第131話 デビュー決定
「さわやか」
翌朝、サニーテレビ局から朝の生放送が始まった。
明るい音楽が流れる中、白い机の中央でエリオットが両手を広げる。
「世界のみんなー! おはよー!」
きらきらと眩しい笑顔。
「今日はスペシャル特番だよ! なんと、SNGとBIGWAVEのデビューが決まったよー!!」
世界各地で歓声が上がった。
「それと、サニー事務所のアーティストもアイドルも、みんな音源化されるんだよ! みんな嬉しいよね?!」
エリオットは隣の魔導画面へ向き直る。
「セシルー! そっちはどう?」
画面が切り替わった。
白く輝く、きらきらとした公爵風の衣装をまとったSNG。
その隣には、魔王を思わせる黒を基調とした公爵風の衣装をまとったBIGWAVE。
その前で、セシルが大きく手を振っていた。
「セシルだよー! こっちは今、衣装合わせと、今夜の『Vステーション』公開生放送のリハーサルしてるんだ!」
セシルは二組を振り返る。
「テレビの前の君に届け! もう最高な声が入ってるから、みんな買ってね☆」
ぱちりとウインク。
「きゃーーーー!!」
「セシル様ー!!」
世界各地から歓声が上がった。
「じゃあ、一人ずつ聞いてみよー! まずSNGから!」
セシルが土方の前へ向かう。
「土方くん!」
「頑張ります」
「沖田くん!」
「嬉しいです。みんな、買ってくださいね」
「斎藤くん!」
「これからが大事だと思っています」
「原田くん!」
「嬉しいっすよ! わくわくしてます!」
「嬉しいね! 最高!」
セシルはそのままBIGWAVEへ向かった。
「次はBIGWAVE!」
その瞬間、画面の前をレオンが横切った。
「ちょっと! レオン邪魔!」
「ごめん!」
レオンは慌てて横へ避ける。
「龍馬くん!」
「嬉しいぜよ!」
「高杉くん!」
「頑張って練習したので……」
高杉が少し言葉に詰まると、セシルが笑った。
「見てほしいんだよね?」
「……はい」
「高杉くん、可愛いね☆」
「……」
高杉は黙った。
「桂くん!」
「とても嬉しいです。たくさんの方に聞いていただきたいです」
「もう最高!」
セシルは魔石カメラへ向き直った。
「今夜の生放送、楽しみにしててねー! 本日お昼の十二時から、各地で売店も用意してるよ! 混まないように、エミールがたくさん作ってくれたから安心してね!」
少し離れたところで、エミールが資料を抱えたまま手を振った。
「作ったよー!」
「エリオット! 戻すねー!」
画面がスタジオへ戻る。
「セシル、ありがとう!」
エリオットが笑顔で手を振った。
「今日のお昼から発売! 魔石スピーカーも買えるようになってるよ! それから、サニーテレビ局からラジオ番組も始まるんだ!」
世界中が、また歓声に包まれた。
各地では、すでに二組への熱が広がっていた。
「土方様ー!」
「高杉様ー!」
「龍馬様ー!」
「桂様ー!」
若い女性たちは目を輝かせる。
「格好いいな」
「男らしくて憧れるなぁ」
「俺も、あんな男になりたい」
若い男たちも画面に釘付けだった。
「いい面構えしてやがる」
「気合いが入ってんな」
「最近の若ぇもんも、捨てたもんじゃねぇな」
年配の男たちも嬉しそうに頷く。
「まあ、土方さん。凛々しいわぁ」
「桂さんも品があるわねぇ」
年配の女性たちまで夢中になっていた。
「ぼく、原田みたいになる!」
「わたし、セシル!」
「歌う!」
「踊る!」
子どもたちは画面の前で真似をしている。
ロイヤルフラグメントの七人も、すでに世界中で人気者になっていた。
「エリオット様、朝から爽やか!」
「レオン様、今日も格好いい!」
「ノエル様、優しそう!」
「エミール様、知的で素敵!」
きらきらとした王子や公爵たちが、朝から本気で働いている。
それだけで目の保養になると評判だった。
その中でも、特に好感度が高かったのはセシルだった。
「王子様なのに親しみやすい!」
「毎朝見たい!」
「笑顔が最高!」
「友達になれそう!」
きらきらした王子様なのに、誰よりも距離が近い。
セシルは老若男女から愛されていた。
退屈を持て余していた貴族たちも、朝からサニーテレビをつけるようになっていた。
「今日は何をするのかしら」
「もう始まっているわよ」
「昨日の続きも気になるわ」
食事の時も。
お茶の時も。
客を迎える時も。
サニーテレビはついたまま。
「消さないのですか?」
「何を言っているの。見逃したら困るでしょう」
サニーテレビを一日中つけておくことが、少しずつ貴族たちの日常になり始めていた。
ロイヤルフラグメントの親である王たちも、それぞれの傘下国で息子たちの姿を見ていた。
「立派になったな」
「学園にいた頃より、ずっといい顔をしている」
「世界のために、自分の役目を果たしているのね」
息子たちは、リュミエール王国の中心で自分の持ち場を持ち、世界へ向けて働いている。
傘下国となった王たちにとっても、それは誇らしい姿だった。
誰も、学園へ戻れとは言わなかった。
学園にいた頃より、今の方がずっと生き生きしていた。
一方。
中央テレビでは、レイナの婚約パーティーが大々的に報道されていた。
「公爵令嬢レイナ様、ついに婚約へ!」
「豪華な婚約パーティーが、間もなく開催されます!」
中央テレビは何度も同じ情報を流していた。
だが。
人々の視線は、すっかりサニーテレビへ移っていた。
朝の放送が終わったあとも、リリアーナたちはそのままサニーテレビ局に残っていた。
「清司さん」
光秀が封筒を持って入ってくる。
オヤジがいつもそう呼ぶせいで、光秀にまですっかり移っていた。
「国王陛下からです」
「なんや」
リリアーナが封筒を受け取る。
中には、一枚の招待状が入っていた。
「レイナの婚約パーティー?」
ロイヤルフラグメントの七人も、すぐにリリアーナの周りへ集まってくる。
「これで、ずっと顔を出してなかったのか……」
リリアーナが招待状を見ると、エリオットが首を傾げた。
「でも、学園には行ってたらしいよ」
「僕たち、学園行ってないし!」
セシルが笑った。
「修学旅行も行ってないし! ハハッ!」
「たしかにな」
リリアーナも少しだけ笑った。
それから、もう一度招待状へ目を落とす。
レイナがここ数日、サニーテレビにも、開局記念歌謡祭にも、CM撮影にも姿を見せなかった理由。
その答えが、ようやく目の前にあった。
「……こういうことやったんか」




