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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: SHUSAKU
season1【A面】
55/239

25-2 日本人

【25話】 Bパート

仲間がいるのなら、静那が生きているというこの希望の事実を伝えたかった!伝えたくてたまらなかった。


「ここを出よう。今、ここで手をこまねいていても、何も変わらない!」


重いセメントを運びながら、自分の中で一つの決意が、硬い岩のように固まっていった。


しかし、そう感じていたのは自分だけではなかったようだ。


故郷の女性たちが処刑されるという一報を聞いた東の村人たちも、もはや黙って従うつもりはないようだった。


さらに、今朝のアジト内の火事の影響で、大勢の牢番や山賊たちの姿がこのフロアから消えている。


要するに、監視が極めて手薄な状態なのだ。


もし、自分がこの兵士たちに逆らえば、ムチで打たれるどころか、槍で突き殺されるかもしれない。


でも、今は静那が生きていることが分かっている。


真也も共に戦っている。


不思議と、死への恐怖心は消えていた。


彼らが無事でいるという事実が、これほどまでに自分に力を与えてくれるものなのかと、震える拳を見つめて驚いた。


ムチを持っている男を含め、この広大なフロアを監視している男は…現在…………わずか十名。


たったの十名だ。


普段の五分の一程度しかいない、千載一遇のチャンス。


こちらは素手だが、各地から寄せ集められた労働者は百二十名近くもいる。


「まず、自分が活路を開くんだ。一人ずつ確実に仕留めていけば、決して無理な相手じゃない。今こそ、あの“エレファントシンドローム”という心の呪縛をぶち破り、ここを出るんだ!」


この劣悪な環境からだけではない。自分を縛り付けていた、この奴隷のマインドからも。


(……やるぞ……!)


そう決意すると、心臓の鼓動が、かつてないほど強く打つのを感じた。


ドクンドクンと、耳元で血流の音が聞こえる。


やるんだ。


あとは……タイミングを見計らうだけだ。


自分は仕事の手を動かすふりをしながら、監視員たちの動きをチラチラと盗み見た。



実を言うとこの長い牢獄という名の奴隷生活の中で、少しずつ神経が死んでいくような感覚を覚えていた。


この牢獄に入れられた当初は、脱出のために必死で言葉を覚えようとし、何度も村人と意思疎通を図ろうとしていたが、いつの間にか、過酷な労働に疲れ果てて泥のように眠る村人たちのリズムに、自分も飲み込まれていた。


最近では、あまり意欲的に言語を学ぼうという気力すら失いかけていた。


重労働をして、疲弊し、眠る。その繰り返しの中で、次第に思考することそのものを放棄させられていたのだ。


外の情報を得ることもできず、自分一人がやれることなんて、たかが知れている。


そんな風に、いつの間にか「思わされて」いたのかもしれない。


しかし、今は違う。


静那は生きていた。


その事実が、どれほどの勇気を自分に与えてくれたか。


どれほどの生きる希望が、この胸に灯ったことか。


烈火の如く燃え上がったこの想いは、当分は消えそうにない。


立ち上がるなら、今この時しかないのだ。


この歪んだ支配構造から、真の自由を勝ち取るために。



ふと想いが先走ったのか、手に持っていた重いセメント袋を足元に落としてしまった。


不快な破裂音とともに、貴重なセメント剤がタイルの床一面にまき散らされる。


「しまった!」と思った時には、もう手遅れだった。


それを見たムチの男が、不機嫌そうに肩を揺らしてツカツカとやってきた。


自分は、まだムチでまともに打たれたことはない。


本能的な恐怖で一瞬顔が引きつった。


この慈悲のない世界では、言葉で謝罪をしても何一つ伝わらない。


“このバカ野郎が!”とばかりに、男は自分に向かって、容赦なくムチを振り上げた。


思わず、自分は体を反射的にのけぞらせる。


その時だった。


力なく、そのムチを持った男の体が、前のめりに自分の方へと倒れ込んできたのだ。


見れば、背後から誰かがスコップで、彼の後頭部を思いっきりどついたようだった。


頭から鮮血を流し、意識が朦朧としている牢番。


自分を助けてくれたのは、先ほどムチで打たれ、ミミズ腫れを作っていた東の村出身の若者だった。


すぐさまその騒動を目にした別の牢番が、スコップを持った若者に向かって走り寄ってくる。


手には太い木刀のような棒を握っているが、相手はまだ一人だ。


若者を守るため、牢番が棒を振り上げたその瞬間、自分はあの時の……懐かしい感覚を思い出した。



あの時…



それはまだ平和だった日本の、高校時代の放課後。


公園で、静那と初めて出会った時のことだ。


静那は、自分よりも体格のいい男に絡まれていた。


彼女を助けたいと強く願った時、自分は夢中でその男に体当たりをし、彼女の手を強く掴んで逃げた。


ほぼ無意識、思考よりも先に体が動いた。


そう……まさに「無我夢中」だった。


あの時の感覚が今、この瞬間になぜか蘇る。



自分から見れば、棒を持って突進してきた男の視線は、スコップを持った村人の若者にしか向いていなかった。


自分の存在は、彼の視界の端にすら入っていなかった。


だから、とっさに体が動いた。


自分は横から、棒を持った男の脇腹に向かって、渾身の力を込めたタックルをかました。


男にとっては、死角からの不意を突く「横槍」である。


そのまま男を床に叩きつけ、マウントポジションを取ると、自分は夢中で男が握りしめていた木刀を奪い取った。


なりふり構わぬ、力ずくの強奪だ。


異変に気づいた傍の監視員二人が、自分たちを押さえ込もうと咆哮を上げながら突っ込んでくる。


「うわぁぁああっ!」


自分は夢中で、奪ったばかりの木刀を左右に激しく振り回した。


隣では、東の村出身の男性も同じようにスコップを振り回し、決死の抵抗を試みる。


その凄まじい気迫に、監視員たちが一瞬だけ躊躇し、足を止めた。


その、刹那の隙だった。


背後から別の村人たちが一斉に飛び出し、監視員たちに掴みかかって羽交い締めにしたのだ。


自分は、相手が死んでしまうかもしれないと一瞬だけ躊躇したが、もはや遠慮などしていられない。


東の村出身の若者は、溜まっていた憎しみをぶつけるようにスコップを振りかぶり……


木刀とスコップが、それぞれの監視員の脳天を捉えた。


鈍い音とともに、力なく崩れ落ちる監視員たち。


その様子を見て、慌てて加勢に入ろうとする他の山賊たちの姿が見えたが、その数はもはやわずか六名に過ぎない。


こちらは武器こそ持たないが、数では数倍以上の圧倒的な有利にある。


『あと六名、全員取り押さえるぞー!』


* * * * *


自分は言葉を正確に聞き取れなかったが、東の村出身の男性が声を張り上げ、全員を力強く鼓舞したのが分かった。


出身こそ違えど、不当に囚われていた若者たちが、共通の敵を前に一気に団結した瞬間だった。


予備のロープを使い、入念すぎるほど入念に、捕らえた十名の牢番たちを縛り上げる。


この男たちがどういうたぐいの山賊だろうが、もはやどうでもよかった。


自分たちは言われるがままに労働を提供してきたのに、村の女性たちを見せしめに処刑するなどという蛮行は、誰の堪忍袋の緒をも切るに十分なものだった。


自分は、村人たちが手慣れた手つきで男たちを縛る様子を、少し離れた場所で呆然と見守っていた。


心臓の音が、未だに激しく胸を叩いている。


あの時、自分はとっさにタックルをし、相手を組み伏せて武器を奪った。


これまでは確かに酷い扱いをされてきた。


けれど、だからといって自分から相手を傷つけるような暴力を振るうつもりは、さらさらなかったはずだ。


しかし、無我夢中で村人たちと肩を並べて共闘し、この難局を切り抜けた今…自分たちは、自由を手にしたのだ。


……体の震えがどうしても止まらない。


一歩間違えば、ほんの少しの判断ミスがあれば、自分はこの目の前の男たちに叩き殺されていたかもしれないのだ。


そう思うと、今の自分の選択の重みに、魂が震えるような感覚を覚えた。


東の村出身の男が、そんな風に震えている自分の傍に歩み寄り、肩をポンと優しく叩いた。


彼の名は「アブドゥラメン」という。それを知ったのは、このすぐ後のことだった。


* * * * *


アブドゥラメンは、自分の心中を察したのか、どこからか紙とペンを持ってきてくれた。


そして、ボールペンのようなもので、さらさらと簡単なイラストを描いて見せる。


この要塞内部の、簡易的な地図だ。


この後、騒ぎを嗅ぎつけた別の山賊たちが大挙して押し寄せてくる可能性がある。


自分たちは一旦ここを離れ、それぞれの村の女性たちが心配なはずだから、ここからは分かれて行動しようというのが彼の提案だった。


アブドゥラメンと、彼と同じ村出身のメンバー二十名は、処刑が行われる広場の近くに陣取り、様子を見るという。


命を賭してでも、処刑を止めたいという強い意志がその瞳に宿っていた。


しかし、無謀に突っ込むのではなく動くべきタイミングを慎重に見計らうのだという。


他の村人たちも、追手が来ない今のうちに、それぞれの目的の場所へと散っていった。


まずは上層部へと駆け上がり、監禁されている同郷の女性たちの安否を確認したいのだろう。


長く、あまりに不当に続いた搾取という名の強制労働は、これにて実質的な終焉を迎えた。


自分も、今まさに処刑されようとしている仁科さんと葉月のことが、気がかりでならなかった。


もし本当に処刑されるなら、何としても、命に代えても止めなければならない。


しかし、自分一人では、あの大柄な山賊たちを相手に何ができるというのか。


結局、自分もアブドゥラメンと一緒に上の階を目指すことにした。


彼らは宮殿内部まで行けば、あとは潜伏して好機を待つらしいので、そこまでは共に行動し、その後で別れることに決めた。


* * * * *


いつもなら、上階へと続く通路には多くの牢番が目を光らせているのだが、今日は不気味なほどに静かだ。

たまに牢番に遭遇したとしても、少人数であればもはや敵ではない。


自分たちは、先ほど捕らえた男たちから拝借したムチや木刀をこれ見よがしに振り回し、一気に上の階へと駆け上がっていく。


牢番たちは、自分たちの獲物であったムチが「パチィン」と空を切る音を聞くだけで、情けないほどに顔を青ざめさせた。


結果、面白いように簡単にお縄にかかってくれた。



“あんなに偉そうに威張り散らしていたのに、武器で脅せばこのザマか…情けない悪党どもだな”

自分は、地面に這いつくばる彼らの姿を、少しだけ滑稽に、そして哀れに感じていた。


自分たちが目指すのは、死刑台のある巨大な広場だ。


アブドゥラメンたちも、一度も足を踏み入れたことのないその場所をまず確認し、一旦距離を置いてから、具体的な対策を練るつもりのようだった。


* * * * *


監視員たちを勢いのままに捕縛し、自分たちはあっという間に上層階へと到達した。


まさに、数は力である。


まだ見張りや牢番の数が少ない、今この瞬間の混乱を突くしかない。


やがて自分たちは最上層……豪華な装飾が施された、宮殿の内部へと侵入した。


ここからは物音を殺し、壁の影に身を潜めながら、慎重に広場に向けて近づいていく。


二、三人程度の相手なら対処できる自信はあるが、流石に大人数に囲まれたら、こちらの勝ち目はない。


その辺りは皆、重々承知しており、十二分に注意を払いながら足を進めていた。


「!?」


ふと、壁の向こう側から、一人の女性が処刑広場から必死に逃げ出している姿が視界に入った。


恐らく東の村出身の女性で、つい先ほどまで縄に繋がれていたのを、自力で解いて逃げてきたのだろう。


彼女は、蒼白な顔で後ろを振り返りながら、全力で石畳を駆けていた。


しかし、その逃げ道の先には、信じられないほど巨大な体躯をした男が待ち構えていた。


頭に革のベルトを何重にも巻き付けた、異様で不気味な風貌の男。一度目にすれば、夢にまで出てきそうな怪物の姿だ。


目の前に突如として現れたその巨体に、女性は思わず足を止め、全身を震わせて立ち尽くした。


逃げようにも、背後からは別の追手が迫っている。


完全に、逃げ場を失ってしまった。


それを見た瞬間、アブドゥラメンが自分の方を見た。


『お前は来るな! ここにいろ! ここまでありがとう』


彼はそう短く言い残すと、止める間もなく走り出した。


自分には意味が分からなかったが、表情から「お前はここに残れ」と言われたことだけは理解できた。


外壁の陰に自分を残し、アブドゥラメンと同じ東の村出身の若者二十名が、一斉にそのデカブツの男を目指して突進していった。


「ウルファー!」


仲間の名を叫び、彼女を救うために二十人の男たちが一斉に牙を剥いた。


あの「ウルファ」と呼ばれた女性は、きっと彼らにとって、何物にも代えがたい大切な同郷の仲間なのだろう。


今なら、まだ周囲の追手の数は少ない。


このデカブツ一人さえ片付ければ、彼女を連れて一気に逃げ切れるはずだ。


自分はそう確信し、祈るような思いで外壁の隙間からその様子を見守っていた。


アブドゥラメンの鋭い指示の下、若者たちが次々とその怪物めがけて飛び掛かっていく。


二十人が怒涛の波のように、巨大な男に向かって激突した。


「アブドゥラメン!」


ウルファと呼ばれた女性は、泣きそうな笑みを浮かべ、救出に来てくれた彼に駆け寄った。


アブドゥラメンは「こっちだ」と彼女を自分たちの背後へ誘導すると、自ら先頭に立って目の前のデカブツに立ち向かっていった。


しかし、現実はどこまでも残酷だった。


二十人もの若者が束になってかかっても、目の前の大男はびくともしなかった。


過酷な労働と不十分な食事で体力が低下していたせいもあるが、それはまるで、屈強な相撲の関取に、ひょろひょろの中学生が次々とぶつかっていくような、あまりに絶望的な光景だった。


怪物のハンマーのようなブローが、一人の若者の頭部を捉えた。彼は声を上げる暇もなく、その場に崩れ落ちて動かなくなった。


別の男性が背後から掴みかかろうとしたが、逆に首根っこを軽々と掴み上げられ、地面へと豪快に叩きつけられた。


それはプロレスの「チョークスラム」そのものだった。


頭から石畳に叩きつけられた若者は、ピクリとも動かなくなり、その周囲に嫌な色の液体が広がり始める。

その凄惨な光景を見て、ウルファの表情が凍りついた。


あまりの力の差に、生き残っている仲間たちの顔も青ざめ、次第に攻撃が消極的になっていく。


アブドゥラメンは、ふと背後から迫ってきていた追手の方に目をやった。


ところが追手の男たちは、一定の距離まで近づいた後は、ただ腕を組んでこちらを眺めているだけだった。


自分の目から見ても、彼らは“このデカブツに勝てるはずがない”と、高を括っているように見えた。


アブドゥラメンは、この目の前の怪物を倒さなければ道は開けないと悟り、手にした木刀を握り締め、雄叫びを上げながら突進した。


文字通り、決死の覚悟だった。


デカブツが別の若者の首を掴み、投げ飛ばそうとしたその瞬間、アブドゥラメンの渾身の一撃が、怪物の後頭部にクリーンヒットした。


……


……しかし。


無情にも木刀が砕け散っただけで、男の頭は微動だにしなかった。


逆に、アブドゥラメンは逃げる暇もなく、その太い腕で首根っこを掴み取られた。


(危ない!)


自分が心の中で叫んだその瞬間、デカブツはアブドゥラメンの体を片手で軽々と持ち上げると、地面へ向けて、無造作に、けれど正確に叩きつけた。


あまりに急角度で、後頭部から叩きつけられたアブドゥラメンは、その後、二度と起き上がることはなかった。


…まだ彼らのうち、半数も倒されてはいない。


しかし、あまりにも次元の違う力の差を見せつけられた残りの十名は、全身を激しい震えに支配されていた。


足がすくみ、一歩も動けない。


遠くから見ていた自分ですら、魂が凍りつくのを感じていた。


相手が悪すぎる。あいつは、人間ではない別の何かだ。


おそらくこのアジトの、側近か幹部クラスの怪物なのだろう。


その怪物は、怯える若者たちには目もくれず、逃げ場を失ったウルファに向かって、ゆっくりと死神のような歩みを進める。



自分は心の底から、何かに縋るように祈っていた。


(誰か…誰でもいいから、彼女を助けてあげてくれ……お願いだ! こんなの、どうしようもないじゃないか!)


デカブツは下卑た笑みを浮かべ、ウルファとの距離をじりじりと縮めていく。


ウルファは恐怖のあまり顔を真っ白にし、蛇に睨まれた蛙のように、足がすくんで動けずにいた。


その、恐怖で歪んだ顔を間近で見たいと言わんばかりに、怪物は彼女の襟首を掴んで持ち上げた。


『やめろ! ウルファを離せ!』


周囲の若者たちが必死で叫ぶが、それはもはや、負け犬の遠吠えにすらならない、力のない叫びだった。


デカブツが、五月蝿そうに若者たちへ冷たい視線を送る。


それだけで、若者たちは雷に打たれたように震え上がった。


……


「?」


しかし、その絶望の中でも、必死に怪物の片足に縋り付く者がいた。


完全にノックアウトされたと思っていたアブドゥラメンだった。


彼は地面を這いずり、意識が混濁した中で、絞り出すような声を上げた。


『ウルファ……を……離…せ…』


喋ることさえ、今の彼には奇跡に近い状態だったはずだ。


百六十キロはあろうかという巨体の怪物は、鬱陶しそうに自分の足元を見下ろすと、必死にしがみつくアブドゥラメンの顔面を、迷いなく踏み潰した。


“グシャッ”という、生々しい音が静寂の中に響いた。


彼の鼻から赤い飛沫が噴き出し、その後、彼は完全に動かなくなった。


『アブドゥラメン!』


ウルファの悲鳴が、広場に木霊する。


『処刑されるまでは大人しくしてろ。まだ先なんだからよォ』


怪物はそう吐き捨てると、ウルファを米俵のように担ぎ上げ、そのまま処刑台のある広場の方へと姿を消していった。


その光景を、生き残った村人たちはただ呆然と見送るしかなかった。


足元には、無惨に横たわる仲間たち。


心も体も、文字通り完膚なきまでに叩き潰された。


追手であった山賊たちも、『これで反抗しようなんて気は失せただろう』という確信を持って、無抵抗な村人たちを次々と捕らえにかかった。


まだ動ける若者たちも、最初は僅かな抵抗を見せたが、やがて圧倒的な無力感に包まれ、一人、また一人と縄に繋がれていった。


この後、彼らはどこへ連れて行かれるのだろう。


死刑の際に、一緒に殺されてしまうのだろうか。


自分は隅で一部始終を目撃し、心の底から深い絶望を抱いた。


自分一人ではどうにもならない、圧倒的な「力」の格差を目の当たりにしてしまったからだ。


この他にも確か…地下牢で見かけた「凄まじい蹴りを持つ男」がいるはずだ。


こんな化け物二人を相手に、一体どうやって立ち回ればいいというのか。


考えれば考えるほど、勝機などどこにも見当たらず、道筋は暗闇に閉ざされていた。

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