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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
41/228

20-2 大脱走

【20話】 Bパート

※敵側のモデルとなっている人物

vaderファーダー➔ビックバンベイダー をイメージして描いています

地下での強制労働は3日目に入った。


残飯ではあるがなんとか命の食事で意識をつなぎ留めながら、過酷な日々が続く。


今日も何時かも分からない朝から重労働が始まる。


勇一達男性はやや髭が生え、服も替わりが無いため浮浪者のようなみすぼらしい見た目になっていく。


それでも生一は目が死んでいない。


一昨日何かをじっくり話したようで、小谷野と兼元の目にも精気が宿ったように感じる。


ちなみに八薙は戻ってこない。


あいつ…上層部に目をつけられて…無事でいるのだろうか。それとも…





昼になったようで上から残飯が降ってきた。


もうお腹が少しでも満たせれば何でもいい。


3日目にして勇一はもうこの環境に迎合してしまいそうになっていた。


疲労のせいもある。


疲れていたら何も考えられないのだ。


朝早くから夜遅くまで限界まで労働させられ、眠るだけの繰り返しになると、だんだんそこから脱出しょうと思う気力が失われる。


そこを見事についているこの要塞内の家畜労働システム…。


考えた奴は恐ろしい。


長く要る収容されてきた村人たちも、何も考えないようになっているようで、目に精気が感じられない。


腹が満たされたら仕事開始まで少しでも睡眠を取ろうと無言ですぐに横になる。


食後すぐ横になるのはあまりよろしくない。そして仕事が終わった後も同じだ。


ここに居れば居るほど、生きる気力をどんどん吸い取られているような感じがした。




昼休み…気になっていたが、生一達がいない。


でも仕事再開の時刻になったら戻ってきた。


仕事が始まれば、監視の目があるので真面目に働かないといけない。


日本語が分からない事を良いことに小声で生一に話す。


「オマエ、食事時どこ行ってたんだよ。まさか他に食事にありつける場所があるのか?」


「今日夜話す。それより見られてるで。暇人に!」


手短に返した。


後ろの人影にビクッとして勇一は急いで懸命に土のう袋を運ぶ。


この日も何時か分からないが遅くまで…バカみたいに土のうを運ぶ仕事ばかりを強いられた。


時給はもちろん0円だ。


もはや仕事とは言えない。




まぁほんの少しだが良いこともあった。


ゼスチャが殆どだが、村人と少しだけコミュニケーションが取れた。


分かった情報と言っても、酷いものだが…



・もし熱を出すなどして倒れてしまったら、衛生環境も悪く、薬もないのでまず助からない。


・そのまま死亡した場合、汚物処理所に遺体を持っていかれ下水と一緒に死体も流されるらしい。



なんとも残酷な話だ。



「明日、俺らはその汚物処理所から脱出する。小谷野と兼元も一緒や。」



夜になって生一が切り出した。


ここにいれば栄養も取れんで疲れて衰弱してそのうち死んでしまう。


実際小谷野も兼元もここに収容される前、小さな切り傷が出来ていた。


でもここ数日でどんどん膿がたまり悪化している。


衛生環境が極めて悪いここにいれば小さなケガがやがては命取りになる。


「このままだとどうなるかは想像つく。助けもこんやろ。こんな迷路みたいな要塞。雑魚寝でよう寝れんし。」


小谷野と兼元も頷く。


「明日夜や…明日の仕事が終わってから見張りの奴が引いたら…」


3人がじっと生一を見る。


「オレら3人、汚水処理所の部屋へ忍び込んで、そのまま飛び込む。」


「死ぬ気か!ドラクエⅤみたいに汚水の中飛び込んで脱出できる保証なんてどこにあるかよ。」


「だからやねん。俺昼休みとか昨日一昨日の夜中に、この辺探索してたんよ。処理所はこの一つ上の階や。場所はもう分かってる。それより上の方にはよう出れんかったけど、処理所の小窓からすぐのトコ、川見えとったわ。

だからここの汚水施設から川まで…結構近い。あいつら汚水、直接川に垂れ流しにしてるわ。でもそこが唯一の脱出ルートやねん。」



「分かった!でもまぁ落ち着け。それでも川に無事出られるかどうか確証が無いだろ。死んだらそれで終わりなんだぞ。命かかってるんだからさすがに軽率な判断はやめろよ。危ないぞ!」



「そやな。今回はお前の忠告も分かるで。確証ないモンに命はかけられんてな。ちゃんと“生きんと”。な…」


生一も分かってる。でも目つきは変わらない。


「でも俺は行く。俺だけでも。それしか手が無い。助けも呼べんやん。

それと再起の為の脱出やねん。勇一達置いて逃げるんとは違う!」



目は本気だった。


小谷野も兼元も覚悟を決めている。



「死ぬなよ…絶対。静那が言ったこと…」


「分かってる!命を粗末にする気はない。汚水に巻き込まれて浮上できずに死ぬかもしれんのは承知や。でもこの3人のうち誰かでもええ。一人でも生き延びたら命がけで助けを呼びに行くから。だからお前らも意地でも生きとけ。」


「分かった。でも…やっぱり本当に死ぬな。悔しい気持ちは分かるけど死ぬなよ。」


3人の目を見る。


初めて3人と心が通じ合った気がした。


「心配せんでもお前ら見殺しにして逃げていくような薄情な奴ちがうから。お前は淡々と仕事しとけ。」


「分かった。じゃあ寝るか!」


「待て。今までで4人が分かってることを共有しとこう。明日はもう無理やから。」



こうして最後の情報共有が始まった。


八薙は未だ戻らない。…もうこの3人の誰かの生き残りに賭けるしかなくなっていた。


4人が労働している村人からかろうじて聞けた情報…それは、




・山賊連中の正式名称は「バッサビア」もしくは「バーサビア」という名前である


・自分たちは若者を中心に周辺の村から労働者として強制的にここに連れてこられた


・それ以外の中継地点でも収容され、無理やり働かされている


・村の女性も人質として捕まえらているが、きちんと男性側が労働をすれば命の保証は守ってくれるらしい


・反逆者は見せしめのため、宮殿の隣にある広場・処刑台で殺される


・初日に見た上背の男以外にもう一人側近が居る。とんでもなく大きい体で、頭を革ベルトで巻き付けた異様なナリなのですぐわかるらしい。名をvaderファーダーと言う。


・「バーサビア」の連中は今も尚近隣の村で略奪を続けている。


・労働者が死ぬなどした場合は、汚物処理場で遺体を証拠隠滅される。




…4人それぞれが得た情報を改めて整理すれば、結構貴重な内容だ。


ここから何か脱出の糸口が見えてくるかもしれない。




* * * * *




翌朝からずっと無言で仕事をこなす3人。


決行する日だ。


思う所があるのだろう。


下水に落ちてそのまま意識を失い、死ぬかもしれない。


そんな“死のリスク”も承知の上で敢行するのだ。


緊張のあまり無言になるのも無理はない。


自分の命をチップ代わりに大脱走を決行する。





……その日の労働も終わり、夜がやってきた。



「何度も言うけど死ぬなよ、生一!小谷野!兼元!」


名前を言って激励する。


誰一人死んでほしくない。


「勇一、コレ預かっといてくれん。」


小谷野がポケットから何かを取り出し、勇一に渡す。


“デビュー戦”とマジックで書かれたコンドームだ。


兼元も続く。


「俺のも預かっといて。絶対戻ってくるから。」


同じようにポケットから何かを取り出し、勇一に渡す。


“祝”とマジックで書かれた……コンドームだ。


2人とも考えている事は同じだった。


「この新婚旅行の間に使う予定のやつや。でもまだ使わんと決まったわけやないし。」



彼らの言葉にいつもは突っ込んでた…けど今は嬉しかった。


彼ら“らしさ”が少し戻ってきたのかもしれない。



「分かった!返すためにも絶対戻ってこいよ。それまで大事に預かっとくから。」


そんな勇一に対して生一が最後に声をかける。


「お前もこの環境下に精神やられんで生きとけよ。もし死んでみろ!墓にクソぶっかけてやるから。」


「なんだよそれ。死なないよ!」


笑顔で返せた。


笑顔で話せたこと自体久しぶりなような気がする。思えば勇一はここ数日ずっと精神をすり減らし沈んだ顔だった。



「会えたらでええ。あいつらにもちゃんと“生きとけ”って伝えろよ!」


とっさに主語が分からず聞く勇一。


「あいつらって?」


小谷野が答える。


「EとBの奴に決まってんだろ!」と。



以前のアイツらしい…バストのサイズで言いやがった。


そしてそのまま3人は、小走りに雑魚寝の就寝部屋から消えていった。




* * * * *




生一達が一つ上の階へ到達する。


「ええか?ここから見張りおる可能性あるで。」


ここからは小声の日本語で。



日本で言う“抜き足、差し足、忍び足”で進む。



…誰も居ない。


緊張感はあるものの、今はおそらく深夜だ。


牢番もさすがに休んでいるだろう。


もし牢番が…一人くらいなら…3人がかりで対処できるかもしれない。



「あの角曲がってまっすぐ。その突き当りの部屋や。もうすぐや。」


小声で生一が指示を出す。


牢番は…やはり居ない。寝ているようだ。


ドキドキしながらだったが3人はついに汚水処理場の扉前にたどり着く。


「行くで!」


大きな声を出して「バン!」とドアを勢いよく開ける。



処理場のある部屋だ。


匂いで確信する。


しかし…





ドアの開く音に反応したのか、陰からヌウッと大きな巨体が起き上がった。


何てデカさなのだろうか。


身長もさることながら、横周りがデカい。


160kgはある!


生一は瞬時に頭を見て言った。


「アタマに革ベルト巻いてやがる!ヤベェ、こいつvaderファーダーだ!」


あの幹部の一人がなんと汚水処理場で寛いでいたのだ。


タバコでも吹かしていたのだろうか。僅かにタバコの匂いがする。


しかし今はそんな事はどうでもいい。


バカでかい巨体が目の前に立ちふさがった。


「マズくないか?生一!逃げようぜ!」


「追手が来たら囲まれて終わりや!賭けるしかねえよ」



生一は体ごと患部らしきそのファーダーに突進し、肘を食い込ませた。先手を打った。


デカいやつに対して素早く内に入り、差し込んだ感じだ。


だが、その巨体はまるで動じない。


丸太のような右手でブローを横殴りの要領で浴びせてくる。


「危ねぇ!生一!」


生一は気付いてとっさにガードした。


しかしガードした直後、壁際まで吹っ飛ばされる。


その様を見て青ざめる小谷野と兼元。



あんなハンマー直撃食らったら首が捥げてしまう。


「あ!」


兼元が叫ぶ間もなく生一を壁の四隅に追い詰める。


リングのコーナーポストに追い詰めるような格好だ。


逃げ場がない。


そこで先ほどのハンマーブローを生一の後頭部目掛けて左右にドンドン放つ。


生一は必死でガードするが、左右に激しく体を揺られそのうち頭を壁に強く打ち付ける。


その衝撃で生一はガード位置を降ろしてしまった。


これが致命的なスキとなる。


大男はハンマーを生一の頭に叩き込んでいく。


「生一ィ!!」


次々と生一の頭にハンマーがぶち込まれ、頭が左右に揺られ白目を向いて崩れていった。


あっという間の出来事だった。



この男、デブなだけでなく動きも早い。


失神した生一を確認後、振り向き、今度は2人に向けて突進してきた。


さっきの丸太のような腕から繰り広げられるハンマーを食らえばあっという間に気絶してしまう。


恐怖のあまりとっさに頭部をガードした。


しかしそんなものは関係なかった。


体を突き出し体重を2人に浴びせたのである。


ファーダーアタックという所だ。


2人は交通事故にあったかのような吹っ飛ばされ方をした。


3mくらい吹っ飛んだかと思えばもう間合いを詰めてきている。


恐怖で判断が出来ない。


さっきの生一があっという間にKOされた横殴りのハンマー。あれを後頭部に食らえば終わりだ。その光景が恐ろしかったのか、兼元は頭を押さえて縮こまった。


しかし、それは彼からしたら願ってもない態勢となってしまった。


しゃがみこもうとした兼元の目の前に潜り込むファーダーの手。


彼は兼元の首を強引に鷲掴みにして力任せに吊り上げる。


片手である。


「兼元ォ!危ない!」


横で叫ぶ小谷野に見向きもせずそのままむき出しの地面に兼元をたたきつけた。


危険な角度がついた“チョークスラム”だ。


軽々とたたきつけられた兼元は気を失ってしまった。…泡を吹いている。


完全に気絶したのを確認して、その男はゆっくりと起き上がった。




「う…嘘だろ…まだ俺達…」


立ち上がり後ずさりしながらこの絶望的な状況に怯える小谷野。


生一も、兼元も何もできずにぶったおされてしまった…


俺が…俺がやられたら2人の命運も尽きる…


でも…冗談じゃないぜ…この目の前のデカブツさんは。


3人の中じゃ俺が一番デカいのに、その倍近くあるんじゃねぇのか…


は…はは…悪い夢見てるみたいだ…


そんな思いが脳内を駆け巡る。


絶対的な相手との力の差を目の前に、手が震える。足がすくんでうまく動かない。



「ヴゥアウ!」


丸太のような腕を振り上げようとした


「ひいぃっ!」


恐怖の余り小谷野は頭を押さえ悲鳴を上げた。


それを見た目の前のデカブツは腕を一旦振り下ろして笑い出した。


相手にもならない…目の前の雑魚が怯えている状況に笑いが止まらないようだ。



よく見れば小谷野は小便を漏らしていた。


小便を漏らして足が震えていて、おまけに両手で頭を隠して肩を震わせている姿。


これ以上無いくらいに情けない姿に堪えられなかったのだろう。


ファーダーはさらに大笑いした。




小谷野は震えた…しかしそれは恐怖ではない。


悔しくて怒りに火が付いた。


これから殺される相手に笑われて……そんなの日本人としての恥だ。


涙を流しながらも叫びながら突撃していった。



しかしはたから見れば、相撲の横綱に若手がぶつかり稽古をするような感覚だ。


ぶつかってきた小谷野の頭を軽く引きはがし、頭突きを叩きこむ。


小谷野の額が割れ、革ベルトの跡が額にくっきりとつく。


怯んだ小谷野の首をガッと掴む。


掴まれてしまった。


そのまま今度はもう片方の腕も使って高々と持ち上げ、兼元に浴びせた“チョークスラム”のような形で地面に叩きつけた。



気絶…はしなかったが後頭部から勢いよく叩きつけられた小谷野は吐血。


心臓が止まるような衝撃。



「自分が…死んだら、あとの2人の命運も…尽きる…自分が…死ん…」


うわごとの様にしゃべりながら立ち上がろうとする小谷野。


目はうつろで意識があるのが不思議なくらいだ。


足取りは幹部である大男の方に向けてではない、汚水処理場の下水の方だ。


意識があるかどうか分からないが、彼は自分だけでもこの中に飛び込もうとしたのだろう。


側近のファーダーという男は、どのみち死ぬだろうと見ている。脱出の意図はまだ分からないようだ。


“まぁ一応とどめを刺しておくか”と小谷野の方へゆっくりと近づく。


薄ら笑いを浮かべながら。


さっき相当笑ったから余韻が残っているようだ。



必死で何かに持たれかかりながら立とうとする小谷野。


チョークスラムが相当効いたのか、足も腕も痙攣している。


まともにモノが掴めないくらい瀕死だ。


必死に傍の机にしがみつきなんとか立ち上がったところで、とどめとばかりにまた首根っこを掴まれた。


次食らったら無事では済まないだろう。


しかし小谷野にはもうふんばったり切り返したりする力が無かった。


小谷野の首に太い手がガッシリ食い込む。


そして吊り上げようと力を入れたその時!



「ウグァァアウ!」



大声を上げて小谷野から腕を離した。


小谷野はしがみついていた机に座るような形で着地する。


何が起こったのか!?




生一が意識を取り戻し、後ろから股間を思いっきり蹴り上げたのだ。


思いっきり蹴ったため、脂汗を出し股間を抑え悶絶するファーダー。



生一は意識もうろうになりながらも必死で伸びている兼元を肩に担ぎ上げ、下水道の入り口まで走る。途中で小谷野も担ぐ。


「大きく息吸えよ!いくぞ!!」


そして汚物の匂いが充満した下水施設に躊躇なく飛び込んだ。




生一の機転で命からがらの脱出となったのだ。


一人は気絶だが、3人とも本当にギリギリの状態だった。


ただ、これから先の運命がどうなるのかは分からない。



目を瞑って、息を止めて、虫の息の2人をしっかりロックしたまま…生一は息の続く限りバタ足で視界の見えない汚物まみれの海をつき進んだ。


何処まで進めばゴールか分からないまま…意識の続く限り……

【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気をくれます!


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頑張って執筆致します。よろしくお願いします

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