第4話 出来すぎるノート 4-4
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次の日、翔太は健を避けた。
昼休みも、放課後も、健と目を合わせないようにした。
でも、健は翔太を探していた。
「翔太、昨日はどうしたんだよ」
放課後、健が翔太を捕まえた。
「ごめん、急用があって」
「そうじゃなくて……なんか、様子おかしかったけど」
健は心配そうな顔をしていた。
「大丈夫だよ」
翔太は曖昧に笑った。
「でも、数学教えてくれるって約束……」
「ごめん、やっぱり無理だ」
翔太は逃げるように去っていった。
健は、困った顔で翔太の背中を見送った。
家に帰った翔太は、部屋で「ノート」を開いた。
残り9ページ。
このまま使い続ければ、あと一週間ほどで終わる。
それから、どうすればいいんだろう。
翔太は考えた。もう一度、今宵薬局に行けば、新しいノートをもらえるだろうか。
でも、あの薬局、どこにあったっけ。
翔太は次の日、あの路地を探した。でも、見つからなかった。
商店街を何度も歩き回ったが、あの薬局はどこにもなかった。
翔太は焦った。ノートがなくなったら、自分はまた赤点に戻ってしまう。
その週末、翔太は一人で図書館に行った。
数学の問題集を開く。二次関数の問題。
答えは、ノートに書いてあるから知っている。でも、解き方がわからない。
翔太は教科書を読んだ。でも、理解できない。
いや、理解しようとしていなかった。今まで、ノートに書けば済んでいたから。
翔太は頭を抱えた。
自分は、何をやっているんだろう。
テストで良い点を取ることが目的だったはずなのに、本当に勉強することを忘れていた。
ノートに頼りきりになって、自分の頭で考えることをやめていた。
その時、図書館の入口から、健が入ってきた。
健は翔太を見つけて、近づいてきた。
「翔太、いたのか」
「健……」
「なあ、最近のお前、なんか変だぞ。何かあったのか?」
健は真剣な顔で翔太を見つめた。
翔太は、全てを話したくなった。魔法のノートのこと。でも、言えなかった。
「ごめん、健。俺、実は……」
翔太は言葉に詰まった。
「実は?」
「俺、ちゃんと勉強してなかったんだ」
翔太は俯いた。
「え? でも、テストの点良かったじゃん」
「暗記しただけなんだ。理解してない。だから、お前に教えられなかった」
健は少し驚いた顔をした。
「そうだったのか。でも、暗記も大事だろ」
「俺は、ただ暗記していただけ、でも一切理解できていなかった。だから健に解き方を教えてくれって言われた時、全然教えられなかった。それで自分は、何ひとつわかっていないって気づいたんだ。」
「なあ、森田」
健が言った。
「俺が、お前に教えようか?」
「え?」
「お前、暗記は得意になったんだろ? だったら、理解する部分を俺が教えるよ。一緒に勉強しよう」
健は笑顔で言った。
翔太の目に、うっすら涙が滲んだ。
「ありがとう、健」




