表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: SHUSAKU
season1【A面】
42/239

20-1 大脱走

【20話】 Aパート

※敵側のモデルとなっている人物

ハイキック野郎➔格闘家「ミルコ・クロコップ」 をイメージして描いています

「オラオラ! さっさと動け!」


鼓膜を震わせるような、意味の聞き取れない野卑で甲高い怒号が、冷ややかな石壁に幾重にも反響し、山賊たちが陣取る要塞の地下フロアに不気味な余韻を残して響き渡った。


ペルシャ湾から吹き付ける乾いた砂の風さえ届かない、巨大な石造りの要塞。


その地下室は、分厚い石のブロックが隙間なく積み上げられ、至る所の影から湿ったカビの臭気と、喉を刺すような埃の匂いが立ち昇っていた。


そこには、周辺の村々から暴力的に連行されてきた住民たちが、生気を失った暗い瞳で、出口のない奴隷労働を強いられていた。


怯える女性たちは人質として、そして男性たちが反旗を翻さないための、いわば生きて動く「抑止力」として、日の光さえ差し込まない冷たく暗い牢獄に押し込められていた。


自分たち――勇一を含めた男性五名が荒々しく引きずり込まれたのは、そんな太陽の温もりさえ決して届くことのない、湿った地下の洞窟だった。


そこには既に、近隣の村々から力ずくでさらわれてきた大勢の若者たちが、要塞建設という名の過酷な労働に、獣のように従事させられていた。


中継地点の村で肌に感じていたあの不吉な予感は、今、最悪という言葉では足りない形で的中してしまったのだ。

こいつらは、ただの無法者ではない。


近隣の村々を組織的に侵略し、支配を広げる、血も涙もない本物の山賊なのだ。


自分たちの邪悪な拠点となる城を、こうして奴隷たちの手で築き上げ、一歩ずつ着実に勢力を拡大させている。


一九九七年という、文明の行き届いたはずの現代にありながら、この世界の忘れ去られた片隅では、まだこんな原始的な支配と剥き出しの虐待が、白昼堂々と、平然と行われている。


* * * * *


自分たちは、入り組んだ冷たい石の階段を、地の底へ向かうようにどこまでも下り、さらに深淵にある地下フロアへと乱暴に突き落とされた。


そこで泥のような思考を巡らせる僅かな暇さえ与えられず、無慈悲な労働が開始された。


腕を締め付けていたロープこそ解かれたが、その解放感に安堵する者など微塵もいない。


この地下牢へと至るまでの道筋は、まるで巨大な蟻の巣のように複雑に入り組んでおり、一度迷えば二度と戻れない迷路のようだった。


ここを通ってきた僅かな記憶を辿り、自分の足だけで地上へ脱出できる保証など、どこを探しても見当たらなかった。


「運べ! 早くしろ!」


と、背後から突き刺すような怒声が飛ぶ。


まずは、高くそびえ立つ壁を作るための、砂の詰まった重い土のうを運ばされた。


湿って重量を増した袋を肩に担ぎ、一歩でも足を止めようものなら、即座に命を刈り取るような死の音が飛んでくる。


一人の監視役の男が、見せしめのように、乾いた地面に向けて重いムチを勢いよく振り下ろした。


「パチィンッ!」


という、鼓膜を裂くような鋭い音が石造りの廊下に反響し、火花が散るような衝撃が物理的に空気を震わせた。


あんな凶悪な皮のムチで叩かれれば、人間の皮膚など一瞬で裂けてしまうだろう。


その音を耳にしただけで、自分自身の背筋には氷を押し当てられたような、ゾッとする冷たい戦慄が走った。


自分たち五人は、もはや抗う術もなく、底の見えない労働の濁流へと飲み込まれていった。


体力は、既に疾うに底をついている。


ここまで何十キロもの荒野を、まともな水も食料も与えられず、ただ飲まず食わずで歩かされてきたからだ。


* * * * *


けれど、激しく波打つ鼓動を抑え、自分自身の心の中で何度も呪文のように言い聞かせた。


「絶対に、生き抜くんだ」と。


それは、あの最悪の別れ際に視線を交わした、仁科さんや葉月への、命を懸けた誓いでもあったのだ。


そういえば、葉月のあの細い肩口に負った深い傷は、今、一体どうなっているのだろうか。


絶え間なく滲み出る出血と、熱を帯びて赤く腫れ上がった傷口。


この不潔で劣悪な施設の中に、まともな消毒や手当てをしてくれる慈悲深い人間がいるとは、到底思えなかった。


可哀想に、と胸が締め付けられる。


あの深い傷は、癒えたとしても、きっと彼女の肌に一生消えない醜い跡として残ってしまうだろう。


「(自分たちはもちろんだが、彼女たちは関係ないのに……畜生……)」


自分は奥歯が砕けるほど噛み締め、拳を強く握りしめたが、爪が手のひらに食い込む鈍い痛みだけが虚しく跳ね返ってきた。


ムチを片手に持った男が、不敵な、獲物をいたぶるような笑みを浮かべながら、ゆっくりと自分の方へ歩を進めてきた。


恐怖に身をすくませた俺は、視線を地面に落とし、慌てて土のう袋を肩に担ぎ直すと、よろめく足取りで歩き出した。


それを見たムチの男は、「そうだ。初めからそうすりゃいいんだ」と、卑屈なまでの満足感を顔に湛え、ニヤニヤと嫌らしく口角を歪めた。


その時、土のう作業場の反対側の角で、一人の村人らしき年若い労働者が、疲労のあまりバランスを崩した。


彼が抱えていた重いセメント袋が地面に叩きつけられ、辺りに灰色の粉塵が煙のように舞い上がる。


ムチを持った男は、飢えた猛獣のような速さでその男へ駆け寄り、一切のためらいなく、力一杯ムチを振り上げた。


「ビシィッ!」


という、聞くに堪えない湿った肉の打撃音が地下室に響く。


思わず目を背け、視線を逸らしたくなるような残酷な光景。


男の剥き出しの腕からは鮮血が激しく噴き出し、瞬く間に赤黒く膨れ上がった無残に腫れ上がった傷が、その白い肌に浮き上がった。


村人は、肺を絞り出すような悲痛な絶叫を上げた。


しかし、ムチの男は何食わぬ顔で、さらなる追撃の二発目を打ち込もうとした。


「(あんな皮のムチを生肌に叩き込んだら、本当に人間が壊れてしまう! 危ない!)」


自分自身の直感がそう警鐘を鳴らした瞬間、地下室の重苦しい空気を鋭く切り裂く声が上がった。


「やめろォ!」


それは、紛れもない、八薙の魂からの叫びだった。


それは咄嗟に出た日本語だったので、周囲を取り囲む山賊たちに言葉の正確な意味は通じない。


けれど、その張り詰めた声に込められた、剥き出しの怒りと、決して屈しないという反抗の意志だけは、確実に彼らへ伝わった。


ムチの男、そして近くで様子を伺っていた、木刀のような太い棒を手にした男二人が、獲物を見つけたハイエナのように、じりじりとした歩調で殺気を孕んで八薙の元へ近づいていく。


八薙には、目の前で自分より立場の弱い人間が無抵抗に虐げられることが、生理的にどうしても許せなかったのだろう。


自分自身の身も危ういというのに、彼は立ち塞がる三人の男を、まるで獲物を射抜くような鋭く、冷たい視線で真っ向から睨みつけた。


けれど、それは客観的に見て、あまりにも無茶で無謀な暴挙と言わざるを得なかった。


ここは、慈悲など存在しない敵の本拠地なのだ。


仮に目の前のこの三人を力でなぎ倒せたとしても、石壁の濃い影からは次々と増援の影が溢れ出してくるだろう。


それに、この迷宮のような地下施設からは、外へ脱出すること自体が困難を極めるのだ。


何より、八薙自身の体力が既に底を突き、限界に達していることを、俺は痛いほど知っていた。


ムチを持った男は、八薙の頬にムチの先端をヒタヒタと冷たく当て、薄気味悪い嘲笑を浮かべた。



次の瞬間、声もなく背後に回っていた棒を持った男たちが、容赦ない一撃で八薙の腰を激しくしばき倒した。


「ぐあぁっ!」


という、短い苦悶の声を上げながら、腰を押さえて、八薙は抗う間もなくあっけなくその場に崩れ落ちた。


無理もない、と俺は心の中で嘆いた。


彼にはもう、自分の足で踏ん張るための最低限の筋力すら、一滴も残っていないのだ。


汚れきった首元を無造作に掴み、ムチ使いの男が八薙をゴミのように無理やり立たせようとする。


残された俺たち四人は、息を呑み、その目を覆いたくなるような残酷な状況を、ただ重い沈黙の中で見守ることしかできなかった。


八薙と山賊の男の顔が、鼻の先が触れ合うほどの、息苦しい距離で対峙する。


男は威圧するように顔を近づけ、何かを荒っぽく怒鳴り散らしたが、八薙は痛みに顔を激しく歪めながらも、一歩も引かずにその目を真っ直ぐ睨み返した。


ボロボロになったその瞳の奥には、まだ死に絶えていない鮮烈な闘志の炎が、確かに宿っていた。


その一切屈することのない反抗的な目が気に食わなかったのか、男は八薙に向けて唾を吐きかけるように何かを喚き散らした。


そこへ、石床を叩く重々しい靴音が響き、地下室の入り口の階段から一人の男がゆっくりと下りてきた。


身長は優に一九〇センチ近くあるだろうか。


鋭利な眼光と、岩のように筋骨隆々とした肉体。周囲の酸素を奪うような圧倒的な威圧感を放つ男。


その男が姿を現した瞬間、先ほどまでの喧騒が嘘のように、地下室の空気が物理的に凍りついた。


先ほどまであれほど威張り散らしていたムチの男さえも、慌てて武器を腰にしまい、直立不動の姿勢で深々と敬礼した。


その巨漢の男は、まず周囲を睥睨した後、真っ直ぐに八薙の方へ値踏みするような視線を向けた。


八薙は本能で直感した。


「(こいつがこの城のボス……もしくはボスの側近だな。こいつを叩けば……)」と。


しかし、傍目で見ている自分たちの目には、八薙の肉体の限界は誰の目にも明らかだった。


それでも、驚くべきことに、八薙は地を這うような呻きと共に、その巨漢に向かって弾丸のような勢いで突進したのだ。


「おおおおお!」


と、喉を裂くような雄叫びが上がる。


周りの村人の労働者はもちろん、山賊の部下たちまでもが一様に、そのあり得ない光景に驚愕の表情を浮かべた。


「このお方を知らないのか? このお方に逆らう馬鹿がいるのか?」という、信じられないものを見るような、冷ややかな視線が向けられる。


自分は周囲の引き攣った反応を見ながら、八薙が今まさに相対している男の正体を必死に探った。


周囲の空気を歪めるような、只ならぬ気配。


けれど、八薙だって県内では最強クラスと謳われた、天性の空手家なのだ。


例えどんなに消耗しきっていようとも、その拳の鋭さは本物のはずだった。


八薙は、鉛のように重いはずの体とは思えないほど軽やかなフットワークで、男の間合いへ一気に滑り込んだ。


そして、残りの力をすべて注ぎ込んだ左フックを、相手の顎を狙って放つ。


しかし……その巨漢の男は、まるでスローモーションの映像でも見ているかのように、極めて軽々とした最小限の動作でそれを易々ととかわした。

一瞬で間合いを詰め、死角から放った一撃であったはずなのに。


自分たちのような戦いの素人なら、反応することすらできずにその場に昏倒していただろう。


八薙は怯むことなく、即座に腰の入った右の正拳突きを見舞った。


淀みのない、流れるような左からの鮮やかなコンビネーション。


しかし、男はその電光石火の突きを、既に完全に予見し、見切っていた。


後ろに下がって避けるどころか、自ら一歩踏込み、八薙の右肩にある三角筋の脇へ、鋭い肘打ちを容赦なくブチ込んだ。


「ぐっ……!」


という、鈍く重い音が響き、八薙の右腕から瞬時にすべての力が奪い去られた。


腕を力なく幽霊のように垂らし、一旦距離を置こうとした八薙だったが、その僅かな隙を男は見逃さなかった。


自分たちの目には、あまりにもその動きが速すぎて、一体何が起こったのか、その詳細すら分からなかった。


鋭く空気を切り裂くような音がした直後、男の左足が、鎌のような巨大な軌道を描いて八薙の頭部へ向かって飛んできた。


あまりにも鋭利で、重厚な左ハイキック。


それが八薙の眉間を掠め、側頭部を正確に、クリーンヒットさせた。


「ドカッ」という、内臓に響くような重低音の響き。


ハイキックをまともに浴びた八薙は、糸の切れた操り人形のように無残に横ざまに転がり、そのままピクリとも動かなくなった。

対峙してから、まだ十秒も経過していない短い間の出来事だった。


あの無敵だと思っていた八薙が、手も足も出ずに一瞬で完敗したのだ。


自分たちは、覚めることのない何か最悪の悪夢でも見ているような、ひどい目眩に襲われた。


大勢の武器を持った人間に囲まれたならまだしも、一対一の、完全な素手での戦いにおいて、八薙が秒殺されるなど想像だにしていなかったのだ。


ぐったりと沈黙し、倒れ伏す八薙のもとへ、生一が弾かれたように駆け寄った。


打ち所が悪ければ、そのまま命に関わるかもしれない。


生一は必死に冷静さを保ち、八薙の頭部をしっかりと固定しながら、彼をゆっくりと仰向けに寝かせた。


かろうじて、意識はあるようだった。


本当に一瞬の出来事だったが、たった一発の蹴りで八薙ほどの男が沈められた。


生一は、目の前に悠然と立つ長身の男を、射殺さんばかりの鋭い目でじっと睨みつけた。


「この、ハイキック野郎!」


と、震える声で叫ぶ。


当たり前だが、そんな日本語の罵声が相手に通じるはずもない。


男はそんな生一の存在を、うるさい羽虫でも払うような無造作な動作で突き飛ばし、八薙の首元を乱暴に掴み上げた。


「(やめろ……やめてくれ……もう勝負はついただろ……。もう俺たちは逆らわずに働くから、頼むから命だけは……)」


自分は、震える自分の膝を必死に押さえながら、心の中でただ祈るしかなかった。


男は八薙を胸ぐらごと宙に吊り上げ、意識が朦朧としている彼の顔を覗き込み、何かを低く語りかけた。


八薙は、その不気味な「声」にかすかに反応した。


けれど、急所にあの衝撃的な打撃を食らったのだ。


体は痺れ、指先一つ動かすことすらできない。


ハイキック野郎は、そんな無抵抗な八薙にさらに言葉を投げかけ、驚いたことに彼を軽々と肩に担ぎ上げると、そのまま上の階へと無言で連れ去っていった。


「やめろ! 八薙をどうするんだ!」


と、俺は叫ぼうとしたが、喉が恐怖で激しく引きれてしまい、声にならない。


生一が、震える自分の横に歩み寄ってきて、静かに、けれど墓石のように重い口調で呟いた。


「今はどうすることもできん。まずは……“今日のお勤め”を果たしてからや」


生一が命名したその「ハイキック野郎」は、やはりこの組織の、中枢を担う極めて重要人物であるようだった。


* * * * *


地下の作業場では、あの「ハイキック野郎」の登場によって、周囲の山賊の男たちも明らかに怯え、空気が張り詰めていた。


同時に、彼らは八薙の、あの死を恐れぬ命知らずな行動に対しても、信じられないといった様子で驚愕していた。

そこから読み取れる事実は、ただ一つ。


この城において、あの男に逆らえる人間など、存在しないに等しいということだ。


けれど今は、そんな絶望の深淵に浸っている暇さえ、自分たちには残されていなかった。奴隷労働の続きが待っている。


今は一体、何時なのだろうか。


時間の感覚さえ麻痺したままの体で、ただ延々と土のうを運び続けるだけの空虚な時間。


やがて、肉体労働という名の、何の価値もない無駄な仕事がようやく終わりを迎えた。


現代社会では、これを「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」と呼ぶらしい。


腕や足は、過度な疲労によって意思とは無関係に勝手な痙攣を繰り返している。


この先、自分たちに食べ物は与えられるのだろうか。


そんな募る不安に駆られていると、労働を終えた一人の村人が、手招きをして自分たちを奥へと静かに案内してくれた。


そこは、少し開けた吹き抜けのエリアだった。


「ここで待っていればいい」……村人は、そんな意図を込めたジェスチャーを自分たちに示してくれた。


どうやら、この吹き抜けの真上の階で、山賊たちが賑やかに食事をしているらしい。


その食べ残し……つまり、汚れた残飯を、下の階に無造作に投げ込んでくるのだ。


* * * * *


それを地面に這いつくばって拾い集め、飢えを凌ぐという、人間としての尊厳を微塵も認めない非道なシステムだ。


昨日もそうだった。自分たちの命をゴミのように弄ぶ山賊たちへの怒りが、再び胸の奥で煮えくり返る。


しかし……


「オラ勇一、食えよ」


生一が、低い声で自分たちを促した。


階上から、パンの乾いた端切れ、焦げたベーコンの脂身、切り捨てられた野菜の皮や、腐りかけた実がパラパラと降ってきた。


「ちくしょう!」


俺は、滲む涙を拭いもせず、地面の砂に汚れた食べ物を必死に拾い集めた。


食べ物をこれほどまでに粗末にされることも、こんな人権を無視した仕打ちを受けることも、到底許せなかった。

強制的に収容され、無賃で働かされるだけの歪んだ世界。


人権も法も存在せず、ただ暴力と恐怖だけで支配される石の要塞。


ここは、現実に存在する「地獄」そのものだった。


ふと吹き抜けの端を見ると、大きな古びた壺が置かれていた。


中を覗き込んだ瞬間、鼻を突く強烈なし尿の異異が襲ってきた。


排泄物がそこに溜められていたのだ。……衛生環境も、最悪の一言に尽きた。


村人と分かち合いながら、黙って地面の残飯を漁り続けていた生一たちだったが、少しだけ腹が満たされたのか、ようやくその表情に僅かな生気が戻ってきた。


生一が、自分の方へ近づいてきた。


彼は、今のこの絶望的な状況からはおよそ想像もつかない、どこか場違いで奇妙な話を切り出した。


「自分ら、ゲマにやられたわけでもないのに、なんでこんなことになったんやろな。

救いが無さすぎるやんここ。村人も“人質のせいで動けん”っていうのはあると思うけど、目が死んでるし。

あのハイキック野郎はエグいし…ここは居るべき場所とちゃうよな」


こんな絶望の淵で、なぜ『ドラゴンクエストⅤ』のネタなのだろうか。


けれど、その突拍子もない言葉のおかげで、自分の強張っていた心がわずかに解けたのを感じた。


「生一…よく頑張ったな。みんなに対してもそうだけど、本当にすごいと思ったよ。

やっぱり、あいつ……静那の言葉があったから、踏ん張れてるのかな。

でも、生一。ここから出るのは不可能に近いぞ。助けが来るとも思えないし…」


兼元と小谷野も、なんとか胃に食料を流し込むことができたのか、ようやく言葉を交わすだけの気力が蘇ってきたようだった。


「確かに、ゲマにやられてもないのに、こんな檻に入れられたよな。

俺とその仲間たち……っていうことは、俺、主人公っていうことで認識していいんかな?」


普段なら即座にツッコミを入れるはずの小谷野だが、今日はその軽い口にさえ覇気がない。


「どうやってここから出るか、どういう過程で助けの手が届くか、まるでイメージが湧かん。でも、こんなクソみたいな残飯…もう嫌や。」


小谷野の無理に作った陽気な仮面の下には、深く鋭い怒りが隠されていた。


各々の抱く憤りが激しくぶつかり合い、会話の内容はとりとめもなくバラバラだった。


まずはお互いの内に溜まった感情を吐き出さなければ、正常な判断すらできないような極限の精神状態だった。


しかし生一が、とりあえず話をまとめようと居住まいを正す。


どうやら、何か具体的な策があるようだ。


「お前ら、一応ドラクエⅤのあの“ゲマの奴隷ネタ”は知ってるんやな。

ならよ……あのゲームの主人公、どうやってあそこから脱出した?

思い出せ。まさかゲームが打開のヒントになるとは思ってなかったけど、瓢箪から駒やぞ、これ! まぁ、手順をよう聞け。まずはな……」

【読者の皆様へお願いがございます】

ブックマーク、評価は大いに勇気をくれます!

現時点でも構いませんので、ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂ければ非常に嬉しいです!

よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ