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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
9/210

4-2 みなごろし

【4話】Bパート

静那はまるで“走れメロス(©太宰治)”に出てくるメロスような必死の形相と鬼気迫るような速度で国道に沿った山道を駆け抜けていった。


泣きべそは後でいくらでもかけばいい。


とにかく今はどんな形でも生き延びる事が大事なのだから…。


静那は走って走って走り続けた。


皆殺しは嫌だ!…その精神が肉体を凌駕するかの如く。



だんだん荒くなっていく川沿いの獣道けものみちは続く。


無我夢中で走っていくうちに“菊池渓谷”という場所に出てきたが、人影は無かったためお構いなしに渓谷の川を上流に走り抜けていった。


方角だけを確認しながら山道をひたすら走り抜けていく。


今は逃げる事に人生を賭けるしかない。



…走りながら皆の顔が浮かび上がる。


「ごめんなさい。諭士さん…寮のみんな…お世話になりました。どうか生きていて…皆死なないでいて…」




* * * * *




どれくらい走っただろう…


どのくらい歩いただろう…


どれくらい山を抜けたのだろうか。


あたりは随分暗くなってきた。



流石に足元が見えないのは危ないと感じ、近くのアスファルトの道路へ出てみる。そしてひたすら東側に向かって走った。


やがて展望所のようなただっ広い場所に出る。


結構標高は高い。1000mくらいはあるんじゃないだろうか。


走るのをやめて体の火照りが収まった途端、秋風というか山を駆け抜ける風を感じる。


ここの風は堪える。皮膚にささるようだ。



静那はボロボロに破れた靴下と室内着だけという薄着だったため急に寒くなってきた。


「あの施設から何も考えずに我を忘れて走り抜けてきたんだ…ここまで。」


体を縮こませながら思いにふける。



そして空を見る。


雲で覆われていてあまり星は見えなかったが、真也と一緒に見た圧倒的だった星の事を思い出した。



雲の合間から少し星が見える…奇麗で温かい光を放つ星達。



しかしすぐに寒さで我に返る。



自分はこれからどこで生きていけばいいんだろう。


もう諭士達とは会えないのだろうか…会ったらきっと迷惑がかかる…


それに見つかったら………皆殺しにされる…


そんなのは嫌。


嫌だけど…


じゃあ私は…っツ。


寒さと辛さで涙がこぼれ落ちそうになる。



誰か助けてほしい…けど誰も頼れない…



あたりはさらに真っ暗になり、行く先も分からない。



展望台から先を見渡すと民家の明かりが見えたが、そこへ助けを求めに行くべきかどうかも分からない。



死にたくない…でも私には行く場所がない…


「まだ…お父さんに再開してないのに…まだ…まだ…」


このまま故郷から遠く離れた異国の地で…死ぬのは悔いが残る。無念さを噛みしめながら震え、うずくまっていた。


「死にたくないよ…」






そこへライトが当たる。


「どうしたんですか、こんな所で?何か困っていることでも?」



ライトを照らすシルエットは…少年くらいの小さな風貌。


次の瞬間、ビックリするくらい大きな声でその少年は叫んだ。


「静那?静那じゃないか!なんで、なんでここにいるんだよ。」



静那は夢なら覚めないでほしい。とさえ感じた。


そこに立っているのは展望台周辺を巡回していた真也だった。



全ての緊張が解けたように静那は真也に泣きながら飛びついた。



そして怯える声で鳴きじゃくりながら訴えた。


訴えたというよりもう叫んでいた。



「助けて!殺されちゃう、私。

“皆殺し”だって言ってた。

死にたくないよ!死にたくない!嫌だよ!

でもみんな殺されちゃうかもしれない!

皆殺しにするって。皆殺し!言ってたもん!嫌だよ!殺されるの!」



どういういきさつなのかはさておき、目の前にいるのが紛れもなく静那だったことにも驚いたが、発した言葉の内容からさらに驚く真也。



「皆殺しって…一体何があったんだ!?静那の…その…勤め先の介護だったかの施設内に殺人鬼でも押し入ってきたとか?」



「ちがう!ちがうけど怖い!皆殺しにするって確かに言った。

殺すって!だから逃げよう。このまま戻ったら見つけられて死んじゃうよ!

遠くに逃げよう!真也を死なせたくない!みんな死んじゃやだよ!みんな生きていてほしい!

皆殺し、怖いよ!真也まで殺されたらやだよ。真也に…死んでほしくない。」



相当パニックになっているようだが、真也の方は少し落ち着いてきた。


とりあえずは静那の無事が確認出来たからだ。



静那の肩をとり一旦引き離した後、コートをかけてあげる。


その後、静那の顔をじっと見つめてまず安心させる。


少し落ち着くまで待った。


尚も静那は泣きべそをかいていた。まだ何かに怯えている様子でまともに話せそうにない。



そのうち風が酷くなってきた。


「1~2km先。歩くのはちょっと遠いかもしれないけど僕が働いている牧場があるんだ。

そこに事務所がある。一旦はそこまで歩いていこう。おぶろうか?」



「い…いい。一人で歩けるから」



「でも静那さ、足。ホラ。

靴下破けて足から血が出てるぞ。この辺の道は石が結構ゴツゴツしてるから背負わせてよ。

まずは静那自身に落ち着いてもらいたいからさ。足の手当てだってさせてほしい。」



背負う理由を聞かされて納得した静那は、まだ完全に落ち着きを取り戻せていないものの真也の背中に素直にもたれかかる。


その上に薄手ではあるがコートを羽織った。


これで寒さはだいぶマシになる。


なにせこの辺は夜は相当冷える。



静那は寒いのか怖いのかは分からないが終始震えていた。


「静那…怖かったんだね。でも今は落ち着いて…呼吸を整えて…ゆっくり。

静那が本当大丈夫になったらさ、少しづつ話してよ。何があったのかを。」





* * * * *





熊本市内では静那の捜索活動が行われていた。



えらい騒ぎだ。



街中で“金色の髪の女の子が裸足で走っている姿を見た”という声が挙がったので、その証言を頼りに町で聞き込みを行っていた。



交通事故に巻き込まれていないだろうか…


誘拐の可能性は…あの子、まだ大人に対してあまり面識ないから…


それか、足元が暗くなったから誤って川に転落したのでは…



皆が全然見つからない静那の行方に最悪の事態を想定し、捜索隊やお母さん方は、時間が経つごとに、夜が更けていくごとに冷淡な表情と化していった。


警察官をしかりつける介護施設のお母さん方。


「あんたら何してんの?まだ見つけらんないの!」と言わんばかりの様子だ。


かなり総出で介護施設から静那の暮らす施設までのエリアで聞き込みを行なっている。




…そんな折、時刻は21時過ぎくらい。


寮の方に真也から“静那がいる”という旨の電話が入ったという知らせが諭士の元に届いた。


驚いた諭士は急ぎ寮へ戻り、真也がこの日依頼を受けて向かった牧場の事務所に折り返す。



捜索は一旦中断され、関係者や寮の面々が電話の周りに集結する。



諭士が代表。


緊張の面持ちで電話をかける。



心配そうに後ろから見守るお母さん方。



「あのっ、三杉です。今牧場の事務しー」


「真也か!!

静那は?静那はどこなんだ。見つかったのか?いるのか?無事なのか?」



繋がった瞬間声を荒げる諭士。


真也が話し終わる前に猛然と問い詰める。


このままだとまだ生死も分からないとはいえ静那を託してくれたミシェルさんに顔向けができないとでも感じたのだろうか。


誰から見ても悲痛な面持ちだった。



「あのっ。静那はここにいます。ちょっとケガしてますけど無事です。…でもある理由で電話には出たくないって…」


「そうか、本当に……本当に無事なんだな!まずは良かった。」



後ろで安堵の表情を見せるお母さん方。9時過ぎというのに誰も家に帰らずに探してくれていたのだ。


諭士も体中の力が抜け、腰をフラフラと椅子に落とした。


静那がどうやってあんな遠いところまでたどり着けたのかはよく分からなかったが、とにかく無事でいるという事実。


行動に不明な部分はまだあるものの、無事でいてくれたことに何よりも安堵した。




しばらくの間があった後、真也が話始める。


「すいません。静那は話せないので、僕のほうからいきさつを説明してもいいですか?」


「あぁ。本当に一体どうしたんだ。皆本当に心配してたんだぞ。いつの間にか靴も履かずに神隠しの様にどこかへ行ってしまうし…大騒ぎになったんだからな。」



「その、実はですね…」

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