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任侠の若頭だった俺、なぜか乙女ゲームのヒロインになりました――ふわ姫若頭  作者: 夜嶋朔
第二章 日本編

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100話 報告会議

 王宮モビーズ本部には、これまで現場復帰してきた者たちが勢ぞろいしていた。


『ロイヤル・フラグメント』。


『セイントミステリア』。


『紅月の海賊ヴァンパイア』。


『朧月あやかし恋絵巻』。


『帝都ラーメン☆アイドル革命』。


 そして、日本から新たにやってきた龍馬、桂、高杉、西郷、大久保たち幕末反乱軍。近藤、土方、山南、沖田たち新選組。明智。心絆と聖子もいる。


 リリアーナは会議室の椅子へだらりともたれ、その横では刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が壁へ気だるそうにもたれながら、集まった全員を見渡していた。


 ミレーヌが黒革手帖を開き、バルドが静かに鈴を鳴らす。


 チリン。


「皆様、現在の国の状況と、新しく加わられた皆様についてご報告いたします」


 ざわついていた本部が一瞬で静かになった。


「まずは、日本から来られた皆様です」



 説明しよう!


『幕末革命恋航録 〜生きて帰るまでが開国です〜』とは!


 信長が支配する日本で、国を変えようと立ち上がった幕末反乱軍の乙女ゲームである!


 日本を開国する予定だったが、全員そろってリュミエール王国へ移住してきたのである!



「待つぜよ! わしらは日本を開国するために戦っとったぜよ!」


 龍馬が勢いよく前へ出た。


「せやな。なんで全員こっち来たんや」


「無理じゃき!」


「諦めるん早いねん!」


「船なら用意できるぜよ!」


「逃げる方の準備は完璧やったな!」


 桂は真面目な顔で頷いた。


「生き残るためには必要な判断でした」


「お前まで納得すな!」


 高杉が笑う。


「こっちの方が話が早かっただけだ」


「革命より移住選んだんかい!」


 西郷は大きく頷いた。


「皆、生きております。それが一番です」


「そこはほんまにそうや」


 大久保が静かに眼鏡を押し上げる。


「制度を作る国も、すでにございますので」


「就職先まで見つけとるやんけ!」



 説明しよう!


『幕末恋刃録 〜斬らないで新選組〜』とは!


 信長の命令を受け、日本の治安を守っていた新選組の乙女ゲームである!


 池田屋で清司に全員しばかれ、話を聞いてもらい、家族ごと仲間になったのである!



「しばかれた部分を強調する必要があるのか!?」


 土方が叫んだ。


「一番分かりやすいやろ」


「我々には信念があった!」


 近藤も前へ出る。


「その信念ごと俺にしばかれたんやろ」


「言い方!」


 山南が困ったように笑った。


「ですが、結果として皆が生きる道を選べました」


「お前が一番話早いな」


 沖田は楽しそうに笑う。


「僕は、またアニキと手合わせしたいです」


「嫌や」


「即答ですか?」


「次は加減せぇへんぞ」


「楽しみです」


「怖いねん!」


 バルドが鈴を鳴らす。


 チリン。


「新しい皆様のご紹介は以上です」


「雑すぎるやろ!」


「簡潔な進行でございます」


「簡潔にも限度あるわ!」


 バルドは何事もなかったように次の紙へ目を落とした。


「続きまして、現在の産業についてご報告いたします」


 ミレーヌが黒革手帖を確認する。


「ラーメン店『壱乱』、点心店『777』、パン店『パンチ』。すべて国内だけでなく、傘下国へ広がっています」


「もう世界進出しとんの!?」


「はい。ラーメン、餃子、焼売、肉まん、小籠包、パン、焼き菓子。各地で大変好評です」


「すごすぎやろ!」


 リリアーナが思わず声を上げた。


『ロイヤル・フラグメント』は、街道、警備、防火、放送局、芸能事務所で、それぞれの持ち場を守っていた。


『セイントミステリア』は歌、体調管理、心の支え。


『紅月の海賊ヴァンパイア』はタイフーンのダンス、姿勢、見せ方、撮影、映像送信。


『朧月あやかし恋絵巻』は水、土地、風を使い、貧民街の暮らしを整えている。


『帝都ラーメン☆アイドル革命』は、ラーメン、点心、貧民街復興、芸能、帝国との調整まで進めていた。


「全員、ちゃんと現場回しとるやんけ!」


 レオンが少しだけ胸を張った。


「リリアーナが残れって言ったから、ちゃんと守ったよ!」


 ルシアンも嬉しそうに頷く。


「僕も冷たくしたよ。送信魔石も映像魔石も、熱くなりすぎなかった!」


「建物ごと凍らせてへんやろな」


「してないよ!」


「成長したな」


「やった!」


 エミールも髪を整えながら笑った。


「僕は風をいっぱい使ったよ。放送局もちゃんと息できるようにした!」


「放送局に肺ないけどな」


「でもみんな息できるよ!」


「それならええ」


 エリオットも元気よく手を上げた。


「僕は花田丸と公園を守ったよ! 迷子もちゃんと見つけた!」


「お前が迷子ならんかった?」


「ならなかったよ! たぶん!」


「たぶん言うな!」


 ノエルはリリアーナのそばへ寄ってきた。


「僕も子どもたちを守ったよ。パン工場も見たよ。リリアーナ、褒めて」


「急に甘えたチワワ来たな」


「褒めてくれないの?」


「よう頑張った」


「やった!」


 ノエルは嬉しそうに笑った。


 セシルも手を挙げる。


「芸能事務所に来る人、もっと増えたよ! 今なら二十人まとめてお話できる!」


「まだ二十人維持しとんのか」


「三十人もいけるかも!」


「増やすな!」


「できるよ!」


「できるかどうか聞いてへん!」


 ミレーヌが次のページを開いた。


「芸能事業とテレビ放送も世界へ広がっています。タイフーンは各国で人気を集め、ニュース、天気、災害、避難、国からのお知らせも放送されています」


「俺、ちょっと日本行っとっただけやぞ!」


「皆様、清司さんの指示をすべて実行されました」


「優秀すぎるやろ!」


 詠女がタイフーンの三人を見ながら満足そうに頷いた。


「衣装、立ち位置、舞台導線、楽屋。すべて順調です」


「ほんまに仕事だけ見とる?」


「仕事です」


 詠女の視線が、すっとシャーホムズとワトゾンへ移った。


「お二人の相棒関係も順調です」


「そこ報告いらん!」


「重要です」


「何にや!」


「私にです」


「正直やな!」


 その時、アレクシスが勢いよく前へ出た。


「僕は日本で大活躍だったよ!」


「自分から言うな!」


「斬りかかってきた人を妖魔法で止めたよ! 剣も落としてもらった! 誰も殺してないよ!」


「ほんまや。助かった」


「もっと褒めていいよ!」


「調子乗るな!」


「えへへ」


「もう喜んどるやんけ!」


 リキュウが静かに一礼した。


「葉巻と煙草の商談も、滞りなく終わりました」


「葉巻売っただけやろ」


「十分でございます」


「十分やった。信長、葉巻しか見てへんかったからな」


「それは私の商才を超えております」


「正直やな!」


 晴明が扇を閉じた。


「本能寺では、式神と共に火を止めました」


 式神の身体を形作る水が、静かに揺れる。


「火、消した」


 リリアーナは式神を見る。


「ほんま助かった。あれ止めてへんかったら全部燃えとった。貧民街には綺麗な川作って、今回は本能寺の火まで止めた」


 式神の水が小さく揺れた。


「信長見ても、勝手に沈めようとせぇへんかったな」


「約束、守った」


「ようやった」


 式神の水が、嬉しそうに大きく揺れた。


 心絆が拳を上げる。


「皆さんが!!! 無事にここへ来られて!!! 本当によかったです!!!」


「声デカ! でも言うとることはその通りや!」


「ありがとうございます!!!」


「耳元で言うな!」


 明智がリリアーナの前へ出た。


「姫殿。本能寺では、誠にありがとうございました」


「ほんまに、あそこでお前も信長も死んどったら、秀吉の天下やったぞ」


 明智の動きが止まる。


「……危ないところでした」


「他人事みたいに言うな!」


「反省しております」


 リリアーナは少しだけ声を落とした。


「これからはオヤジ頼むで」


 明智が顔を上げる。


「オヤジは信長と違って暴君やない。ちゃんと人を見る。貧しい奴を切り捨てへんし、貧困の差もなくそうとしとる。せやから、これからは相談役として、その頭をオヤジのために使ってくれ」


 明智は深く頭を下げた。


「承知いたしました。この命、国王陛下とこの国のために使います」


「命は簡単に差し出すな。頭使え」


「……はい」


 王宮モビーズ本部が少しだけ静かになったが、すぐに龍馬が手を挙げた。


「わしも船と交易で役に立つぜよ!」


「分かっとる」


「立派なブーツも忘れんといてくれ!」


「そこ一番大事なんかい!」


「約束は約束ぜよ!」


「仕事してから渡す!」


「もう船用意したぜよ!」


「仕事早いな!」


 近藤も一歩前へ出る。


「我々も、この国のために働きます」


「何できる」


「治安維持です」


「斬るなよ」


「斬りません」


 土方が横から口を挟む。


「話が通じねぇ奴は?」


「まず話せ」


「話が通じなければ?」


「俺呼べ」


「アニキがしばくのか」


「なんで俺やねん!」


 沖田が楽しそうに笑った。


「では安心ですね」


「安心すな!」


 山南は静かに頷く。


「まずは、この国の法律を学びます」


「お前が代表でよかったわ。ほか三人、すぐ喧嘩しそうや」


「否定できません」


「できへんのかい!」


 次々に声が重なった。


「俺も働く!」


「私にも仕事を!」


「こちらも報告があります!」


「まだ終わっていません!」


 バルドが静かに鈴を鳴らす。


 チリン。


 全員がぴたりと黙った。


「順番にお願いいたします」


「鈴一個で止めるん、ほんますごいな」


 バルドはいつもの穏やかな表情で、リリアーナを見た。


「最後に、私から申し上げます。姫様が一番素晴らしかったです」


「……俺?」


「はい。皆様の力を見つけ、持ち場を作り、危険な時には先頭へ立たれました。誰一人、見捨てておられません」


 日本から来た者たちも一斉に頷いた。


 近藤が、まっすぐリリアーナを見る。


「アニキがいなければ、俺たちはここにはいません」


 桂も静かに頭を下げた。


「死ぬしかないと思っていた私たちへ、生きる道を示してくれました」


 龍馬が笑う。


「家族も仲間も、一緒に未来へ連れてきてくれたぜよ」


 明智も深く頭を下げた。


「姫殿がいなければ、私は何も変えられませんでした」


 リリアーナは集まった全員を見渡した。


 その横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も静かに顔を上げる。


「いや。俺は、なんもすごいことしてへん」


 刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司が、リリアーナの姿へ深く重なった。


「すごいんは、お前らや。料理できる奴がおった。道作れる奴がおった。家建てられる奴がおった。人治せる奴がおった。歌える奴がおった。踊れる奴がおった。情報集められる奴がおった。戦える奴がおった。人を笑わせられる奴もおった」


 リリアーナは一人ずつ、その顔を見る。


「俺は、そいつら見つけて、持ち場決めて、指示しただけや。今の国があるんは、お前ら全員が自分の持ち場で働いたからや」


 少しだけ笑った。


「せやから胸張れ。お前ら全員、すごい奴らや」


 しばらく静寂が続いたあと、レイナが優しく笑った。


「ですが、やっぱり清司様のおかげですわ。新選組まで仲間にするなんて、なかなかできませんもの」


 リリアーナがレイナを見る。


「そういや、この前から清司様呼びやな。前は姫様やったやろ」


「はい」


 レイナは少し頬を赤くした。


「あのお姿を拝見したら、もう清司様としかお呼びできませんわ」


「……」


 パードがすぐに顔を寄せる。


「分かる。あの蹴り、やばかったよね」


 キルナも頷く。


「あの目もな」


 スギナは胸へ手を当てた。


「煙草をお吸いになった時の魂の色気が、星々を震わせました」


「また始まった!」


 心絆も拳を握る。


「声も!!! とても素敵でした!!!」


「声デカ!」


 聖子も勢いよく手を挙げた。


「お兄ちゃん、格好よかったぁぁ!」


「うるさっ! 女子会すな! 今、全員集会やぞ!」


 再び王宮モビーズ本部が騒がしくなる。


 バルドが鈴を鳴らした。


 チリン。


 全員が一瞬で黙る。


「姫様から、お知らせがございます」


 リリアーナは一歩前へ出た。


 その横では、刀を肩に担いだ黒スーツ姿の清司も、新しい現場を見据えている。


「これから、農業を始める」


 全員が目を見開いた。


「日本から来た農家と、この国の土地を使う。米、大豆、野菜、ネギ、味噌、漬物。全部作る。種も肥料も農具もそろっとる」


 リリアーナは集まった全員を見渡した。


「土地見て、水見て、人配置して、新しい仕事始めるぞ!」


「はい!!!!」


 心絆の声だけが、やはり一段大きかった。


「声デカ!!」

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