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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
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3-1 傷痕

【3話】Aパート

新しい学校生活にシーナは少し緊張気味だった。



今日から異国である日本の、熊本市内の小学校に通うことになるわけで無理もない。



ただ一緒に学校に通うはずの真也は…居なかった。



彼は昨年ごろから不登校気味になっていたのだ。いじめを受けていたらしいが詳しい話は聞かされていない。


そして、今も不登校継続中だということ。


真也が学校に一緒に来てくれない不安もあったが、まずは自分が学校に一日でも早くなじむことが先決。


そうすれば学校の楽しさを真也にも話せるし、楽しそうに感じてもらえれば彼もまた学校に通いたいと感じてもらえるかもしれない。


諭士からのうけうりだが。


だからまずは自分で頑張って溶け込んでみよう。


日本人のみんなと…




そんな少し気負い気味の様子を見ながら諭士は優しく話しかける。


「大丈夫だよ、静那しずな。学校のみんなはきっと優しいよ。

静那は日本人にはない可愛いさがあるから男子生徒から注目の的になるかもしれないよ。

そうなったらその事を真也君に話してあげよう。真也君慌てて学校に行くようになったりして。」



諭士の言葉を聞きながらやや表情が緩むシーナ。


やっぱり一人で登校するより、2人の方が心強い。そんな2人で登校するイメージを頭で思い描き、少しはにかんだ表情を見せた。



静那しずな』という名前は、日本で暮らしていくために“日本版の名前”として真也が考案した名前である。


その名前をシーナはすぐに気に入り、孤児院の中でも自然と名前が浸透していった。



武藤 諭士さんの養子という形になった為、今の名前は『武藤 静那』である。




「シーナと言います。日本の名前は『むとう しずな』です。私はソビエト連邦 ベラルーシというところから来ました。皆さんよろしくお願いします。」



40名近くいる静那のクラスで自己紹介を終えた瞬間、彼女はクラスメイトからの拍手に包まれた。


席が決まり、2学期からではあるが静那の小学4年生としての学校生活が始まったのである。


男子からは既にチラチラ視線を感じる。


ブロンドの髪が明らかにほかの生徒と違うので当然珍しいのだろう。


日本人は当たり前だがみんな黒髪だ。



昼休みになると静那は男子生徒中心に机を囲まれ、注目の的になった。


静那の通う小学校は1学年に4クラスあり、それぞれ40名前後の生徒がいる。


他のクラスからも噂をききつけ窓からギャラリーがやってきた。


高学年の子も混じっているようだ。


異国の地からやってきたお人形のような女の子…大人気だ。




静那は沢山の質問責めに会い少し疲れた様子だったが、これからの学校生活に手ごたえを感じていた。


「なんとかうまくやっていけそうかも…でも真也も一緒に登校できたらいいな…」


頭の片隅には、時折ふと怖い表情を見せるあの真也の姿が思い浮かぶ。


静那自身も父親の事など、自分自身折り合いをつけられていない部分はあった。


けれどそれ以上に真也の時折見せるあの表情が病室で過ごしていた頃から気になっていた。



「真也…今、どうしているんだろう…」



お昼休みになっても沢山の生徒が静那の机に集まってきた。


男子生徒中心に机を囲まれた静那。でも真也の事が頭から消えず、どこか浮かない表情を見せる。


ただ、ふいに見せた“その表情”が周りの女子生徒から反感を買う導火線となっていたのはまだ知る由もない。



静那はつたない日本語ではあるものの一生懸命返答をするので、周りから非常に好感があった。


「がんばって相手の話を聞きとり、しっかり返答をする!」


コレを心掛けた。


ただ、その一生懸命な答え方をあざといと思う生徒も少なからずいたようだ。


1日目、2日目と問題なく学校生活を送っていたが一週間くらいしてある異変が起こる。




* * * * *




朝の登校時、靴箱の前で男子と女子との口論が起こっていた。



とある女子生徒が男子に対してちょっかいをかけているようだ。


初めは声のトーンも小さかったが次第にエキサイトしていく。


静那が靴箱の方、彼らの口論の現場に近づくと、言い合っていた2人は静那の存在に気づき、どこか別の方向を見ながらそれぞれ去っていった。


何だったんだろう…という思い。



少し気になったものの時間内に教室に入り、ホームルームに入る。


なんだか男子と女子の間で気まずい空気が立っていた。


“なんだか”という理由はすぐに判明した。


静那の元へ男子が声をかけてこなくなったのだ。


お昼休みに入るとすぐに自分の机が男子生徒に囲まれる昨日までとは違い、急に景色が変わっていた。



初めは気になっていたが、自分の本業は勉強・日本語を学ぶことだと気持ちを切り替えて授業に入る静那。


でも明らかに男子生徒と女子生徒の間で何かがあったかのように感じる。


…自分が原因で。


その違和感だけは拭えなかった。



女子生徒とも何人かとは仲良くしていたが、向こう側で固まって何やらこちらの方を見ながら話をしている女子グループがいる。



何を話しているのか気になったが、話しかけてきたクラスメイトに「気にしなくてもいいよ」と言われたので、そのままにしていた。



気にしていない態度をとったのが癪に障ったのか、余計に女子グループ内だけでヒソヒソ話をしているのが増えてきた。



「(なんだか嫌だな…向こうを見たら目を逸らされるし…こういうの…誰に相談したらいいんだろう。

グループの女の子には話しかけてもきちんと返事を返してくれないし…)」


真也は相変わらず学校には来ていない。朝早くに居なくなり、真夜中に家に戻ってきているようだが、その時刻の静那は就寝中だ。




やがて学校生活は進み、1カ月が経つ頃に事件が起こった。


体育の授業の時である。


4年生となると女子は別の教室で着替えをするのだが、その時静那を疎ましく思っていた女子生徒が静那に近づき、後ろから大きな声を挙げた。


「え?この子、お化けみたいな傷がある!うわぁ気持ち悪ーい!」


叫びに似たような声だったので、着替え中のクラスの女子たちが一斉に静那に注目する。


小学生女子の上着は基本、白のタンクトップのようなシャツだが、肩口の所から明らかにハリウッドのメイクでもしたようなえぐられたような切り傷が見えていた。


女子たちが怖がって口々に叫びだす。


騒ぎを聞きつけた先生がクラス内にやってきた。


「どうしたのよみんな。もうすぐ体育の授業が始まるのに何をしているの!」


間髪をいれず女子生徒が返す。


「先生。静那さんの背中のところに大きな傷があるー。怖いー!」


「そうです。怖いー!」


「おばけみたい~」


周りの女子も同調する。



先生は皆を落ち着かせ、やや怒り気味の口調で強制的に皆を着替えさせて体育館に誘導させた。



授業を受けた後、先生に保健室に連れていかれた静那。


「この傷はどうしたの?静那さん。」


「自分の国で戦争があって…その時に受けました。」


力なく言葉を発する静那。


「傷の事はね、まだ皆知らなかったからびっくりしたのよ。大丈夫だから気にしなくてもいいよ。でも明日からは肩口まで覆うような下着を着てきなさい。黒…がいいわね。親御さんに頼める?」



「はい…

その傷があるのは良くないのでしょうか…。私、怖いですか?」



「そうね。初めて見たら怖いと思う人もいるかも。…初めは仕方ないよ。でもこれからが大事。心配することなんかないから。まぁどこかケガしたんじゃないかって…先生だって初めはびっくりしたけど。」



少し気分が落ち着いた静那を先生は教室に戻した。


しかし、教室に静那が入ってくるなり、賑やかだった教室は静まり返った。


そして誰も静那に視線を合わせようとはしない。


男子も…。


時々話しかけてくれていた女子すらまともに静那と視線を合わせようとしてくれなかった。

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