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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
MOVIEⅠ【A面】
63/228

弾圧からの解放 ~とある東洋人の軌跡⑪

Chapter11

城門前の広場ーーー



真也はついに取り囲まれた!


『さんざん逃げ回りやがって…コイツ。』


大人たちがハアハア言いながら真也を取り囲む。


バテて数が半分以下くらいになったからそろそろ強硬突破しようか。


真也の目つきが変わる。



それでもまだ相手は100人近くいる。


でもそんなのは関係ない。


さっきアジトの外周を走っていたら、遠目からではあるが城の上の高台に“言っていた処刑の広場”が見えたのだ。



「アジトについての情報が殆どなかったけど、門を潜ってまずあそこの高台まで行かないといけないってことね…なら急ごう。」



目指す場所が分かった。


悪いがここは突っ切らせてもらおう。


…衛兵が肩で息をしつつも刀剣を構えてじりじり近づいてきた。




* * * * *




その高台。


集った皆が視線をやるのは、生一…そして、血走った目つきをしたファサルというプロ格闘家…


生一命名“ハイキック野郎”である。


そんな彼も追い込まれ、目が本気になった。


ここからは全力をもって叩くつもりだ。



生一は近づいてくるファサルの足元を見た。


……少しびっこを引いている。


軸足…確かにダメージを受けている。


でもここからどうすればいい…やっぱり……


生一は腹がズキズキと強烈に痛む為、あまり考えを巡らせることが出来なかった。


もう痛みで立ってるのがやっとという感じだ。



生一の傍へかけよる八薙。


「おまえ…」


「一緒に戦いましょう。」


八薙が前に立つ。


「俺もいるで…立ってるだけやけど。」


小谷野も腹部をプルプル震わせながら駆け寄る。


「壁くらいにはなるで…」


兼元も腕をダラーンとさせながら寄ってきた。じん帯が切れているのか?




ゆっくり近づいてくるファサル…


それを瀕死の4人で迎え撃つ形だ。



仁科さんや葉月、ネイシャさんは祈るような表情だ。


でもやっぱり逃げてほしかった。


もはやギリギリ立っているような瀕死の4人では敵わない相手だと感じていた。


皆の状態は生一もよく把握している。


だからまずは…と、生一が前に出る。




その勇気ある一歩を見て、何やらファサルは話始めた。


だが生一は勿論意味がわからないまま返答する。




『久しぶりに愉しい闘いだったぜ。でももう遊んでやる暇がねえ。城門の残りモンにもしつけをしねえといけないからな…そろそろ終わりの時間だ。』



「何言ってるのかよく分らんが、おまえの強さには正直感服した。ただ、もう止められないんだよ。俺ら…日本人に……しかもプロレスラーに喧嘩を売った時点でな…」



『終わりなんだよ。俺らにたてついた段階でなぁ』



「止めてやるぜ。日本のプロレスから学んだきたこの精神ソウルで。」



『終わらせてやる…』



「ここで止める…」





仁科さん、葉月、そして八薙が同時に感じる。


「お互い言葉が理解できてないのに、なんか微妙に会話がかみあってるんだが…」



アジャパが拳を震わせながらつぶやく


『信じとるぞ。ワシはお前が敗れる事は無いと思っとる。相手が日本人だろうが誰だろうが奴が負ける事は無い!』




3人を置いて、生一が前に出た!


あいつの狙いは自分だという事を自覚している。




同時にファサルも前に出て…間合いを詰める。



そして、間合いに入った瞬間……



やはり蹴りを繰り出した!


“左”だ!


一発で終わらせようとしたのだろう。




しかし思った通りだ。


蹴りの“キレ”はさっきよりも鈍っている。



なんと前に出て、それを“受け止めよう”とする生一。


それはよく考えれば当然の決断だった。


もう一つの足…左足のじん帯も痛めたら…さすがにもう彼はまともに立てないだろう。


彼の機動力を完全に断つ!


それしか大逆転のチャンスがなかったのだ。




蹴りの軸足を痛めている分、いかに“魔の左ハイキック”とはいえ、生一がなんとか目で追える速さだった。


ガードしてから足を掴もうと考えていた。





…しかし




現実は無常なものである……




生一のガードを突き破り、そのまま後頭部にヒットした。


そして生一は再度吹っ飛ばされたのだ。





吹っ飛ばされ……動かなくなった。


「生一!」


小谷野が叫ぶがピクリとも動かない。


ファサルは生一しか見ていないのか…完全に息の根を止めようと、吹っ飛ばされ動かない彼に向かって歩いていく。


「いやぁあああ!」


ネイシャさんが叫ぶ。


小谷野、そして兼元が行かせまいと割って入る。


小谷野が手を広げ行かせないというポーズを取った瞬間。


腹部に強烈なファサルの蹴りがめり込む。


また“腹部”だ…


その後の右フックも奇麗にヒットし、小谷野は吹っ飛ばされた。



…そのまま動けなくなった。




しかし尚も兼元が立ちはだかる。


腕が上がらなくなっているが、生一の前で仁王立ちしている。


ただ、攻撃を繰り出す力は残っていない。


棒立ちだ。




即蹴り倒そうと、ファサルは蹴りのモーションに入る。


その瞬間!


隙だらけだとばかりに、背中へ思いっきり蹴りを叩き込んだ八薙。




『ぐわぁっ!』


不意に背中を急襲され、激痛で振り向くファサル。


八薙に向かって振り向き睨みつける。


腕に力が入らないなりに懸命の抵抗を見せる八薙。


『日本を……舐めるなよ。』


闘志はまだ消えていない。



いよいよという感じで怒り心頭のファサル。


『クソガキ共め…コイツもまた起き上がりやがって…もういい加減片付けたくなってきたぜ。』



八薙と一気に間合いを詰め、蹴りを繰り出す。


八薙は必死にガード体制を取る。


蹴りの速さはやや鈍っている。


しかし、ここでも八薙のガードを突き破り、蹴りがヒットした。


スピードは落ちても“重さ”が違う。


ガードが突き破られたとき、とっさに頭を屈めたため、クリーンヒットは免れたが大きく吹っ飛ばされる八薙。



『クソ野郎が!コイツ、また直撃を避けやがったか。』


寸での所でクリティカルヒットだけはかろうじて避け続ける八薙にも、相当イライラしているようだ。




そんな様子を倒れたまま“目”だけが追っている人間。…生一だ。


もう体が動かない。


でも目は動く。


生一は何度も体に心の中で怒鳴りつける


「動けよ!俺の体!」


しかし体はびくともしない。力が入らない。


もう目…視線しか動かせない。




そんな生一の見ている目の前で、八薙が一方的にやられている。


八薙はそれでもまだ立ち上がる。急所への直撃をかろうじて避けているようだが、もう長くはもたない。


「クソォ…ここまで来たのによォ…」


悔しさでついに涙が出てくる。


…体が動かない…


小谷野は気絶…


そう感じたが、無理やり立ち上がってみせる。しかしすぐにぶっ倒れた。



兼元も腕が上がらない…腕をダランとさせて生一の前に立っているだけの状態…。


もう動ける人間は…いないのか…


仁科さんも葉月も「もう十分頑張った!」という表情をしている。


悔しいけど…最後に少しだけ光が見えたけど…やっぱり自分達の敵う相手ではなかった…


それを受け入れるしかない。


もう…これ以上抗えない……





思いっきり八薙の腹部にファサルのソバットが入る。


めり込むように足刀を受けた八薙は咳込みながら倒れ込んだ。


ついに八薙も動けなくなった。



それを確認した後、倒れている生一に視線を向ける。


そして生一目掛けてズンズン歩いてきた。


一番自分にダメージを負わせた人間から順にトドメを刺していくつもりだろう。


まず靭帯を損傷までさせてくれた生一から…




周りの女性陣が騒然となる中、倒れたままの生一に向けて歩を進める“ハイキック野郎”


生一は目は動くが…体が動かない。




ふと倒れている生一の目の前に誰かの足が見えた。




…これは兼元ではない……




誰かの足だ。


目線を上にあげる。


そして生一はか細い声だがその主に声をかけた。


「遅えよ…この練習生。」





トドメをさそうと生一に近づいたところに立ちはだかった人間がいる。


真也である。


真也はあくまで相手の方を向きながら生一に話しかける。


「遅くなってすいません。これからは選手交代ということで、後は安心して寝っ転がっててください。」


「……任す。」


「どうも。」



トドメを刺したければ自分を倒してからにしてくれと言わんばかりに生一の目の前に立った真也。


「真也…」


立ったままの兼元だが、彼の登場に驚く。



「真也君…あなたまで来たら…」


涙を流しながらつぶやく仁科さん。


しかし周りの衛兵や村人は不思議がる。


「あそこに現れるまで、まったく気配を感じなかったぞ…誰だ?あれも“日本人”…か?」


『誰だ!』


そう言ったのはアジャパ。


「こんにちは。」


日本語で言って…しまった。当然通じない。


しまったという顔で真也は言い直した。


『ナマステ(こんにちは)』


『ふざけんな!』


怒鳴りつけたのは真也の目の前の男・ファサルだ。


既に彼の間合いにあった為、問答無用でいきなり蹴りかかってきた。


真也の後頭部へ!



「危ない!」


葉月が叫ぶ。


しかし真也は急襲の蹴りを片手で受け止めた。



…片手である。



唖然とする衛兵…そしてアジャパ。



そしてそのままキャッチした手を離さない。


蹴り足を持ったまま、左側を見渡す。



壁際で倒れている村人、小谷野、そしてネイシャさん。他にも手錠で括られている村の女性達まで。


サーッと素早く見渡し状況を確認する。


そして踏み込んで片足だけの体制になっていたファサルの腹部にボディブローを叩き込んだ。



「グウッ!」



この打撃が効いたのか、急に距離を取るファサル。



組織のボス、アジャパにはただのボディブローにしか見えなかった。


しかしファサルにはかなり効いているように見える。


急に体全体を震わせはじめ、彼の体から脂汗がにじみ出て来た。



『なんだコイツは…!』



目の前にいるのは、10代ほどの青年だ。


しかしその青年が放ったみぞおちへのパンチの衝撃が、遅れて体全体…痛みが隅々にいきわたったような感覚がした。


腹部にまるで力が入らなくなったが、それでも必死の形相で立ち上がるファサル。


しかし尚も感じる腹部の痛みに背中が震えている。



周りからはさっきのやりとりで一体何が起こっているのか全く分からない。



衛兵達も極端に猫背になったファサルを見て、何が起きたのか全く分からない。



ファサルの様子がおかしい事に気づくアジャパだが、意味が分からなかった。



真也は右後ろ側に立っている兼元に質問する。


「こいつがここのボス…ですか?」


「ああ。そうやで。もう疲れたし遠慮なく倒してもええんやで。」


「分かりました。色々けが人も多いみたいだし、終わらせます。」



体を震わせながら立ち上がったばかりのファサルに近づく。


『このクソガキ!』


真也が近づき、自分の間合いに入った瞬間、再び左の蹴りを放った。



それを屈んで避ける真也。


その流れで下から突き上げるような掌底をサファルの顔面目掛けて叩き込んだ。



まともにそのアッパー掌底を受けたファサルは3m程舞い上がった後、壁際に頭から落ちて行った。



そしてピクリとも動かなくなったのだ。



『ウ…ウソだろ!』



たった2発で動かなくなったファサルを見て驚くアジャパ。


しかしすぐに状況を見て、残った衛兵に告げた。


『繋がれている村の女どもを殺せェ!』


ロープで縛られていて自由の利かない女性に向かって一斉に斬りかかろうとする衛兵。


その数、牢番も加わって40名程だ。


女性達は手首を縛られた上に連結されていて動くことが出来ない…と思っていたのだが…



『こっちへ!』



仁科さんと葉月が、村の女性達全員を真也の後ろ側に誘導していた。


2人の手首のロープは既に解かれており、女性達の手首の縄こそまだ繋がっていたもの、連結していたロープは切り落とされていた。


これで構図的に衛兵達が彼女達を摑まえる為には、目の前の男・真也を倒さないといけなくなった。


まだあどけない顔の少年だが、たった2発であの最高幹部を圧倒したのである。


足を止め恐れる衛兵達。



『観念しろ、アジャパ!』


なんとか起き上がった八薙が告げる。



しかしアジャパは隣のネイシャさんを自分の懐に引き寄せる。


ネイシャさん自身は縄で乱暴に括られていて、身動きが取れない。


『この女の命が惜しくないのか!分をわきまえよ!下がれ!愚民ども。』


刃物を抜き出しネイシャさんの喉元に突きつける。


追い詰められたとはいえ、とんでもない暴挙に出た。


近づいたら本当に首を掻っ切る勢いだ。



『まずその男だ!そこから一歩も動くな!』



抜いたナイフで真也を指す。


「え…僕?」


そんな表情を見せる真也。



そして続けて衛兵に指示を出す。


『おまえたちは、この男をまず捕まえろ。捕まえてすぐにきつく縛り上げろ!』


まぁ妥当な判断だ。


真也を縛り付けてしまえばこっちで戦えるメンバーはとたんに居なくなる。


しかし…背に腹変えられない。


「真也…悪いけどあの女の人、俺たちの命の恩人やねん。悪いけど動かんでくれ。」


兼元が苦しそうに真也に言う。


「そうですか…分かりました。」


真也は腕を降ろし、無抵抗の意思を示す。


とたんに動けない真也に対し、衛兵が飛び掛かった。


アジャパが支持を出す。


『良し!まず吊るしあげて身動きが出来んようにしろ。きつく縛りつけてこっちに…うッッ』



ナイフを指示棒のようにして“こっち”と死刑台の方に手を向けたその時だった。


後ろからだ!


何者かが思いっきりアジャパの手首を木刀で叩いた。


痛む拍子にアジャパはナイフを床に落とす。


そして落としたナイフを“何者か”は素早く遠くへ蹴り上げた。


蹴り上げたナイフは外壁庭の方へ落ちて行った。


その“何者か”はネイシャさんを強奪、抱きかかえてアジャパと距離を取る。


そして真也や兼元に向かって叫ぶ。


「ネイシャさん無事確保したぞ。動けるか真也!」



真也はまだロープで完全に縛りつけられる前だったので、力づくで一部を振りほどいた。


慌てて剣を抜き、切りつけて来た衛兵がいたが、サッと内に入り、その刀剣を奪い取った。


剣を奪われ、慌てて逃げ出す衛兵。


その奪った剣で巻かれていた残りのロープを切り落とす。


「(この剣〔シャムシール〕って切れ味は良いんだな…)」と感じつつ真也は対処する。



八薙は孤立したアジャパの元に歩み寄る。


そしてもう一度問いかける。


『まだ観念しないのか?』




アジャパは応じず、背を向けて走り出した。


城門に向かって坂を降り、そのまま一人ででも逃走するつもりだ。


「あっ待て!」


兼元は叫んだが、真也以外動けるものがいない。


真也はまだ足の絡まれた部分のロープを切っていたため追えなかった。


ここは逃げられたか…



そう思っていたが下からアジャパの悲鳴が聞こえてきた。



宮殿内に隠れて潜伏していた脱走した村人達が、城から逃げんとするボスを待ち構えていたのだ。


村の若者達に囲まれ、アジャパはようやく御用となったのだ。

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