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ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第三章 食卓現場復帰編

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第53話 式神育成

 翌朝。


 リリアーナの体は、だいぶ回復していた。


 波戦争で倒れなかった分だけ、基礎体力も少しずつ上がっている。いつものように、バルドとの歩行訓練を続けていた。


「ヒールなしで走れるようにならなあかん」


「まずは、王宮内を無理なく歩けるようになることです」


「それは分かっとる」


 新選組が来た。


 次には、『朧月あやかし恋絵巻』の者たちまで流れてきた。


 次に何が襲ってくるか分からない。


「とりあえず、走れるところまで持っていく」


「段階を踏みましょう」


 バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


「本日は、ここまでです」


「まだ始まったばっかりやぞ」


「この後、会議でございます」


「そうやったな」


 リリアーナが大広間へ向かおうとすると、廊下の向こうから声が聞こえた。


「待ってください。それは本当に必要なんです」


「必要ありません」


 ミレーヌの声だった。


 見ると、詠女が丸眼鏡を両手で押さえ、その正面にはミレーヌが立っていた。横にはレイナとバルドもいる。


「攻略対象イベント防御なんです」


「昨日、失敗したと確認しました」


「気持ちの問題です」


「効果がないので必要ありません」


「心の防壁です」


「物理的に視界を曇らせているだけです」


「曇ってないです。度は入ってません」


「なおさら必要ありません」


 ミレーヌが詠女の眼鏡を外した。


「あっ」


 ぱきん。


 伊達眼鏡が、真ん中から折れた。


「眼鏡ぇ!」


 バルドは折れた眼鏡を受け取り、鈴を鳴らした。


 チリン。


「必要ありませんので」


 そのまま、ごみ箱へ捨てた。


「連携が怖いです」


「効果がありませんでしたので」


「私のイベント防御が」


「すでに失敗しております」


「まだ気持ちは守られていました」


「では、別の方法で守ってください」


 レイナがにっこり微笑んだ。


「お着替えも済ませましょう」


「嫌な予感がします」


「すでに用意しておりますわ」


「手際が良すぎます」



 しばらくして、詠女は大広間の前へ戻ってきた。


 ぼさぼさだった髪は綺麗に整えられ、顔を隠していた前髪も軽く整えられている。


 着ているのは、いつもの雑な着物ではない。


 動きやすい、落ち着いた色のワンピースだった。飾りは少ないが形がよく、詠女の姿によく似合っている。


 そして、普通に美女だった。


 リリアーナの横で、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が目を細めた。


「……誰やねん」


「その反応、ひどくないですか」


「昨日までと違いすぎるやろ」


「昨日までが本来の姿です」


「今日が本来やろ」


「今日から壁として生きます」


「その顔で壁は無理や」


「昨日までいけてました」


「眼鏡かけても失敗しとったやろ」


「心は壁でした」


「面倒くさいな」


 ミレーヌが黒革手帖を開いた。


「記録します。空気読めさん、伊達眼鏡解除により攻略対象イベント防御を完全喪失」


「やめてください」


「事実です」


 バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


「大広間へ参りましょう」


「話を切られました」


「お時間です」



 リュミエール王宮の大広間には、各乙女ゲームの者たちが集められていた。


『ロイヤル・フラグメント』


『セイントミステリア』


『紅月の海賊ヴァンパイア』


『朧月あやかし恋絵巻』


 そして、王宮本部に残っているモビーズ。


 モビーズは今、二手に分かれている。半分はパン工場、もう半分は王宮本部で働いていた。


 パン工場では、ノエルがロアンとマーガリンおじさん、グランヴェールの料理人たちと生産を回している。そのため、今日は不在だった。


『ロイヤル・フラグメント』からは、エリオット、レオン、エミール、セシル、ルシアン、アレクシス、レイナ。


 ノエルだけは、パン工場で働いている。


 そのほかに、元モブでリリアーナの相棒であるミレーヌ。


 静かな進行役のバルド。


 王宮本部に残っているモビーズ。


 モビーズの総括メガネ聖女。


『セイントミステリア』からは、スギナ・カワイ、アネイモ、ゴスペル、チンプ、シャーホムズ、ワトゾン、ネツゾウ、ゲンコワ、シュドケン、イレギュラー。


『紅月の海賊ヴァンパイア』からは、パード、キャプテントュリラー、ティオ、ゾンピグ、ヨホーク、チョップ、シャチ、リキュウ、ライガ、ヘイオン、スイチョ。


 そして、『朧月あやかし恋絵巻』からは、晴明、怨霊、お稲荷、鬼火、天狗、蛇神、逃げ姫、女房たち。


 綺麗にされた空樹詠女。


 濃い。


 あまりにも濃い。


「……一堂に集めるもんちゃうな」


 リリアーナは言った。


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、集まった者たちを見渡している。


 ミレーヌの横には、前世の美月も腕を組んで立っていた。


 転生者たちの背後にも、それぞれ前世の魂が立っている。


 スギナの背後には、前世の彼女。


 パードの背後には、派手な姿の前世の彼女。


 詠女の背後には、今にも寝転がりそうな干物女。


 レイナだけが、そのすべてを見ていた。


 だが何も言わず、リリアーナの会議を優先している。


 バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


「会議を始めます」


 大広間が静まった。


 リリアーナは怨霊を見る。


 怨霊は、濡れた髪の隙間から笑っていた。


「我を、どうするか決まったか」


「決めた。成仏させるんやない」


 メガネ聖女が顔を上げ、晴明の目がわずかに動いた。


「ほう。我を残すか」


「そのまま残す気はない」


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が、ゆっくり目を細めた。


 仕事の目だった。


「お前を、式神に育てる」


 大広間が静まり返った。


「式神」


 晴明が低く繰り返した。


「安倍晴明に仕える式神や。お前、陰陽師なんやろ」


「はい」


「ほな、怨霊を怨霊のまま抱えるな。お前の術と契約で、別の形に変える」


「簡単なことではございません」


「分かっとる。怨霊を式神にする。しかも、こいつほど未練と恨みが深い奴をや。お前ひとりでは無理や」


 晴明は黙った。


「やから、全員で育てる」


 大広間がわずかにざわつき、怨霊が濡れた髪の奥で目を細めた。


「我を、育てる。子どものようにか」


「子どもより手ぇかかりそうやけどな」


「無礼な姫だ」


「沈めることしか知らん奴に言われたない」


 ミレーヌが黒革手帖を開いた。


「記録します。怨霊式神育成計画」


「計画名ついたな」


「必要です」


 メガネ聖女が眼鏡を押し上げた。


「魂の状態を確認します。怨念、未練、記憶、霊力を分けて記録する必要があります。浄化しすぎれば、存在そのものが消える可能性もあります」


「消すな」


「はい。残すべきものと、流すべきものを見極めます」


「晴明。契約の形を考えろ。主従で縛るだけやったらあかん。逆らったら消えるような契約もなしや」


「式神とは、本来、術者に従うものです」


「命令聞かな殺される場所から逃げてきた奴を、また命令で縛ってどうすんねん」


 晴明の目が、わずかに揺れた。


「では、何で繋ぐのでしょう」


 リリアーナはすぐには答えず、怨霊を見た。


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、濡れた男を見下ろしている。


「役目や」


「役目」


「沈めるんやない。流れてきた怨みを受け止める。暴れる怨霊を止める。異界の水が開いたら塞ぐ。お前と同じように、沈むしか知らん奴を拾う」


 怨霊の笑みが、少しだけ薄くなった。


「それが、我の役目か」


「まだ候補や。できるように、これから育てる」


 アレクシスが、小さく手を上げた。


「おやくそくの言葉、大事だよ」


「せやな。契約の文面、お前とミレーヌで見ろ」


「うん。こわくないおやくそくにする」


「綺麗なだけやったらあかんぞ」


「ちゃんと守れるやつにするよ」


「ほな頼む」


「がんばる!」


 レオンが、ぴんと手を上げた。


「僕、ピカッてする!」


「何をや」


「怨霊があぶない時、ピカッて光るの。遠くでも分かるよ!」


「命捨てるなよ」


「うん。もう死なない!」


「そこは元気に言うことちゃう」


「ちゃんと帰ってくる!」


「それでええ」


 セシルも手を上げた。


「僕は、お話を聞く係?」


「そうや。怨霊が荒れる前に、周りの異変を拾え。誰かが怖がっとる。誰かが困っとる。空気が重い。そういうの、お前のところに集まるやろ」


「僕、お友達いっぱいいるよ!」


「聞いて終わるなよ。エミールに回せ。レイナに回せ。ミレーヌに上げろ。俺まで届かせろ」


「うん! ぜったい届ける!」


「頼むで」


「君に届け!」


「業務連絡を気持ちにすな」


「えへへ」


「照れるな」


「ルシアン。霊気で寒うなった時、元に戻せ。人が凍える前にや」


 ルシアンは首を傾げた。


「僕が、あったかくするの?」


「使い方や。冷やすだけが氷ちゃうやろ」


「分かった。寒くしすぎない!」


「元から寒くすな」


「じゃあ、あったかい氷にする!」


「何やそれ」


「つめたくない氷!」


「もう水や」


「あっ」


 ルシアンは驚いた顔をした。


「なくなっちゃった」


「まだ何も出してへん」


「エミール」


「はい!」


「異変が起きた時、囲むな。逃げ道を作れ。見物人も止めろ」


「みんなを、こっちに動かすの?」


「ぶつからんようにな」


「うん! ちゃんと一列にする!」


「羊ちゃうねん」


「二列でもいい?」


「列の数の話ちゃう」


「じゃあ、いっぱい空ける!」


「それでええ」


「できた!」


「まだやってへん」


「スロープの時より頼むで」


「まだ言うの?」


「根に持っとるな」


 エリオットが前へ出た。


「僕、みんなの案内する! 迷子にならないようにするよ!」


「頼む」


「ちゃんと並んでもらう!」


「こいつも並ばせるんか」


「手をつないだら、迷子にならないよ!」


「遠足ちゃうぞ」


「おやつは?」


「出ぇへん」


「三百ドルまで?」


「出ぇへん言うとるやろ」


「バナナは?」


「遠足ちゃう!」


 レイナが扇を閉じた。


「皆様。まずは姫様のお話を最後まで聞きましょうね」


「はーい!」


 ロイヤル・フラグメントの男の子たちが、揃って返事をした。


 リリアーナは目を細めた。


「お前ら、いつから小学生なったんや」


「きょうから!」


 レオンが答えた。


「知らんがな」


 レイナはにっこり微笑み、リリアーナへ向き直った。


「姫様。怨霊の状態確認、晴明様の術式、メガネ聖女様の浄化、警戒担当、避難担当。私が皆様の進み具合を確認いたしますわ」


「頼むわ」


「お任せくださいませ」


「レイナ先生!」


 セシルが手を上げた。


「どうされました?」


「僕、ちゃんとできたら、おやつある?」


「ございますわ」


「やったー!」


「会議終わってへんぞ」


 ほかの男の子たちも目を輝かせた。


「僕も!」


「僕もおやつほしい!」


「ちゃんとできるよ!」


「ピカッてするよ!」


「はいはい。皆様、きちんとお仕事ができましたら、一緒にいただきましょうね」


「はーい!」


「幼稚園から小学校上がっただけやないか」


 ミレーヌのペンが走る。


「『ロイヤル・フラグメント』、式神育成支援へ配置」


「乙女ゲームの王子らが、怨霊育てるんか」


「現場復帰ですので」


「便利すぎるな」


 次に、リリアーナは『セイントミステリア』の者たちを見る。


「シャーホムズ、ワトゾン。お前らは、怨霊が何で怨霊になったか調べろ」


 大広間が静かになった。


「誰に殺された。何を奪われた。どこで沈んだ。誰を待っとる。何が終わってへんのか」


 シャーホムズが静かに目を細めた。


「事件として調べろと」


「せや。過去が分からんまま、式神になんかできへん」


 ワトゾンが記録紙を広げた。


「証言を分けます。逃げ姫様、女房の皆様、晴明様、怨霊本人。それぞれから聞き取りを行います」


「頼む」


 詠女が小さく手を上げた。


「シャーホムズさんとワトゾンさんのカップリング、良いですね」


 大広間が静まり返った。


「今、事件解決の話しとる」


「推理バディは湿度が育ちやすいので」


「育てるんは怨霊や!」


「並行できます」


「すな!」


 シャーホムズもワトゾンも何も言わなかった。


 否定もしなかった。


「否定せぇや!」


 詠女の目が輝いた。


「否定しないんですね」


「空気読め!」


「読んだ結果です」


 スギナは胸の前で両手を組んでいた。


「深い悲しみに沈んだ魂を、愛と光で包みましょう」


「包みすぎるな」


「はい」


「お前は怨霊より先に、逃げ姫と泣いとる女房らをどうにかしてくれ」


 リリアーナが逃げ姫と女房たちを見ると、スギナは、はっと顔を上げた。


「私たちが」


「怖かった奴らに、いきなり事情聴取ばっかりすんな。飯食わせて、眠らせて、話せる空気を作れ」


 アネイモが静かに頷いた。


「女性たちの着替えと生活支援は、私が見ます。王宮の女性使用人とも連携します」


「頼む」


 ゴスペルが胸へ手を当てた。


「歌で、心を落ち着かせましょう」


「声量は半分やぞ」


「半分……」


「不満そうにすな。天井抜くな」


「はい」


「歌うだけやない。泣いとる奴の近くに座れ。無理に喋らせるな。声が出ん奴には、黙っておれ」


 ゴスペルは真面目な顔で頷いた。


「承知しました」


 チンプは女房たちの前へ歩き、怯えさせないように少し距離を取って膝をついた。


「ゆっくりでいいので、お話をお聞かせください。今すぐでなくても構いません。怖かったことも、思い出したくないことも、お話しできる時に少しずつで」


 女房の一人が顔を上げた。


 チンプと目が合い、頬を少しだけ赤らめる。


 詠女の目が、すっと細くなった。


「……男女」


「何や」


「男女のカップリングが発生しました」


「今そこちゃう」


「私が見たいのは、晴明様と怨霊さんの湿度なんですけど」


「知らんがな!」


「男女のカップリング見たくないんですけど」


 大広間が静まり返った。


 チンプは困ったように女房を見て、女房はさらに頬を赤らめた。スギナは目を輝かせ、パードはにやにやしている。


 ミレーヌは黒革手帖を開いた。


「記録します。女房の一人、チンプ様へ恋愛気配」


「記録しないでください」


 詠女が初めて、はっきり抗議した。


「重要です」


「重要じゃないです。男女です」


「男女も恋愛です」


「解釈違いです」


「お前の解釈で現場止めるな!」


 リリアーナは額を押さえた。


 怨霊を式神に育てる。


 簡単な仕事ではない。


 魂を調べ、怨みを分け、記憶を拾う。契約を作り、力を制御し、新しい役目を与える。


 逃げてきた者たちの生活も、立て直さなければならない。


『ロイヤル・フラグメント』


『セイントミステリア』


『紅月の海賊ヴァンパイア』


『朧月あやかし恋絵巻』


 そして、モビーズ。


 全員が持ち場へ入る。


 リリアーナは誰かへ任せきりにはしない。全体を見て、詰まりを見つけ、育たない部分を支え、式神になるまで現場を導く。


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が、一同を見渡した。


「ええか」


 リリアーナは言った。


「怨霊を、ただ祓って終わらせるな。ただ縛って使うな。沈むことしか知らん奴に、別のやり方を覚えさせる」


 晴明が静かに頭を下げた。


「承知しました」


 怨霊は濡れた髪の奥から、リリアーナを見る。


「我が式神になった時、そなたは我をどう使う」


「流れてきた奴を助けてもらう」


「敵を沈めるのではなく」


「生きて戻すんや」


 怨霊はしばらく黙り、それからほんの少しだけ笑った。


 いつもの冷たい笑みではなかった。


「妙な主だ」


「主ちゃう。俺は育成責任者や」


「さらに妙だ」


 バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


「各自、持ち場へ」


 大広間が動き始めた。


 シャーホムズとワトゾンは、証言整理へ。


 メガネ聖女と晴明は、魂と術式の確認へ。


 レイナは、各担当の配置へ。


 セシルは、相談窓口へ。


 エミールは、人の流れを整える。


 レオンは、異変を知らせる光の合図を考える。


 ルシアンは、霊気による冷えへの対策へ。


 アレクシスとミレーヌは、契約文面の整理へ。


 アネイモ、ゴスペル、スギナ、チンプは、逃げ姫と女房たちの支援へ。


 モビーズは、必要な物資と部屋を整える。


 パードは、なぜか刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司を見ていた。


「怨霊まで育成するんだ」


「見るとこそこちゃう」


「治安悪いのに、やってること保護者じゃん」


「誰が保護者や」


 その後ろを、ロイヤル・フラグメントの男の子たちが一列になって歩いていた。


「前の人を押さないでくださいませ」


 レイナが声をかける。


「はーい!」


「走らないでくださいませ」


「はーい!」


「レオン様。光らないでくださいませ」


「まだピカッてしてないよ!」


「今からしようとしておりましたね?」


「してないよ!」


 レオンの手が光った。


「しとるやないか」


「あっ」


 エミールが、その場で両手を広げた。


「みんな、ぶつからないようにして!」


「お前が道塞いどる!」


「あっ」


 ルシアンは小さな氷を作り、じっと見つめていた。


「つめたくない氷、できるかな」


「もう仕事始めろ」


「おやつのあとじゃだめ?」


「仕事のあとがおやつや!」


「分かった!」


 アレクシスはミレーヌの横へ行き、小さな紙へ大きな字を書き始めた。


『こわくないおやくそく』


「題名から書いたんか」


「大事だよ」


「中身も書けよ」


「今から考える!」


「何も決まってへんやないか」


 セシルは、怨霊の前へ椅子を運んでいた。


「ここに座ったら、お話しやすいよ!」


「我に椅子は必要ない」


「じゃあ、僕が座る!」


「お前が座るんかい」


 エリオットは、逃げ姫と女房たちへ声をかけていた。


「迷子にならないように、僕についてきてね! レイナ先生のところまで行くよ!」


「もう先生になっとるやないか」


 レイナはにっこり笑った。


「皆様。廊下は静かに歩きましょうね」


「はーい!」


「小学校なっただけで、何も変わってへんやないか!」


 詠女は、頬を赤らめた女房とチンプを見ている。


「男女……」


「まだ言うとる」


「男女のカップリング……」


「諦めろ」


「式神育成より、精神的にきついです」


「お前の好みは知らん!」


 こうして、怨霊を晴明の式神へ育てる計画が始まった。


 祓えば終わる話ではない。


 契約すれば終わる話でもない。


 怨霊が自分の力を、誰かを沈めるためではなく、誰かを救うために使えるようになるまで、全員で育てる。


 リリアーナが導く。


 長い現場の始まりだった。


 なお、詠女の伊達眼鏡は、攻略対象イベントを一つも防げていなかった。


 そして、ロイヤル・フラグメントは、おやつを食べるために全員いつもより働いた。

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