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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
30/228

15-1 ある旅客機での出来事

【15話】Aパート

空港で諭士さんと別れてから大分経つ。


インドのハブ空港到着までのフライト時間は10時間…だそうだ。



普段部活の時、部室で色々と話をする面々も、この飛行機の中では大人しくするしかなかった。


離陸してからすぐは、初めての海外という事でワクワクを抑えきれない面々だったが次第にやることもないので静かになっていった。


仁科さんが『旅の指さし手帳シリーズ』を読んでいたくらいで、女性陣は寝てるのか動きなし。


小谷野と兼元は…静那の隣の席をめぐり、小声で争っていた。


はじめ静那の隣は真也が座っていたため、真也に席を変わるように指示する兼元。


そこで真也があっさりと席を交代してくれたところまでは良かった。



しかしその後、眠くなった静那がうつらうつらし始めた。


そして兼元の肩に寄りかかるようにもたれ、そのまま寝息を立て始めたのだ。


この様子を見た兼元は、小谷野や勇一の方を見て「ドヤァ」といわんばかりの表情を見せたのだ。



これに怒った小谷野が、小声で怒鳴る。


「お前ズリィぞ!あと10分で替われ!そこの席!」


「やーだね。ベロベロベロ~。ここ俺の席やもんね~。替わるかよバーカ。お前はそこで悶々としてな!」と挑発して火に油を注ぐ。


手に置いてあったキャンディーを兼元ではなく静那にぶつける小谷野。


結果静那は気が付いて起き上がる。


「ん…あぁ…私寝てた?ごめんね寄りかかったりして。」


やや申し訳ない顔をした後、静那は自分の席に体制を戻す。


それを見て小谷野が小声で「一人で優越感感じさせるかよ!お前こそさっきの思い出しながら悶々としてろ!ダァホ!」と言い返す。


「てめぇ、どうやら分かってないみたいやなぁ。今の俺とお前の立ち位置がよぉ。」



怒ってはいるが静那の隣を確保している兼元には余裕が見られる。


“まぁ見てな。新婚旅行への景気づけだ”とばかりに静那に顔を近づける。


静那の方…は、目ェつぶって寝ているではないか。



「おま…ちょッ!」


明らかに“キス”をしようとしている。飛行機の中という事で死角が多く、はっきりその現場をとらえられたのは真横の列の小谷野と勇一だけだ。女性メンバーと真也は前の席に座っている為気づいていない!


コイツ、静那の寝込みに唇奪うつもりか!


…というか静那ってファーストキスはもう済ませたんだろうか?子どもの頃…だとしたらやっぱり真也とか?いや真也側がそんな大胆じゃないし…じゃああの諭士さんという中年イケメンの方…?さすがに歳が…



勇一の頭の中でとたんにいろんな想像もとい妄想が駆け巡る。


いや!そんな妄想頭でかき混ぜている場合じゃない。


この機内で今まさしく”リップテロ”が行われているんだ。


もしかしたら静那の“初めて”かもしれないのに。


静那はハッキリ言ってスヤスヤ寝ている。


完全に無防備だ。


「ん…」


寝ながら少し声を出した静那。


その声に反応したのか、兼元は顔を少し引っ込める。


そして体制を仕切り直す。


野球でいうところのセットポジションに戻った感じだ。



しかし、静那の唇がピンチなのは変わらない。


席の離れている我々は黙ってテロが執行されていくのを見守る事しかできないのか…


チラッとこちらを見て、また兼元は静那に顔を近づける。


アイツホントにキモいな…と感じた2人であった。


静那と兼元の唇の距離が3cmを切った時、『ポーン』という航空機内のインターフォンが鳴った。


乱気流に入ったというというお知らせだろう。


シートベルトのランプが点灯する。


そこでも兼元はビクッとして唇をひっこめた。




…なんだかもう白けてきた…


もうここまで来たら完全にビビりのヘタレ以外の何物でもない。


そんなにキスしたけりゃとっととしろとまで感じるようになった。


3度目のテロにトライしようとしたものの、インターフォン後のアナウンスの声が大きくて静那は目を覚ましてしまった。


「乱気流に入ったのでシートベルトを御着用下さい」というアナウンスが英語、ヒンディー語、日本語の順に流れた。


アナウンス時、眠そうにしていた前に居る仁科さんに、小谷野が小声で言う。


「あのさ、もう寝るならその『旅の指さし手帳』読ませて。」


仁科さんは眠かったのもあり、あっさり本を貸してくれた。


そして小声で「静那!静那ッ!」


仁科さんの本を静那に軽く投げ渡す。


小声で「仁科さんが“読んでみて”だって。退屈ならホラ。」と告げる。


仁科さんが私にわざわざ…というふうに感じ取ったのか、アナウンス後、静那は本をじっくり読み始めた。


小谷野を睨みつける兼元。


それに気付いた小谷野は小声で「させねーよ」とニッコリ。





寝るにはまだ早すぎる上に4時間という時差もあるため、いきなり調子が狂う。


かくして、夜の旅客機。犯行に及びそうになった“リップテロ”は未遂に終わった。





* * * * *





インディラ・ガンディー国際空港にて寛ぐ9名。


形式的にだが、無事インドに到着した。


赤いパスポートにスタンプが入る。



静那、そして女性陣は長時間ではないにしろ、就寝していたため少しすっきりした様子をしていた。


男性陣もいくらか休めたようだが、兼元と小谷野、そして勇一はとても眠そうにしていた。


この空港から次のフライト。モルドバへのフライトに乗り換えるまでまだ時間がある。



勇一は先月買ってもらった携帯電話のメール機能から“インドまでは順調です”というメールを西山と椎原さんに送ったものの、電波の影響からか届かない。


ここは電波の届かない所らしい。


少し食事を摂ろうと空港内のお店に行くが殆ど閉まっている。


インドの時刻は午後12時前。


しかし勇一達の時計は午前4時を示している。…眠いわけだ。



英語が出来るスタッフがいたらしく、葉月と静那が何やら話をしていた。


その間、手荷物は真也が見張ってくれている。



各ゲートから少し離れた向こう側で軽食が買える場所があるらしい。


ゾロゾロと売店フロアーへ行くと、2~3店だけまだ営業していた。


先にお店に行き、英語とゼスチャを交わした後、静那は買ったコーヒーを一番に兼元の元に持って行った。


「はい。一番眠そうにしてたから、お先どうぞ。」


「おお、ありがとう。嫁。」


「それと、唇!」


兼元が滅茶苦茶ビックリして直立した。


「唇…って、静那ちゃん…?あ…れ。」


「うん、唇のところが切れて血が出てるよ。どうもビタミンが足りてないようですなァ。」


「あ…あああ、ああ。そうだねービタミン不足かもね。」


ものすごく焦って返答していた。さぞキモを冷やしただろう。



「眠い人はちょっと待合室で寝とく?真也君も荷物、私が見とくから休んでなよ。まだまだ先なんだから遠慮しないで。」


既に睡眠をとった仁科さんが周りを気遣う。


フライトまでまだ時間があるうえ、旅客機内でも特にやることが無いため、女性陣以外はさすがに寝ておくことにした。


女性だけとはいえ、ここは国際空港のフロアだ。危険はない。


何より人生で初めて感じる感覚“時差”を感じ始めた。


現地入りする前に、できるだけ体内時計を合わせていきたい。



* * * * *



ゲート内の待合室は空調設備も効いていて快適だ。


こうやって待ち時間が長い場合でも、深夜時間でもゲート内で待機できるようにしてくれている。


椅子もプラスチック製ではないので横になって休める。


ふと目が覚める勇一。


インド時間で午前の3時くらい。


始発の自分たちが乗る便が5時以降なので、搭乗のアナウンスが鳴るのがのがあと2時間くらいか。



他の男性は寝てる。


少し離れたところに仁科さんと葉月。そして静那。


静那は本を読んでいた。あまり眠くないのだろう。


勇一に気づいたのが葉月だったので、小声で彼女に伝える。


「ちょっとお手洗い行ってくる。」


一人深夜のゲートを歩きだした。


お手洗いは勇一の休憩している広場からすぐの所にあったのだが、一応自分達が搭乗するゲートの場所を確認しておきたかった。


遠いが少し歩いてみる。



ゲートの番号は…一桁番代だ。


どうやらターミナル一番端っこのようだ。深夜の為誰も居ないが、明かりはついている。



搭乗ゲートの場所は分かった。


あとは…このゲート前のお手洗いに寄ってから戻ろう。


そう思い、トイレらしきアイコンがあったので入っていった。



当然深夜だし、だれもいない…





……




いや!



誰かいる!



今一瞬気配がしたのだ。




奥?用具入れの中?違う!




天井だ!




やや寝起きのため、前方に対する意識はしていたが上に対して無防備だった。


焦って反射的に上を見る。


確かに気配があった。


その天井に張り付いていたもの…


一瞬だが蜘蛛の足のようなものが見えた。


手が細く真っ黒で長い。人間じゃない感じの生き物は天井を蜘蛛のようにつたい、素早くトイレから出ていった。



何者だ!?



怖かったが勇一はすぐに手洗い場を出た。後を追おうとする。


ロビーに出て、辺りを見渡す。


同時に天井も。


少し手洗いから離れてさらに周辺の天井やロビーを見る。


しかし先ほどの“人”にしては異様に手の細長かったバケモノの姿はない。


通気口から…逃げたのか…。


何度見回してもこのロビーにいるのは自分だけだ。



勇一の心臓の鼓動が速くなる。


「(ロビー内によく分からない生き物がいる…あんなのがこの中に…まさかだが)」


変な事は考えたくない。


実際、体内時計が狂っていて、寝不足から幻想でも見てたのか?


でも天井に何らかの気配を感じたのは事実だ。



警戒を続けながらみんなの休んでいるフロアへ戻っていった。


杞憂であってほしいが、何かこのフライトに大きな不安を感じていた。

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頑張って執筆致します。よろしくお願いします!

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