24-2 敢行
【24話】 Bパート
※要塞内の内観や、仕掛けについては、ゲームソフト『SFC/プリンス・オブ・ペルシャ』のステージ1~3を参考に見ていただけますとより鮮明にイメージできます。
要塞内を探索し続ける小谷野と兼元のコンビ。
このフロアからさらに上のフロアへと続く階段は、どうやらあの一箇所だけのようだ。
しかし、その階段の直前に見張り兵が一人だけ陣取っていた。
中東特有の曲がりを持った「シャムシール」と思われる刀剣を携え、鋭い視線を周囲に走らせている。
「キャプテン……あいつ、本格的な刃物を持ってやがる」
「せやな。でも、見たところそんなにガタイがええ訳やない。あの特訓の成果を見せる時や。行くで、リーダー!」
明け方の薄暗い時間ということもあり、このフロアの見張りは一人だけのようだ。
悩んでいる時間は一秒もないと判断し、キャプテンは咆哮と共に思いっきり突っ込んでいった。
見張りの男は、暗闇から急に飛び出してきた自分の姿に驚愕しつつも、即座に腰のシャムシールを抜き放ち、上段に構えた。
しかし、お構いなしに低空タックルを仕掛けようとする。
シャムシールは、三日月のような形状をした「薙ぎ払い」に特化した剣だ。
直線的な「突き」には不向きだと瞬時に見抜いたキャプテンは、さらに姿勢を低くして相手の懐へと潜り込む。
その瞬間を狙い、見張り兵は横薙ぎの一撃で切り裂こうとしてきた。
ここが、勝負の分岐点だ。
振り下ろされる刀の「刃」ではなく、持ち手である「柄の部分」を、特訓で鍛えた動体視力で正確に掴み取った。
鋼の拳で柄を固定したおかげで、鋭い刃が己に食い込む寸前で静止する。
そこから、激しい力比べが始まった。
もし力負けすれば、シャムシールの刃がそのまま自分の肩口へと食い込んでいくだろう。
純粋な筋力だけで、この屈強な兵士に勝てるかどうかは未知数だった。しかし、自分の狙いはそこではなかった。
じわじわと剣で体を押し込まれ、必然的に剣先が地面の方向へと下がっていく。
「リーダーッ!!」
自分の叫びとほぼ同時に、背中を思いっきり踏み台にして、後ろから兼元もといリーダーが弾丸のように飛び出してきた。
そして、落下の勢いを利用した変則的な飛び膝蹴りを、相手の無防備な顎に向かって正確にぶち込んだ!
一九九七年の今、まだその名は一般的ではなかったが、後に「シャイニング・ウィザード」として世界に知れ渡る技の雛形だった。
自分の背中を跳び箱のように踏み越え、一気に相手の顔面を粉砕してみせたのだ。
作戦は完璧に決まった。
顎に直撃を受けた見張りの兵士は、脳を揺らされ、一瞬で握力が失われた。
その隙を自分は見逃さない。
力なく手放された剣を無視し、そのまま相手の胴体に抱きつくと、柔道の裏投げの要領で豪快に背後のタイルへと叩きつけた。
タイルは硬いコンクリート製だ。頭から激しく落ちた男は、短い呻き声を残して気を失った。
自分は今後の備えとして、男が持っていたシャムシールを拝借した。
そして、上へと続く階段へと足を踏み出す。
振り返り、沈黙する見張り兵に静かな言葉を投げかけた。
「安心しな。俺たちの狂気は、肉体一つや」
上層階へと続く階段。
これでまた一歩、目的の場所へ近づける。
ただ、それ以上に、初めて即興で試した連携技が完璧に決まったことが、自分たちの確かな手応えとして、胸に熱く宿っていた。
* * * * *
上の階に入った。
このエリアはどうやら兵士の休憩所のようだ。
不潔な布が散らばり、飲み物が入っているであろう瓶がいくつか転がっていた。
当然、敵との遭遇は覚悟していた。
しかし、武器庫が炎上している現在、消火活動にほとんどの兵士が駆り出されているためか、人の気配が全くない。
しめたとばかりに、二人はこの部屋を全速力で駆け抜けた。
しかし、やはり世の中はそう甘くはなかった。
部屋の出口付近に、数名の兵士が待機していたのだ。
山賊兵の二人が足音に気づき、鋭いシャムシールを抜き放ってこちらへ迫ってくる。
「今度は二対二か……でも、さっきのアレンジで行こうや、キャプテン!」
キャプテン小谷野は、即座にリーダー兼元の意図を理解した。
まず、元来た方向へとわざとらしく逃げ出してみる。
すぐさま、二人の兵士が獲物を逃すまいと追いかけてくる。
しかし、追いかけてくる男たちの脚力には、明確な差があった。
やがて真横に並んでいた二人の列は、距離が開いて前後に重なる二人の隊列へと変わった。
それを見計らい、先ほど拝借した刀を先頭の男に向かって全力で投げつけた。
兵士からすれば、逃げていた相手がいきなり刃物を投げ飛ばしてきたのだ。
男はとっさにシャムシールを大きく振りかぶり、飛んできた刀を弾き飛ばした。
金属音が響き、投げた刀は火花を散らして部屋の隅へと転がっていく。
武器を失い、万事休すかと思われただろう。しかし、キャプテンの真の狙いはそこではなかった。
男が刀を弾き返し、その反動で体勢を崩した瞬間、すでに一歩の距離まで間合いを詰めていた。
そして刀を振り切り隙だらけになった男の喉元に、全体重を乗せたエルボーバットを叩き込んでみせる。
鈍い音が響き、男は白目を剥いて崩れ落ちた。
その無惨な光景を見て、後ろから来たもう一人の男が激昂し、刀を振り下ろしてくる。
しかし、これで状況は一対一だ。
キャプテンは冷静に姿勢を極限まで低くして突っ込み、振りかぶられた刀の柄の部分をガッシリと掴み取った。
先ほどの連携を、さらに磨き上げた戦法だ。
低く身を沈め、踏ん張る。
その刹那、再び背中を踏み台にして、リーダー兼元が鋭い飛び膝蹴りを食らわせた。
正面からまともに膝を顎に叩き込まれた男は、糸の切れた人形のようにぐらついた。
足の力が抜けた絶好のチャンスを逃さず、キャプテンはフロント・スープレックスの形で男を高く抱え上げ、背後の石床へと投げ飛ばした。
後頭部を強打した男は、そのままピクリとも動かなくなった。
KOされた二人の腰から、僕たちはさらに一本ずつシャムシールを拝借した。
虚ろな目でこちらを見つめる兵士たちの視線には、「その剣で俺たちの息の根を止めるのか」という恐怖が混じっていた。
しかし、こちらの目的は殺戮ではない。
この剣は、あくまで先ほどのような牽制のための飛び道具として使うつもりで、人を斬る道具としては考えていなかった。
刀剣を手に先を急ぐ。
走りながら、生一が特訓の最中に授けてくれた言葉を反芻していた。
「ええか、肉体じゃなくて剣とかナイフを武器にしてかかってくる奴ってのはな…… 刃先ばっかりに意識が行きすぎてんねん。
殺傷力がある部分以外の注意が足りてない。
だから、思い切り懐に入って『柄の部分』を掴んでみろ。
相手は、自分の絶対的な武器を封じられて、面白いように焦り出すからな」
「キャプテンッッ!!」
突然、兼元に首根っこを強く掴まれ、後ろへ引き戻された。
ふと我に返ると、数センチ先のタイルから、鋭利な針が「シュパッ!」と勢いよく飛び出してきた。
「気をつけろよ! お前、今絶対に別のこと考えてたやろ……」
「す、すまねえ。……まぁ何だ。本当に、どこまで行っても嫌らしい仕掛けばっかりだと思ってさ……」
「違いねえな。この城の仕掛けを作った奴、絶対に性格悪いで」
「ああ! もしそいつを見つけたら、後で『釣鐘ストンピング』の刑にしたる!」
どんどん要塞の中を進んでいく二人。
この階は兵士たちの往来も激しいため、比較的広く道も一本道だ。
しかし、背後から複数の怒号が響いた。
どうやら、先ほど倒した二人の兵士の変わり果てた姿を発見した輩がいるようだ。
足音の響きからして、かなりの勢いでこちらへ追いかけてきている。
その数は二名……いや、確実にそれ以上だ。
「まじぃな……今度は複数人かよ」
「さっきの戦法でいくしかないやろ。一対一に持ち込むやつ」
しかし、このフロアの道幅は決して狭くはない。
先ほど見せた「拝借した刀を投げて、相手が弾いた隙に踏み込む」という戦法は、一対一であれば有効だが、複数を相手にする場合は、弾かれた直後の隙を別の兵士に突かれる危険性がある。
「……こういう時、指先から『連続エネルギー弾』とか撃てたら楽なんやけどなぁ」
「お前、こんな極限状態でも飛び道具の夢見てんのか? 余裕やな。
これから複数に囲まれるかもしれへんのやで」
「分かってるって。
…でもな、あの熊とかデブと比べたら、こいつらなんてまるで怖くない。負ける自信がねえわ」
「それ、生一の好きなセリフだろ。あいつが聞いたら、『勝手に使うな』って怒るで……」
「かもな。あいつ、セリフの言い回しには妙なこだわりがあるしな」
そんな軽口を叩き合えるほど、今の二人には精神的な余裕があった。
やがて、追撃の見張り兵たちが刀を抜き放ち、二人の前に現れた。
全員がターバンを巻き、冷酷な眼差しを向けてくる。
人数は、四人。
(たったの四人か)
小谷野と兼元は、同時にそう感じていた。
早朝であり、さらに武器庫の消火活動に人員が割かれている現状、これが敵が出せる精一杯の増援なのだろう。
ターバンの男たちは、僕たちが仲間を倒してきた事実を知っているのか、迂闊には近づいてこない。
彼らは一旦距離を置き、慎重に間合いを測っている。
そして四人で大きく取り囲むように、じりじりと包囲網を狭めてきた。
キャプテンは、ある程度距離が近づいた瞬間、壁の燭台に置かれていたロウソクを鷲掴みにし、とっさに四人の中央へと投げつけた。
床に叩きつけられたロウソクの火が消え、一瞬、視界が急激に悪くなる。
その時こそが、唯一の狙い目だった。
一瞬だが、男四人全員の意識がロウソクの火が消えた音と暗転へと向けられた。
その僅かな隙を逃さず、ロウソクから一番遠い場所にいた男へ同時に襲いかかった。
殺す必要はない。腕に鋭い打撃を叩き込んで怯ませ、その隙に男の持つ刀を奪い取る。
まさに、瞬く間の出来事だった。
視界が悪い中での反射速度とアクションの精度は、特訓を積んだこっちが圧倒的に上回っていた。
これで三対二。武器持ちの三人に対し、奪った武器を持つ二人という状況を作り出した。依然として視界は悪い。
その闇を突き、兼元が背後から別の男に肉薄した。
一人の男の背後に音もなく飛び掛かり、首元に鋭い手刀を突きつける。
「首を切り落とされる!」と錯覚した男は、驚愕して慌てて自分の首を守るために両手を上げた。
その隙を利用し、兼元は難なく男の腰にあるシャムシールを抜き取った。流石リーダーだ。
これで、武器を持った敵は残り二人となった。
この段階で戦況が不利だと悟ったのか、ターバンの男たちは退却を決断した。
さらに増援を呼びに走るつもりなのだろう。
しかし、彼らが引き返そうとしたその瞬間、横の通路から凄まじい炎が噴き出し、彼らを包み込んだ。
『ギャアアアアアァァ!!』
髪や衣服に引火し、男たちは悲鳴を上げて転げ回る。
火傷と混乱に陥り、もはや戦闘を継続できる状態ではない。
小谷野は一番大きく叫んでいる男の側頭部を思い切り蹴り飛ばし、その意識を刈り取った。
その後、炎の主犯である男が、壁の陰から悠然と姿を現した。
「いきなり視界が暗くなったから、どうなることかと思ったわ。……追いついたで!」
武器庫から拝借してきた火薬を使い、絶妙なタイミングで援護射撃をしてくれた「ボス」こと生一が、ここで合流した。
* * * * *
さらに上の階へと到達したが、ここは意外にも見張りの気配がない。
しかし、かつて地下へと連行された際、ここは確かに通り過ぎた記憶があった。
この上の階層へ行くことができれば、そこはもう宮殿の内部だ。
宮殿へと繋がる階段の扉は、鉄製で固く閉ざされていた。
「宮殿に続くトビラは……確か兵士がこの真上のフロアでスイッチを押して開けてたのを、自分は覚えてる。 多分やけど、そのスイッチに繋がるルートはあっちやろう」
ここの回廊は、やたらと上に広い。
外からの日の光が差し込む場所まで出られるが、扉を開くためには難解な仕掛けをクリアする必要があるようだ。
高い足場に飛び乗った生一は、眼下の二人に指示を飛ばした。
「ここにあるタイルが、スイッチやねん」
自分が体重をかけて踏み込むと、かなり遠くの方で鉄格子が「カラカラカラ……」と開く音が響いた。
しかし、扉は一定時間が経過すると、再びゆっくりと閉まり始める。
「このスイッチを押したら、急いで向こうの鉄格子まで走り抜ける必要があるみたいや。
落ちたら即死の奈落の穴とかがあるけど、全部飛び越えていかんと、辿り着く前に鉄格子が閉まってまう。 躊躇してる時間は一秒もないうことやな」
「なるほどな……。
で、どうする。3人全員で行かへん?」
「いや、鉄格子の直前が断崖になってん。
そこを飛び越えていかんとあかん。だから、ここは俺一人で行くわ。そんで上階へのスイッチを押して帰ってくるから、お前らはここで見届けててくれ」
このフロアの探索に、随分と時間を費やしてしまっていた。一刻の猶予もない。
生一はスイッチを強く踏み抜くと同時に、全速力で鉄格子に向けて駆け出した。
小谷野と兼元の二人も、途中まではその背中を追う。
足を踏み外せば即座に死に繋がる不安定な足場を、生一は軽やかに飛び越え、閉まりつつある鉄格子へと肉薄していく。
鉄格子は、既に半分以上まで閉まり始めていた。
(よし! この速度なら、滑り込みで間に合う)
しかし、最後の断崖を飛び越えて鉄格子の前へ着地しようとした瞬間、思わぬアクシデントが起きた。
飛び越えようとした足場の岩が「グラッ」と揺れたかと思うと、音を立てて崩れ落ちたのだ。
落ちる床だ。
全力で走っていた生一は、その足場の崩壊によって大きく体勢を崩した。
不完全な跳躍のまま、生一は崖の向こう側へとダイブすることになった。
「ビタンッ!」という鈍い音を立てて、生一は向こう側の壁に胸を強く打ち付けた。
生一はとっさに、鉄格子前の僅かなタイルに手をかけ、指先だけでなんとかしがみついた。
宙ぶらりんの状態だ。
真下を見下ろせば、そこには鋭い針山が並んでいる。
もし手を離せば、真っ逆さまに針に突き刺されるという絶体絶命の光景。
自分が針山に気を取られ、必死に指に力を込めている間に、残酷にも鉄格子は最後まで閉まりきってしまった。
大ピンチである。
上へ這い上がろうにも、目の前の鉄扉が完全に道を塞いでいるのだ。
「大丈夫か! 生一! 落ちんなよ!」
両腕の筋肉を浮き上がらせて必死にしがみついている自分に対し、向こう側の崖から兼元と小谷野が悲鳴のような叫びを上げた。
「おい! お前ら!! 急いで戻ってもう一回スイッチを押してこい!! 早くしろ! 早く!! 変な体勢で壁にぶち当たっちまって、もう腕の限界が近いねん!!」
一瞬、え?と呆然とする二人。
「早くしろって言ってんだろ!! 腕が……ヤバいんだよ!! 早くッ!! あなたが思うより、限界ですッ!!」
「スイッチって……さっきの、向こうのやつか!」
「それ以外にどこにあるねん!! はよ急げぇぇぇぇ!!」
額に脂汗を浮かべ、生一は震える腕で必死に訴え続けた。
(くッそう! 人間って奴は、なぜこうまでも残酷なトラップを考えつくんや!
こんな知恵があるなら、もっと他の、平和的なことに活かせばええというのに……!!)
「待ってろボス! 今すぐ行く!!」
約三十秒後、鉄格子が再び「カラカラカラ……」と開いていく。
命からがらという様子で、生一は扉の向こう側へと這い上がり、そのまま先に進んだ。
生一は振り返り、息を切らしながら二人に怒号を飛ばす。
「死ぬか思ったぞ!! もっと早く動けよボケェ!! ったく!!
今から上層部に続く扉のスイッチを探して押してくるから、お前らはその扉の前で待機してろ!!」
指示通りに動いたものの、反応が遅れたことに生一は明らかに不機嫌だった。それほど、死の恐怖が間近に迫っていたのだろう。
* * * * *
上層階へと繋がる大きな扉が、ついに重厚な音を立てて開いた。
生一が上のフロアで、スイッチを見つけ出して押してくれたようだ。
程なくして彼が戻ってくるだろうと、二人は扉の前で待機していた。
しかし――
「ぎゃあアアアアアアアア!!」
要塞全体に響き渡るような、凄まじい悲鳴が聞こえてきた。
生一の悲鳴であることは間違いない。だが、敵に見つかって切り殺されるような痛みではなく、何か未知の存在に驚き、怯えきったような叫びだった。
「何が起きたんだ!?」
二人に戦慄が走る。
しばらくして、必死の形相で階段を駆け下りてくる生一の姿が見えた。
「無事だったか!」と思ったのも束の間。彼の後ろからは、真っ白な骸骨がヨタヨタと不気味な動きで追いかけてきているではないか。
「しーーぎゃーーぴーー!!」
「うわーうわーうわー!!」
「うわあばばおびょー!!」
それを見た二人も、この世の終わりを見たような形相で逃げ出した。
ホンモノの骸骨が自分の意志で起き上がり、武器を手に襲ってくるなど、お化け屋敷でもそうはお目にかかれない光景だ。
誰もいないこの層で、少年たちの情けない悲鳴だけが虚しく響き渡った。
* * * * *
「ええか……腕をこうやってクロスさせるんや。 そんで足もこうクロスさせて、内側に入れ込む。この順番で極めて、最後に入れ替えて裏返したら……ほれ! パラダイスロックの完成や!」
「おおお~……凄いな」
兼元と小谷野が、思わず感嘆の声を漏らし、拍手を送った。
あのパニックの悲鳴から数分後、落ち着きを取り戻した3人は、冷静に対処を開始していた。
まず、追いかけてきた骸骨剣士の「骨太郎(仮名)」を、特訓の成果を活かした素早い動きで捕獲。そして彼が持っていた古い刀を力任せに取り上げた。
武器を奪われた骨太郎にはもはや殺意の手段はなく、ただカタカタと音を立ててウロウロと歩き回るだけの存在になった。
とはいえ、そのまま放っておいて後ろから突つかれても困るし、視界の隅で骸骨が動いているのも落ち着かない。
そこで生一はテレビで見たのか、プロレス技の固め技『パラダイスロック』で骸骨を動けない状態に固定したのだ。
関節を固められてもなお、ガタガタと小刻みに震え続ける骸骨に対し、生一はその頭を「スパコーン!」と小気味よい音を立ててはたいた。
「大人しくしとけボケェ! ったく、死ぬほど驚かせやがって……
めっちゃ怖かったやろうがい!」
生一はスクッと立ち上がると、開かれた扉の向こうをじっと見据えた。
階段を駆け上がる……その寸前、彼はもう一度、骨太郎の方へ視線を向けた。
「お前がどういう経緯でこんな姿になったんかは知らんけどな……。もし何か無念さがあるんなら俺たちが晴らしてやるさかい。
全てが解決したら……ちゃんと成仏せえよ」
そう静かな言葉を残し、彼は迷いなく階段を駆け上がっていった。
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