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任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第二章 日本編

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第131話 デビュー決定

「さわやか」


 翌朝、サニーテレビ局から朝の生放送が始まった。


 明るい音楽が流れる中、白い机の中央でエリオットが両手を広げる。


「世界のみんなー! おはよー!」


 きらきらと眩しい笑顔。


「今日はスペシャル特番だよ! なんと、SNGとBIGWAVEのデビューが決まったよー!!」


 世界各地で歓声が上がった。


「それと、サニー事務所のアーティストもアイドルも、みんな音源化されるんだよ! みんな嬉しいよね?!」


 エリオットは隣の魔導画面へ向き直る。


「セシルー! そっちはどう?」



 画面が切り替わった。


 白く輝く、きらきらとした公爵風の衣装をまとったSNG。


 その隣には、魔王を思わせる黒を基調とした公爵風の衣装をまとったBIGWAVE。


 その前で、セシルが大きく手を振っていた。


「セシルだよー! こっちは今、衣装合わせと、今夜の『Vステーション』公開生放送のリハーサルしてるんだ!」


 セシルは二組を振り返る。


「テレビの前の君に届け! もう最高な声が入ってるから、みんな買ってね☆」


 ぱちりとウインク。


「きゃーーーー!!」


「セシル様ー!!」


 世界各地から歓声が上がった。


「じゃあ、一人ずつ聞いてみよー! まずSNGから!」


 セシルが土方の前へ向かう。


「土方くん!」


「頑張ります」


「沖田くん!」


「嬉しいです。みんな、買ってくださいね」


「斎藤くん!」


「これからが大事だと思っています」


「原田くん!」


「嬉しいっすよ! わくわくしてます!」


「嬉しいね! 最高!」


 セシルはそのままBIGWAVEへ向かった。


「次はBIGWAVE!」


 その瞬間、画面の前をレオンが横切った。


「ちょっと! レオン邪魔!」


「ごめん!」


 レオンは慌てて横へ避ける。


「龍馬くん!」


「嬉しいぜよ!」


「高杉くん!」


「頑張って練習したので……」


 高杉が少し言葉に詰まると、セシルが笑った。


「見てほしいんだよね?」


「……はい」


「高杉くん、可愛いね☆」


「……」


 高杉は黙った。


「桂くん!」


「とても嬉しいです。たくさんの方に聞いていただきたいです」


「もう最高!」


 セシルは魔石カメラへ向き直った。


「今夜の生放送、楽しみにしててねー! 本日お昼の十二時から、各地で売店も用意してるよ! 混まないように、エミールがたくさん作ってくれたから安心してね!」


 少し離れたところで、エミールが資料を抱えたまま手を振った。


「作ったよー!」


「エリオット! 戻すねー!」



 画面がスタジオへ戻る。


「セシル、ありがとう!」


 エリオットが笑顔で手を振った。


「今日のお昼から発売! 魔石スピーカーも買えるようになってるよ! それから、サニーテレビ局からラジオ番組も始まるんだ!」


 世界中が、また歓声に包まれた。



 各地では、すでに二組への熱が広がっていた。


「土方様ー!」


「高杉様ー!」


「龍馬様ー!」


「桂様ー!」


 若い女性たちは目を輝かせる。


「格好いいな」


「男らしくて憧れるなぁ」


「俺も、あんな男になりたい」


 若い男たちも画面に釘付けだった。


「いい面構えしてやがる」


「気合いが入ってんな」


「最近の若ぇもんも、捨てたもんじゃねぇな」


 年配の男たちも嬉しそうに頷く。


「まあ、土方さん。凛々しいわぁ」


「桂さんも品があるわねぇ」


 年配の女性たちまで夢中になっていた。


「ぼく、原田みたいになる!」


「わたし、セシル!」


「歌う!」


「踊る!」


 子どもたちは画面の前で真似をしている。



 ロイヤルフラグメントの七人も、すでに世界中で人気者になっていた。


「エリオット様、朝から爽やか!」


「レオン様、今日も格好いい!」


「ノエル様、優しそう!」


「エミール様、知的で素敵!」


 きらきらとした王子や公爵たちが、朝から本気で働いている。


 それだけで目の保養になると評判だった。


 その中でも、特に好感度が高かったのはセシルだった。


「王子様なのに親しみやすい!」


「毎朝見たい!」


「笑顔が最高!」


「友達になれそう!」


 きらきらした王子様なのに、誰よりも距離が近い。


 セシルは老若男女から愛されていた。



 退屈を持て余していた貴族たちも、朝からサニーテレビをつけるようになっていた。


「今日は何をするのかしら」


「もう始まっているわよ」


「昨日の続きも気になるわ」


 食事の時も。


 お茶の時も。


 客を迎える時も。


 サニーテレビはついたまま。


「消さないのですか?」


「何を言っているの。見逃したら困るでしょう」


 サニーテレビを一日中つけておくことが、少しずつ貴族たちの日常になり始めていた。



 ロイヤルフラグメントの親である王たちも、それぞれの傘下国で息子たちの姿を見ていた。


「立派になったな」


「学園にいた頃より、ずっといい顔をしている」


「世界のために、自分の役目を果たしているのね」


 息子たちは、リュミエール王国の中心で自分の持ち場を持ち、世界へ向けて働いている。


 傘下国となった王たちにとっても、それは誇らしい姿だった。


 誰も、学園へ戻れとは言わなかった。


 学園にいた頃より、今の方がずっと生き生きしていた。



 一方。


 中央テレビでは、レイナの婚約パーティーが大々的に報道されていた。


「公爵令嬢レイナ様、ついに婚約へ!」


「豪華な婚約パーティーが、間もなく開催されます!」


 中央テレビは何度も同じ情報を流していた。


 だが。


 人々の視線は、すっかりサニーテレビへ移っていた。



 朝の放送が終わったあとも、リリアーナたちはそのままサニーテレビ局に残っていた。


「清司さん」


 光秀が封筒を持って入ってくる。


 オヤジがいつもそう呼ぶせいで、光秀にまですっかり移っていた。


「国王陛下からです」


「なんや」


 リリアーナが封筒を受け取る。


 中には、一枚の招待状が入っていた。


「レイナの婚約パーティー?」


 ロイヤルフラグメントの七人も、すぐにリリアーナの周りへ集まってくる。


「これで、ずっと顔を出してなかったのか……」


 リリアーナが招待状を見ると、エリオットが首を傾げた。


「でも、学園には行ってたらしいよ」


「僕たち、学園行ってないし!」


 セシルが笑った。


「修学旅行も行ってないし! ハハッ!」


「たしかにな」


 リリアーナも少しだけ笑った。


 それから、もう一度招待状へ目を落とす。


 レイナがここ数日、サニーテレビにも、開局記念歌謡祭にも、CM撮影にも姿を見せなかった理由。


 その答えが、ようやく目の前にあった。


「……こういうことやったんか」

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