11-1 女性というもの
【11話/B面】Aパート
放課後になるとこの部屋…部室にやってくる決まった面々がいる。
誰かが部室にやってきて、それが複数名になったあたりから『日本文化交流研究部』の活動は始まる。
しかしG・Wが明けてしばらくしてから…
部室の様子がおかしい。
原因は急遽転入してきた2名の男子生徒だった。
「で?誰なのこの2匹の野生動物みたいなのは?」
怪訝そうな声で不満を漏らすのは仁科さんだ。
2人を知らない仁科さん、椎原さんは、色々思う所はあると思う。
が、勇一はとりあえず“まずは2人部員が増えた”という事で7名全員が集ったところで自己紹介をしてもらうことにした。
ちなみに今日、西山は生徒会だ。
「静ちゃんの金魚のフンみたいに後ろずっとついてきてさ、なんだか気持ち悪いんですけど、この人達。」
「まぁ、そういうなよ。新入部員なんだからさ。明らかに静那目当てだけど。」
勇一がフォローしているのにお構いなしに話始めたのは小谷野だ。
「初めまして、僕は小谷野 弘之と申します。ここにいらっしゃる静那さん…この子の将来の旦那となる男です。」
シーンとする部室内。
女性陣はもちろん、生一も若干引いている。
小谷野とやらの自己紹介が終わるとすぐに隣の兼元が話始める。
「ええ、さっきの小谷野とかいう奴の発言には間違いがありまして…ええ、私こそ静那さんの旦那である、兼元賢太郎です。
将来は実家にマイホームを建てて、野球チームできるくらいの子ども達に囲まれながら余生を過ごしたいと考えています。そして新婚旅行はー」
「待った!本妻の旦那はこの俺でして…彼と静那さんは何も関係が無く…」
自己紹介そっちのけでいきなり二人の言い争いが始まった。
…静まり返る部室。2人ともイメージがなかなかたくましいのは認めよう。
しかしながら自分達は一体何を見せられているんだろうかという空気。
こんな時、少し気性の荒い仁科さんが真っ先に突っ込み役をしてくれるのだが、もう呆れかえっている。
男性と言うよりは別の生き物か何かを見る目だ。
椎原さんは癒し枠らしく、そこを貫きながらおとなしく静那と二人で見守っている。
「皆さん、彼の語る新婚生活は“芯”というものがありません。」
「今の意見を聞いて、はい!兼元賢太郎君!」
生一が国会議事堂の答弁にいる司会役のマネをやりだした。さらに状況を滅茶苦茶にするな!と心の中で叫ぶ勇一。
「そもそも貴方の女性を見る目は誠に嫌らしく、男性である私も遺憾に感じております。」
「はい!小谷野変態大臣」
「そちらはどうも下着の収集をー」
「ちょっとストーップ!!!」
生一も混ざってバカみたいな言い合いが始まったので勇一は一旦仕切ることを決意。ヤバい話に入ろうとしているし…
「結局2人はこの部活が何をするところか分かってんの?
静那はベラルーシ出身。椎原さんはアメリカからの帰国子女。
2人を中心に日本の魅力を伝えるって目的で先生が活動立ち上げの許可をくれたんであって…その辺ちゃんと分かってる?そういう部活だってこと。」
「それだったら静那さんに日本男児の…すなわち自分の魅力を伝えるということで趣旨は合っているのでは。」
「静那さんは私の嫁。そんな嫁の生活をサポートする部活ならば我々のメガネにかなった活動ではないかね。」
なんで“男爵”みたいなしゃべり方になってんだと感じた勇一だが念を押す。
「なんか卑猥な感じするんだけど大丈夫か?」
「勿論だとも。卑猥と言ったがそれはあなたの考え方がそうであって、私の嫁を想う行為に何か関係あるのかな?」
「なんで自分が攻められてるみたいになってるんだよ。」
「それは君がどうも合宿の時からトゲのある言い方をしているからではないのかね?」
「してないよ!」
何なんだコイツは…と感じる勇一。
女性陣は黙って聞いている。勇一が部長としてこの局面をどう乗り越えるのか一応任せて静観している。
「2人の旦那様!
私は日本の事がもっと知りたくて先日は合宿に行きました。
これからももっと色んなことが知れたら良いなって思ってます。
だから是非よろしくお願いします。」
静那が大人の対応を見せた。
「嫁よ。これからはずっと一緒だ。分からないことがあれば何でも僕に聞くがいい。いいね…ぐふッ!」
タックルが入った。
突き飛ばされる兼元。
小谷野がすかさず静那に詰め寄る。
「嫁よ。困ったことがあれば僕に言うんだよ。僕は地球の裏側からでもす~ぐ嫁の元に飛んでくるからね。」
両手を握って話しかける。
…顔が近い。
「じゃあ2人の趣味は何?まずは趣味について聞きたいかな。ね。」
うまく往なしているのか分からないが静那は次のフェーズに持っていこうとする。
「ああぁ、趣味ね。いいとも。」
目の前の小谷野から話始める。
「僕の趣味は、そうだな。嫁を愛でる事…」
「すいません。真面目にやってくれませんか?私たちも部員なんですけど。」
さすがに酷いと思ったのか仁科さんが突っ込んでくれた。
「なんだねこの乳だけの女は!」
「あぁ!お前、ぶち転がすぞ!」
「まぁまあまぁまあ仁科さん!ここは押さえて!小谷野君…小谷野!真面目に言えよ。俺達はまず君の趣味を聞いて、どんな人間かを知ろうとしてるんだからさ。」
「まぁいいだろう。とはいうものの、僕は男子校だったからね。長い事何かをこじらせてしまったようだよ。
あえて言うならば……まだ見ぬ世界を見て回る事…下調べをしておくこと…かな。」
「え…。それって色んな場所を旅してみるって事、旅行ってことだろ?
もう…それならそうと言えよ。な~んか分かりにくい遠回しな言い回ししてさ。」
彼の趣味に関して少し安心した顔を見せる勇一。しかしその後の兼元の突っ込みで、場が凍り付いた。
「こいつの“まだ見ぬ世界”ってえ言うのは大阪の飛田新地の事やぞ。まったくお前は相も変わらず変態極まりないよな。」
「なっ!何を言い出すんだね君。失礼じゃないか!ブルセラショップに入り浸るような人間には言われたくないねぇ。」
もうしょっぱなからどっちもとんでもない性癖を持っていることが分かり、一同ドン引き…はしていなかった。
幸い言葉の意味がきちんと分かるのは仁科さんと生一だけのようだった。
…あと、勇一も少し。
「“飛田新地”って何ですか?」
「あっ!静ちゃん。そこは知らなくていいからね!本当に!
ってかあんたら!何言ってんのよ。この変態の風上にも置けん奴!」
「なぜあなたは“飛田新地”を御存じなのかな。さてはあなたもあそこに出勤されていたことが。」
「するわけないでしょうグゥアッ!大体さっきから名前も名乗ってないのに失礼過ぎない!あのさ勇一っ!!裁量は任せるけど、さすがにどうなのよコイツら!」
仁科さんがご立腹だ。
この部活の風紀を乱す輩だと感じたのだろう。
それにこんな奴が1人ではなく2人もいて、終始静那に付きまとい続けていたらきっと静那が変な影響を受けてしまう…そう感じていたのだろう。
「セクハラでこいつら訴えようかしら!」
「1995年はそういうのまだないねん。時代の先取りすなよ!」
生一が訳の分からない突っ込みをする。
勇一が仕切り直す。
「とにかく静那にも椎原さんにも健全…っていうかきちんとした日本文化を教えたいんだよ。
変な…いや、マニアックな事じゃなくて、普通に教えられるような趣味や得意な分野は無いのかよ?」
勇一なりに言葉を選びながら説明した。
「だったら…」
小谷野が再び口を開く。変な事は教えないでほしいと願う勇一。
「女性の“美”について…はどうだ。」
「…う~ん。保留。」
「何でダメなんだよ。」
「なんかどうにも健全じゃないんだよっ!」
「だったら兼元の趣味なんかもっと酷いぞ。」
「何だよあいつの趣味って…」
『B面』では、主人公達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」の様子を描いています。
各話完結ですので、お気軽にお楽しみください。
尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。
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