↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第一章 現場復帰編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/133

第77話 持ち場を離れるな

 日本遠征の準備が始まった翌日、王宮モビーズ本部には、行く予定のない者までぞろぞろと集まっていた。


 リリアーナは椅子へだらりともたれ、その横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が集まった者たちを静かに見渡している。ミレーヌが黒革手帖を開くと、バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


「日本遠征の同行者について、確認いたします」


「リリアーナは行かなくていいよ。僕が行く」


 真っ先に口を開いたレオンに続き、ルシアンも手を挙げた。


「僕も行くよ。危ない場所なら、僕たちが行けばいいもん」


「こっそり入るなら、僕が向いてるよ」


 エミールが一歩前へ出ると、エリオットも剣へ手を添えた。


「護衛は僕に任せて。ちゃんと守るよ」


「回復できる人もいた方がいいよね。僕も行くよ」


 ノエルが頷き、セシルまでいつもの笑顔で元気よく手を挙げた。


「僕も行く!」


「待て。お前ら、また俺の代わりに行って、自分らの命を差し出す気やろ」


 全員の口が止まった。


「でも、リリアーナを守れるなら――」


「それや!」


 リリアーナはレオンを指差した。


「まだ命を簡単に捧げようとするとこ、変わってへんやないか!」


「だって、危ないだろ?」


「危ないからって全員ついてきたら、この国は誰が守んねん。持ち場を守るんも戦や」


 七人が顔を見合わせる中、リリアーナは一人ずつ指を向けた。


「レオンはテルリッチ公園や。警報と全体の守りを見ろ」


「僕なんだね。分かった」


「ルシアンは送信魔石と映像魔石の冷却。防火設備も見とけ」


「……分かったよ」


「エミールは放送局の風と換気。それから、出演者と機材の導線や」


「僕、そんなにいっぱい仕事してたの?」


「今気づいたんか」


「エリオットは花田丸と公園の警備。避難する民も守れ」


「分かった。みんなを守るよ」


「ノエルがおらんかったら、子どもらは誰が面倒見るんや」


 ノエルは何か言おうとしたが、すぐに困った顔で黙り込んだ。


「……僕がいなくなったら、みんな泣くかも」


「せやろ。回復魔法も要る。お前は子どもらのそばにおれ」


 ノエルは少しだけ迷ったあと、しっかりと頷いた。


「分かった。こっちは僕が守るね」


「セシルは芸能事務所や。新人と来客、一度に何人見られる」


「二十人!」


「ほな残れ」


「決まるの早いね」


「お前が抜けたら受付が崩壊するわ」


 リリアーナは七人を見渡した。


「全員、もう守るもんがあるやろ。俺についてきて死ぬんやなく、自分の持ち場で生きて守れ」


 誰も言い返さなかったが、その後ろからアレクシスがひょこりと顔を出した。


「僕は?」


「お前だけ来い」


「僕だけ?」


「妖魔法が要る」


 六人が一斉にアレクシスを振り返った。


「なんでアレクシスだけなの!」


「能力の話や! 贔屓ちゃう!」


 リリアーナはアレクシスへ向き直った。


「日本へ入って、向こうから斬りかかってくる奴がおったら、お前の妖魔法で攻撃だけ止めろ」


「剣を落とさせればいいの?」


「あぁ。それでええ。命は取るな。終わったら、すぐ解け」


「分かった。本人の気持ちまでは取らないよ」


「頼む」


 レオンは少し不満そうに腕を組んだ。


「僕たちより、アレクシスの方が安心されてない?」


「命をすぐ捧げようとせぇへんからな」


「そこなの……?」


「俺たちも同行する」


 キャプテントュリラーが前へ出ると、その後ろにティオ、ヨホーク、スイチョ、シャチ、ライガが並んだ。


「船なら俺たちの持ち場だ」


「残れ」


「早いな」


「タイフーンの育成、撮影、舞台、魔導テレビ、公共スクリーン、中央放送局。全部誰が見る」


 『紅月の海賊ヴァンパイア』勢は揃って黙り込み、しばらくしてキャプテントュリラーが小さく息を吐いた。


「……多いな」


「自分らで増やしたんやろ! 日本へ行くんは、リキュウだけや」


 リキュウはすでに帳面を開いていた。


「商談、積荷、食料、水、帰国するご家族の人数。すべて管理いたします」


「こっちの物流は止めんなよ」


「商人仲間へ引き継ぎます」


 リキュウは別の帳面を差し出した。


「ラーメン産業、テルリッチ公園の各売店、芸能事務所、中央放送局、傘下国への輸送。担当者は、すでに決めております」


「仕事早いな」


「日本へ行く可能性を聞いた時点で動きました」


「まだ同行決定してへんかったぞ」


「行く顔をしておられましたので」


「また顔か!」


 続いて、シャーホムズが前へ出た。


「日本の内情を調べる者も必要だろう」


 隣では、ワトゾンが記録帳を掲げている。


「見たものは、すべて記録します」


「お前らは来い」


「あのー、私は行きたくないです」


 詠女がそっと手を挙げると、全員の視線が集まった。


「なんでや」


「帰ったら私、打首なんで。信長、私のこと殺す気満々ですし」


 一同は揃って黙り込み、リリアーナも思い出したように頷いた。


「……せやったな」


「あと、アイドル見てたいです」


「本音出た!」


「シャーホムズさんとワトゾンさんの日本遠征は、王宮から応援しときます。安全圏から」


「お前、二人についていきたいんちゃうんか」


「死んだら続き見られないです」


「オタクとして正しい判断すな!」


 晴明が扇を閉じた。


「日本の結界と術を見る者も必要です」


「晴明は来い」


 その横では、式神を包む水が静かに揺れている。


「我も行く」


「信長への恨みで勝手に動くなよ」


「善処する」


「絶対せぇへん返事やんけ! 見つけても一人で行くな」


「……」


「返事!」


「分かった」


「間が怖いねん!」


 レイナ、パード、スギナ、キルナの四人は、最初から荷物を持っていた。


「なんでもう準備終わっとんねん」


「国王陛下のご推薦ですので」


 レイナが胸を張る横で、パードは銃を手入れしながら当然のように答えた。


「え、普通に行くでしょ。黒王子の元カノいるんでしょ? 首取るしかないっしょ」


「軽いテンションで首取ろうとすな!」


「星々も、日本へ向かえと告げています」


 スギナは神々しい光に包まれ、キルナは腕を組んだまま動かない。


「置いていかれても乗る」


「密航宣言すんな!」


 リリアーナは頭を抱えたあと、アネイモを見た。


「アネイモ、スギナの補助を頼む」


「承知しました。体調と魔力の管理は、私が行います」


「星の流れも――」


「体調だけ見ろ」


「魂の管理は?」


「本人にさせろ!」


 ミレーヌは黒革手帖へ次々と名前を書き込んでいく。


「現在の同行予定者は、レイナ、パード、スギナ、キルナ、アネイモ、アレクシス、シャーホムズ、ワトゾン、晴明、式神、リキュウ。それから、日本兵の皆様です」


 バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


「残る皆様は、それぞれの持ち場をお願いいたします」


 レオンが、まっすぐにリリアーナを見た。


「本当に行くの?」


 本部が静かになった。


 リリアーナはすぐには答えず、集まった者たちを見渡した。刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、その横で同じように全員を見ている。


「俺のことは、まだ決めてへん。でも、誰が行っても、帰ってくる場所は要る」


 リリアーナは残る者たちへ向き直った。


「ラーメン止めんな。テルリッチ公園を完成させろ。花田丸は直し続けろ。芸能もテレビも放送も、全部回せ」


「はい!」


 王宮モビーズが揃って答え、料理班、建設班、放送班、ロイヤル・フラグメントの七人も強く頷いた。


 レオンは小さく息を吐いたあと、笑った。


「分かった。こっちは任せて。帰ってくる場所、絶対に守るよ」


「頼む」


 その時にはもう、ヒロイン勢だけが荷物を持って出口へ向かっていた。


「おい、まだ出発ちゃうぞ」


「先に席を取りますわ」


「船に指定席ないわ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。