骨格用語「江湖」「侠」「門派」
武侠小説にも、なろう小説と同じく、テンプレと呼べる世界観がある。まずは実在する武術などの概念も絡め、テンプレとしてよく使われる用語を中心に学習する。
最初に「江湖」。
江湖とは、朝廷の権力の及ばない世俗社会のこと。山門などで修業をしている道士や僧たちが、一定の年齢に達し、諸国漫遊の修行旅などを行う際に「江湖に出る」という表現が使われる。物語のメインの舞台。日本では耳馴染のない言葉だが、これはどうやらマストであるらしく、中国が舞台の作品感を出すためには、良い装置であるとも言える。
次に「侠」の精神。
日本でもヤクザ作品で「任侠」という言葉がよく出てくるので、ご存じの方も多いだろうが「弱きを助け、正義を貫く」というのが、侠の精神。義侠心や侠客など、とにかく「男の道」を重要とするのが、武侠作品(侠気はオトコギとも読むくらいだ)。これによく付随して語られる「仁義礼智信」の概念は、儒教における五常=5つの道徳から来ている。
そして「門派」。
武術や思想を同じくする派閥や集団。宗派や一門によって区別する。
代表的な正派には、少林派、武当派、峨眉派、崑崙派、崆峒派、終南派、華山派などが挙げられ、どれも中国にある山々からその名前が取られている。―― 少林寺は、嵩山少林寺が正式名称であるが、嵩山派としている作品はまだ見かけたことがない。
仏教である少林寺(少林派)を除くと、道教の宗派が並ぶため、僧ではなく「道士」たちが各門派で武術訓練に励む。そのため、修行によって上がっていく位階や境地も道教の表現が多々出てくる。
正派の対となる「邪派(邪道な武術を使う門派)」には、(毒の扱いを専門とする)唐家の唐門や魔教などが挙げられる。だが、こちらは基本的にフィクションであるため、自作ではオリジナル門派を作るのがよいかもしれない。
さらにフィクション正派には、貴族的な名家による門派も数多くあり、武侠小説ではその定番がある。中国では「二字姓」を由緒のある名家とするため、実在する姓からそれらが創作される。有名な二字姓では、諸葛、司馬、公孫、皇甫、南宮、慕容、欧陽などが挙げられる。南宮世家なら剣術、諸葛世家や司馬一族なら陣法というのも定番であるが、オリジナルを書く際には、ここも思案のしどころである。
次は、中国武術の歴史を。




