第3話 時戻しの咳止め 3−3
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3回目。
直樹は、事故を起こす車を止めようと試みた。交差点の手前で、車に飛び出して止まってもらおうとした。
でも、車はスピードを落とさず、直樹を避けて突っ込んできた。そして、明日香を跳ねた。
4回目。
直樹は、交差点で明日香を見つけてすぐ、彼女を抱きかかえて飛びのいた。
でも、2人とも車に跳ねられた。明日香は即死。直樹も重傷を負った。激しい痛みが直樹を襲った。しかし、それ以上に彼女をまた助けられなかった悔しさが激しい痛みをうわ回っていた。
そして、10分が経過し、現在に戻った。すると呼吸すらひと苦労していた痛みが不意になくなった。
直樹は自分の身体をまさぐる。痛みは無いし、跳ねられたときのボロボロになった服も何とも無い。もしかしたら、あの過去の時間での出来事をこちらに持ち越さないのかもしれない。
時戻しの法則を考察している暇はない。
5回目。
直樹は、もっと早く明日香に会おうとした。午後2時50分に戻り、明日香を見つけた。
でも、明日香は「今、用事があるから後で」と言って、別の方向に歩いていってしまった。直樹が追いかけている間に、10分が経過した。
6回目。
直樹は、警察に電話しようとした。「これから交差点で事故が起きる」と。
でも、警察は「いたずら電話はやめてください」と取り合ってくれなかった。そして、事故は起きた。
7回目。
直樹は、交通整理をしている警備員に頼んだ。「あの車を止めてください」と。
でも、警備員は「何を言ってるんですか」と相手にしてくれなかった。事故は起きた。
8回目。
残り3回、焦りが募る。
直樹は、明日香に全てを話した。「君はこれから事故に遭う。僕は未来から来た。信じてくれ」と。
明日香は笑った。「直樹、疲れてるの? 変なこと言わないで」と。そして、交差点に向かった。事故は起きた。
直樹はアパートの部屋で、床に倒れていた。
残り、あと2回。
何度やっても、明日香を救えない。
運命は、変えられないのか。
直樹は天井を見つめた。涙が、頬を伝った。
でも、諦めたくなかった。あと2回。まだ、チャンスはある。
間話
直樹が何度も明日香を助けようとして、その度に恋人の明日香が目の前で車に轢かれる様子を水晶球から「 」は眺めていた。
「眺めているこちらも辛いですね。薬を渡した時のアドバイスを少し間違えてしまったかもしれません。恋人の助けられないのを何度も味わう、彼の気が狂わないか心配ですね」
「 」はだからといって処方以上の介入はせず、後はただ水晶球から眺めているだけだ。




