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任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第二章 日本編

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第98話 家族になろうよ

 国王執務室。


 玉座の前に置かれた机で、オヤジと姐さんはまだラーメンを食べていた。


 ズルルッ。


「清司。お前、何しに日本行ったんやっけ?」


「おい!!!! なんで忘れてんねん!!!!」


 オヤジが笑った。


「冗談やんけ。ノリ悪いのう」


「分かりにくいねん!」


 執務室は、しんと静まり返っていた。


 龍馬、桂、高杉、西郷、大久保たち幕末反乱軍。


 明智。


 近藤、土方、山南、沖田たち新選組。


 心絆。


 聖子。


 レイナ、パード、キルナ、スギナ。


 全員がオヤジを見て固まっている。


 リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が、気だるそうにオヤジを見ていた。


「……なんや。みんな黙って。ラーメン食いにくいやんけ」


「アンタの圧や!」


 姐さんが笑った。


「初めて会うた人は、みんなこうなるねん」


「ワシ普通やろ」


「普通の国王は、執務室でラーメンすすらへん」


「うまいからええやんけ」


「そこちゃう!」


 オヤジは箸を持ったまま、日本勢を見渡した。


「それ、新選組やろ」


 近藤たちが目を見開いた。


「ご存じなのですか」


「知っとる」


 オヤジは近藤、土方、山南、沖田へ順番に視線を向けた。


「ところで、芹沢鴨おらんやんな? あいつおったら面倒や」


 土方が即答した。


「奴は潰しました」


「怖っ! 仕事早いのう」


「必要でしたので」


「清司と話合いそうやな」


「なんでやねん」


 オヤジは今度は幕末反乱軍を見る。


「それ、龍馬、桂、高杉、西郷……あと誰や?」


「大久保です」


「影薄っ!」


「まだ何もしていませんが」


「自分で認めるな!」


 龍馬が一歩前へ出た。


「国王殿。なぜ、わしらのことを知っとるがですか」


「前世で知っとった」


「便利すぎるやろ」


「清司も同じやんけ」


「せやけど!」


 オヤジはもう一度ラーメンをすすった。


 ズルルッ。


「で? 日本で何してきたんや」


「とりあえず、兵の家族連れてきた」


「あぁ」


「そのあと、本能寺の変止めた」


「やるやんけ」


 明智が小さく頭を下げた。


「助けていただきました」


「燃やす前でよかったのう」


「本当に」


「そこ軽いな!」


 リリアーナはそのまま続けた。


「そのあと、マジの池田屋事件で俺がシメた」


 執務室が、また静まり返った。


 姐さんがリリアーナの小さな身体を見る。


「そんな身体で、どうやって?」


「メガネ聖女に、名探偵のガキが高校生に戻る薬みたいなん作ってもろた」


「何その薬」


「飲んだら、魂が記憶しとる本来の姿に一時的に戻るんや」


 レイナが頬を赤くした。


 パードも口元を緩め、キルナは目をそらし、スギナは胸へ手を当てる。


 心絆の目も輝いた。


「とても格好よかったです!!!」


「声デカ!」


 オヤジが首を傾げた。


「ほな、なんで今は姫に戻っとんねん」


「一晩で切れるんや。しかも夜中の十二時まで」


「……」


 オヤジは、またラーメンをすすった。


 ズルルッ。


「お前、シンデレラやんけ」


「やっぱり言うんかい!」


 姐さんも笑った。


「ほんまに十二時ぴったりやったん?」


「ぴったりや」


「かわいいやん」


「中身オッサンやぞ!」


「姫はかわいいで」


「話ややこしなる!」


 しばらくして、オヤジは箸を置いた。


 その瞬間。


 執務室の空気が変わった。


 笑っていた顔が静かになり、日本勢は自然と背筋を伸ばした。


 リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、ゆっくりと顔を上げる。


「お前らのこと、ワシは知っとる」


 龍馬が目を見開いた。


 桂も、高杉も、西郷も、大久保も、明智も、新選組も、誰一人として動かなかった。


「何に苦しんできたか。何を守りたかったか。何を変えようとしたか。全部知っとる」


 オヤジは一人ずつ顔を見る。


「ワシは、お前らのこと気に入っとる」


 そして、にっと笑った。


「どうや。ワシの家族になって、一緒に世界変えるか?」


 日本勢が一斉に息をのんだ。


 最初に、龍馬が大理石の床へ正座した。


 桂。


 高杉。


 西郷。


 大久保。


 明智も続く。


 新選組を代表して、近藤、土方、山南、沖田も大理石の床へ正座し、その後ろで隊士たちも続いた。


 全員が両手を床へつき、深く頭を下げる。


「国王殿! 一生ついていきます!!!」


 その声が、広い執務室へ響いた。


 オヤジは満足そうに笑った。


「よっしゃ。ほな、今日から家族や」


 日本勢が顔を上げる。


 オヤジは明智を見る。


「明智」


「はい」


「お前、ワシの相談役にする」


「……私を?」


「ええな、清司」


 リリアーナは明智を見た。


 その横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、静かに明智へ視線を向けている。


「欲しがるん分かるわ。頭ええし、周り見えとる。オヤジに必要な奴や」


 明智は、もう一度大理石の床へ深く頭を下げた。


「ありがたき幸せ。相談役として、必ずお役に立ちます」


「頼むで」


「はい」


 オヤジは正座した日本勢を見渡した。


「やっぱ、日本の奴は筋通っとるな」


 少し懐かしそうに笑う。


「昔思い出すわ。なぁ、清司」


 リリアーナも日本勢を見渡した。


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、その横で静かに目を細めている。


「確かに。俺もこいつら好きや」


 執務室が、一瞬だけ静かになった。


「……好き?」


 レイナの笑顔が止まる。


 パードが眉を上げた。


「今、好きって言った?」


 キルナが腕を組む。


「誰のことだよ」


 スギナは胸へ手を当てた。


「星々が、大きく乱れております」


「知らんがな!」


 心絆も拳を握った。


「聞き捨てなりません!!!」


「声デカ!」


 一方、日本勢は一斉に頬を緩めていた。


「アニキが、俺たちを好きだと……」


 近藤が照れたように笑う。


 土方は顔をそらした。


「……悪くねぇな」


 山南も穏やかに笑う。


「光栄です」


 沖田は嬉しそうに頷いた。


「僕もアニキが好きですよ」


「乗るな!」


 明智も目元を押さえた。


「私まで認めていただけたのですね」


「相談役なったやろ!」


 龍馬が笑いながらリリアーナへ寄ってくる。


「わしも好きぜよ!」


「近い!」


 桂も素直に頷いた。


「私もです」


 高杉が口元を上げる。


「俺も嫌いじゃねぇ」


 西郷は大きく頷いた。


「わしも好きです」


 大久保は眼鏡を押し上げた。


「相互評価として、好ましい関係です」


「言い方固いわ!」


 ヒロイン勢の視線が、一斉に日本勢へ向いた。


「清司様へ近づきすぎですわ」


「調子乗ってんじゃん」


「若頭から離れろ」


「全員!!! 順番を守ってください!!!」


「何の順番や!」


 聖子も元気よく手を挙げた。


「私もお兄ちゃん好きぃぃ!」


「うるさっ!」


 リリアーナは頭を抱えた。


 その横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、気だるそうに目を細めている。


「その好きちゃうわ!!!!」

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