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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【B面】
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10-1 日本の作法

【10話/B面】Aパート

ここは校舎の東側2階…ではなく熊本県阿蘇市。


『国立阿蘇青少年交流の家』というところに来ている面々がいる。


部長の勇一、そして静那と生一の3人だ。



全国の国語教師間でのリレー研修、強化合宿に参加している。



学校からの選抜というわけでもなく、勇一と生一は国語の補習を免除する為の参加である。


なのでモチベーションは低かった。



ぼーっと講義を聞いて終わるのを待つ2人。


勇一はちょっと苦手な現代国語と古典を勉強してみようと思ってはいたものの、やっぱり集中力が持たない。


こうして初日の授業があと1講義を残した状態で終わり、休み時間に入る。




前の席に座っていた静那が話しかけてきた。


「勇一!」


「ん?あぁ静那か。」


「授業受けてる時ずっと腕組んでたでしょ。授業聞いてた?」


「ああ。一応。」


「じゃあ腕組みは良くないっていうのは分かったよね。あれ、衰えてゆく傾向の仕草だって言ってたからやめようよ。」


「そうなの?」


「そうだよ。勇一やっぱり聞いてなかったでしょ。」


「ごめん、どんな話だったっけ。」


「昔の日本人は縁起(前兆)を大切にしてるって話の流れからさ、その中で腕を組んだり足を組むのは縁起が悪いこととされていたんだって。

そんなずっと腕組み足組みしてる人には周りの人が近寄らないようにしてたみたいだから現代でも気をつけなさいって意味。」



「そうか。ごめん。正直聞いてなかったよ。」


「腕組みしてたら話も入ってこないって言ってたよ。手は机に置いてから聞こうよ。」



そこへ近づいてくる2名の男性。


「静那ちゃん。なんだいコイツは。こんな奴の相手をするよりも残り少ない休み時間、僕とステディな付き合いをしないかい?」


「静那ちゃん、僕がエスコートするよ。一緒にお茶でもどうかな?」


この2人は、合宿初日に静那に一目ぼれした他校の生徒だ。


合宿所の廊下の曲がり角で偶然ぶつかったことによる“運命の出会い的なもの”を感じたらしい。


ゴリラみたいなのとサルみたいな奴で、生一いわく関西出身の男子高校生ということだ。



「君は静那ちゃんの何だい?悪いが彼女は私がお借りするのでお引き取り願おうか。」


「お引き取りって……机座っているだけなんですけど。」


「だけど明らかに不快そうな顔をしているね、君。」



なんで殆ど面識のないヤツに“君”とか言われないといかんのだという表情を見せる勇一。


しかも明らかに無理な紳士?男爵みたいな口調で話している。


要するに“静那さんには近寄るな”オーラを出しているのだ。



無意識に、なんか嫌だなぁという感じを出していたのだろうか。勇一は腕を組もうとする。


そんな様子に静那が口をはさんだ。



「勇一。ほら、無意識だと思うけど今腕組みしてる。」


静那が勇一に怒ったことはないが、“気を付けようよ”という感じの表情を見せる。


「私も今日知ったけどそれ“相手を受け入れません!”っていう“しぐさ”みたいだから気を付けてね。」


「あぁ…その、すまなかった。」


静那の顔が明るくなる。


「反省してるならよし。じゃあ…」


静那にまとわりついている2人に視線を向ける。


「どうするんだったっけ?ステディ…?な付き合い?どこか行くの?」


「え…あ、ああそうだよね。じゃあステディにお茶もらいに行こうか。」


「あっソレ俺が言った奴だろ。ズルいぞ。」


「いいんだよ。喉かわいてるんだし。」




「じゃあステディなお茶飲みに行こう。」


「うんステディにね…」


「あっこらお前、手を持つな!」


「いいじゃんさ。嫁なんだし。」「誰が嫁だ!」


静那はそのまま2人を従えて講義室の後ろへ移動した。



「あのゴリラ“ステディ”の意味絶対分かってへんな。まぁおもろいからええけど。」


生一が頭だけ起こして話しかけてきた。会話は聞いていたようだ。


「(まぁあの2人の事をどうこう言う前に、俺も講義きちんと聞かないとな…先輩としてはちょっとカッコ悪かったかな)」


そう感じた勇一は気持ちを仕切り直す。


「結局お前、講義聞いてた?」


「いや、正直あんまり。初めの方は聞いてたけどだんだんぼーっとしてきて。」


「そのわりには“すまなかった”言えてたやん。あれで静那も少し嬉しかったんと違う?」


「そんな講義あったっけ。」


「やっぱり聞いてなかったか…。

江戸時代の作法やったかな…日本の昔の人って、気持ちが澄み切った状態をお互いが心がけて会話してたんよ。


だから気持ちが濁った時には“澄まない”と思うわけで、そうなったらすぐに“すまない”って言うのが気持ちのいい関係を保つ秘訣とか話してたぞ。」



「そんな話があったのか…つかお前ちゃんと聞いてたんだな。」


「当たり前やん、この後授業の感想とか書かされることになったらヤバいしな。それで静那の書いた文パクッてるのバレたら、マジで追試になるから…要点だけは押さえておこう思うてな。」


「そういう要点を抑える所とかはきちんとやってんのな。」



「人生は要領も大事やで。要領悪いんがダメやとは思わんけど、残念なことに容赦なく付けこむ輩もいるんやから。

勇一も静那に対してただ優しいだけの先輩に成り下がったらあかんで。

あいつお前の事一番信頼してるんやし。」



「何でわかるよ。」


「顔見たら分かるよ。そういう細かい表情おまえあんまり見てないよな。うちの女性陣はその辺り感じ取ってるというのに…」


「ワリィ、もう少し表情を見るよ。皆結構表情とか注意して見てんだな。」



「あと静那は多分学んだ事を分かち合いたいんやと思うで。

学校でも覚えた言葉、それが関西弁だろうがあいつ何でもすぐ使ってみたりするし。

だから先輩として学んだ事柄とか言葉、使ってあげたら喜ぶんとちがうやろうか?」



「そうか。ごめん…じゃなくて、すまない。そうだよな。ちょっと真面目に授業受けるよ。」


「でも今日はあと1講義で終わりやけどな。」


「気持ちのコシ折るなよな~もう。」


「いやそれ以前にきちんと聞いてなかったお前が悪いやん。」



お茶をいただいた後、静那達が席に戻ってきた。


これから合宿1日目の最後の授業が始まる。






生一が静那に問いかける。


「ちゃんと“念”は入れた?」


「うん。入れたよ!」


顔を緩ませながら返事する静那。


そして生一は勇一を見る。


「こんな感じな。まぁお前はツメが甘いよな。」

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。

各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。


【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気になります。


現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです。


頑張って執筆致します。よろしくお願いします。

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