↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第二章 日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/134

第87話 本能寺が変

本能寺。


 夜の闇の中、無数の松明を持った兵たちが寺を取り囲んでいた。


「火を放て!」


「待てぇ!!」


 リリアーナの声が響き、兵たちが一斉に振り返る。


 そこへ飛び込んできたのは、リリアーナ、ミレーヌ、バルド。桂小五郎、高杉晋作、西郷隆盛、大久保利通、坂本龍馬、心絆たち幕末反乱軍。そしてレイナ、パード、スギナ、キルナたちだった。


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、リリアーナの横を走りながら刀へ手をかけている。


「何者だ!」


「説明は後や! 明智光秀どこ!」


「ここだ」


 兵たちの奥から、明智光秀がゆっくりと前へ出た。


「なぜここへ来た」


「明智光秀! 話聞け!」


「聞く気はありません」


「早っ!」


 明智光秀は刀へ手をかけ、リリアーナを睨んだ。


「殿は、もう止められない。兵も民も、すべて自分の駒として使っている。だから私が――」


「話長なるな」


「何?」


「レイナ」


「はい、姫様」


「寝かせて」


「承知しましたわ」


 レイナが指を鳴らした。


 ぱちん。


「……え」


 明智光秀の目が閉じ、その身体がどさりと地面へ倒れた。


「寝た! よし! 撤収!」


「話し合いは!?」


「長なる!」


「まだ大義の途中だぞ!」


「起きてから聞く!」


 兵たちが一斉にざわめいた。


「光秀様!」


「どこへ連れていく!」


「殺さん! 起きてから話すだけや! 西郷!」


「はい」


「明智光秀頼む」


「承知しました」


 西郷隆盛は眠った明智光秀を軽々と肩へ担いだ。


「軽かですね」


「どこがや!」


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司は、明智光秀へ駆け寄ろうとした兵の前へ回り込み、その刀を抜いた。


 兵たちの足が止まる。


「……あなた方は、光秀様を斬らなかった」


「俺らは止めに来ただけや。兵も殺さん。本能寺も燃やさん」


 一人の兵が、ゆっくりと刀を下ろした。


「俺たちも、光秀様を止めたかった。止められなかっただけだ」


 その言葉をきっかけに、一人、また一人と刀が下がっていく。


「俺も行く!」


「俺も!」


「俺もだ!」


「ほな来い! 明智光秀も、お前らも、全員生きて話すぞ!」


「はい!!」


「スタコラサッサや!」


「火を放て!」


 まだ残っていた兵が松明を掲げた。


 その前へ式神が出る。


「駄目だ」


 ぱしゃ。


 水が走り、火が消えた。


「え?」


 別の兵が慌てて松明を掲げる。


 ぱしゃ。


 また消える。


「全部消せ!」


「任せよ」


 ぱしゃ! ぱしゃ! ぱしゃ!


 次々と水が飛び、辺りを照らしていた松明の火がすべて消えた。


「真っ暗だ!」


「今や! 逃げろ!」


 桂小五郎が裏道を指した。


「こちらです! 二列で進んでください! 押さない! 転ばない! 怪我人と子どもを先に!」


「さすが逃げのプロや!」


「褒めていますか?」


「褒めとる!」


 大久保利通もすぐに人の流れを確認する。


「怪我人はこちら! 水はこちらです! 動ける者は後ろを手伝ってください!」


「仕事早っ!」


 龍馬も勢いよく手を上げた。


「船は――」


「船ちゃう! 裏道や!」


「そうじゃった!」


「海好きすぎるねん!」


 その時、一人の兵がアレクシスへ斬りかかった。


「止まれ」


 兵の身体がぴたりと止まる。


 アレクシスは少し困ったように兵を見上げた。


「剣を落として」


 からん。


 刀が地面へ落ちる。


「もういいよ。逃げたいなら行って」


 術が解けた瞬間、兵は驚いた顔で自分の身体を確かめたあと、刀を拾うことなく裏道へ走っていった。


「ちゃんと逃げた!」


「喜んどる場合ちゃう! アレクシスも走れ!」


「うん!」


「よし! 撤収や!」


 全員が一斉に裏道へ走り出した。


 リリアーナも続こうとして――三歩で止まった。


「……あかん」


「姫様」


 バルドがすぐに前へ出た。


「失礼いたします」


 ひょい。


 リリアーナの身体が持ち上がり、そのままバルドの背中へ乗せられる。


「お、おんぶ!?」


「このお身体では、皆様について走れません」


「すまん!」


「お気になさらないでください」


 チリン。


「撤収いたします」


「鈴鳴らして言うことちゃう!」


 バルドが走り出した。


「速っ!」


「姫様、しっかりおつかまりください」


「あ、あぁ!」


 その横を、西郷隆盛も明智光秀を肩へ担いだまま走っていく。


「速っ! 明智光秀落ちへん!?」


「大丈夫です」


「頼もしすぎるわ!」


 レイナ、パード、スギナ、キルナも続く。


「姫様! 絶対置いていきませんわ!」


「星々も撤退を――」


「走れ!」


「若頭!」


 キルナが走りながら西郷の肩の明智光秀を見る。


「こいつ連れてってどうすんだ!」


「起きてから話聞く!」


「雑!」


 最後尾では、心絆が走りながら全員へ声を張り上げていた。


「全員!!! 死なないでください!!!」


「声デカ!!」


「生きて帰るまでが革命です!!! もっと走ってください!!!」


「耳元で叫ぶな!!」


 こうして、信長を討つために本能寺を囲んでいた兵たちは刀を置き、眠ったまま西郷隆盛に担がれていく明智光秀を追い、全員で裏道を走った。


 松明は消えた。


 本能寺には、火の手ひとつ上がらなかった。


 本能寺の変。


 未遂。


 首謀者、睡眠中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。