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TEENAGE ~ぼくらの地球を救うまで  作者: DARVISH
season1【A面】
23/228

11-2 道場の跡取り

【11話】Bパート

道場まで小走りしながら勇一が聞く。


「小谷野!天摘さんってどんな人ー?まだ“小柄”としか…」


「心配しなくても大丈夫!全然可愛いから!貧乳がステータスだと割り切れるんならドストライクや!」


「そういう事聞いてんじゃなくて!どんな性格かって」


「あぁ、物静かでしゃべらないから分かんない。会って話してからでないと。」


「結局“見た目”の詳細だけかい!(あとは冷静に考えたら少しストーカーチックな調べ方してるよなぁコレ。)」


天摘さんサイドからはこいつらの顔が既に割れていて、変質者扱いされないかどうかが心配になってきた。



天摘…葉月さん。



…彼女に実際に会ったことはないけれど、すぐ帰宅する大人しい子なんだな…。


こんなことなら西山に事前情報聞いてから行くべきだった。


こいつら調べるポイントがアレだし…




* * * * *




やがて『天摘(空手)道場』入り口まで来た。



息を整えてからにしようと膝に手をあてて休んでいると、小谷野と兼元は先にズカズカ道場に入っていくではないか。


すぐに門下生に見つかってしまった。


「そこの学生!何をしよるッ!」


すぐに注意された。



しかし注意を無視して奥に進む2人。アホなのかキモが据わってるのか分からない。



生一が呼びかける。


「おい、そのまま行くのはまずいんちゃう!」


小走りに2人の後をついていく。


周りの門下生は「(あの学生は注意されても構わず道場に入り込んできてどういうつもりだ)」と怒った形相でこちらを見ている。


どうしたらいいんだ。話せば分かる相手なのに早くも怒らせてしまっている。


「(戻れよ!3人とも。早くこっちに)」そう祈るような気持ちで居ると、取り囲まれていた。


「無許可で入っていいとこと違う。出ていきなさい。」


門下生が諭すように言ったが、掴まれた手を振りほどき奥の部屋へ無理やり突っ切って行こうとする2人と少し後ろに生一。


そこに師範代…ではないにしても先生らしき人物が顔を出した。


道場に入るなり、大声で3人に言う。


『誰が勝手に道場にはいってきていいといった!』


「オレだ!」



「…………」


アホの極みみたいな返答に対し、先生らしき人は門下生に冷静に通達した。


「うん。つまみだしなさい。」









* * * * *




そこからの3人はまさに獅子奮迅の激闘だった。


まず囲まれた門下生を蹴散らすために小谷野は両手をブンブン回しながらこう叫ぶ!


「剛腕~タイフーン!」


凄い勢いで風が舞い上がり、門下生が宙に舞い吹き飛ばされた~。


体が重く吹き飛びきれなかったガタイの良い門下生に対しては、生一が間合いに踏み込む!そしてエルボーを叩き込んだ。


「グリーン・エルボーッ!」


鈍い音と共に大きい門下生は吹き飛んだ、すべての門下生を蹴散らした3人は先生らしき人の元へ走り込む。


生一と小谷野が素早く両腕を捕捉したうえで、兼元が正面から肩車のような感じで先生の前に飛び乗り、陣取る!


そして間髪入れずに豪快なチョップを振り下ろす!


空中元彌もとやチョップ!!」


師範格の大人は背中から崩れていった…



* * * * *



...........という全ては妄想だった。


「つまみだしなさい。」の指示のもと、ものの数秒で3人は体制を崩され道場の外に放り出されてしまった。


派手にこけて軽く気絶した3人が思い描いた激戦とは、あまりにも現実とかけはなれた結果に終わっていた。


フルボッコの3人。


実際にはフルボッコと言うわけではないものの、軽く腰を痛打し伸びている彼らをみて唖然とする勇一。


…どうしよう。


「(こんな状況だけどきちんと話をしたら取り持ってくれるのかな…天摘さんの事。)」


そんな思考を巡らせていたところ、道着姿の女の子が一礼をして道場に入ってきた。


「天摘…さん?え?天摘さんなら少し話をさせてもらいたいんですけど。」


とっさに勇一は呼びかける。



その子は呼びかけに反応した。



間違いない。ここの師範代の一人娘、天摘さんだ。



少し困った顔をした彼女は、無言で先生らしき人に視線を向けた。


「なんだ、クラスメイトの子かね。お父さんが来るまでの間だけだぞ。そっちで話をしてすぐ戻ってきなさい!」


少し厳しめの口調で先生らしき空手家は天摘さんに伝えた。


小さくお辞儀をしてからこちらに近づいてくる天摘さん。


お父さんとやらがやってくるまであまり時間がなさそうだ。


距離が近づいたところで急いで勇一が切り出す。



「あの…俺、白都と言います。突然すいません。

単刀直入に言います!天摘さん、俺たちの部活に入って…もらえませんか?

コレ…活動内容の紙。あと、女子も3名いて…天摘さんと話したがってる子、いるんだ!外国人の女の子…」



「あ…今年入ってきた、ベラルーシの子。」


小さい声だがはっきり返事をしてくれた。


「そう!その子に日本の事をいっぱい教えてあげたいんだ。もちろん日本の武道・空手だって。リラックスして色んな話をする部活で…その…気分転換にどうかなとー」


「誰かね?その子は。葉月の友達か?」


後ろから凄い気配がした。


天摘さんのお父さん。天摘師範代だ。


「葉月は部活をやるほど暇じゃないんでね。葉月、道場に入るぞ。君らはここから外に出て帰りなさい。」


なんだか軽くあしらわれた感じがした。


ただ、天摘さん自身から返事をもらってない。


天摘さんの気持ちはどうなんだ?


「あの!」


少し震えた。


「? …まだ葉月に何かあるのかね。手短に話しなさい。」



「だったら言います!……天摘さんは部活やりたいって思わないのか?

年の近い女子と話したりして交流したいとか…思わないのか?急に押しかけてきて悪かったよ。

でも今は天摘葉月さん本人に聞きたい。どうしたい…。何か答えてくれよ。」



勇一にしては勇気を出して言えた…が彼女は少しうつむいたまま何も返事が無かった。


「さぁそろそろ出なさい。」


師範代の圧に押されたように、3人の肩を貸しながら道場の入場門まで引き返していった。


初めての会話…短いやり取り…


でも小谷野や兼元の言っていたことはどうも本当みたいだった。


一人娘故、家の跡継ぎでプライベートをがんじがらめにされているんだろう。


…でも自分にはこれ以上どうこうできる力もない。


3人のように道場破りみたいな実力行使もできそうにない。


だから無理して天摘さんをどうこうしようってのは考えないようにしよう。


人を無理に変えようとしても変えられるもんじゃない。


皆それぞれの人生があってここまで来たんだ。


みんな違う考え方や世界観で当然なんだ。


静那が言いたかったことってこういう事なのかもしれないな。


フラフラと帰路につく3人と勇一。


今回の勧誘は徒労に終わりそうだ。




* * * * *




次の日の放課後、部室に向かう途中で生一とはち合う。


「昨日はえらい目にあったぜ…」と呟く。


まぁそうだろう。派手に放り出されていた。


「まだ痛むか?」


「いや、むしろ心地良かった」


「いきなり何さ?」



「この高校、学業に専念してるやろ。だから中学の時みたいに拳ぶつけ合ったりするような刺激が全くなかった訳よ。で昨日は門下生みたいなやつに簡単にのされた…

久しぶりに気持ちよかったよ。やっぱ男は時には思いっきり跳ね返ったり、納得いく喧嘩はしねぇとな。」



その考え方は分からないが、尾をひいていないのは良かった。


なんだかんだいって生一は前向きだと思う。


卑屈な態度は見せるが、そこからどう打開していくかをちゃんと考えている。


決して転んでもタダでは起きないというところだろう。



部室のトビラを開けると誰かがいる。


生一…は一緒に来たから、俺の後ろ側だし。


誰だろうとその小さなシルエットを見ると……天摘さんだった!




「白都君。」


「あ、うん。昨日はその…どうも。」


「白都君が部長?この部活。」


「ああ、そうだよ。天摘さん、部活見ていかない?」


「良いの?」


「勿論だ。大歓迎だよ。静那…あのベラルーシの子も喜ぶと思う。話をしてあげてほしい。

…その…時間がある範囲で良いけど。」



横顔のシルエットだったが、こちらを振り向いた天摘さん。


死角だった右頬は大きく腫れあがっていた。


小さな声で話す天摘さん。


生一も黙って聞いている。



「私は…小学校からずっと学校と道場の往復で。私服も殆ど無いし、道着と制服しか持ってなくて…ずっと同年代の子と話が合わなかった。話したかったけど。

だから普通の女子高生をやりたいって昨日お父さんに初めて言ったら、この通り。


でも、今日も無断で道場休むつもり。それで激怒されて叩かれても何度も道場は休む。私、もう叩かれ慣れてるから。

叩かれるくらいなら自由に友達と話してみたい…遊んでみたい…。そう感じたから…」



少し吹っ切れた顔をしていた天摘さん。



自分で殻を破ろうとしたのだろう。


あんな威圧感あるお父さんだ。反抗したのは初めてだろう。…勇気がいっただろう。


少し大きな声で天摘さんは話を締めくくった。



「白都君。自分で歩んでみるきっかけをくれてありがとう。これからよろしくね。」




ほどなくして静那が部室に入ってきた。


凄く嬉しそうに天摘さんの元にかけより、軽くハグをする。


すぐ後ろからついてきた小谷野と兼元も自分達とのハグを要求する。…が「空気を読め!」というその後ろからやってきた仁科さんの言葉で一蹴された。



天摘さん、本当は友達を作りたかったのだ。


でも友達も作らずにずっと空手をやっていたのだ。大人しそうな雰囲気の彼女が、師範代の長女という重圧に耐えながら。


でも彼女も一人の人間だ。


せめてこの部活に居る間は、静那達と思いっきり仲良くしてほしい。


今まで話せなかったことも話してほしい。


静那はどんな話も嬉しそうに聞くし。




* * * * *




次の日も天摘さんはやってきた。


顔が腫れていたが、空手をやってたからこういう生傷は慣れっこだそうで笑っていた。


初めて笑った顔を見た。


少し後の話だが10日…半月くらいでもう娘の動向に対して何も言われなくなったという。


怒られてぶたれることもなくなった。


少しだけ…あの師範代が彼女の気持ちに寄り添ってくれたと思いたい。


こんな大人しい子が道場の跡継ぎをさせる事に、彼女が幼いころは心苦しさもあっただろう。でも彼女は嫌な顔をせずに親の期待に応えるために言う事を聞いてきたのだ。


もう自由にしても良いんじゃないのかな。


静那やみんなと会話が弾むようになってきた様子を見てそう感じる。



そしてもう一点。



あいつらの行動力もあながち無駄じゃなかったな…と。自分はあの時強引に道場に向かうのにためらいがあった。


でも行って想いを直接話したのが結果的に正解だった。


今回は、あの3人の行動力も称賛しないと。




晴れて自由になった天摘さん。


しかし彼女には道場内で気になる懸念点があった。高校をはさんで生徒が空手で対立していることを。

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