り出し、少し考える。
「そうだな、次の個展は一ヶ月後のこの日程でどう?」
「本当ですか!」
拓海は飛び上がりそうになった。
「ああ。この絵、他にもある?」
「いえ、これだけです。でも、すぐに描きます!」
「頼んだよ。期待してるから」
拓海はギャラリーを飛び出した。
やった。ついに、チャンスが来た。
拓海は家に帰り、すぐに次の絵を描き始めた。
目薬を差して、筆を取る。
今度は、人物画を描いた。カフェで読書をする女性。
また、夢中で描いた。
完成した絵を見て、拓海は満足した。
女性の表情が、生き生きとしている。本の質感が、リアルだ。カフェの雰囲気が、何より自分の中のイメージがキャンバスに描かれている。
拓海は次々と絵を描いた。個展を開く前には8枚の絵を完成させていた。
全て、傑作といえる出来栄えであった。




