D−S−S−V 1
D−S−S−V
博はランドセルを肩から外し、軽やかな音楽を奏でているOurPadを取り出した。
「もう、なんだよ母さん、こんな時に」
友達といるときに母親と連絡を取り合っているところを見られたくなかった博は、口を尖らせて画面をタップした。
「メッセージじゃない。あれっなんだこれ?」
画面を覗き込んだ博が驚いて声をあげた。
「なになに?」
海人が横から覗くと、英語の文字が並んでいる。
「なにこれ?」
海人の質問に、博が画面を見ながら考え込んだ。
「うーん、アプリが届いている、って知らせているんだ。でもこんな英語のアプリ知らないし、こっちからダウンロードしなきゃアプリなんて手に入らないから、こういうのはマルウェア、ウィルスとか詐欺って決まってるんだ。だけど」
博は画面に表示された”DSSV- Dimension Scanner of Superstring Vibration”という文字を睨んでいる。
「英語?なんて書いてあるの?」
海人の言葉に反応するように、博は文字の上をなぞると、新しい画面を開いてそこに文字をコピーした。
「超弦振動の次元スキャナ」という日本語が表示された。
博はしばらくその文字を見ていたが、海人の顔を見た。
「もしかしたら凄いものかもしれない」と言い、すぐにまた「でもまさかなあ」と自分の言葉を打ち消した。
「なになに?なんなの?漢字が難しすぎる、なんて書いてあるの?『次元』て今日ハカセが言ってた二次元三次元の次元?」
「やっぱりそう思う?」と博が言った。
「これ、ひもの振動を感知して次元を探知するアプリ、っていうことみたいなんだ」
「うそ、凄くない?」
海人が画面を覗き込む。「だったら使ってみようよ」
博は、「でもなあ」と言いながら画面の画面を操作しようかどうか迷っている。
「こういうのは間違いなくマルウェアなんだよ」
「でもこんなの他の人に見せたってわからないでしょ。ハカセのところに届いたってことは、わかってる人のところに届けないと意味ないからじゃない?」
「それってますます怪しいじゃないか。誰が送ってくるんだよ」
そう言われて海人は答えに詰まった。
「うーん、だからさ、他の次元の人じゃない?五次元の人、そこからだったら僕たちのこと見れるんでしょ。そう言ったじゃん」
「いや、それは僕が頭の中で考えたことで」
「いいじゃん、別に損しないでしょ、間違ってても」
「え」
「何か困るの?別に間違ってても困ることないんじゃない?」




