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今宵薬局  作者: 蟷螂
14/63

第3話 時戻しの咳止め 3−4

4


直樹はアパートの部屋で、床に倒れていた。


残り、あと2回。


何度やっても、明日香を救えない。


運命は、変えられないのか。


直樹は天井を見つめた。涙が、頬を伝った。


でも、諦めたくなかった。あと2回。まだ、チャンスはある。


5


9回目。


直樹は、冷静に考えることにした。


10分間。この短い時間で、何ができるのか。


事故を止めることは無理だった。何度試しても、間に合わない。車は必ず突っ込んでくる。


それなら、せめて明日香が事故に遭った理由を知りたい。


なぜ、明日香はあの時、あの場所にいたのか。待ち合わせはハチ公前だったのに、なぜ明日香は別の場所を歩いていたのか。


直樹は、もっと早い時間に戻ることにした。午後2時40分。事故の20分前。


咳をした。


過去に戻った直樹は、明日香を探した。そして、見つけた。


明日香は、ショッピングモールに入っていくところだった。


直樹は後を追った。


明日香は、三階の文具屋である商品を物色していた。


万年筆だった。高級そうな万年筆。


明日香は店員に何か尋ねている。店員は笑顔で、万年筆を箱に入れて渡した。明日香は会計を済ませ、嬉しそうに袋を持って店を出た。


直樹は、明日香の後をついていった。


明日香はビルを出て、交差点に向かい始めた。


時刻は、午後2時48分。あと12分で事故が起きる。


直樹は焦った。このままでは、また事故に遭ってしまう。


でも、10分の制限がある。直樹が過去に戻ってから、すでに8分が経過していた。


あと2分しか居られない。


直樹は明日香に駆け寄った。


「明日香!」


明日香が振り返った。


「直樹? どうしたの? 待ち合わせは3時からじゃ……」


「いいから、今日は帰ろう!」


直樹は明日香の手を掴んだ。


「え? 何言ってるの?」


「いいから、お願いだから!」


直樹は必死だった。でも、その瞬間。


世界が歪んだ。


10分が経過したのだ。


直樹はアパートの部屋に戻っていた。


また、明日香を助けることが出来なかった。


直樹は床に座り込んだ。


でも、わかったことがある。


明日香は、プレゼントを買いに行っていた。万年筆を。


来週の直樹の誕生日。明日香は、サプライズを用意していた。


だから、あの店に寄った。だから、待ち合わせに遅れた。


そして、事故に遭った。


もし、明日香がプレゼントを買いに行かなければ。


明日香は、死ななかった。


直樹は床を叩いた。


瓶を手に取る。最後の一回。


直樹は考えた。10分間。何度挑戦しても、事故は止められない、運命は変わらない。


いや、運命は変えられない?


そうか、だから店主は……


それなら……せめて、明日香に最期、会いたい。


ちゃんと、話をしたい。


直樹はシロップを飲み、咳をした。


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