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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: SHUSAKU
season1【B面】
72/239

2-2 夜空

【2話/B面】Bパート

活動は今日で二日目――


しかし、今日はどうも一日中、空が泣き続けていた。


今朝から窓を叩き続けている雨脚は、衰える気配を見せない。


部室に集まっている五人も、雨の為に急激に暗くなってきた空模様を伺い、早めの帰宅を考え始めていた。


アメリカ、カナダ、そして日本。女子三人は固まって、それぞれの国の暮らしの違いなどを静かに語り合っている。


そんな中、部長の勇一が、時計を確認しながら提案した。


「静那、今日は雨で早く暗くなりそうだし、早めに切り上げよう。

夜になったら道も暗くなるし、危ないからな」


彼は、静那を真っ直ぐに見つめた。


静那の帰路と同じ方角なのは、途中までは椎原さんだが、そこからは一人になる。


勇一は、入学前に静那がこの高校近くの公園で長身の男性に絡まれたことがある。その現場を目撃している勇一だからこその提案だ。


「そういえば静那さんは、夜はどうしてるの? 寮で何をして過ごしてるの?」


ふと、椎原さんが静那の顔を覗き込むようにして聞いた。


「私は……寝る前に星を~見てるかな……」


「ええー、なんだか素敵~」


「なかなかロマンチックだな~」


勇一と仁科さんが感心した声を上げる。


「ええ? そうですか。昔小さいころはよく星を見てましたよ。

私の国では……今思えば寒かったからっていうのもあるけど、星がよく見えて綺麗だった」


静那は、遠い故郷の空を思い出すように、目を細めた。


「それに星を見てたら、自分がちっぽけだなぁって感じて……

私、無理に背伸びしようとか、誰かと比べたりしてた時もあったけど、星を見てたらそんなのどうでもいいくらい、スケールが大きな世界に一時ひとときいるような感じがして……


しばらく星を見た後に現実に戻ったら、妙にすっきりする。

うまく言えないんだけど、星を見てたら『見てる世界が広がった』っていうのかな? 自分の小ささを感じて、一時的かもしれないけど、悩んでいたことがすっきりするの。

……これって、現実逃避ですか?」


「いやいや、なかなか深い話だな」


勇一が、感じ入ったように頷いた。


「静那さんも、色々悩み事あったんだね」


仁科さんも、彼女の背負ってきた背景を想い、優しく微笑んだ。


「でも現実逃避じゃないよ。その考え方、立派だと思う」


椎原さんが、彼女を肯定するようにきっぱりと言った。


「り……立派? かなぁ」


照れながら、静那は少しだけ俯いて話し続けた。


「そうでもないですよォ。星を見ながら私が他に考えていた事としては……『小さい頃は、夜は皆寝てるもんだ』と思ってて……夜中に目が覚めた時なんか『今、世界中で起きているのは私だけなんだ』なんて想像して、ドキドキしたりしてました」


静那は、当時の子どもらしい純粋な気持ちを、慈しむように語る。


「夜は暗いから、皆寝てる……そういう根拠もない確信があったよ。

でも日本に来てから、すっかり考え方が変わったかも。

だって高知県にはまだ無いけど、24時間ずっと営業しているお店があります」


「コンビニエンスストアのことね」


仁科さんが補足する。一九九五年の今、それは需要とともに急速に広がっていた。


「高知県に行く前に、一度、福岡県の博多っていう街に行ったことがあるんですけど。

夜の12時過ぎても街が明かりで煌々(こうこう)としてた。

これ、絶対誰かは起きてるよね……いつ寝てるんだろうって」


静那は、苦笑いしながら肩をすくめた。


「私も、すっごい子どもの時は、夜は眠くなるんだから皆寝てるって思ってたよ。

でも、都会ってほんっと眠らないんだよね~」


仁科さんが、都会の記憶を呼び戻すように、しみじみと語る。


「テレビのCMコマーシャルでは『24時間戦えますか?』って何度も呼びかけてるし、もう、なんで大人たちって寝ないんだろうって、子どもながらに不思議に思ってたよ。夜は普通に生活してたら、眠くなって寝てしまうのが普通なのにね」


「私の地域は……そうね。都会もあったけど、自然も広大だった。町がコンパクトっていうのかな。これ、アメリカじゃなくてカナダの方ね。

夜に入ったら、町はすぐに暗くなったかな」


椎原さんが、トロントでの生活を思い出しながら、穏やかに続けた。


「夜、あまり明るいと治安が悪くなるって言ってたけど、今なら分かる。

確かに、暗いほうが良かったと思う。カナダの中じゃ治安良い方だったから。まだ10歳くらいだったから、夜は起きてた記憶ないなあ。でも、起きてたらそんな風に感じてたかもしれない」


「夜か……暗くなったら、まぁ人はろくなことせんからな。

早う寝たほうがいい。見たい番組見終わったら、俺も寝てたな」


生一は、夜にあんまり良い思い出が無いのか、少しだけ沈んだ顔で、けれど諭すように言った。


「俺も、あんまり夜は起きてた事……ある……あるな」


勇一が、何かに気づいたように言葉を濁した。


「え? 夜中何してたのよ」


仁科さんが問いかける。


「お前、どうせ夜頑張って起きて、いかがわしい番組とか見よったん違うんか? 『トゥナイト2』とか!」


途端に勇一の顔が真っ赤になり、狼狽えた様子で手をバタバタと振った。


「生一! 何訳の分かんない事言ってんだよ。あれだよ、あれ!」


「あれじゃ分からん。やっぱり、深夜放送か?」


「何言ってんだ!そっ、そんなの知らないし!」


勇一は必死に言い返すが、その挙動不審な様子は図星であることを雄弁に物語っていた。


静那たちの手前、勇一は必死に抵抗を続ける。


「そういうお前はどうなんだよ。夜更かししてないって言うのかよ」


「俺はアレよ。プロレス中継が深夜放送やったから、頑張って起きとかんといかんかったし!

でも、プロ野球中継の延長とかで、しょっちゅう時間がずれ込むんよなぁ、あれ。勘弁してほしいわ。延長の可能性考えたら、予約録画もできんやろ」


ちょっとマニアックな話になってきたので話題を変えようとする勇一。


「まぁ、起きててもろくな事ない!

次の日に備えるっていう意味でも、夜は寝るのが一番良いってコトだな。うん」


勇一は、強引に話を締めようとした。


「……あの」


しかし静那が、控えめに挙手をした。何か質問したそうだ。


「さっきボスが言ってた『トゥナイト2』って何ですか?初めて聞く言葉だったんで」


「(なんでそこでソレ掘り返すんだよぉ!)」


勇一は心の中で絶叫しながら、懸命に、かつ無難な返答を脳内で組み立てた。


「まぁその、なんだ……ワイドショーだよ。

色んな世情のさ。色んなニュース! 夜中の報道番組……みたいなものかな」


静那は、キョトンとした表情で勇一を見つめた。


「え……あの……これ、ボスに聞いたつもりだったんだけど……勇一も知ってたの?」


勇一は生一の隣に座っている。てっきり自分に向けられた問いだと思い、焦って答えてしまったのだ。


ニヤニヤする生一。


「なんか白都君……やたらと詳しいんだね。『訳の分からない事』って言ってたのにね~」


仁科さんが、いたずらっぽい声で追い打ちをかけた。


「あのさ、静那さ。報道番組みたいなもんなんだよ。深夜放送の番組だし、知らなくても良いんだ」


「でも番組に対して苦情が出たんだよね。ただの報道番組なのにさ~」


「いやいや、仁科さんこそ何で知ってんだよ。その……その辺りにして下さい。すいません。あまり、よろしくない番組でしたので」


勇一は、半ば降参するように頭を下げた。


「まぁ静那さん、そうらしいよ。それでも興味があれば見てみたら良いんじゃないかな? なにせ勇一部長サマも見てるんだし」


「仁科さん! ちょっとそれは……お勧めするのは!」


「はい……そうしたいんですけど、私の家……その、テレビが無くて」


この返答に何故か安堵する勇一。


「とにかく、夜は大人しく寝るのが一番!」という結論で、無理やり話をお開きにしたのである。


「ま、寝ないとお肌に悪いしね。特に女子達は」


仁科さんが、見事に話をまとめてくれた。


「そ……そうだよな。

お肌に悪いから、女性は特に11時くらいまでには……ね。

免疫力……の……低下だったり。

日中の脳の働きが低下したり……」


「白都君! これ以上色々喋ると蛇足になるかもしれないから、こういう時はあんまり話さない方がいいよ。分かる? 部長さん?」


「はい……すいません」


立場としては部長だが、仁科さん……いや、口の達者な女性陣には到底敵わない。


勇一は、雨の日の放課後のパワーバランスを、ひしひしと噛み締めていた。

『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。

尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。


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