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任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第二章 日本編

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第116話 王宮配属

 進路相談の翌日。


 リリアーナは桂、高杉、大久保の三人を連れ、王宮へ戻っていた。


 その横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が、三人の歩き方や周囲を見る目を静かに見ている。



 最初に向かったのは、セドリックの執務室だった。


「セドリック」


「はい」


「こいつ、桂」


 桂が静かに頭を下げる。


「よろしくお願いいたします」


「王宮のことも、国の動かし方も、人の使い方も全部学びたい言うとる」


 セドリックは桂を一度見て、すぐに頷いた。


「承知しました。まずは記録と、各部署がどのようにつながっているかを覚えていただきましょう」


「お願いいたします」


 その横でバルドが鈴を鳴らす。


 チリン。


「私からは、進行と段取りをお教えします」


「ありがとうございます」


「ただし、王宮の中だけではございません。リリアーナ様の事業にも、必要に応じて同行していただきます」


 桂が顔を上げた。


「現場も、ですか」


「はい。会議と記録だけでは、分からないこともございますので」


「ええやん」


 リリアーナも頷いた。


「王宮と現場、両方見とけ。人がどう動いとるか、どこで詰まるか、それも覚えた方がええ」


「分かりました」


「ほな、頼むわ」


「お任せください」


 セドリックが答えた時には、バルドはすでに桂へ今日の予定表を渡していた。


「開始早いな」


「配属済みですので」


「強いな」



 次に向かったのは、王宮訓練場だった。


 オヤジが鍛え上げた兵士たちが、黙々と稽古を続けている。


 身体は大きく、目つきも鋭い。剣を振る音だけで空気が震えるような男たちだった。


 高杉が少しだけ目を見開く。


「……強ぇな」


「せやろ」


 リリアーナは訓練場を顎で示した。


「ここで若い兵に剣術教えてくれ。お前もここの奴らから学んだらええ」


「分かった」


 高杉は兵士たちの前へ出た。


「高杉だ。俺も学ばせてもらいながら、知ってることは全部教える。戦うためだけじゃねぇ。守るための剣だ」


 兵士たちも一斉に頭を下げる。


「よろしくお願いします!」


「決まりやな」


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、高杉と兵士たちを見て静かに頷いた。



 最後に、リリアーナは大久保を連れてオヤジの執務室へ向かった。


「オヤジ」


「なんや」


「人材持ってきた」


「言い方よ」


 大久保が深く頭を下げる。


「大久保と申します」


「制度、記録、調整、国の仕組み。そこ見れる男や」


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、大久保を静かに見ている。


「光秀と同じように頭の切れる男や。せやけど、見るとこはまた違う」


 オヤジがにやりと笑った。


「よう分かっとるやんけ」


「オヤジやからな」


「何やそれ」


 執務室にいた光秀も大久保へ視線を向けた。


「私の補佐に、ということですね」


「あぁ。制度、傘下国との調整、記録、先のこと。全部教えたって」


「承知しました」


 大久保は光秀へ向き直り、まっすぐ頭を下げた。


「ぜひ、学ばせてください」


「こちらこそ。私一人では見落とすこともあります。力を貸してください」


「はい」


 オヤジは二人を見て満足そうに頷いた。


「国は、頭ええ奴一人で回すもんちゃう。考える奴、動かす奴、現場見る奴、全部おって回る」


「はい」


「ええ顔しとる。使える男や」


「採用やな」


「もう採用済みや」


「せやった」


「忘れんな!」



 オヤジは椅子へ座り直し、リリアーナを見る。


「あとの奴らはどうした」


「配属決めた」


「言うてみ」


「西郷は孤児院。農業も続ける」


「ええやん」


「百ちゃんは農業。新人育成も頼んだ」


「そこはもう親方やな」


「龍馬は外交と商い。アレクシスとリキュウのとこ入れた」


「向いとる」


「高杉は今、訓練場へ置いてきた。王宮兵士やりながら、若い奴らに剣術教える」


「ええ配置や」


「桂はセドリックとバルドから王宮のこと学ばせる。必要なら現場にも連れていく」


「それもええ」


「新選組は警備。街の見回り、護衛、避難誘導」


 オヤジが少し考えた。


「新選組は王宮警備にも回せ」


「王宮も?」


「あぁ。王宮だけ守らんでええ場所ちゃう。ここも街の一部やし、人もよう出入りする。街と王宮、両方見せた方がええ」


「なるほどな」


「山崎は情報班やろ?」


「イレギュラーのとこ入れた」


「それでええ。警備と情報がつながったら強い」


「せやな」


 リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、配置を確かめるように静かに目を細めていた。


 オヤジは満足そうに腕を組む。


「よう見とる」


「現場やからな」


「せやな」



 少しだけ、執務室が静かになった。


 オヤジは窓の外へ目を向ける。


 遠くには農地が広がり、田んぼにはまだ青い苗が並んでいた。


「……はよ米、食いたい」


「結局そこ戻るんかい!」

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