第110話 密着!イケメン☆日本軍団
「……土方!?」
リリアーナは目を見開いた。
「なんで知っとるん」
令嬢たちは顔を見合わせる。
「テレビで拝見しましたわ!」
「毎週見ておりますもの!」
「毎週?」
「はい!」
「何をや」
令嬢たちは声をそろえた。
「『密着!イケメン☆日本軍団』ですわ!」
「何やその番組!!!」
説明しよう!
『密着!イケメン☆日本軍団』とは!
詠女が勝手に企画し、勝手に撮影し、いつの間にか中央放送局で放送していた、日本勢の日常密着番組である!
本人は。
「国際交流を目的とした教養番組です」
と言い張っている!
しかし映っているのは。
土を耕す土方。
昼飯を食べる沖田。
海を眺める龍馬。
本を読む桂。
腕を組む高杉。
どう見ても詠女の趣味で作られた、イケメン観察番組なのである!
「アイツ何しとんねん!」
リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が額へ手を当てていた。
ミレーヌは黒革手帖を開く。
「詠女さんですね」
「分かっとるわ!」
「視聴率も好調です」
「数字取れとるん!?」
「中央放送局の人気番組です」
「誰が許可した」
「視聴者です」
「強いな!」
令嬢の一人が、嬉しそうに身を乗り出した。
「昨日の土方様も素敵でしたわ!」
「昨日?」
「畑を耕しておられましたの!」
「今日も耕しとったわ」
「まあ! 最新の土方様ですわ!」
「情報の受け取り方おかしいやろ」
「沖田様も素敵でした!」
「高杉様も捨てがたいですわ!」
「龍馬様の笑顔も爽やかで!」
「桂様は知的ですし!」
「斎藤様も寡黙で素敵ですわ!」
「全員見とるやん」
リリアーナは令嬢たちを見渡した。
「テレビ、そんな見とるん?」
「もちろんですわ!」
「我が家では毎晩ついております!」
「わたくしのお部屋にもございますわ!」
「うちにも一台ございます!」
「我が家は二台です!」
「二台!?」
リリアーナはミレーヌを見る。
「もうそんな普及しとるん?」
「富裕層では、一家に一台が普通になっていますね」
「普通!?」
「放送番組も増えましたので、一気に購入する家が増えました」
「知らん間に生活の一部なっとるやん」
刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、学園の巨大魔導テレビや廊下に貼られた番組表を静かに見ていた。
その時、学園の巨大魔導テレビが光った。
『密着!イケメン☆日本軍団』
「ちょうど始まりましたわ!」
「授業は?」
「もうすぐですわ!」
「見る気やん」
画面に土方が映った。
黒い服。
鋭い目。
肩には鍬。
キラーン。
『本日も、朝から働く土方さんです』
「普通に農業しとるだけや!」
土方は黙々と土を耕している。
『無駄口を叩かず、大地と向き合っています』
「言い方で格好よくすんな!」
次は沖田だった。
「お腹が空きました」
キラーン。
『飾らない言葉も魅力です』
「腹減った言うただけや!」
高杉が映る。
「昼飯まだか」
キラーン。
『本日もワイルドです』
「沖田と内容一緒やん!」
龍馬が畑の向こうから手を振った。
「今日はええ天気ぜよ!」
キラーン。
『笑顔で世界を明るくします』
「急に規模デカなった!」
桂は水路の横で記録を取っていた。
「この流れなら問題ありません」
キラーン。
『知性が水路にも流れています』
「何言うとんねん!」
画面の端には詠女が映っていた。
目だけは真剣だった。
「以上、本日の国際交流でした」
「どこがや!!!」
放送が終わると、令嬢たちは拍手していた。
「素晴らしかったですわ!」
「今日も土方様が素敵でした!」
「沖田様も!」
「高杉様も捨てがたいですわ!」
リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司がテレビと令嬢たちを交互に見ていた。
少しして。
「……需要あるな」
リリアーナが呟く。
ミレーヌは、もう黒革手帖を開いていた。
「私もそう思っていました」
「早いな」
「新選組でアイドルグループを作れます」
「メンバーは?」
「土方さん、沖田さん、斎藤さん、原田さん」
「原田?」
「はい」
「令嬢ら、誰も原田言うてへんかったぞ」
「グループは、バランスも大切ですので」
リリアーナはミレーヌをじっと見る。
「ノリで入れたやろ」
「少しだけです」
「認めるんかい」
刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司は、その横で腕を組んだまま考えていた。
「でも、龍馬と高杉と桂も捨てがたいな」
「では、二組とも作りましょう」
「決断早っ!」
「すでに視聴者がついています」
「売れる時に売る」
「六本木の判断早いな」
「機会は逃さない方がよいので」
「殿堂入り怖いわ」
令嬢たちは、さらに騒ぎ始めた。
「アイドルですの!?」
「土方様が歌われるのですか!?」
「沖田様も!?」
「高杉様もお願いします!」
「まだ本人らに何も言うてへん!」
「絶対出ていただきたいですわ!」
「もうファンおるやん」
ミレーヌは黒革手帖へ書き込んでいく。
『新選組』
『候補』
『土方』
『沖田』
『斎藤』
『原田』
『方向性』
『統一感』
『鋭さ』
『隊列』
『硬派』
『幕末側』
『候補』
『龍馬』
『高杉』
『桂』
『方向性』
『自由』
『革命』
『海』
『未来』
「もう企画書できとるやん」
「需要が見えましたので」
「仕事早すぎるねん」
そこへレイナが歩いてきた。
「清司様」
「なんや」
「もうすぐ修学旅行ですわ」
「修学旅行?」
「はい。久しぶりに学園へ戻られましたので、ご説明しようと思いまして」
「どこ行くん」
レイナは微笑んだ。
「グランヴェール国ですわ」
一瞬、静まり返った。
リリアーナの横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も目を見開いていた。
「近!!!!」




