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TERRA NAUTS(テラノーツ)  作者: Co:Creation Lab


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第4話:ガラクタの狙撃手

Scene 1: 薄汚いネズミと王のプライド


「ほら、ナット。今日は上物のオイルだぞ」

廃工場の片隅。カイが錆びた歯車で作った小さな皿を置くと、リュックの中からひょっこりと顔を出した小動物が、嬉しそうに「キュイ!」と鳴いた。 細長い胴体に、カメラアイのついた丸い頭。カイがゴミ山で拾い、暇を見つけては義手の工具でコツコツと修理し続けてきた、フェレット型のペットロボットだ。カイは親しみを込めて「ナット」と呼んでいる。

『フン。何度見ても薄汚いガラクタのネズミだ。王たる私の視界に入れるな』

ドラム缶の上でふんぞり返っていた白い幼竜――アトラスが、忌々しそうに鼻を鳴らした。ナットはビクッと体をすくませ、カイのオレンジ色のツナギのポケットに逃げ込んだ。

「ガラクタって言うなよ。こいつ、結構頭いいんだぜ? 俺が寝てる間に工具の整理とかしてくれるし」 『たかが清掃用ドロイドのなり損ないだろう。私やボルダーのような「テラ・ノーツ」とは次元が違うのだ』 「はいはい、そーですねっと」

カイが呆れ半分でアトラスから視線を外した、その時だった。

――ピピピピピピ! 突然、ナットがポケットの中で激しく身をよじり、警戒音を発した。

「どうした、ナット?」 『……む? カイ、上だ! 伏せろ!!』

アトラスの叫びと同時だった。鉛色の分厚い雲を突き破り、無数の光の雨が降り注いできた。


Scene 2: 空からの蹂躙


ズドドドドドドドッ!! 廃工場のトタン屋根が紙くずのように引き裂かれ、周囲のジャンクの山が次々と爆発を巻き起こす。

「うわぁっ!?」 『ボルダー! ルークの陣だ!』

アトラスの号令に呼応し、背後に控えていた巨大な緑の重機獣ボルダーが、両腕の装甲をクロスさせてカイの前に立ち塞がる。 ガキィィィン!! 凄まじい衝撃音が響くが、ボルダーの鉄壁の装甲はレーザーの雨を完全に弾き返した。

「助かった……! なんだありゃ!?」

カイがゴーグル越しに上空を睨む。スモッグの奥、はるか上空を悠然と旋回しているのは、見慣れたドローンではない。十字の手裏剣のような不気味なシルエットを持つ、高高度爆撃特化型の大型「掃除屋」だった。

『チッ……上空500メートル。ボルダーの質量では到底届かん距離だ』 「なら、お前が飛んで撃ち落とせよ!」 『馬鹿を言え! 今の私の出力で、あの高度の弾幕を突破できるわけがなかろう!』

敵は完全に安全圏から、一方的に絨毯爆撃を仕掛けてきている。ボルダーの盾は強固だが、ただ防いでいるだけではいずれジリ貧になる。周囲の足場が削り取られ、徐々に逃げ場が失われていく。

「くそっ、手も足も出ないのかよ……!」

カイがギリッと歯を食いしばった時、ポケットの中からナットが飛び出した。

「おい、ナット! 危ないぞ!」

ナットはボルダーの盾の隙間から身を乗り出し、はるか上空の敵に向かって「キュイィィィ!!」と威嚇するように鳴き声を上げた。 その瞬間。ナットの黒いカメラアイが、アトラスと同じ**「青い光」**を鋭く放った。

『な……!?』 アトラスが、信じられないものを見るように目を見開く。

微かに聞こえた、緻密なギアの駆動音。 『その装甲の分割線……。それに、今の周波数……まさか、先陣を切るヴァンガードなのか!?』 「アトラス? どうしたんだよ!」 『カイ! そのネズミを前に出せ!!』

アトラスが王者の威厳を放ち、空に向かって青白く発光しながら咆哮した。

『王権の元に封印を解除する! 目覚めよ、我が鋭き牙!』 アトラスのアクセスコードが響き渡る。 『――歩兵ポーン、ファランクス!!』


Scene 3: 泥臭い一撃


バシュッ!! ナットの小さな体が、強烈な青い光に包まれた。 次の瞬間、空中で手足が複雑に折り畳まれ、内部のフレームがスライドして一気に伸長する。ガシャコンッ!と重厚なロック音が響き、カイの腕の中に落ちてきたのは、身の丈ほどもある**「巨大なスナイパーライフル」**だった。

「嘘だろ……ナットが、武器に!?」 『やはりファランクスか! カイ、そいつで空の蝿を撃ち落とせ!』

カイは咄嗟にライフルのグリップを握り、空へ向けて構える。しかし、スコープの表示は真っ暗なままだ。

「駄目だ! 引き金を引いても何も起きねぇ! エネルギーが空っぽだ!」 『なに!? しまった……長年ジャンクとして眠っていたせいで、コアが枯渇しているのか! これではただの鉄パイプだ!』

再び上空のドローンから、致命的なレーザーの雨が降り注ごうとチャージの光が収束していく。ボルダーの装甲も、これ以上の連撃には耐えられないかもしれない。

「……鉄パイプで上等だ」

カイは、ニヤリと笑った。 「エネルギーが無いなら……俺がくれてやる!」

カイは自身の右腕――サビだらけの機械義手――の装甲パネルを強引に引き剥がし、太い動力ケーブルをむき出しにした。 『カイ!? 貴様、何をする気だ!』 「俺の相棒の力、見せてやるよ!」

ガコンッ!! カイは義手の動力ケーブルを、ライフルのコネクタに直接、乱暴に突き刺した。

その瞬間、カイのジャンク義手に積まれた大容量バッテリーから、限界を超えた莫大な電力がライフルへと強制的に流れ込む。 「ぐぅぅあぁぁぁッ!!」

凄まじい過電流で、カイの義手の隙間からバチバチと火花が噴き出す。肉体との接続部に焼け焦げるような激痛が走る。 しかし、ライフル――ファランクスは、その主の意地に応えるように、青白いラインを眩しく発光させ、銃口にエネルギーをチャージし始めた。

「俺たちの空を……」 カイは激痛に耐え、スコープを覗き込む。 「邪魔するなァァァッ!!」

ズドォォォォォン!!!

空気を切り裂く轟音と共に、一直線の青い閃光が空へ向かって放たれた。 反動でカイの体は数メートル後方に吹き飛び、地面を転がった。

放たれた一撃は、はるか上空のドローンの装甲を紙のように貫き、そのメインコアを正確に粉砕した。 ドオォォォン……! 空中で大爆発が起き、ドローンの残骸が黒煙を引きながらゴミ山へと墜落していく。


Scene 4: エピローグ


「……いてぇ……」

カイは仰向けのまま、煙を上げる義手を抑えて苦笑いした。限界を超えた義手は完全にショートし、ピクリとも動かない。 その胸の上に、ライフルから元の姿に戻ったフェレットが、ポンと飛び乗った。

「キュイ!」 「はは……お疲れ、ナット」 カイが左手でその頭を撫でると、ナットは嬉しそうに目を細めた。

その様子を、アトラスがドラム缶の上から腕を組んで見下ろしていた。 『……フン。よくやったぞ、ファランクス。まさかジャンク屋のバッテリーで駆動するとはな』 偉そうにうなずくアトラスの隣で、ボルダーが「王ヨ、オ見事デス」とばかりに控えめに拳を鳴らした。

「へへっ、アトラスも少しはナットのこと、見直したか?」 『勘違いするな。あれは私の歩兵ポーンだ。貴様のネズミではない!』

いつものように言い合う一人と一匹の声が、静まり返ったゴミ山の空に響いていた。 少しずつだが、彼らの陣形パーティーは確実に整いつつあるのだった。


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