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乙女ゲームの姫に転生した元若頭、攻略そっちのけで世界を変える――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第二章 日本編

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第115話 幕末アイドル

 翌日。


 王宮の会議室には、龍馬、桂、高杉の三人がもう一度呼ばれていた。


 リリアーナの横には、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司。その少し後ろではミレーヌが黒革手帖を開き、バルドが静かに茶を並べている。


 チリン。


「それでは、再面談を始めます」


「再面談ながか?」


 龍馬が笑う。


「まだ何かあるのですか」


 桂が聞く横で、高杉だけは腕を組んだまま明らかに警戒していた。


「嫌な予感しかしねぇ」


「勘ええな」


「当たりかよ」



 リリアーナは三人を順番に見た。


 龍馬。


 桂。


 高杉。


 テレビ映え。


 立ち姿。


 個性。


 三人並んだ時の強さ。


 どれを見ても申し分ない。


「お前らには、アイドル活動してもらいたい」


「…………」


 最初に反応したのは龍馬だった。


「アイドル! わしらがか!」


「あぁ。歌って、踊って、テレビにも出る」


「面白そうぜよ!」


「食いつくん早いな」


「日本のことも、海のことも、未来のことも伝えられるがじゃろ?」


「せや」


「ほな、やるぜよ!」


「決まりやな」



 桂は少しだけ考えてから、静かに頷いた。


「姫君が必要だとお考えなら、私はやります」


「聞き分けええな」


「ただ、歌と踊りには自信がありません」


「そこは教える」


「分かりました」


「採用」



 高杉だけは黙っていた。


「高杉」


「嫌だ」


「即答やな」


「俺はそういう柄じゃねぇ」


「土方と同じこと言うな」


「知らねぇよ。俺はやらねぇ。歌わねぇ。踊らねぇ。衣装も着ねぇ」


「全部やる」


「話聞け!」



 高杉は自分の身体を指した。


「俺の本来の姿、見たやろ!?」


「見た」


「今の俺の姿も見てみろ!」


「見てる」


「俺がこんな姿でアイドルなんかできるか!」


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、静かに高杉を見ている。


 リリアーナは自分の身体を指した。


「俺よりマシやろがい!」


「…………」


 高杉が止まった。


「俺は元若頭やぞ。今は金髪ふわふわの姫や。ドレス着て、王宮おって、学園まで通っとる」


「…………」


「お前、男の姿残っとるやん。俺よりマシやろがい!」


 高杉は何も言えなくなった。


 龍馬が口元を押さえる。


「姫さん、それは強すぎるぜよ」


「事実や」


 桂も静かに目を伏せた。


「反論は難しいですね」


「お前まで乗るな」



 高杉はしばらく黙っていたが、やがて深く息を吐いた。


「……しょうがねぇな」


「やるん?」


「やりてぇことさせてもらってるし、仲間も家族も世話になってる。その恩もある」


 高杉はリリアーナをまっすぐ見た。


「やってやるよ」


「ほんまか」


「ただし、ダサいのは嫌だ」


「俺がダサくさせん」


 リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も静かに頷いている。


「衣装も、曲も、見せ方も全部こっちで考える。お前らの良さ潰さんようにする」


「なら、任せる」



 ミレーヌが黒革手帖へ書き込んだ。



『幕末アイドル』


『龍馬』


『桂』


『高杉』


『全員承諾』



「早いな」


「準備はできていますので」


「またかよ」


「新選組も、すでに承諾済みです」


「…………」


 三人が一斉にミレーヌを見る。


「新選組も?」


 龍馬が聞いた。


「はい。土方さん、沖田さん、斎藤さん、原田さん。四人で活動されます」


「えーーーーー!!!!!」


 高杉が机を叩いた。


「あいつらもやんのかよ!」


「せや」


 リリアーナはにっと笑った。


「ほな、これからアイドルとしてはライバルやな」


 龍馬もにやりと笑う。


「面白くなってきたぜよ」


 桂も少しだけ口元を緩めた。


「負けるわけにはいきませんね」


 高杉は腕を組み直した。


「上等だ。土方には絶対負けねぇ」


「もう乗り気やん」


「うるせぇ」

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