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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
MOVIEⅠ【A面】
54/228

弾圧からの解放 ~とある東洋人の軌跡②

Chapter2

ここがどれくらい地下なのかは分からない。


そんな地下深い場所で、3人が寝っ転がり仰向けになって話をしている。


体中に痛みが走り、全然動けそうにもない。




とりあえず反省会だ。


「あのデブとのラウンド2…どやった…?」


やっと意識が戻った生一。


体はまだいう事をきいてくれないので、寝たまんましゃべっている。



「まぁ…1分も持たんかったわ…まるでダメージ通ってなかったし…」


「そやな…恐竜相手にしてるような気分やったわ…」


「なぁ生一…この言い方パクリいうワケやないけどさ…3匹のアリが恐竜に勝てると思うか?…」


「どうやろな…そういえばお前、タテの動き…やってみたん?」


「あぁやった…そうやな…」




谷底に突き落とされる前、あのデカブツに2人がかりで立ち向かった。


その時の事を振り返りながら話始める。



「まずキャプテンこと小谷野が勇敢にも前に出て、“手四つ”相手と力比べをしようとした。あのデカブツ、笑いながら応じてくれたわ。

手と手を合わせて組み合った瞬間、ソッコー手を極められ押されて伏せられた。


でもな…そこまでは想定通りやった。

この瞬間を狙って俺は小谷野の背中を思いっきり踏み台にしてカチ上げるような膝蹴りをあいつに叩き込んだんよ。

多分今の俺があいつに食らわせられる最高の打撃やと思う。

体重も勢いも全部膝に集中させた…それがアイツの顔面に当たった…


でもあいつはびくともしてなかった…。

キャプテンの最高のアシストを受けて出来た一撃がまるで歯が立たんのやで…

先制攻撃が大成功やのに、戦意喪失してもうたわ…。あのネイシャさんを目前にしてやで……あまりにも力の差を感じてさ…何したら“通る(ダメージが)”んやろ思って頭が真っ白になってん。


そこからは頭掴まれて頭突きやら横殴りが来たりで、もうガードするんに精いっぱいやった。痛さでたまらずガード下げてからあとは覚えてへん…」



「キャプテンはなんか手ごたえあったか?」



「いや、酷かったな…リーダーが捕まえられて頭突きとかされてるんを必死に引っぺがそうとするんやけど、びくともせんかった。“コイツ殺ったら今度はお前と遊んでやるからちょっと暴れんな!”くらいの感覚やったと思う…」



「そうか…歯がたたんか…」


「お前もひどかったな…鼻が変形してるで…」



そうである。顔面に思いっきり膝を受けて完全に失神していたのだ。


もし落下中に小谷野と兼元が生一の手を捕まえていなければ…今頃はもっと下まで落ちていき…間違いなく死んでいただろう。


生一は状態を少し起こして崖の下を見た。


「(俺一人で落ちていってたら死んどった…)くそォ…あのハイキック野郎ォ…」


無事助かった事よりも悔しさ、怒りの方が強い。


本当に何もさせてもらえらなかった…



「あいつは……アイツのトドメは俺が刺してやるよ!絶対にぶったおす。」



思い出したように怒りがこみあげてくる生一。あくまで目はまだ死んでいない。


しかし2人は冷静だった。


潔く負けを受け入れたという所だろうか。



「じゃあどやって勝つねん、生一。」


「多分お前が想像してたんよりもずっと上やったやろ、相手。」


「こっちのダメージが入らんかった…それが全てやねん。」


「もうやり方変えないかんのとちゃうか?」



「じゃあどういうやり方がええ言うんよ!あのデブとハイキック野郎はエンカウント不可避やぞ!

避けて通れんのやで。」



「落ち着けよ。お前が周り見えんくなってどうするよ。

時間もだいぶ経った…夜明け前は手薄やった兵隊らかてもう持ち場に戻ってきてるやろ。

だから一旦まずここ出て政府機関まで掛け合うとかした方がええんと違うか?」



「それは考えた!でもネイシャさんどうするんよ!見殺しにする気か!処刑されるかもしれんのやで。」


「ネイシャさんは…さすがに無理やろ…」


「お前っ!」



体はボロボロだったが、寝っ転がっている小谷野の上に馬乗りになる生一。その表情は明らかに怒っていた。



「お前あんなに“ネイシャさん命”とか言うてたやろ!あれ嘘か!

お前は怖いんや!恐怖感を自覚したくないから彼女に逃げてんねん!

ネイシャさんを現実逃避のネタにするな!」



「うっさいわ!ネタとか何言うてんの?訳分らんわ!ええやろもう!

ああそうや!怖いよ!怖いに決まってるやろ!2回も死ぬ思いして…怖ないほうがおかしいわ」



「こいつ…開き直りやがった。エンディングまでのルートは見えてんのに…」



寝っ転がったままではあるが兼元が問う。



「そもそもきい…ボスはなんで勝てる可能性があるみたいに言うねん。あいつらのヤバさ、さすがに分かったやろ。

体で分かったやろ!

次関わったらさすがに絶対死ぬで!

それでもまだ立ち向かおうとするその根拠は何やねん。

もう俺はお前が意地だけで立ち向かってるようにしか見えへんねん。」


「リーダーよ…」


「何やねんボス。…根性論は無しやで。」


「キューバを社会主義国にしたよ……おっさん知ってるか…」


「あぁ…知ってる。」


「内容はもうあんまり思い出せんねんけどな…反乱軍としてたった80人くらいで決起…革命スタートしてん…。


でも数と財力で簡単に潰されてしまうねん。

仲間が拷問されたり殺されたりして、ただでさえ少ない仲間がさらに減らされるんやけど、また体制立て直して20倍以上の軍に立ち向かっていくねん。

それでもまたフルボッコにされてまう。


アホや思うやろ…。20倍以上やで…。

それでもわずかながら残った同志達の諦めてない表情を見た時にな…“もう勝ったも同然や”言うてたらしい。

へへ…狂ってるやろ。

それで結局、革命成功させて市民権勝ち取ってんねんで。」



「あぁ…実話な……」


「お前はまだ怖いか…ネイシャさんにすべてを捧げる言うたお前の気持ちはもう消えたんか…。もう怖くて動けんか?」


「動…きたい。でも力の差がどうしようもないやん。どうやってあんなデカいん倒すんよ…正攻法で…」


「黙ってないで何とか言えよ生一!……ボス!」




生一は少し大人しくなったが、暫くして口を開く。



「お前らの命…もう一回俺に預けてくれんか…」


「でも次負けたら…死ぬで!間違いなく…」


「お前、革命家にでもなるつもりか…まったく…」


「そんな大層なもの違う!

でも…まぁそうでもせんと“ここ”は変わらんやろ…誰かバカな夢を描く奴が出て来ないかんねん。

それを我々日本人が代行したる…それだけや。」


「でもな…どうするねん…俺もお前も…」


「そう…やったよな…」



いくらか気力は持ち直したが瀕死であることには変わりない。


3人とも頭部を中心に受けたダメージが重く、まともに立ち上がって歩けないのだ。以前同じように投げ飛ばされ、たたきつけられた時と似ている。


動くたび背骨に電気が走ったような感覚がして体がまともに動かないのだ。


体を起き上がらせようとすると背中中心に電気が走ったような痛みがする。


立ち上がろうとしたが、力なくへたり込む小谷野。



「…どれくらいで立てそう…」


「まったく分らん。」



1分…



2分たっても動けないまま。



なんとかしようと生一が率先する。


「はってでもええ。まず登るぞ。」


うつ伏せになり、ほふく前進で進み始めた。


とにかく上層階に上がらないと話にならない。



そのはるか上空、神殿横の広場では死刑執行の準備が着々と進んでいた。




* * * * *




宮殿内部ではネイシャさんがうつむいて座っていた。


死を選ぶか…結婚か…


生一達だけでなく今まで罪のない村人を手にかけてきた彼らの基に下る事は考えていない。


そうなると、この後の処刑台に真っ先に張りつけにされる事になる。


これまで虐げられ…死んでいった村人の事を思い、彼女は目を覆い再び肩を震わせた。




* * * * *




ーーー場所は変わる。



この宮殿を要する要塞から北部に行ったところに位置する村。


ここへ真也と静那が無事到着したのだ。


しかし村は静まり返っていた。


日差しの強い中自転車でやってきたのだが、本当に人が居ない。



まさかこの村も山賊達に制圧されてしまったのか?


そう感じて真也に少し緊張が走る。



自転車の積み荷にサナギ状態で置かれていた静那が手をニョキッと出し、建物裏手の方向を示す。


「あそこ。」


見ると子ども達がいた。


よかった。


この村の子ども達は無事のようだ。


真也は笑顔で駆け寄っていき、話しかけようとする。


まずはお水をもらいたいと思っていた。


子ども達と目線を合わせてかるく微笑みながら挨拶をする。



応じてくれた。


この辺は言葉が通じなくとも万国共通なのだろう。


しかし残された子ども達は、笑顔に対してはどことなく不安そうな表情をしていた。


人。どこに行きましたか?』


真也は文脈としてはまだ会話がままならないので、単語をぶつ切りにして聞いていく。こうすれはなんとか意思疎通ができる。



会話が分からない時のために、紙とペンも用意していた。


少し時間を要したが、驚きの返答が来た。



『村人。城行った。門。死刑。助けて。』



子ども達を残して、村人たちは城…あの要塞へ向かったそうだ。



門…という事は恐らく城の入り口、城門に行ったという事だろう。



そして気になるワード…“死刑”という言葉。


だれか村人が死刑されるのだろうか。



最後の言葉は“助けて”だった。


これだけのワードが分かればもう迷う時間は無い。


「静那!行こう」


「うん!急ごう。」


その会話で十分だった。


出来れば静那を休ませたかったが、この村にはまた後でゆっくり寄らせてもらおう。


そう感じ、自転車に乗って村を後にする。


自転車の籠にサナギ状態の静那を改めてガッシリと固定し直して“さぁ行こう”という所で子どもたちが何か持ってきてくれた。


水だ!


ありがたく水をいただいた後、子ども達と再び目線を合わせてお礼を言う。


『皆さんありがとう。助けに行ってくる!』


そう伝えて自転車をこぎ始めた。


この村も老人と子どもたちばかりの村なのか…


そうだとしたら、老人達全員で誰かの処刑を止めるためアジトへ直接かけあいにいったのだろう…でも老人達ばかりだと相手が悪い。


ここに残された子ども達のためにも……何とか止めないと。


そう感じると漕ぐペダルが自然と早くなる。




異国の地で点在する森と岩山の間を走り抜ける2人。


風が気持ちよかった。

『MOVIEⅠ』は第25話から後のストーリーになります。

バーサビアのアジトでの激闘を描きます。Chapterに分けてお伝えしていきます。


【読者の皆様へお願いがあります】

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頑張って執筆致します。今後ともよろしくお願いします。

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