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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
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18-1 静那

【18話】 Aパート

小雨が降り注ぐ墜落現場。


優しい雨…ではあるが、煙に反応してか空には妙に黒い雲が形成される。



結果的にこの雨が鎮火の手助けになっている。


霧雨のような雨が墜落した旅客機の全貌を少しづつ露わにしてくれる。



少し離れた小さな広場には収まりきれないくらい遺体が並べられている。


それでも丁寧に遺体を並べ、軽く土をかけて仮埋葬する真也。


原型を留めていない遺体もあった。もう60体近くになる。


遺品があればそれを一緒に添えて並べられる。


遺品の中には男性が機内で熱心に書き残していたメモもある。


紙の淵側が燃えていたが無事だ。真也はそのメモ帳を葉っぱで丁寧に包んで書き残したであろう遺体の傍に置く。


そして石で重しをつける。



きっとこの父親の奥さんか子どもがこのメモに目を通すだろう。


自分は文字は読めないけど彼の想いが詰まっているはずだ。


だから家族の手に渡るまでは絶対に紛失させない。


生き残った者の責務だと感じ、細かい遺品は見逃さずに整理する。


それと同時に………静那の捜索は続く。




静那はまだ、見つからない。




旅客機はまだ激突時に土砂に突っ込んだようで少しめり込んだように埋まっている。


これを全て解体して中の物を取り出すには時間がかかる。


土砂も一緒になっているからだ。


数人でスコップ…いやユンボが要るだろうコレ…


でもこの国で、日本の“コマツ”みたいな優秀な重機があるのだろうか…


そんな事を考えながらでも手は動かし続ける。



ありがたいことに小雨が喉の渇きを潤してくれた。


水を得て…いくらか体が生き返った。



5~6時間くらいだろうか…気絶していたとはいえ睡眠もとれたので体が動く。


雨が降っている間にできるだけ破片の撤収作業を行おうと動いた。


煙は…どうやら落ち着いてくれたようだ。作業の最大の障害が消えた。



進めていこう!先輩方もきっと頑張ってくれている。…前向きな表情になった真也。



決して体は万全じゃないけど、体が動かずにはいられなかった。




* * * * *




……これは彼女の意識…なのだろうか?




どこかで雨音がする。


体中が焼けるように熱い中、何か優しい光が体にしみ込んでくるような感覚がする。


目だけが動く。


でも真っ暗で周りは何も見えない。


何日が経過したのだろうかさえ分からない…雨が降りしきる中でその雨が頬をつたい口元に流れ込む。…意識が蘇る。


その優しさの源、水が体にしみこみ、まだ自分が生きているのを理解する。


でもその意識はすぐに途切れてしまう。



そして意識は……一人ぼっちの……世界へ。




* * * * *




気が付くと自分はベットにいた。



見慣れない天井だ。


体が動かない。


片手に温かさを感じた。


目線だけ右手にやる。



そこで見たもの…ベットの上で手を握り続けてくれる男の子。でも手は震えていた。


この子は…“シンヤ”だ。


昨日初めて会った子。


はるばる日本から会いに来てくれた日本で出来た初めての友達。


彼は無事で…良かった。


でも可愛そうに。


よっぽど怖かったのだろう。


震えが止まらないようだ。


「大丈夫」って日本語で何て言うのだろうか?


体が…そして言葉が上手く出ない。


体の一部が熱い。


その熱い部分を中心に体全体が麻痺しているせいで動かない。


この子には悪いけど今は少し休もう。




* * * * *




天井は見慣れた。


あれから病院のベットにずっといる。


少しづつ状況を受け止められるようになる。




お父さんがいなくなった。



私をかばっていなくなった。



そんな事を暗闇の中で考えていたらたまらなく寂しくなる。



…だれか居て…



そう思った時、あの子 シンヤが来てくれた。


まだ日本語がうまく話せないけど、シンヤは笑って応じてくれた。




シンヤは星を見せてくれた。


みんなが寝ている世界…夜。


そんな世界で2人だけが起きている不思議。



夜一人でベットにいるのがたまらず不安だったけど、その日から少し楽になった。


シンヤがいる。


だから一人じゃない。



* * * * *



車いす生活は初めてだ。


心配そうな表情でシンヤが私を見てくれる。…距離が近い。


ちょっと看護婦さんに怒られてるシンヤ。


そこからは少し距離を置いて見守ってくれるシンヤ。


振り向くと優しい表情をしてくれた。


病院内でのシンヤの評価は“とても優しそうな目をした明るい子”だった。


…でも私は知っている。



何気ない時にふとシンヤの顔を見ると……そう……


その時のシンヤはものすごく険しい顔をしている時があるって。


何かに怯えててそれに対して睨み返しているような目。


何を考えているかどうか分からないんだけど、時々すごく怖い時がある。



* * * * *



なぜか学校に来ない真也。


昔いじめを受けていたからって聞いたけど、それが辛かったからかな。


真也にも辛い時はあるだろう。


だから真也の思いを尊重してあげたいけど…


でも自分もいじめを受けるようになった。


理由かよく分からないけど、私の体にある大きな傷がいけなかったのかな。


怖がられて避けられるようになった。


…とても辛い。


助けて…


だれかに相談したい。


でもなぜか寮にはいない真也。


朝から夜までいつもいない。


私今学校で独りぼっちなんだよ。


ずっと一人でいるんだよ。


だから来てよ…真也。


いないのは寂しい。


寂しい…


すごく寂しいから…上を向いて歩こう。



* * * * *



低学年だけど初めて出来た近所のお友達。


久しぶりにできた友達。


寮と介護施設の交流会で遊びに来てた女の子。


次の日曜日に遊びに行くんだ!


すごく楽しみにしてた。




公園を散歩して田んぼの方に差し掛かった。


工事現場がある。下水道工事をするための地下トンネル。“立坑(地表から縦方向に掘られた坑道)”というものだ。


その時はこれが何なのかよく分からなかった。


「すごーい。男子が作る基地みたいだね。」


その友達と立坑の下を見ながら話していた。


しましま模様のバーのところに看板がある。


『工事現場にご協力ください』


「見て見て!これ。この漢字。こうじげんばに…コレ“きょうりょく”って読むんだよ。たぶん一緒に手伝ってくださいってことだよ。下の方、行ってみよう!」


探検のような気持ちで立て坑に入っていった。


でも低学年のその子は足が届かず、そのまま体のバランスを崩し、立坑の一番下に落ちていった。



急いで助けを呼びに行く。


幸い頭からは落ちなかったけど、結果足を骨折してしまいその子は救急車で運ばれた。




その子のお母さんが怒り心頭で静那を睨みつける。


周りのお母さん方も静那を冷ややかな目で見ている。


「アンタ何を考えてるのよ!こんな危ないところ歩ませて!あの子が落ちてもし死んだりしたらどうするんよ。馬鹿か!

骨折ですんだけど年長の人間がケガさすとかどういう教育しとるんよ。信じられんわ。工事現場に平気で入るとか。

どうなんよ!あんた!!さっきからウンともスンとも言わんで黙ってばっかりで全然可愛げもない。なんか言ったらどうなん!えぇ!」


怒鳴りつけるその子のお母さん。


怒涛のような怒りを浴びながら、何と言えばいいか分からなかった涙目の静那は一言こう返答した。



「すん…」



* * * * *



学校を退学した。


学校に行かないことは良くない事っていうのは…分かってる。


それに関して諭士さんは許してくれた…


けど、学校に行けなくなった…退学したという事実は残る。


誰からも相手にされないまま逃げるようにして学校をやめてしまった。


誰かの為に自分はいていいんだという自己肯定感が欲しかった。


そんな時いつも真也の事を思い出す。


後日、知り合いの介護施設に通い始めるものの、同じ寮に居ても真也に会う事が殆ど無い。



「真也…どうしてるんだろう。何か話がしたい…学校に行けなくなった“こと”が辛いって話を聞いてほしい。」



真也と話をしたいのにいない…


施設内のおばちゃんたちは、優しくしてくれているけど…どこか心はひとりぼっちだった。


寂しくても笑っていた。


でもどこか寂しさは消えない。


話がしたい。


話が…聞きたい。


聞くだけでもいい。


そう思った時、何かを閃いたのか、夕食を作ることにした。



まだつたない手さばきだけど魚をさばけるようになったんだ。


冷蔵庫にラップをした刺身を入れる静那。


焼き魚も作った。


しかし、これはやがて冷めてしまう。


夜になっても真也は戻ってこない…。


食事を…温め直す。


作り直して待つ静那


話がしたい…


寂しくても笑っていたけど、それは今も続いている事。そんな妙な癖が出来てしまったこと。


でも本当は素の自分で笑いたい。


真也…


今どこにいる?



「強くなんてならなくても良い…」



真也の気持ちを尊重…するのが辛かった。


なんでそんなに…強くならないといけないの?


心が一人で押しつぶされそうになる。


でもこれ以上、諭士さんには無理を言えない。







諭士さんがお手洗いに行く傍ら食堂を通りかかった。


そこには、寮の食堂で一人俯いたままの静那がいた。

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