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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
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24-1 敢行

【24話】 Aパート

※要塞内の内観や、仕掛けについては、ゲームソフト『SFC/プリンスオブペルシャ』のステージ1~3を参考に見ていただけますとより鮮明にイメージできます。

「おはよう。」


まだ薄暗い中、目が覚めたのは真也だ。


昨夜は久しぶりに温かいお湯に入り、髪を洗い、髭をそり、ベットで寝られる充実感を噛みしめた。


先に起きていた静那に挨拶をする。



静那も隣のベットで久しぶりに熟睡した。火傷の薬も塗ってもらい、ゆっくりだが温かい食事も食べる事ができた。


ただ、ベットから体を半分起こし、夜明け前の窓をじっと見ている。


…おそらく先輩方の安否を案じているのだろう。


自分が一番瀕死の状態だったくせによく皆の事を考えられるなぁ、と少し優しく微笑みながら静那の方に近づく。


「出来るだけ急いでもらえるよう…言っといた。体、動くなら着替えておいて。ゆっくりでいいから。」


新しく用意してくれた民族舞踊のような服を静那のベットに置く。


赤茶色を基調とした髪と肌を隠すような服だ。坊主である今の静那にはちょうどいい感じだ。


真也はまだ夜明け前ではあるものの、悪党が監禁されている牛小屋の様子を見るため外へ出ていった。



肌寒いが心地よい風が体中に沁み込んでいく。


一晩しっかり寝て体中の力が蘇ったように感じられる。


本当に生き返ったような朝を迎えられそうだ。




* * * * *




「あそこ見ろよ!」


小谷野が城壁の手前に旗を立てるポールと小さな簡易小屋を見つけた。


見た感じ監視ポイントのようには見えない。


もう少し近づいていくと、そこは単なるトイレだった。


「まぁこの辺は城壁周辺だから、山賊たちのお手洗いポイントが無いのも不自然だよな。」



「じゃ、各々行くぞ。マップだとここから先の城壁から入れるらしい。たいそうな門もなく、見た通りえらく塀は低い。でも中はやたらとトラップが多いみたいだからしょっぱなから気を抜くなよ。」



「了解。」



「お前らは地獄のような境遇からよく耐えた。耐え抜いた。だから自信もってええ。あの熊野陳平も倒したやろ。

ただ慢心はするな。あくまで慢心はしないまま成功した時のイメージだけは描いとけ。お姫様を助け出す成功イメージをな。」



「ん…熊野陳平って…誰?」


「さっき倒した熊やん。さっきの死闘、もう忘れたんか。」


「そうじゃなくてさ、お前何勝手に名前付けてんのよ。」


「はぁ?名前あった方が分かりやすいやんか。」


「何やねん。熊野は分かるで。でも陳平ちんぺいって。」


「そこかよ。まぁ気にせんでええやんそこ。俺らあいつと抱き合った仲やん。」


「お前どうせお前のファイプロ(ファイヤープロレスリングというゲーム)で作ったレスラーと同じ名前なんやろ。」


「なんで分かった?」


「やっぱりな…」





「んなマニアックな話はええとして、もう行くぞ!

成功を手に入れるために!

成功イメージがー」



「…ちょっと待て!」


「何やねん。まだなんかあるんか?」


「いやさ…お前がさっきからそんなに“性交”“性交”言うからさ…そのイメージしてもうてん。」


「成功の意味が違うわ!…んでイメージしてどうなんよ。」


「…なんかトイレ行かせてくれん。」


「ええ訳ないやろ。アレ体力消耗するんやで。この1メモリが後々命取りになったらどないすんよ。カロリーの使いどころはまだ先や!バカタレ!」


「んなこと言ってももう我慢できんようになってんよ。ゴメン。」



股間を抑え、小走りにそこにあるトイレへ直行する兼元。後ろから見ているとなんとも情けない姿だ。



「トリガーにアレ使え!」


小谷野がポールを指さした。


兼元はポールの中腹に飛びつくと、ポールダンスのような要領で股間を擦らせながらスルスル落ちていく。


そしてそのまま膝より下を使った小走りでトイレに駆け込んだ。


暫くして…建物の上に3発の花火が打ち上げられたようなエフェクトが浮かび上がる。


漢達しか見えない花火(世界)だ。



「あの短期間で3発もの花火を打ち上げやがった…」



生一はこの兼元の性芯力せいしんりょくに完敗の念を感じた。すぐさま小谷野が付け加える。



「フン、お前は本当に3回だと思ったのか?これだから素人は…」


「なッ!違うというのか」


「あのポールに擦りながら着地した時に一回果てている。それを入れると4回目。」


「4回!」



「“この道”じゃあ俺の方が長い。そう焦るな新米。

…藤宮さんよォ、良いことを教えてやろう。まぁ知ってるかもしれんが。

あのポールの一番上にしがみついて下りてイってみろ…5000点入るぜ。まぁ知っているかもしれんが。」


「どうしてそれを…そうか…お前小学校の時からやりこんでいたな。」


「まぁそんな事は良いじゃねえか。兼元ごときじゃ相手になんねぇ。あんたにも頑張ってもらわんとな。」



そのやりとりを聞いて兼元がトイレから出てきた。聞こえていたようだ。



「“相手になんねぇ”だと?その言葉は聞き捨てならんな。」


「…お前、そんな『きかんしゃトーマス』みたいな面になって言うても説得力ないで。」



見るとすっきりして白くなりすぎている兼元がいた。…体力の使いすぎだ。



「何とでも言いな。その程度で賢者に成り下がれるほど俺は安くないからな。」


「何だと。」


「お前はこの程度でござるか?」


「ござるとか…お前大丈夫か!」


「まぁ見てろ。あっという間に白目を向かせてやろう。」


「白目になるのお前と違うんか?」


「まぁいいじゃねえか生一。見せてもらおうか!賢者に至るその覇道の行く末とやらを!」


「そうなだ…お手並み、拝見させてもらおうか…(ゴクリ)」




「はあああああああああ!」


小谷野が少し足を開き体中に力を込めだすと地面が揺れるような感覚がしはじめた。


そしてなんだか淫乱な雰囲気が辺りを包み込んでいく。


「なんだこれは…奴の周りから一面ピンク色の妖気で充満している。」


「すげぇ気だ。何の境地か知らんが。」


一瞬髪型が白…銀髪にも見える。


「まさか奴は“手淫勝手の極意”を極めているのか…まだ平成の世というのに…」


ビッ…ビビビビッ…


という音と共に、彼の周りに電気が回り始める。


「く…くるぞ…」


そして画面と言う名の周りが暗転したと思うと、残像を残し片足立ちのままトイレにスライドしながら姿を消した。


トイレに姿を消したその瞬間!数えきれないほどのヒット数と共に、トイレの上にピンク色で「天」の文字が刻まれたのである。


ストリートファイターの豪鬼の“瞬獄殺”の後に出てくるようなエフェクトが漢達には確かに見える…



暫くして小谷野がトイレから顔を出す。


「フゥゥ…」


その顔は同じく“きかんしゃトーマス”のようだった。


「これが自涜 (じとく)を極めし物の姿よ。主らではたどり着けまい。」


「………」




暫く呆気にとられていたが、生一が呟く。


「お前らアホすぎるねん!乗り込む前から何体力使いまくってんのよ。アホの中のアホ!坂田もビックリやでこれ!」


せき止められた言葉が雪崩をうつ。



「お前らバカの極みか!乗り込む前に大事なタンパク源まき散らして何しとんねんボケェオラァ!

コレ女子ドン引きも甚だしいぞ!」


「仕方ないじゃないですか。私のほとばしりし想いが滂沱として禁ぜなかったのです。」


「うっせえわ。いきなり賢者言葉使うなよ!」


「まぁ生一殿。今私は明鏡止水なのです。エロ本だってどんなに周りの目があろうとも、涼しい顔で買う事もできます。」


「んなモンがこの辺に売ってるわけないやろ!もう誰やねんお前!」


「私ですか…最初に“罪”というものを考え出したつまらないものでございます。」



「……もうええ。俺一人で行く…」


「申し訳ありません。私も同行いたします。」


「ったくよォ。MPの無駄遣いしやがって。調子狂うわ…もうこのシーンカットでもええんと違うか?」


意味の分からない事を言いながら生一はスタスタと進んでいった。




* * * * *




城壁の目の前に来た。


城壁と言える高さは無い。


まるで“攻め入るならどうぞ入ってきてください”とでも言わんばかりだ。



「いざという時はしゃべってええ。日本語は相手には分からん。手筈通りいくぞ!」



3人は塀を登り飛び込んだ。ついに決死の侵入が始まった。



城内に侵入してからまずは建物の外回り。庭にあたるエリアだ。


決して音は出さないよう小走りに進む。



いくつか内部に入る為のドアが見えるが、入ったらすぐにトラップがあるらしい。


暫く外側を回ると倉庫らしき建物が隣接している。


ここでまず1人と2人に別れる。


生一が言う。



「おれは武器庫を破壊してから追いつく。言うてた“木がある所のドア”から侵入や。そのドアからなら大丈夫らしい。でも足元常に気ィつけろよ。」



生一がまずは武器庫を破壊する。


今回のミッションの第一段階のキモだ。


もし兵士たちに発見されて追われても、この広い要塞だ。隠れる事は出来るだろう。ただ、武器庫から銃やボウガンを持ち出され、飛び道具を持った兵士が増えてくると状況としては不利になる。


一番押さえておくべきポイントと踏んだ生一は、ここを叩くことを第一の関門とした。



「絶対に成功させる!飛び道具でハチの巣にされたら流石によけれんからな…あと、爆発させたらさすがに何人かが気づくやろう。そこからが時間との勝負やで。」


「飛び道具か…ザンギ(ザンギエフ©ストリートファイター)の奴、大変やったんやな…」


「実在する人物みたいに言わんでええねん。ええからお前ら先開拓しとけよ。俺も追うから!」


「頼むで。」


「よしッ行け!」



山賊兵たちが武器をまとめて保管している場所は知っている。


そこにある火薬なども使い、一気にまとめて爆破させてしまおうというのが生一の計画だ。


兼元と小谷野は気を引き締め、小走りで場外の庭を走り抜ける


「いきなりアイツ大役やん。大丈夫か?」


「俺らはアイツのトレーニングに付き合ってきた。もう信じるしかないやん。あいつの目ェ見てたらこれしかない思ったで。」


「おう。…あそこや!」


生一の言った通り、木が茂った真横にドアがある。


あそこからなら安心して入っていけるという事だろうか…


ドアは空いている。


周りを確認した後、侵入した。


青いタイルが連なっていて何とも不気味な牢獄だ。


壁際に一定間隔で配置されているロウソクの明かりで一応周辺は確認できる。


ここは何階だろうか…自分達が監禁されていたところよりは高いところだろう。


恐る恐るとはいえ早歩きで歩いていくと、鉄格子に出くわした。


いきなり行き止まりなのか…と感じながら鉄格子に近づいていくと…


「カチッ」


小谷野が思わずタイルのスイッチを踏んでしまったのだ。


「やべぇ」と思って足をひっこめる。


わずかにでっぱりのあるここがスイッチになっていると分かる。


スイッチを押したら、何かに連動したのか目の前の鉄格子がカラカラカラと空いたのだ。


自動ドアのような電気的な仕様ではなく、からくりに近い仕組みだろう。


2人は空いた鉄格子の先に進んだ。


しばらくして「ゴッゴッゴッゴッ」と鉄格子はゆっくり降りてきた。


なるほど、床にあるスイッチを押すと鉄格子が開き、暫くすると閉まっていくという仕掛けか…


日本でよく見る自動ドアとは違う原始的な仕様を理解する。


そうと分かると先を急ごうとする。


とっさに兼元が肩をつかんで止める。


「待て!下見ろ!」


変な床だ。


穴が開いている。


一旦走って行くのをやめ近くまで恐る恐る行くと、あと30cmくらいの所で勢いよく針が飛び出してきた。


急いで走り抜けようとしたら下から串刺しってところだ。


「アブねぇな。悪ぃ兼元。いやリーダー。急がねぇとだけど落ち着くわ。」


そういってそろっと針のタイルを潜り抜ける。


油断も隙も無い…さすがアジト内だ。


しばらくしてまたスイッチらしきでっぱり…そしてその少し前に鉄格子があった。


「これはこのスイッチを踏めってコトだろ。」


「カチッ」


踏めば鉄格子が連動して上がっていく。


しかし今度は違った。


上がりきった鉄格子を通り抜けようと歩いていくと


「カチッ」


という音がしたと同時に鉄格子が「ズダンッ」と下りた。


どうやら鉄格子前に隠れスイッチがあり、そこを踏むとドアが強制的に閉じる仕様だ。


開けるスイッチと閉めるスイッチ…


「なるほど…パズルみたいな仕様という事か…。」


2人は「トラップがある」という村人の言葉を思い出し、ここの環境下に対し次第に理解を示していく。



奥に進めばさらに人間の心理をついたいやらしいトラップになる。


スイッチを押して目の前の鉄格子を開ける。


そのまま先へと兼元が進もうとするところで「バカッ」と床が崩れたのだ。


落ちる床である。


バランスを崩し、床の下に真っ逆さまに…というところを小谷野!


ガッシリと兼元の手をつかむ。


「大丈夫か?」


冷や汗をかく兼元。


「あぁ…これくらいはな。しかし嫌らしいトラップだな…」


下には針の山だ。古典的とはいえ落ちたら致命傷だ。


「こんなのが続くのか…上等や。」


2人は表情を引き締め、仕切り直してまた進もうとする。



しばらくすると


『ドオン!』


と凄い爆発音がした。場内が激しく揺れる。


恐らくだが武器庫が爆発した音だ。



兼元と小谷野はお互い顔を見合わせ、ニヤリとした。


恐らくこの爆発で山賊兵達も起き上がってくるだろう。


ここからは時間との勝負になりそうだ。



「あいつ…マジでやりやがったなぁ。」


「ああ!俺達もどんどん先開拓していくぞ。」



あくまでもスイッチや針の床に目を配らせながら、2人は上階…中枢部エリアを目指す。

【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気をくれます!


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頑張って執筆致します。よろしくお願いします

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