11-2 下着
【11話/B面】Bパート
キツい変態2人が加入したことで部活のイメージが変わってしまいましたが、慣れるまで気長にお付き合い下さい……
新入部員の1人である兼元の趣味は想像以上にヤバいものであった。
「コイツ実は大阪おった時、ブルセラショップに入りびたっててさ~」
「こら!なんて事を言うんだ。嫁もいる皆の手前で。」
「…もうだいだいバレてるからいーよ。…んで何?」
勇一も感情的になるのをやめて、やや冷めた感じで応対しはじめた。
唯一言葉の意味をあまり分かっていない子が一人。
「その…“ブルセラショップ”って何ですか?」
「あっ!静那!それは知らなくていいからな!ホントに知らなくていいから!マジで!」
キッと兼元の方に振り向く。
「余計な事言うな!ちゃんとした趣味を言え!兼元。」
「何だよもう…怖そうな顔をして…
そうだな…僕は人間の嗅覚を限界まで鍛える事を趣味としているよ。」
「お前、嗅覚がどうのこうのじゃなくて、ただの下着マニア&匂いフェチなだけやろうが!」
「だからそこ!外野は黙ってろ!皆聞いてる!」
これには女性陣一同ドン引きした。
仁科さんはもうゴミを見るような目でこちらを見ている。
…いや、もっと前からか。
「じゃあ嗅覚を鍛えたらどんな効果があるのか説明してもらおうか…」
勇一は引き続き冷めた感じで応対するが、ヤバい話になったらすぐに止めるつもりだった。
「ただ、下着がそこにあっても意味が無いんだ。」
「はぁ?」
「匂いは気温や乾燥と共にその効果が薄れていく…冬などはその恩恵が薄い!」
「あいつ…なんか一人語りが始まったで。」
「そこで20世紀最大の発明・電子レンジの登場というわけだッ!」
「何が“わけだッ!”なのかよく分からないんですけど。それに電子レンジが20世紀最大の発明なわけないじゃん。」
外野の声など気にせず兼元が話し続ける。何かのスイッチが入ったようだ。
「乾燥などで匂いを失った高貴なる下着…いや高貴なパンティー殿というべきか」
「“高貴”とかいうなバカ!」
「しかし電子レンジで下着を温めると不思議な事に、たちどころにそのかぐかわしい香りが復活するのだよ!これこそが、ザー」
「はい終了!」
「なんで止めるんだよ。」
「コンプライアンス考えろ!コ・ン・プ・ラ・イ・ア・ン・ス!
まったく…さっきマニアックでヤバい世界は辞めろって言ったろ。」
「でもこのおかげで嗅覚が育ったのは事実だ。ちなみに君は今朝カレーを食べて来たね。」
「ぐッッ!なんで知ってんだよ!」
真っ赤になって反論する勇一。
「だから嗅覚を鍛えあげたと言っているだろう。君たちの香りだってたちどころに判別できる。僕から逃げようったってそうはいかないよ。匂いでそこに居るのが手に取るように分かるからね。」
目線を女性陣にやる。
さらに“引く”仁科さんと椎原さん。
「こいつ…想像以上にキモすぎるんですけど。それにそんなキモさに誇り持ってるというか…なによ“電子レンジ”って!」
「あぁ…ちょっとヤバいな。」
「キモイとかヤバいとか言わないでいただきたい。下着こそ正義なのだよ。
ジャスティスオブパンティー…。略して“JOP”だっ!
女性陣の皆よ…パンツをはく度思い出せ!」
兼元はその場で直立して頭の上あたりで人差し指を立てる。
「あんた、キマったみたいに思ってるかもしれないけどね…。全然カッコよくもなんともないからね。だいたいパンツってただの布切れなのに、何その匂いを電子レンジ使って繰り返し復元して嗅いでんのよ。
マジでバカみたい。」
「はぁあテメェ!言ってはいけないことを言ったね。この乳だけがとりえの御仁。」
「ちっ…って、あんたマジでぶち転がすよ!」
しかし兼元は動じない。魂の反論を叩き込む。また本人の何かのスイッチが入ったようだ。
「お前達女子はパンツの価値を知らなさすぎるのだ。
よく考えてみろ!
今一度心からパンツに向き合ってみろ!
女性の一番大切なところを守っているものがあのシルクの生地一枚だけなんだぞ。
ドラクエでいうと防御力が“1”のアップすら見込めない…それなのにそんな布にかかる責任感は海よりも深いのだ。
“布の服”よりも貧相で防御力が上がりもしないのに、その役割を全て引き受け全うしている。
それに日本は色んな物に神が宿るってものではなかったか。
そんな大切なところを守りし一枚のか弱き布の儚さに感動し、男達は涙を流すのではないのだろうか!」
シーンとしている空気。
反応が無いのでとりあえず生一に視線を向けてみる。
「いや…別に感動もしねぇし涙しねえよ。」
「大切な場所、そして時をお互いに共有する特別な布地…それを脱ぎし時、肌から離れてもなお残り香や体温まで共有しているという魂にも似た宇宙より壮大な存在感。
これはもうガイアシンフォニー(地球交響曲)そのものではないか?」
…全員ドン引きしてこの演説を聞いている。
「お前絶対アホやろ…」
生一が呟く。
「うん。とりあえずお前が小谷野よりもヤバいのは分かった。ということでもうこの手の話を静那にするのは禁止な!」
「なっ!私は“高貴”な存在を証明しようとしただけだ。ただの布と言い張るそこの女にだな。」
「だから“高貴”言うなバカ!そもそも下着マニアを地で行くようなやつを静那が好きになるわけないだろ!」
「嫁よ!そうなのか?」
「お前マジで聞くなよな。まさか逆に好きになったとでも思ってるんか?頭ん中にお花でも植えてんのか!!」
「静那どうやった?」
「その……私下着あまり持ってないから…急に出て来たワード“ドラクエ”とかいう意味もよく分からなくて…」
意味が分からなかったのは良かったことなのか…
ボーゼンとする勇一。
「嫁よ!だったら私が新しいパンツを選んであげようじゃないか!いや、是非君のを買わせてほしい。」
これにすました顔で返答する静那。
「…じゃあ明日、ゲーセンだったっけ。
そこでまずクレーンゲーム行くから、その後で下着屋さん行こう。
私も着まわしてるものばかりで、そろそろ買わなくちゃなって思ってたから…」
「静那、おまえマジで言ってんのか!」
「なんだね君は。嫁の下着を旦那が選んであげるのは常識であろう。」
思わぬ買い物デートにOKをもらった兼元は嬉しさを隠しきれないようで、まだ男爵みたいな言葉遣いになった。
こいつがテンション高い時は男爵口調になるようだ。
買い物デート…しかも下着を選んであげるのだ。
自分の選んだ下着を履いてもらえるというご褒美に、滅茶苦茶テンションが上がっている。鼻息が荒い。
「そのパンツ、待ったー!」
意味の分からない横やりを入れるのは小谷野。
「じゃあ俺は嫁のブラを選ばせてもらう。」
「何を言ってるのだね。嫁が指名したのは私だ。君は大人しくいかがわしい店にでも行ってきたまえ。」
「バカ野郎!デビュー戦の相手がいるんだよ。行くわけないだろう!」
「バカは君だ。嫁よ。私が最高のパンツをプレゼントしてあげるからね。」
「その、買ってもらうのはいいよ~」
「いやいや、嫁にプレゼントをするのはこの旦那の役割!」
「だ・か・ら!お前だけでは行かさんからな!」
…静那を間に挟んで延々と続きそうなバカなやりとりを見ている4人。
椎原さんはさすがに無言だった。
仁科さんが勇一に言う。
「で、あの2人。本当に部員に迎え入れるワケ?」
「う……でも数が8名になったら…その。」
「だからってマジであんな変態入れるつもり?もう…静ちゃん四六時中守らないといけないじゃない。
マジ顔で“嫁”とかいってさ…マジキモ…」
ため息交じりの仁科さん。
「様子見ってところだけど、あんまり変な事ばかり静ちゃんに吹き込むようなら辞めてもらうしかないね。」
椎原さんがやっと口を開いた。
「生一は?」
生一にも一応感想を求める。
「あいつらキャラ“濃い”なぁ。でもブレてへん。その辺りだけは勇一も見習ったらええんちがう?」
さらに勇一の耳元に顔を持ってきてボソッと告げる。
「おまえも実は下着選んであげたいとかいう願望あるやろがい。」
『B面』では、主人公達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」の様子を描いています。
各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。
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