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任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第一章 現場復帰編

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第18話 好感度表より人員表

 エミール・クラウスが、リリアーナの部屋へやって来た。


 幼なじみだという、隣国の王子である。


「リリアーナ! 来たよ!」


「あぁ」


 エミールの足が止まった。


「……あぁ?」


「座れ」


「どこ?」


「そこ。椅子あるやろ」


「あった!」


「見えてへんかったんか」


 エミールは嬉しそうに椅子へ向かった。


 リリアーナの横では、黒スーツ姿の清司が刀を肩に担いでいる。


 ミレーヌは、いつものように黒革の手帖を開いた。


『エミール・クラウス殿下。


 入室直後、椅子を発見』


「何の記録や」


「経過ですので」


「もっと要るとこ書け」


 エミールは椅子へ座り、持ってきた鞄を膝へ載せた。


「レイナに聞いたよ! 僕、表作るんでしょ?」


「せや。交流会の人員表、相談したいねん」


「人員表って、何を書くの?」


「誰が何できるか。誰に何頼むか。そういうやつや」


「名簿みたいなの?」


「それに、仕事とか予定も足す」


「あっ! 作れるよ!」


「話早いな」


「僕、表作るの得意!」


 胸を張る。


 清司は、その膝の鞄へ目を向けた。


「今も何か持っとるんちゃうか」


「あるよ!」


「見せてくれ」


「リリアーナのだよ!」


「俺の?」


「うん! ずっと書いてる!」


 エミールは、革張りの手帳を取り出した。


「はい! 大事に見てね!」


 リリアーナは手帳を受け取り、最初の頁を開いた。


『リリアーナ様 好感度推移表』


 部屋が静かになった。


 黒スーツ姿の清司が、肩から刀を下ろす。


「なんちゅう表作ってんねん!」


「リリアーナが僕をどれくらい好きか、書いたんだよ!」


「何でお前が分かんねん!」


「笑ったら増える!」


「何がや!」


「好感度!」


「増やすな!」


 鞘が、エミールの頭を通り抜けた。


 返す勢いで、もう一振り。


 当然、何も起きない。


 エミールは首の後ろを押さえた。


「……何か、ぞわってした!」


「気のせいや」


 ミレーヌの筆が動く。


『二太刀』


「数えんでええ」


「まだ二回です」


「まだ言うな」


 リリアーナは次の頁をめくった。


『月曜 紅茶の話題 +三』


『火曜 庭園で会話 +五』


『水曜 体調不良により接触不可 変動なし』


『木曜 好きな花の話題 +二』


『金曜 ノエル殿下接近 注意』


『土曜 ルシアン殿下接近 警戒』


『日曜 イベント未発生』


「おい」


「なあに?」


「イベント未発生て何や」


「会えなかった日!」


「会えん日もあるやろ」


「でも、会える予定だったんだよ!」


「約束しとったんか?」


「違うよ! 偶然!」


「偶然?」


「リリアーナが通るところで待ってた!」


「待ち伏せやないか!」


「ばったり会う予定だったの!」


「予定しとったら、ばったりちゃうやろが!」


 黒スーツ姿の清司が、横から鞘を振り抜いた。


 もう一度。


 さらに一度。


 すべて、エミールを通り抜ける。


 ミレーヌの筆だけが動いていた。


『予定された偶然。


 三太刀追加』


「ミレーヌ」


「はい」


「いちいち書かんでええ」


「偶然の予定は、重要かと」


「そっちやなくて太刀の方や!」


 エミールは、リリアーナの横を見た。


「誰かいるの?」


「その前に、この表や」


 手帳を示す。


「俺が喜んだって、誰が決めた」


「僕!」


「何でや」


「リリアーナのこと、見てたから!」


「今も見とるか」


「見てるよ!」


「今、俺どんな顔しとる」


 エミールは、リリアーナの顔をじっと見た。


「……怒ってる!」


「分かるやんけ」


「うん!」


「なら、それが返事や。こんな表、喜んでへん」


 エミールの笑顔が止まった。


「嫌なの?」


「嫌や」


「僕が好きか、分かるのに?」


「お前が勝手につけた点やろ!」


 エミールは、手帳へ目を落とした。


「……そっか」


「この頁、いらんな」


「ずっと書いてたんだけど」


「俺には不愉快や」


 エミールは少し黙った。


 それから、手帳の留め具を指す。


「そこ開けたら、紙取れるよ」


 リリアーナは留め具を開き、表の紙を抜いた。


 丸める。


 ごみ箱へ投げる。


 入った。


 エミールの顔が、ぱっと明るくなった。


「入った!」


「お前の表やぞ!」


「あっ!」


 ミレーヌの筆が走る。


『好感度推移表。


 廃棄。


 作成者、投擲成功に反応』


「何でそこ喜ぶねん」


「綺麗に入ったから!」


「そうやけど!」


 黒スーツ姿の清司が、また鞘を振った。


 エミールは何も知らず、ごみ箱を見ている。


「いっぱい書いたのになぁ」


「何年分や」


「何年も!」


「余計怖いわ!」


 リリアーナは、残った頁を見た。


「お前が昔から知っとるリリアーナと、今の俺は違うやろ」


「うん! 喋り方、すごく違う!」


「ほかには?」


「表が嫌い!」


「全部の表が嫌いなんちゃう。この表が嫌なんや」


「あ、これか!」


「せや。今、嫌や言うたやろ」


「うん」


「そこは聞け」


 エミールは、ゆっくり頷いた。


「分かった。もう作らない」


「昔の返事だけ見て、今も同じやと思うなよ」


「今のリリアーナに聞く!」


「そうや」


 リリアーナが手帳を閉じかけた時、後ろから折り畳まれた紙が覗いた。


「まだあるやんけ」


「それ、大事だよ!」


「何や」


「爆発しないようにする表!」


 紙を開く。


『爆弾管理表』


 リリアーナは黙った。


 黒スーツ姿の清司も、刀を構えたまま止まった。


『三日 軽度不満』


『七日 中度不満』


『十日 爆発危険』


「……誰が爆弾や」


「会わないと、寂しくなるでしょ?」


「全員か?」


「ならないの?」


「忙しくて、それどころちゃう奴もおるやろ」


「あっ、そっか!」


「腹立っとっても、会わん日数のせいやないかもしれんやろ」


「ほかに、嫌なことあったとか?」


「せや」


「じゃあ、分かんないね!」


「先に理由聞けや!」


 鞘が、右から左へ。


 左から右へ。


 エミールの肩を通り抜けた。


「人を爆発物扱いすな!」


「分かりやすいと思ったんだよ!」


「こっちは気ぃ悪いわ!」


「じゃあ、違う名前にする!」


「名前だけの話ちゃうねん!」


 リリアーナが紙を持ち上げると、エミールは少し迷ってから頷いた。


 丸める。


 ごみ箱へ投げる。


 また入った。


「また入った!」


「お前、ほんま何見とんねん!」


 ミレーヌの肩が震えた。


「笑うな」


「申し訳ありません」


「絶対、楽しんどるやろ」


「投擲の精度が高いので」


「そっちかい!」


 黒スーツ姿の清司は、まだエミールへ鞘を振っている。


 ミレーヌの筆が速くなった。


 エミールは、少しだけ椅子を引く。


「ねえ、やっぱり誰かいるよね?」


「おるで」


「いるんだ!」


「俺の魂や」


 エミールは瞬きをした。


 何もない空間を見る。


 もう一度、リリアーナを見る。


「リリアーナ、二人いるの?」


「一人や。体と魂」


「魂が外に出てるの?」


「せや」


「ミレーヌには見える?」


「はい」


「僕、見えない!」


「そのままでええ」


「何してるの?」


 黒スーツ姿の清司が、無言で鞘を振り下ろした。


「お前に腹立てとる」


「……何か分かった!」


「表なくても分かるやろ」


「うん!」


 リリアーナは、残った手帳を開いた。


『贈り物の記録』


『会話の話題』


『偶然を装った接触予定』


『体調別対応一覧』


「偶然、まだあるんかい!」


「庭園で会う日と、廊下で会う日!」


「場所分けて予定組むな!」


「同じところばっかりだと、変でしょ?」


「全部変や!」


 また一振り。


 鞘は何事もなくすり抜けた。


「これは?」


 リリアーナが、体調別対応一覧を指す。


「顔色悪かったら、休もうって言うの!」


「うん」


「匂いの強いお花は持っていかない!」


「うん」


「疲れてたら、長く喋らない!」


 清司は、紙を読んだ。


「……これは、ええやん」


「残していい?」


「あぁ。ただ、今も全部同じとは限らんぞ」


「聞く!」


「せや。勝手に薬飲ますとか、そういうんはすんなよ」


「お薬は、お医者さんに聞くよ!」


「なら、ええ」


 ミレーヌが記録する。


『体調への配慮。


 本人への確認を続ける』


 リリアーナは手帳を返した。


「花の好み覚えたり、具合悪そうなん気づいたり。そこまでやめろ言うてへん」


「点数が駄目?」


「せや。あと、会話するために偶然作るな」


「会いたいって言えばいい?」


「最初からそうせえ!」


 黒スーツ姿の清司が、もう一太刀。


 ミレーヌの筆が、滑らかに動いた。


 エミールは手帳を受け取り、ごみ箱へ目を向ける。


「紙、減っちゃった」


「余計なもん減っただけや」


「僕、リリアーナのこと知りたかったんだよ」


「なら、今聞いたことも覚えとけ」


「表、嫌!」


「その表や!」


「今のリリアーナに聞く!」


「せや!」


 エミールは、新しい頁を開いた。


『本人が嫌がる記録は続けない』


「……それは書くんやな」


「忘れたら嫌でしょ?」


「まあ、ええわ」


 リリアーナは、机の上の交流会資料を示した。


「で、こっちや」


 未提出者一覧。


 班分け案。


 必要な係。


 準備に残っている仕事。


 エミールの目が、紙の上を順番に動いた。


「まだ、こんなに決まってないの?」


「せや。レイナが、今までの記録持ってきてくれた」


「レイナ、いっぱい見てたんだね!」


「あぁ。毎回、同じとこで揉めとるみたいやな」


 エミールは、一枚の表を手に取った。


 名前を見比べ、別の紙を引き寄せる。


「あっ、この三人、待ってるんだと思う!」


「何をや」


「この子が決めるの!」


 一人の名前を指す。


「いつも、先にこの子が決めてから、二人も同じところにするよ!」


「確認できるか」


「聞いてくる!」


「ほかは」


「この人、締切、明日だと思ってるかも!」


「何で分かる」


「前の会議で、日付をもう一回聞いてた!」


 リリアーナは、エミールを見た。


 さっきまで好感度の数字を説明していた男が、今は人の言葉を思い出している。


「覚えとるやん」


「僕、お話よく覚えてる!」


「その目と頭、こっちにも使えや」


 エミールの指が止まった。


「みんなに?」


「まず、この交流会や」


 リリアーナは、役割の一覧を押し出した。


「誰が何できるか。いつ手が空いとるか。誰に仕事集まりすぎとるか。そういうん、見られるやろ」


「できる!」


「できる奴でも、やりたいとは限らん。そこは聞け」


「やりたい?って?」


「せや。見とるだけで全部分かった気になるな」


「うん!」


 エミールは、紙を自分の前へ揃えた。


「レイナ、これ頼みたかったんだ!」


「あいつも一人で確認しきれんやろ。お前ができるなら、助かるんちゃうか」


 エミールは資料へ目を戻した。


「でも、僕、幼なじみだよ?」


「それがなんや」


「もっと、リリアーナの近くですると思った!」


「俺の隣の椅子、取り合う仕事ちゃうぞ」


「そっちじゃないよ!」


「似たようなもんやろ」


 黒スーツ姿の清司が、鞘を振り下ろした。


「今、何か来た!」


「甘えたからや」


「魂の方?」


「せや」


「僕、いっぱい何かされてる?」


「もう何回も通り抜けとるで」


 ミレーヌが手帖を確認した。


「途中から、数えるのが難しくなりました」


「諦めろ」


「三十回に達しましたら、お知らせします」


「何の節目やねん!」


 エミールは、何もない空間へ少し頭を下げた。


「もういいよ! 僕、聞いてるよ!」


「最初から聞け」


「聞く!」


 そう言って、机へ向き直る。


「僕、人員表作れるよ!」


「やるか」


「やる!」


「なら、頼むわ」


 エミールの顔が明るくなった。


「いっぱい書いていい?」


「要ること書けよ」


「誰が何できるか!」


「うん」


「いつならできるか!」


「うん」


「やりたいかも聞く!」


「せや。確認したか、まだ聞いてへんか。そこ分けといてくれ」


「分かんないところは、まだって書く!」


「それでええ」


 エミールは、新しい紙を取った。


「同じ時間に、お仕事二つある人も探すね!」


「せや。重なっとったら分かるように」


「時間の表も作る!」


「頼むわ」


「ほかには?」


「表出たくない奴もおるやろ。裏でできる仕事も拾え」


「準備する人! 書く人! 数える人!」


「せやな」


「片づける人も!」


「それも要る」


 エミールの手が動き始めた。


 声は相変わらず明るい。


 だが、紙の上には、必要な項目が順序よく並んでいく。


 担当する仕事。


 活動する時間。


 本人への確認。


 未確認事項。


 先ほど聞いたばかりのことを、もう表にしていた。


「お前、ほんまに早いな」


「表、好き!」


「見たら分かるわ」


「未提出の人も、分けていい?」


「理由か?」


「うん! 忘れた人! 決められない人! 誰か待ってる人!」


「聞いて分かった分だけな」


「ほかに困ってるかもしれないもんね!」


「せや」


 エミールは少し考え、紙の端へ小さな欄を足した。


「でも、みんなに言いたくないこともあるよね?」


 リリアーナが頷く。


「あるやろな。仕事決めるんに要る分だけでええ」


「じゃあ、これ、全員に見せない!」


「誰に何見せるか、レイナとも相談しとけ」


「分かった!」


 エミールは、もう一枚の紙を取った。


「楽しい!」


「人の気持ちで遊ぶなよ」


「表の方! 分かんないところ、見つかる!」


「最初から、そっち作れや」


「リリアーナのことばっかり考えてた!」


「一人に向けすぎやねん」


 黒スーツ姿の清司が、また鞘を振る。


 ミレーヌが、僅かに顔を上げた。


「三十回です」


「記念すな」


「ちょうどよい区切りかと」


「区切るんはそっちの記録や!」


 エミールは、見えない清司のいる辺りを見た。


「三十回も!?」


「そうらしいな」


「僕、平気だよ!」


「効いとらんからな」


「強くなった?」


「なってへんわ!」


 ミレーヌの筆が、また動いた。


「三十一回目です」


「報告終われ!」


 エミールは気にした様子もなく、紙へ向き直った。


「あとね! 困ってることの表も作りたい!」


 リリアーナの目が、紙へ向く。


「どんな」


「誰が、何に困ってるか! 誰かに言ったか! まだ言えてないか!」


「……それや」


「いい?」


「あぁ。それは要る」


「爆弾表を――」


「戻すな!」


「違う名前にする!」


「名前だけちゃうぞ!」


 エミールは、すぐに頷いた。


「会ってないから怒ってるって、決めない!」


「せや」


「何があったか聞く!」


「そうや」


「困り事一覧!」


「それでええ」


 ミレーヌの筆が、静かに走る。


『爆弾管理表から、困り事一覧へ。


 推定の日数ではなく、本人の話を確認』


 エミールが、その手元を見た。


「ミレーヌのも、いっぱい書いてあるね!」


「仕事ですので」


「僕が何回斬られたかも?」


「参考記録です」


「何の参考?」


「俺も、それ聞きたいわ」


 ミレーヌは、何事もなかったように頁をめくった。


 リリアーナは、資料の期限へ目を落とす。


「三日あったら、一回見せられるか」


「できるよ! 分かんないところは聞いてくる!」


「全部埋まってへんでもええからな」


「まだのところは、まだって書く!」


「せや」


「レイナにも聞くね! もう聞いた人、いるかもしれない!」


「何回も同じこと聞かれたら困るもんな」


「うん!」


「ええやん」


 エミールは資料を揃えた。


 そこで、改めてリリアーナを見る。


「リリアーナ、変わったね!」


「悪いか」


「ううん! 嫌なこと、すぐ言う!」


「聞けよ」


「うん!」


「次からやめたら、それでええ」


「そうする!」


 リリアーナは、手帳を指した。


「好感度欄いらんぞ」


「入れない!」


「ライバル欄も」


「入れない!」


「イベント発生」


「入れない!」


「偶然装った接触予定」


「もう作らない!」


「爆弾」


「困り事一覧!」


「よし」


 エミールは立ち上がった。


「リリアーナが戻りやすいようにするね!」


「俺だけやないぞ」


「みんなも!」


「せや」


「何ができるか、聞いてくる!」


「頼むわ」


 エミールは資料を鞄へ入れ、扉へ向かった。


 開ける前に、一度振り返る。


「リリアーナ!」


「なんや」


「次、来てもいい日、先に聞くね!」


「当たり前や」


「偶然じゃなくて!」


「わざわざ言うな!」


 エミールは嬉しそうに笑い、部屋を出ていった。


 扉が閉まる。


 リリアーナは、深く息を吐いた。


「……なんちゅう表作っとんねん」


 横では、黒スーツ姿の清司が刀を肩へ戻した。


 ミレーヌは、ごみ箱へ目を向ける。


「好感度推移表」


「捨てろ」


「爆弾管理表」


「それも捨てろ」


「偶然の接触予定は、お持ち帰りになりました」


「帰ってから捨てろ言うとけ」


「承知しました」


「ほんまに。偶然の予定て何やねん」


 ミレーヌが、黒革の手帖へ書き足した。


『エミール・クラウス殿下。


 交流会の人員配置を補助。


 三日後、確認済みの情報を持参予定』


 その下へ、もう一行。


『好感度管理――終了』


「終わるか?」


「続けないと、おっしゃいましたので」


「なら、そこは信じとくわ」


 リリアーナは、机に残った役割の一覧を見た。


 記録する力はある。


 人の言葉を覚えている。


 予定が重なっていることにも、誰かの返事が止まっていることにも気づける。


 話せば分かるし、聞いたことを表へ直すのも早い。


 ただし。


「喋っとることと、作っとる表の細かさが合わへんな」


「ええ」


「『表好き!』で、あれ作るんか」


「お好きなのでしょうね」


「好感度以外で頼むわ、ほんま」


 ミレーヌは手帖を閉じ、紅茶を差し出した。


「どうぞ」


「喋りすぎて喉乾いたわ」


「ちょうどよろしかったですね」


「珍しく合うたな」


「相棒ですので」


「それ言いたいだけやろ」


 湯気の向こうで、ミレーヌはいつもの涼しい顔をしていた。


 机の上には、空欄の残る人員表。


 ごみ箱の中には、丸められた好感度推移表。


 春の交流会の準備は、まず本人へ話を聞くところから、始まることになった。

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― 新着の感想 ―
1番ややこしそうな相手にキレずに対応するところが、チンピラではなく若頭という器ですかね。それにしてもキモイ表だ(爆笑) どのような表を作成するのか楽しみ(笑)
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