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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: SHUSAKU
season1【B面】
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13-2 インナーバトル

【13話/B面】Bパート

ここはデパートの婦人服コーナー。


その中でも、特にパステルカラーが眩しい女性の下着売り場。


そこには、当然のように男性二人が、コーナーの中心で陣取っていた。


小谷野と兼元である。


傍から見れば、彼女の付き合いで来たのだろうか…そう思わせるほどの堂々としたいで立ち。


店内の女性客や店員から投げかけられる、凍りつくような白い目。


しかし彼らは、全く動じることなく、カーテンの向こうで試着しているであろう静那を、今か今かと待ち構えていた。


「あんたたち、まさか下着を試着した静ちゃんを見に行くつもりじゃないでしょうね」


後ろから、仁科さんの鬼のような声が飛んだ。


「何を言ってるんだい。嫁の下着をチェックするのは当然のことだろう」


兼元が、臆することなく振り返った。


「ダメ! 絶対ダメ! っていうか、ここはあんたたちが堂々と入ってきていい場所じゃないのよ! 出ていってよね、勇一たちのところへ行ってなさい!」


勇一と生一は、下着コーナーから遠く離れたエスカレーター付近の椅子に座って待っている。


「何と言おうと、僕はその下着を眼に焼き付ける。買う前に、どれだけ萌えるかをチェックするのは当然だろう」


小谷野が鼻息を荒くして、兼元の意見に同調する。


「あのね、マジで警察呼ぶよ。何合法的に女の子の下着を見ようとしてんのよ!」


「だから、嫁の下着なんだから……」


「何が嫁よ。仮に夫婦だったとしても、最低限のプライバシーはお互い守るわ!

やろうとしてること、ただの変態でしょうが!」


なにやら言い合いになっている三人だが、カーテンの隙間から静那がひょっこりと顔を出した。


「あの……試着、終わりましたよ」


「そう、どうだった、静ちゃん。それ気に入った? あっ!」


小谷野と兼元が、一斉に静那の方へ駆け寄ろうとした。


そして、その厚かましい手をカーテンにかけようとした瞬間。


静那は真っ赤になり、必死にカーテンを掴んで開口部を死守した。


「ち、ちょっと! 上は開けるの駄目だよォ。待って!」


「じゃあ、下なら見ても……グフッ!」



二人の脇腹に、仁科さんの鋭いボディブローが深々と突き刺さった。



「ぐはっ……」



「お、オホホホホ……どうも失礼いたしました~」


仁科さんは、周囲の冷たい視線に対し、不自然なほどの社交辞令を振りまいた。


そして、ぐったりした二人のベルトを掴み、そのまま試着室前から力ずくで引きずり出した。


「静ちゃん、それ買うなら行っておいで。急がなくていいからね。私ら、あっちで待ってるから」


「あ! はい」


静那は慌ててカーテンを閉め直した。


「もう……こいつら、マジで最低! いくら彼氏彼女の間柄でも、こんな事しねーわ!」


仁科さんは二人を引きずったまま、憤慨して下着コーナーを後にした。


その様子を、エスカレーター近くから勇一と生一が静かに見守っていた。


「何あの新しい引き出し。あいつら加減知らんなぁ。

お、無事引っ張り出されてきたか。……というか、あいつらマジで下着売り場に堂々と入っていきやがった。ここまでブレてないんは、ある意味凄いよな」


生一が、感心半分、呆れ半分で呟いた。


「凄くないよ。そもそも下着っていうのは、普段は見せるものではないデリケートなアイテムなんだから」


勇一が、正論を口にする。


「仮に嫁だとしても、ここまではしないよ。あいつら、節度っていうものがまるでないよな」


「よく言うわ。さっき婦人服エリアに入る前、どんな下着がいいかっていう話で揉めて、結局、お前の意見が採用になった癖に」


生一の暴露に、勇一は慌てて周囲を見回した。


「ちょっ! 違うよ。あの二人がビキニショーツだとかローライズだとか訳のわからないこと言い争っていて、埒が明かなかったから言っただけだって」


「そんなん、女性陣に言わせたらよかったやん。お前が言う必要あったんか?

『なんで白都君、そんなに知ってんの?』みたいな顔してたで~」


「うるさいなぁ! コットンがいいって言っただけだろ。あの素材なら締め付けないし、ゆったり着れるんだから、いいじゃん。これから夏に入るんだし……

下着って、元々はそういう役割であるもんだろ!」


勇一が必死に弁明する。


「はいはい苦しい苦しい。なんでそんなに言い訳必死なん?」


「必死ってわけじゃ……」


「ま、あいつらが余りにも変態だから、勇一のが可愛く見えるよね。変態には変わりないけどさ!」


こちらにやってきた仁科さんが、冷ややかな一言を付け加えた。


勇一は下を向いて黙り込むしかなかった。……ぐうの音も出ない。


「うう……嫁の下着を見たかった……この裸眼で」


引きずり出された兼元が、地面を這いながら嘆く。


「裸眼言うな!」


勇一が、堪らず突っ込んだ。


「うるせえよ! 裸眼の力を舐めるなよ!」


「あんた、まだ言ってるの! いい加減に変態行為辞めないなら、警察呼ぶからね。マジよこれ」


仁科さんが、本気で軽蔑した目を向ける。


兼元はうなだれながらも、執念深い視線で勇一を睨み上げた。


「うううう……あんなにビキニショーツを勧めたのに……。おまえの一声で、コットンのパンツにされちまって……

お前は分かってない! どれだけビキニショーツに、夢と希望が詰まっているかを!」


「あのな! 頼むから、大声で言うな! ここの階、婦人服のエリアなんだからな!」


勇一が、必死に彼の口を塞ごうとする。


「そやで! さすがに場所選んで叫べ! 周りの女性見てるで」


生一も、流石に周囲の視線に耐えられなくなっていた。


「こうなったら、嫁の誕生日にプレゼントかましたる。なんとしても、赤のビキニショーツを穿いてもらうために」


兼元は、もはや妄執に憑かれたような顔で呟いた。


「お前、目的がおかしなってない? 嫁の下着とかじゃなくて、もうお前の単なる趣味やろ、それ。それになんで『赤』やねん」


「こんなヤツ、なんで連れて来たのよ。ゲーセンで延々エッチなゲームでもしてれば良かったのに」


仁科さんの怒りは収まらない。


「人を変態ゲーマーみたいに言うな!」


「変態ゲーマーよりも、もっと質の悪い変態でしょうがッ!」


仁科さんは、この「変態たち」と一緒に行動するのも嫌みたいな感じだ。


* * * * *


「ゴメン、遅くなって」


別行動をしていた椎原さんが、買い物袋を提げて戻ってきた。


彼女は、夏に向けた私服を購入したらしい。


「どんな服にしたの?」


勇一が尋ねる。


「私はちょっと長身だから、サイズが大きめのになってしまったんだけど。これ、『ミラノ・カジュアル』が、体格にも合うかなって」


椎原さんは袋から、クリーム色の上着とグレーのゆとりのあるロングパンツを取り出してみせた。


「あと、『ビルケンシュトック』っていうロゴの入った、サンダルも」


白と肌色のデザインが施された、通気性の良さそうなサンダル。


高校生とは思えない着こなし感が想像できる。


「椎原さん、なかなか服のチョイスが秀逸だね」


「そうかなぁ。自分の身長、体型に合ったものを選んでるだけだよ。特に身長にあった着こなしはお洒落なコーディネートには必須要素だからね」


「日本の侘び寂び文化も分かるけど、洋服のセンスもよく分かってるな~」


勇一が感心すると、椎原さんは少し照れたようにはにかんだ。


「もう、白都君。褒めたって何にも出ないよ。それに、私、男性の服装はあまりよく分からないかも」


「そんなにセンスいいのに、本当に全然分からない? 例えば、低身長の男性はどんな服がいい、とかいうの」


勇一が興味津々で聞く。


「う……ん。基本的に、押さえておく部分があるとしたら、ゆとりのある服……袖がブカブカな服装は、あまり合わないかな。裾側も同じ……だと思う」


「へえ、俺、あまりそういうの無頓着だったから助かるよ。そういう情報」


「あくまで、私の主観だよ」


椎原さんは少し申し訳なさそうに言った。


「でも、白都君はどう見ても170くらいあるじゃない。それくらいなら、オーバーサイズの服でもそんなに変じゃないよ」


「うん。……まぁさ、こっちの話だよ。ありがとう」


「お、お姫様がようやく来たな」


生一が、レジの方を指さした。


少し時間を要したみたいだが、静那が小さな紙袋を大事そうに抱えて、こちらへ戻ってきた。


「静ちゃん、何買ったの?」


「椎原先輩は?」


「私はね~洋服。後で、着こなし方法も交えて教えてあげる。静ちゃんは?」


「私は……その」


静那は、周りの男性陣の視線を気にしながら、少し声を落として答えた。


「下着……かな。あまり持ってなかったから」


「どんな下着にしたの? かわいい系のやつ?」


「コットンの、色気あんまりないやつ……でしょ」


兼元が、知った風に横から口を挟んだ。


「なんで兼元君が知ってるのよ。もう!  デリケートな衣類なのに嫌だよね」


さすがに椎原さんも注意する。


「あ……あと、赤……の……ビキニショーツ……かな。兼元先輩が、ものすごく熱心に勧めてくれたから。『これは良いパンツだ』って」


静那の率直な告白。


「ナーーーニィ!」


小谷野と兼元が、同時に歓喜の絶叫を上げた。デパートのフロア中にその声が響き渡る。


周りに丸聞こえで恥ずかしい!


「静ちゃん、別にこの変態の言うアドバイスは、聞かなくても良かったのに」


仁科さんが、深い溜息を吐いた。


「でもまぁ、下着は今、正直五着しか無くて……あと二着あれば、一週間で回せるかな~なんて」


静那は至って真面目に、家計と洗濯の事情を計算しているようだった。


「じゃあ、その下着は学校に行く時に!」


兼元が鼻息を荒くして詰め寄る。


「さすがに着けていきません! 赤いのは目立つから。その……休みの日にでも」


当然の意見だ。


「じゃあ、休みの日に、静那ちゃんの寮に行っていい?」


「おまえ、目的は何やねん! 家まで行けば見せてくれると思うなよ!」


小谷野が、正義の味方のような顔をして突っ込む。


「お前、休日にパンツ見に行くがために家乗り込むとか、変態超えて異常やぞ!」


「さすがに、それは……ね」


ここはまっとうな返答をする静那。


「当たり前よ、このド変態が!」


仁科さんの一喝。今日は何回怒ったのだろうか……


「さすがに引くわ~」


当たり前の返答なのに本気で落ち込む兼元。


「あ、でも兼元先輩!」


エスカレーターへ向かう途中、静那はなぜか兼元を呼び止めた。


そして、満面の笑みを浮かべて、一言。


「安心してください、穿いてますよ」


「え……それって、まさに今?」


「勿論です」


「じゃあ……見せて! 今、ここでっ!」



ここは婦人服売り場のど真ん中――


兼元が、静那のスカートに手をかけようとした、その瞬間。


パァン! という乾いた音と共に、兼元の後頭部に仁科さんの鞄が炸裂した。



「さあて、お買い物が終わったところで、静ちゃん!

今度こそクレープ行きましょう。トッピングで、お勧めしたいのがあるんだ~」


気絶した兼元を捨て置きながら、仁科さんは何事もなかったかのように、軽やかな足取りでエスカレーターを下りていった。

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。

現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。

よろしくお願いします。

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