2-2 夜空
【2話/B面】Bパート
部活2日目…今日はどうも1日中雨だ。
今朝から結構降り続けている。
部室に集まっている5人も、雨の為暗くなってきた空模様を見て、早めの帰宅を考える。
アメリカ、カナダと日本での暮らしの違いなどを女子3人で固まって話をしている中、部長の勇一が提案する。
「静那、今日は雨で早く暗くなりそうだし早めに切り上げよう。夜になったら道も悪いし危ないからな。」
静那に提案する。
帰り道、静那の帰路と同じ方角の仲間は…途中までは椎原さんと一緒だが、あとは一人だ。
静那は以前この高校に入学する前に長身の男性に絡まれたことがある。その現場を目撃している勇一だからこその提案だ。
「そういえば静那さんは夜はどうしてるの?」
椎原さんが聞いてくる。
「私は…寝る前に星を見てるかな…」
「ええーなんだか素敵。」
「なかなかロマンチックだな。」
「ええ?そうですか。昔小さいころはよく星を見てましたよ。
私の国では…今思えば寒かったからっていうのもあるけど、星がよく見えて奇麗だった。
それに星を見てたら、自分がちっぽけだなぁって感じて…
私、無理に背伸びしようとか誰かと比べたりしてた時もあったけど、星を見てたらそんなのどうでもいいくらいスケールが大きな世界に一時いるような感じがして……しばらく星を見た後に現実に戻ったら妙にすっきりする。
うまく言えないんだけど、星を見てたら“見てる世界が広がった”ってのかな?
自分の小ささを感じて、一時的かもしれないけど悩んでいたことがすっきりするの…現実逃避なのかな…コレ。」
「いやいや、なかなか深い話だな。」
「静那さんも色々悩み事あるんだね。」
「でも現実逃避じゃないよ。その考え方立派だと思う。」
照れながら静那は話し続ける。
「そうでもないよォ。星見ながら私が他に考えていた事としては…“小さい頃は夜は皆寝てるもんだ”と思ってて…
夜中に目が覚めた時なんか、“今世界中で起きているのは私だけなんだ”なんて想像してドキドキしたりしてた。
夜は暗いから皆寝てる…そういう根拠もない確信があったよ。
でも日本に来てからすっかり考え方が変わったかも。
だって高知県にはまだ無いけど、24時間ずっと営業しているお店があるんだもん。
“コンビニエンスストア”って言うんでしょ。高知県に行く前に、一度福岡県の博多って町に行ったことがあるんだけどね。12時過ぎても街が明かりで煌煌としてた…“これ誰か絶対起きてるよね…いつ寝てるんだろう”って。」
苦笑いしながら話す静那。
「私もすっごい子どもの時は夜は眠くなるんだから皆寝てるって思ってたよ。
でも都会ってほんっと眠らないんだよね~。
テレビのCMでは“24時間戦えますか?”って何度も呼びかけてるし、もうなんで大人たちは寝ないんだろうって子どもながらに不思議に思ってたよ。
夜は普通に生活してたら眠くなって寝てしまうのが普通なのにね。」
子どもの頃を思い出ししみじみ語る仁科さん。
「私の地域は…そうね。都会もあったけど自然も広大だった。町がコンパクトって言うのかな。コレ、アメリカじゃなくてカナダの方ね。
夜に入ったら町はすぐに暗くなったかな。
夜あまり明るいと治安が悪くなるって言ってたけど、確かに暗いほうが良かったと思う。
カナダの中じゃ治安良い方だったから。
まだ10代前後くらいだったから夜は起きてた記憶ないなあ。でも起きてたらそんな風に感じてたかもしれない。」
トロントでの生活を思い出しているのだろう。
「夜か…暗くなったらまぁ人はろくなことせんからな…早う寝たほうがいい。見たい番組見終わったら俺も寝てたな。」
生一はあんまり良い思い出が無いようだ。口数が少なかった。
「俺もあんまり夜は起きてた事…ある…あるな。」
「え?夜中何してたのよ。」と仁科さんが問う。
「お前どうせ夜頑張って起きていかがわしい番組とか“トゥナイト2”とか見よったん違うんか?」
とたんに焦り顔の勇一。
「生一!何訳の分かんない事言ってんだよ。あれだよあれ!」
「あれじゃ分らん。やっぱり深夜放送か?」
「何言ってんだ!そんなの知らないし。」
実はどうも図星らしい。
静那達女子の手前、勇一は必死に言い返す。
「そういうお前はどうなんだよ。夜更かししてないって言うのかよ。」
「俺はプロレス中継が深夜放送やったから頑張って起きとかんといかんかったし!
でもプロ野球中継の延長とかでしょっちゅうずれ込むんよなぁ、あれ勘弁してほしいわ。
延長の可能性考えたら予約録画もできんやろ。」
ちょっとマニアックな話になってきたので話題を変えようとする勇一。
「まぁ起きててもろくな事ない!次の日に備えるっていう意味でも夜は寝るのが一番良いってコトだな。うん。」
無理やり締めようとする。
「……あの。」
静那が質問したそうだ。
「さっきボスが言ってた“トゥナイト2”って何ですか?初めて聞く言葉だったんで。」
「(なんでそこでソレ掘り返すんだよぉ!)」と思いながらも懸命に無難な返答を考える勇一。
「まぁそのなんだ…ワイドショーだよ。色んな世情のさ。色んなニュース。夜中の報道番組…みたいなものかな。」
キョトンとした表情の静那。
「え…あの…これ、ボスに聞いたつもりだったんだけど…勇一も知ってたの?」
場所的に勇一のとなりに生一が座っている。
てっきり自分に聞かれたと思ってつい焦って答えてしまったのだ。
ニヤニヤする生一。
「なんか白都君…やたらと詳しいんだね。“訳の分からない事”って言ってたのにね~」
仁科さんがいたずらっぽい声で問いかける。
「あのさ、静那さ。報道番組みたいなもんなんだ。深夜だし知らなくても良いんだよ。」
「でも番組に対して苦情が出たんだよね。ただの報道番組なのにさ~」
「いやいや仁科さんこそ何で知ってんのよ。その…その辺りにして下さい。すいません。あまりよろしくない番組でしたので。」
「まぁ静那さん、そうらしいよ。それでも興味があれば見てみたら良いんじゃないかな?勇一部長も見てるんだし。」
「仁科さん!ちょっとそれは…お勧めするのは…!」
「はい…そうしたいんですけど、私の家…その…テレビ無いんですよ。」
この返答に何故か安堵する勇一。
“とにかく夜は大人しく寝るのが一番”という事で、無理やり話をお開きにしたのである。
「ま、寝ないとお肌に悪いしね。女子達は。」
仁科さんがうまくまとめてくれた。
「そ…そうだよな。お肌に悪いから女性は特に11時くらいまでには…ね。免疫力…の…低下だったり…日中の脳の働きが低下したり…」
「白都君、これ以上色々喋ると蛇足になるかもしれないから、こういう時はあんまり話さない方がいいよ。分かる?部長さん?」
「はい…すいません。」
立場としては部長であるが、仁科さん…口では女性陣の方がずっと上手だと感じた勇一部長であった。
『B面』では、勇一達が立ち上げた部活「日本文化交流研究部」での日常トークを描いています。時々課外活動で外出もします。
各話完結型ですので、お気軽にお楽しみください。
尚、本編のストーリーとB面の話数は所々リンクしています。こちらを読んでから本編を読み進めていくとより楽しめます。
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