第115話 幕末アイドル
翌日。
王宮の会議室には、龍馬、桂、高杉の三人がもう一度呼ばれていた。
リリアーナの横には、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司。その少し後ろではミレーヌが黒革手帖を開き、バルドが静かに茶を並べている。
チリン。
「それでは、再面談を始めます」
「再面談ながか?」
龍馬が笑う。
「まだ何かあるのですか」
桂が聞く横で、高杉だけは腕を組んだまま明らかに警戒していた。
「嫌な予感しかしねぇ」
「勘ええな」
「当たりかよ」
リリアーナは三人を順番に見た。
龍馬。
桂。
高杉。
テレビ映え。
立ち姿。
個性。
三人並んだ時の強さ。
どれを見ても申し分ない。
「お前らには、アイドル活動してもらいたい」
「…………」
最初に反応したのは龍馬だった。
「アイドル! わしらがか!」
「あぁ。歌って、踊って、テレビにも出る」
「面白そうぜよ!」
「食いつくん早いな」
「日本のことも、海のことも、未来のことも伝えられるがじゃろ?」
「せや」
「ほな、やるぜよ!」
「決まりやな」
桂は少しだけ考えてから、静かに頷いた。
「姫君が必要だとお考えなら、私はやります」
「聞き分けええな」
「ただ、歌と踊りには自信がありません」
「そこは教える」
「分かりました」
「採用」
高杉だけは黙っていた。
「高杉」
「嫌だ」
「即答やな」
「俺はそういう柄じゃねぇ」
「土方と同じこと言うな」
「知らねぇよ。俺はやらねぇ。歌わねぇ。踊らねぇ。衣装も着ねぇ」
「全部やる」
「話聞け!」
高杉は自分の身体を指した。
「俺の本来の姿、見たやろ!?」
「見た」
「今の俺の姿も見てみろ!」
「見てる」
「俺がこんな姿でアイドルなんかできるか!」
刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、静かに高杉を見ている。
リリアーナは自分の身体を指した。
「俺よりマシやろがい!」
「…………」
高杉が止まった。
「俺は元若頭やぞ。今は金髪ふわふわの姫や。ドレス着て、王宮おって、学園まで通っとる」
「…………」
「お前、男の姿残っとるやん。俺よりマシやろがい!」
高杉は何も言えなくなった。
龍馬が口元を押さえる。
「姫さん、それは強すぎるぜよ」
「事実や」
桂も静かに目を伏せた。
「反論は難しいですね」
「お前まで乗るな」
高杉はしばらく黙っていたが、やがて深く息を吐いた。
「……しょうがねぇな」
「やるん?」
「やりてぇことさせてもらってるし、仲間も家族も世話になってる。その恩もある」
高杉はリリアーナをまっすぐ見た。
「やってやるよ」
「ほんまか」
「ただし、ダサいのは嫌だ」
「俺がダサくさせん」
リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も静かに頷いている。
「衣装も、曲も、見せ方も全部こっちで考える。お前らの良さ潰さんようにする」
「なら、任せる」
ミレーヌが黒革手帖へ書き込んだ。
『幕末アイドル』
『龍馬』
『桂』
『高杉』
『全員承諾』
「早いな」
「準備はできていますので」
「またかよ」
「新選組も、すでに承諾済みです」
「…………」
三人が一斉にミレーヌを見る。
「新選組も?」
龍馬が聞いた。
「はい。土方さん、沖田さん、斎藤さん、原田さん。四人で活動されます」
「えーーーーー!!!!!」
高杉が机を叩いた。
「あいつらもやんのかよ!」
「せや」
リリアーナはにっと笑った。
「ほな、これからアイドルとしてはライバルやな」
龍馬もにやりと笑う。
「面白くなってきたぜよ」
桂も少しだけ口元を緩めた。
「負けるわけにはいきませんね」
高杉は腕を組み直した。
「上等だ。土方には絶対負けねぇ」
「もう乗り気やん」
「うるせぇ」




