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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【B面】
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10-2 昔のルーティン

【10話/B面】Bパート

阿蘇の施設で行われていた研修も1日目を終えた。



各々夕食の為、食堂へ移動。


ここから就寝の前に食事の時間に入る。


ここでも静那の席の左右を陣取り、絡みまくる男達がいた。


関西からやってきたゴリラこと小谷野君と、ヒョロザルこと兼元君だ。


なんか無駄に静那と距離が近くて気持ち悪いなぁと感じている勇一。


そこに生一がツンツンと腕を突っついてきた。


「あ!そうか…俺また腕組んでたな。無意識に…」


勇一は気づいた。



相手を拒絶したいと感じた場合、人は無意識に腕組みをしてしまうようだ。


江戸のころより腕組みは相手に対して拒絶の意味があるらしく、衰運でもあると言われていた。


心で思ってなくても相手にも伝わるので、このしぐさは気をつけようと改めて再認識する勇一。


「それにしてもおまえ、結構周り見てるよな。」


「お前が見えてなさすぎるだけやで。お前がしんどそうな顔してたら静那とかすぐ気づいてじっと見てるで。気づいてへんやろ。」


「そうだったのか…」


先輩として少し反省の勇一。


そんな2人の細かいやりとりなどお構いなしに、目の前の小谷野と兼元は静那と話をしている。


静那が話しかけない限り、勇一はまるで空気みたいだ。


そんなことよりも、よく静那は2人に対して普通に対応できるもんだと感心する勇一。



「あ…静那ちゃんさ、今日の夜は2人で…星でも見に行かない?」


「星かぁ。いいですね。」


「あ、あのさ…ちょっと待てよ!まさか2人で行く気か?僕も行くからね。」


「いや、お前は来なくてもええぞ。いつものようにパンツでも追いかけてろ。」


「失敬な!僕をまるで変態の様に扱って!静那ちゃん。こいつのいう事は気にしなくても良いからね。」


「じゃあお前のコレクション、あれいらんのやな。タンスに入ってるん知ってるんやで」


「なッ!何を訳の分らん事を言っているんだね君は。静那ちゃん。さあ行こう。」


「ごはんがまだだからちょっと…」



話の内容からして兼元はどうやら下着マニアみたいだ。


危ないヤツだなぁと感じながらも食事をとりながら話を聞いている勇一と生一。



そんな勇一の目の前に静那。


左右に小谷野君と兼元君が陣取る。




少し大人しくなったと思ったら、2人ともさっきから静那のコップに常に目を光らせているようだ。


入っているお茶が少なくなったら我先にとお茶を汲みに行ってあげるつもりだろう。


静那に対して好感度ポイントを上げた上で、デートに誘うつもりだろう…ゲームじゃないのに。


改めてコイツら気持ち悪いなぁと感じる勇一。


まぁここは勉強合宿所だし…さすがにこの恋愛初心者共では間違いは起きないだろうと感じた勇一は、夕食を終えたら大人げない事を言わずすぐに寝室に切り上げようかと考えていた。


明日授業中に寝てしまわないためにも。


勇一が食べ終わって席を立とうとしたその時くらいに静那が口を開いた。




「勇一は今日の講義どうだった?」


ここは先輩としてきちんと具体的な返答を返そうと思った勇一。



「そうだな。江戸を生きた人達って改めてすごかったんだなって思ったよ。

争いがないまま300年近くも続いたんだからさ。その秘訣みたいなのを知れてよかったよね。

今でいうボランティアみたいなのは“ボランティア”なんてカテゴリー分けされてなくて当たり前のようにあったし、日本人の“働く”っていう意識も知れて面白かったよ。

初めて聞いた“はたらく”の意味な。」



「やっぱり!私もそこの考え方が素敵だなって!」


暗めの室内でも分かるくらい明るい顔になって話し出す静那。


ちなみに小谷野君と兼元君は授業そっちのけで静那の事ばかりジロジロ見てたので殆ど授業を聞いていないはずだ。


ここは先輩の威厳をみせてやろうと勇一は感じていた。



「傍を楽にする。“傍の人を楽にしてあげたい”っていう思いやりから“はたらく”って言葉が来てるんだよな。

傍(自分の周りの人の事)を常に考えてたらそりゃ争い事も怒らないだろうな。」



「そうだよね~…そんな風潮の時代が日本にはあるんだよね。

人を思いやる事が自然と出来れば、変な事件や争いは起きないし、やっぱり日本ってすごい。」



横で聞いてた小谷野君と兼元君はうんうんと頷きはするが、いきなりさわやかな勉強トークに入ったのには明らかに困惑していた。


「(どうだ、てめーら!話についてこれまい!)」とばかりの視線を送る勇一。



そして、ちょっとここで勇一は調子に乗る。


2人に視線を向け、サラッと話を振ってみる。



「小谷野君だったよね。

江戸時代の人たちの一日のルーティン…すごいよね。」



「え、ああ。まぁね。まあまあだね。うん…良かったよ…」


「小谷野君はどんなところが良かったの?」


静那が笑顔で小谷野君に質問する。狙って質問したのかどうかは分からないが、爆弾を投下した。


「そりゃあまぁボランティアみたいなのは当たり前のようにあったことかな。」


「(それ俺がさっき話した内容じゃん!)」と心の中で叫ぶ勇一。


「他にも良かった点いっぱいあったよな。ねぇ兼元君。」



ここで心理戦が展開された。目の前で兼元を潰しにかかる小谷野君。




「そ…そうだねぇ。……うん…そうだね。

やっぱりアレ…そう、傍の人を楽にしてあげるっていう思いやりがすばらしいね。一番。」


「(それも俺がさっき話した内容じゃねーか!)」と心の中で叫ぶ勇一。



生一は完全にギャラリーになっている。



「小谷野君。君は他にもあるだろう。ホラ、あの事とか。静那ちゃんが聞いているんだからここで分かち合ってみてはどうだい。」


どうもお互い潰しあいが好きみたいだ。


さっきのお返しとばかりに兼元君が小谷野君に振り返す。


「他にもあった?」


静那が無意識に笑顔の爆弾を投下してきた。


これで引くに引けず、土俵際に追い詰められた小谷野君は苦し紛れに答える。


「そ…そうだねぇ。もちろん他にもある。……うん…そう。

あったあった……うん。

その…よく……働く…ところとか?昔の人はよく働いたって言うか…」



静那が不思議そうな顔をする。


「あれ?…仕事はだいたい午前中、平均三時間くらいしか働かなかったって言ってたけど。」


サーッと引きつった顔をしながら小谷野君が弁解に入る。


「いや、いやいやいや、その仕事以外の事も含めてだよ。働くっていう言い方が違ってたというか、ニュアンスが違うっていうかさ。」


非常に苦しい良い訳だが、静那は何事もなく返す。


「朝の見回りとかボランティアみたいなのも全て含めての“働く”ってことね。そう考えたら世の為人の為、実によく働いているよね。」


「そうっ!それが言いたかったんだよ。ソレよ!」



「(それ絶対ウソやろ!)」と心の中で呟く男性3人。



「そういえば確か、夜…もよかったよねぇ。兼元君」


お返しとばかりに話を振ってきた小谷野君。完全に報復行為だ。


「夜……まぁよかったよね。江戸時代の夜はねぇ。…うん……良かったねぇ。そう…実に良かった。」


なんとか逃げようとする。


どうやら静那からの爆弾も無いようなので、このまま終わりそうな感じがした。


「江戸時代の人って、夜何してたか…俺ちょっと思い出せんわ~。じゃあ“良かった”言うてる兼元君とやらにその良かった部分教えてもらえんやろうか~。」



生一だ。


思わぬ伏兵が出てきた。


「(逃がさねーよ)」とばかりにコメントを求める。


静那も知っているような感じだが、気をつかって発言を兼元君に譲ってくれているようだ。


小谷野君からしたら“してやったり”という感じだ。



この空間で、静那以外の人間でバカみたいな心理戦が繰り広げられている。



ここで追い詰められた兼元君は、食事も終わっていることなので無理やり外に星を見に行こうと提案する。


「あのさ……夜……それもいいけど……その…静那ちゃん、ちょっと…まぁ…リフレッシュに。」


静那だけに言おうとする。


ここで静那が“行く”と応じたらゲームオーバーだ。


静那の対応に委ねられた。



「そうだよね。人との交流っていうかリフレッシュに夜は使ってたんだよね。

“明日に備える”で、明日備あすび。これが“遊び”の語源になったとか、これには定説が色々あるから本当なのかな~ってさすがに疑わしかったけどさ~。」



「そ!そうそうそうそう。あすびね。そう……疑わしいよね~。」


何とか乗り切りやがった。


生一が小さく舌打ちした。





静那がしゃべり“過ぎた”せいで、この不毛な潰しあいはなんともあっけない幕切れになってしまった。


しかしこの後、どちらが静那と一緒に星を見に行くかの不毛な争いで第二回戦に突入する。

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。

各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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