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ふわ姫若頭 〜恋愛フラグを全部現場復帰させたら、女王ルートが開きました〜  作者: 夜嶋朔
第二章 学園現場復帰編

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第28話 ロイフラはじめの一歩


 翌日。


 春の交流会に向けて、レイナは必要な者たちを学園の一室へ集めていた。


 エリオット。


 レオン。


 ノエル。


 セシル。


 アレクシス。


 ルシアン。


 エミール。


 ロイヤルフラグメントの面々が、長机の前に並んでいる。


 そして当然のように、レイナが中央に立っていた。


「姫様。全員、集めておきましたわ」


「早いな」


「総括ですので」


「まだ任せる言うてへん」


「任されるつもりでしたので」


 リリアーナの隣では、黒スーツ姿の清司が刀を肩へ担ぎ、集められた面々を順番に見ていた。


 顔。


 姿勢。


 手元。


 誰が何を見ているか。


 完全に、組の新しい持ち場を決める時の顔だった。


「レイナ」


「はい」


「お前は総括や」


「……やるつもりでしたけれど」


「ほな、正式に任せる」


「正式に」


 レイナは、ほんの少しだけ目を伏せた。


 頬が、うっすら赤い。


「承りましたわ」


「なんで照れとんねん」


「照れてなどおりませんわ」


「顔赤いぞ」


「春の日差しですわ」


「室内や」


「気分は春ですわ」


 ミレーヌは、すでに黒革手帖を開いていた。


『レイナ様。

担当:春の交流会総括。

状態:正式任命により軽度デレ。

備考:春の日差しを主張。現在、室内。』


「ミレーヌ」


「はい」


「書かないでくださいませ」


「重要ですので」


「敵が増えましたわ」


「相棒は敵に回したらあかんぞ」


「姫様のせいですわ」


「俺なん?」


 春の交流会とは、乙女ゲーム序盤における恋愛フラグ祭りである。


 攻略対象との会話。


 偶然の接触。


 ローズの受け渡し。


 大階段でのすれ違い。


 しかし現在。


 大階段は、車椅子も荷車も通れる道になった。


 ローズは、場所と時間を管理される危険物になった。


 そして攻略対象たちは、恋愛相手ではなく運営スタッフ候補として集められていた。


 恋愛イベントは消えかけている。


 だが、人材は初めて持ち場を与えられようとしていた。


「ほな、配置決めるぞ」


 リリアーナが言った。


 黒スーツ姿の清司は、刀を肩へ担いだまま少しだけ口元を上げた。


「エミール」


「うん!」


 エミール・クラウスが、資料を抱えて元気よく一歩前へ出た。


「警備員の配置、座席決め、班分け。人の流れを全部、表にしろ」


「任せといてぇ!」


「軽いな」


「でも、ちゃんとやるよ!」


 エミールは、すぐに資料を広げた。


「揉めやすい家同士は離す!」


「せや」


「話しやすい人は近くに置く!」


「せやな」


「警備員は、人が詰まりそうな場所!」


「分かっとるやん」


「班分けも、身分だけで決めないよ!」


「ほう」


「歩く速さとか、補助がいるかとか、ちゃんと見る!」


「完全に使えるやんけ」


「前より、何を見ればいいか分かってきたから!」


「ええことや」


 エミールは、嬉しそうに表をめくった。


「好感度だけ見ても、現場は回らないもんね!」


「成長したな」


「うん!」


 ミレーヌが記録する。


『エミール・クラウス。

担当:警備員配置、座席決め、班分け、人流管理表。

備考:表が現場復帰済み。』


「表が現場復帰済みって何?」


「事実ですので」


「僕じゃなくて、表が復帰したの?」


「エミール様も含みます」


「じゃあ、いいや!」


「ええんかい」


「次、エリオット」


「はーい!」


 第一王子エリオットが、なぜか元気よく手を上げた。


 王太子らしい重さはある。


 だが、ロイヤルフラグメントの中にいる時だけは、妙に馴れ馴れしい。


「人を集めろ」


「人を?」


「お前、グループデートしようとしてたやろ」


「やべ! バレてた!」


 エリオットは、ぺろっと舌を出した。


「テヘヘ!」


「笑って誤魔化すな」


「でも、人集めるのは得意だよ!」


「反省ゼロやんけ」


「ちゃんと反省してるって!」


「顔が楽しそうやぞ」


「だって今度は、怒られない使い方でしょ?」


「そこは分かっとるんやな」


「うん! 僕やるよ!」


「貴族、来賓、各班。必要な時間に、必要な場所へ集めろ」


「任せといて!」


「集めた後は、解散の時間まで見ろ」


「集めて、流して、最後に散らす!」


「分かっとるやん」


「グループデートより健全だね!」


「ほんまにな」


「僕もそう思う!」


「お前が言うな」


 ミレーヌが記録する。


『エリオット殿下。

担当:来賓招集、班集合、集合時間管理、解散誘導。

由来:グループデート。

注意:重い空気で場を止めないこと。』


「最後、余計じゃない?」


「重要ですので」


「僕、そんなに重い?」


「重いよ!」


 ノエルが即答した。


「お前に聞いてない」


「双子だから分かるもん!」


「軽いお前に言われたくない」


「兄さん、立ってるだけで別れ話みたいなんだよ!」


「そこまで?」


「そこまでや」


「リリアーナまで!」


「次、レオン」


「僕ね! 僕、警備する!」


 レオンが勢いよく前へ出た。


「警備もやけど、メインは合図や」


「合図!」


「お前、花火上げようとしてたやろ」


「上げようとした!」


「元気よく認めるな」


「でも、ちゃんと遠くまで見えるよ!」


「場の見え方と、遠くへ知らせる感覚はある」


「うん!」


「人を止める合図。進ませる合図。危険を知らせる合図。全部、お前が見ろ」


「僕やる!」


「それ、戦でも使えるぞ」


「戦でも!」


「せや。命捨てるより、合図出せ」


 レオンは、少しだけ目を伏せた。


 以前なら、自分が前に出て守ると言った。


 命を使うことしか、守り方を知らなかった。


 だが今回は、違った。


「分かった!」


 レオンは、まっすぐリリアーナを見る。


「命は捨てない!」


「おう」


「周りを見て、ちゃんと合図を出す!」


「ええ返事や」


 バルドが、腰の鈴に手を添えた。


「鳴らすな」


「良い返事でしたので」


「褒め鈴やめろ」


「必要であれば」


「必要ない」


 ミレーヌが記録する。


『レオン卿。

担当:動線案内、進行合図、停止合図、危険通知。

将来性:戦場でも使用可能。

備考:命は捨てず、合図を出す。』


 レオンは、記録を覗き込んだ。


「これ、いいね!」


「気に入ったんか」


「うん! 忘れないようにする!」


「ほな、消すなよ」


「消しません」


「次、ノエル」


「やっと僕ー!」


 ノエルが、両手を上げた。


「うるさい」


「僕、ずっと待ってたんだけど!」


「待つな。働け」


「うん! 僕やるよ!」


「まだ仕事内容言うてへん」


「何でもできるもん!」


「自信だけ先に来るな」


 ノエルは、きゅるんとした顔で首を傾げた。


「で、僕は何するの?」


「注目を集めろ」


「僕を見てってこと?」


「半分はな」


「半分?」


「お前を見てる人間を、必要な場所へ流せ」


「僕を見たあと、そっちを見るの?」


「せや」


「僕を使うんだ!」


「使う」


「ひどーい!」


「使われろ」


 ノエルは、少し考えたあと、ぱっと笑った。


「じゃあ僕が目立って、みんなを移動させればいいんだね!」


「そうや」


「僕、可愛いからできるよ!」


「自分で言うな」


「事実だもん!」


「腹立つチワワやな」


「ちわわ?」


「忘れろ」


「僕、すっごく目立つね!」


「事故みたいに目立つなよ」


「大丈夫!」


「その返事が一番不安や」


 ミレーヌが記録する。


『ノエル殿下。

担当:注目導線、式典時の空気づくり、移動前の視線集め。

特徴:きゅるきゅる可愛い王子。

備考:まだ僕を見て系。』


「最後いらないよね?」


「重要ですので」


「ひどーい!」


「次、セシル」


「はーい!!」


 セシルが、両手を大きく広げた。


「僕の番きたぁー!」


「テンション高いな」


「待ってたもーん!」


「お前ら全員、係決め好きすぎやろ」


「だって楽しそうじゃーん!」


「遊びちゃうぞ」


「ちゃんとやるよぉー!」


「ほな、受付、案内、初参加者のフォロー、孤立してる奴を見つけろ」


「笑顔なんて僕のオハコじゃーん!!」


 セシルは、くるっと一回転した。


「まっかせなしゃい☆」


「急にうるさい」


「僕、大人数でも全然いけるよぉー!」


「ほんまか」


「ちゃんとやるよぉー!」


 セシルは、びしっと指を差した。


「君に届け!!」


「何を届けんねん」


「安心と笑顔!」


「声量で全部吹き飛ばすな」


「ハハッ!」


「笑って誤魔化すな」


「でも、受付に来た人は絶対ひとりにしないよ」


「急にまともなこと言うな」


「君に届いた?」


「最後で台無しや」


「届いたね!」


「届いてへん」


 ミレーヌが記録する。


『セシル殿下。

担当:受付、案内、初参加者対応、孤立者発見。

強み:笑顔、大人数対応。

備考:まっかせなしゃい☆ 君に届け!!』


「そのまま書かれたぁー!」


「頻出ですので」


「届いたかな!」


「記録には届いとる」


「やったぁー!」


「喜ぶな」


「次、アレクシス」


「やった! 僕の美の出番!」


 アレクシスが、長い髪を揺らして前へ出た。


「テンション高いな」


「だって待ってたもん!」


「お前も待ってたんか」


「僕、すっごく綺麗にするよ!」


「仕事の返事だけ子供みたいになるな」


「で、何を美しくするの?」


「装飾と看板」


「うん! 任せて!」


「それと、面倒くさそうな来賓の相手」


「面倒くさそうな来賓!」


「気位が高い。扱いづらい。放置したら揉める。雑に扱うと、もっと揉める奴らや」


 アレクシスは、目を輝かせた。


「なるほど! 美と外交の出番だね!」


「せや」


「僕、それ得意!」


「ローズは?」


「使え」


「やったぁ!」


「喜びすぎや」


「ローズ使っていいんでしょ?」


「ただし、俺に渡すな」


「はーい!」


「通路を塞ぐな」


「はーい!」


「場所と時間を決めろ」


「はーい!」


「相手を立てる演出にしろ」


「任せといて! 外交用ローズセレモニーだね!」


「そういうことや」


 アレクシスは、嬉しそうに手を合わせた。


「気高い人ほど、美しく扱われるのに弱いからね!」


「言い方」


「事実だよ!」


「頼もしいの腹立つな」


 レイナが、すっと口を挟んだ。


「アレクシス様。ローズセレモニーの時間と場所は、こちらで管理しますわ」


「うん! 美にも総括は必要だもんね!」


「分かっていらっしゃるなら結構ですわ」


「美しく従うよ!」


「普通に従ってくださいませ」


 ミレーヌが記録する。


『アレクシス殿下。

担当:装飾、看板、美観調整、来賓接待、外交用ローズセレモニー。

強み:美と外交。

注意:導線を塞がない。リリアーナ姫へ渡さない。レイナ様の管理下。』


「ローズ、ついに就職したな」


「用途変更です」


「恋愛フラグから外交ツールへ」


「適切な配置です」


「乙女ゲームが泣くぞ」


「泣く時間も、三分以内でお願いいたしますわ」


「総括こわ」


「次、ルシアン」


「僕ね!」


 ルシアンが、ぱっと手を上げた。


「お前、そんな元気やった?」


「みんな楽しそうだから!」


「引っ張られたんか」


「うん!」


「お前は飲み物や」


「飲み物!」


「冷やせるんやろ」


「得意だよ!」


「ほな、春の交流会用に冷たい飲み物を作れ」


「普通の水?」


「違う」


「違うんだ!」


「フローズンや」


「ふろーずん!」


「凍らせすぎず、飲める氷や」


 ルシアンの目が、ぱっと輝いた。


「楽しそう!」


「完全に子供やんけ」


「ダークコールドの力を解き放ち、フローズンを作るよ!」


「その力、解き放ってええやつなんか」


「冷やすだけだよ!」


「普通に言え」


「冷やす!」


「お前、冷蔵担当や」


「冷蔵担当!」


「嬉しそうやな」


「うん! 僕やる!」


「攻略対象やったよな?」


「今は冷蔵対象だね!」


「自分で言うんかい」


「氷の神殿も驚く配置だよ!」


「氷の神殿を巻き込むな」


「でも、暑くなって倒れる人を減らせる!」


「それは大事や」


「甘すぎるものは避けた方がいいよ!」


「なんでや」


「喉が渇くし、腹も壊しやすい!」


「急に現場の顔するな」


「ちゃんとやるよ!」


「ダークコールドは」


「加減する!」


「そこだけ妙に素直やな」


「フローズン楽しみ!」


「仕事やぞ」


「仕事も楽しんだ方がいいよ!」


「ええこと言うやん」


 ミレーヌが記録する。


『ルシアン。

担当:ドリンク設置、冷蔵、フローズン飲料。

強み:温度管理。

注意:甘すぎない。腹を壊さない。

備考:ダークコールド使用。冷蔵対象。』


「冷蔵対象、書かれた!」


「嬉しそうにすな」


「ちょっと嬉しい!」


「なんでやねん」


 恋愛イベント用の才能は、使い方を間違えれば邪魔になる。


 だが。


 持ち場へ戻せば、急に戦力になる。


 人を集める力。


 人の目を引く力。


 場を明るくする力。


 美しく見せる力。


 温度を変える力。


 全部。


 恋愛のためだけにある力ではなかった。


 リリアーナは、集まった者たちを見た。


 レイナは総括。


 エミールは表。


 エリオットは人を集める。


 レオンは合図。


 ノエルは注目導線。


 セシルは受付と大人数対応。


 アレクシスは美と外交。


 ルシアンは冷蔵。


 黒スーツ姿の清司は、刀を肩へ担いだまま一人ずつ見渡した。


 全員。


 さっきまで、係決めではしゃぐ子供みたいだった。


 だが。


 持ち場を渡された顔は、少し違っていた。


「ええか」


 リリアーナが言った。


 ロイヤルフラグメントの全員が、いっせいに顔を向ける。


「これ、遊びちゃうぞ」


「うん!」


「ちゃんとやる!」


「任せといて!」


「僕、頑張る!」


「まっかせなしゃい☆」


「君に届け!!」


「最後の二人うるさい」


「ハハッ!」


「恋愛にしか使えん才能なんかない」


 部屋が、少しだけ静かになった。


「置き場を間違えたら邪魔になる」


 清司は、刀の鞘で床を軽く叩いた。


「けど、持ち場に戻したら武器になる」


 エリオットが、嬉しそうに笑った。


「じゃあ僕たち、武器になったんだ!」


「言い方が危ない」


「役に立てるってことでしょ?」


「せや」


「やったぁ!」


 ノエルが両手を上げた。


「僕、ちゃんと見てもらえるんだ!」


「持ち場でな」


「それでもいいよ!」


「ええんかい」


「僕も頑張る!」


 レオンが拳を握る。


「僕、ちゃんと周り見る!」


「僕は表、作る!」


「僕は人、集める!」


「僕は笑顔届けるぅー!」


「僕は美を届ける!」


「僕は冷気を届ける!」


「何でも届けるな」


 レイナが、静かに微笑んだ。


「では、姫様」


「なんや」


「春の交流会、予定どおり進めますわ」


「頼む」


「総括ですので」


「嬉しそうやな」


「春の日差しですわ」


「だから室内や」


「姫様からいただいた春ですわ」


「重いねん」


 エリオットが、ぱっと振り返った。


「僕より重いじゃん!」


「黙っとけ」


「テヘヘ!」


「誤魔化すな」


 配置が決まると、ロイヤルフラグメントの面々は一斉に動き始めた。


 レオンは、合図を出す位置を確認する。


「ここで止める!」


「こっちで進ませる!」


「花火は上げるなよ」


「上げない!」


「返事だけはええな」


 エリオットは、来賓の集合順を考える。


「最初に偉い人!」


「雑やな」


「じゃあ、動きが遅い人から!」


「急に正解出すな」


「僕、できるもん!」


 エミールは、すでに表を書き始めていた。


「ここは揉めそう!」


「なんで分かるんや」


「顔!」


「お前、人見るようになったな」


「うん!」


 アレクシスは、ローズの配置を美しく組み直す。


「ここに赤!」


「通路塞ぐなよ」


「塞がない!」


「ここに白!」


「増やしすぎんなよ」


「美は引き算もできるよ!」


「成長したな」


 ルシアンは、氷の量で真剣に悩んでいた。


「冷たすぎるかな?」


「腹壊すなよ」


「じゃあ、少し溶かす!」


「氷の使い方、急に生活感あるな」


「現場だからね!」


 そしてセシルは、なぜかもう受付の練習を始めている。


「ようこそぉー! 春の交流会へ!」


 両手を広げた。


「笑顔なんて僕のオハコじゃーん!!」


「本番前からうるさい」


「まっかせなしゃい☆」


「受付で星飛ばすな」


「ちゃんとやるよぉー!」


 セシルは、びしっと来賓役のノエルを指差した。


「君に届け!!」


「何を?」


「歓迎の心!」


「僕、届いた!」


「お前ら練習楽しみすぎやろ」


「もう一回やろ!」


「やらんでええ」


 バルドが、腰の鈴に手を添えた。


「鳴らすな」


「配置完了の合図です」


「まだ完了してへん」


「では、予約です」


「鈴に予約機能つけるな」


 ミレーヌは、黒革手帖を閉じた。


「姫様」


「なんや」


「これで、春の交流会の運営体制は整いました」


「そうやな」


「ただ」


「ただ?」


 ミレーヌは、別の資料を取り出した。


「参加者名簿に、教会関係者が複数名おります」


「教会?」


「はい。聖職者見習い、祈祷院関係者、修道院関係者です」


「普通やないんか」


「乙女ゲーム的には、非常に面倒な気配がします」


 ロイヤルフラグメントの全員が、ぴたりと動きを止めた。


「面倒なの来るの?」


 ノエルが目を丸くする。


「僕、目立っていい?」


「まだ目立つな」


「僕、集める?」


「まだ集めるな」


「僕、冷やす?」


「誰を冷やすねん」


「僕、笑顔届けるぅー?」


「静かにしとけ」


「僕、美しく迎える!」


「お前は多分それでええ」


 ミレーヌは、淡々と続けた。


「聖職者系乙女ゲーム集団の気配です」


「またか」


 リリアーナが言った。


 隣では、黒スーツ姿の清司が刀を肩から下ろしていた。


 鞘の先を床へつき。


 眉間に皺を寄せる。


 レイナは、扇を口元へ当てた。


「春の交流会、荒れそうですわね」


「荒らすな。運営しろ」


「総括ですので」


 チリン。


「今のは何や」


「波乱の合図です」


「不吉な鈴やめろ」


「必要です」


 こうして。


 甘い恋のために用意されていた攻略対象たちは。


 春の交流会を支える運営班として、最初の持ち場を与えられた。


 誰かに見てもらうためではない。


 誰かを支えるために。


 ロイヤルフラグメントの。


 はじめの一歩である。


 なお。


 次に来るのは。


 聖職者系乙女ゲーム集団である。


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