転生したらコンタクトレンズだった件
主人公は天寿を全うして逝きました。次の人生を決めるためによくある"転生ガチャ"をやるのですが小説や漫画で見る俺ツェぇえ!!!みたいなものを引き当てることは出来ず、なんとも地味ぃなものばっかに転生します。
地味ぃなもの達なんですけど逝き方は派手で美しいのでぜひ最後まで見ていって下さい。
多分あなたも含めて私たちは豪運を持ち合わせていないと思うので99.9999%の人は死後にこの本に共感することでしょう。
俺は6回目の転生で転生10連ガチャを引いた。
結果は、
石(小)、石(小) 、石(中)、石(小) 、石(中)、石(小)、石(中)、石(小)、石(中)だった。
ちなみに今回の人生は石(小)だ。
石(小)は恐らく転生ガチャでは最低レアリティのものだろう。
今までのもので言うと、鶏卵、消しゴム、蟻、鍋敷、窓だ。
いつもの窓口へ行き、慣れた口調で天使に話しかける。
「前回10連引いたものなんですけど〜」
「あー!あの方ですね。前回が窓で〜今回は……コンタクトレンズですね!あちらの光へどうぞ〜」
今回はコンタクトレンズらしい。何日用のコンタクトレンズかで、寿命が決まりそうだな。
眩い光に足を踏み入れる。
目を覚ました時、目の前には美少女がいた。
黒くて艶やかな髪の毛を丁寧に櫛でとかし、大きな瞳には、虚ろな影が入り込む。薄い唇で髪ゴムを加え、陽光が通った鼻筋に影を作り制服を纏った透き通る肌を照らす。
これは鏡だ。俺は今回この子のコンタクトレンズとして転生したのだ。
ふと、部屋の隅にある時計に目をやると視界が激しく揺れる。布団に潜り込んでいたスマホを探し出し、ドタバタと階段を駆け降りる。
「じゃ、行ってくるね!今日は部活あるからちょっと遅くなるかも!」
「わかった〜、いってらっしゃ〜い」
母に声をかけて学校へ行く。
教室に着くと隣の席の男の子が話しかけてくる。
「今日暑くね〜?」
「分かる〜、めっちゃ暑いよね。」
「暑すぎて夜の夏祭りまでに干からびそうだわ笑、お前は今日くんの?」
「行くよ!彼氏と一緒にね〜」
「また惚気かよ笑」
「まぁね笑」
「楽しんでな」
俺には聞こえた。男の子に聞こえない様に小さく呟いた。
「会えるかな。」という声が。
忘れていた青春を思い出す。あの時の花火、俺はずっと忘れることはないだろう。言えなかった言葉を思い出す。
授業が終わり、昼休みだ。友達複数連れて何処かに行くのか?屋上でおしゃべりか。いいなぁ。
ギャルたちが口を開く
「昨日のドラマ見た?マジでキュン死しそうになったんだけど」
「わかる。あれエグかったね。バリ青春って感じした。てか、鼻筋綺麗すぎだろあれ。冬になったら雪積もってスキーできんぞ」
「まじそれな!ぱねぇ鼻筋だったわ!まじぱねぇ!」
意外とこういうタイプの子達と仲良いんだなぁ。人は見かけによらない。
「てかもう授業始まるくね?」
「まじじゃん。次の授業ずっと鼻つまんでたら鼻筋ゴリ綺麗になるんじゃね?」
たわいもない話をしながら授業に戻る。駆け降りる階段の白い壁には生徒会や保健委員からのポスターが貼られている。学生達の声が耳に響く。懐かしい気持ちが蘇る。
授業が終わり、校門の前で1人待つ。お母さんに話していたことは嘘だった様だ。甘酸っぱい嘘だ。
彼氏が「おまたせー!」と現れる。
視線が一瞬顔に行き、逸らす。
「全然待ってないよ!」
2人は手を繋ぎ歩き出した。
「初めての夏祭りだね」
徐々に祭囃子と子供の声が聞こえる。
「だな、なんか食べたいのある?」
目には真っ赤な提灯や、からあげ、ぽてとなどが書かれた屋台の屋根が映る。
「とりあえずなんでも食べれそう笑、色々回ってみてみよっか」
「そーだな笑」
からあげ、わたがし、焼きそばなどの屋台を見て回るうちに徐々に日が傾き始めた。
一通り買い終わった後は花火が見える河川敷に座り、屋台の灯りに照らされた焼きそばを口に運ぶ。
たわいもない話をする。テストの話や部活の話。バイトの話や過去の恋愛。そんな話に花を咲かせていると彼氏が何かに気づく。
「あれっ財布忘れたかも。。ちょっと屋台んとこ見てきていい?」
「えっ気づかなかった。私ここにいるから見に行きなよ!」
彼氏が屋台に向かって走る。
そんな彼氏を見送り、空を見上げ星を見つめる。
すると、後ろから声が聞こえた。
「やっほーこんなとこにいた」
隣の席の男の子だ。華奢な体に甚兵衛を羽織っている。
言いにくそうに口を開く
「実は俺、明日転校すんだよね。」
あの時を思い出す。
「だからさ、最後に言おうと思って。探してたんだ。」
俺の記憶が男の子と重なる。
「無理なのは、ずっとわかってたんだけどさ。」
男の子の目にはいっぱいの涙があふれている。流れない様に堪える瞳は震えている。
俯く視界。視界がぼやける。女の子が口を開く。
「なんでもっと早く言いに来なかったの。私ずっと待ってたんだよ。中学生の時からずっと。」
鼻をすすり、声を震わす。
花火が暗闇を照らす。
「私は……」
涙と一緒にコンタクトが落ちる。
俺の今回の人生は、17歳立花咲の青春と共に逝った。




