転生したら窓だった件
主人公は天寿を全うして逝きました。次の人生を決めるためによくある"転生ガチャ"をやるのですが小説や漫画で見る俺ツェぇえ!!!みたいなものを引き当てることは出来ず、なんとも地味ぃなものばっかに転生します。
地味ぃなもの達なんですけど逝き方は派手で美しいのでぜひ最後まで見ていって下さい。
多分あなたも含めて私たちは豪運を持ち合わせていないと思うので99.9999%の人は死後にこの本に共感することでしょう。
見慣れた景色だ。今日もガチャを引こう。というか、いっつもあっちにすごい長蛇の列あるけどあれはなんなんだ?
あの暇そうにしてる天使に聞いてみるか。
「すみませーん、あっちの、、そうそうあれです、あの列ってなんですか?」
「あー、あれは10連ガチャですね!大体の人が並んでもいいから10連引きたいって感じであっちに行ってます!」
「そうなんですね!ありがとうございます!」
知らなかった。確かに一回一回やるより一気に回したほうが効率的だよな。
よし、今回は10連で行こう。
4日ほど待っただろうか。ついに俺の番が来た。
ここで10回分の人生が決まるのだ。手に汗が滲む。
ガチャに手をかけ、力を込めてガチャを回す。排出口から順に出てくる。
石(小)、石(小) 、石(中)、石(小) 、石(中)、石(小)、石(中)、石(小)、石(中)
そして最後、カランっ。何かが輝きながら出てきた。
ちっせぇ金だ。
アツい!激アツだこれは!金って相当当たりだろ!もしかして、人間だったりして!
考えただけでワクワクが止まらない!!残りの9個の石は微妙だったが、9回くらいなんてことない。ちゃっちゃと転生しよう。
天使のとこへ行く。
ゴロゴロ、10個分の石をカウンターに置く。
「これ、10連分です。」
「10連のお客様ですね〜。一つ目が〜窓になります。あちらの光に向かってください。次の方〜」
お、窓か。窓は楽勝そうだな。
眩い光に足を踏み入れる。
目を覚ますと目の前には綺麗な庭園があった。大きな松の木が隆々と生えている。きっと愛情込めて手入れしてるのだろう。
いい天気だ。戯れる鳥達の囀り、木々の擦れる音、走り抜ける車の音。野球をする子どもたちの声。こんな転生もたまには良いものだ。
「ばかもん!そんな事がありえるか!!」
「すみませんお父さん、わざとやった訳じゃ無いんです。」
この家はあれだ、今時珍しい亭主関白系バカもん親父が住んでる家か。
「勝手に車を持っていきやがって、挙げ句の果てに事故だと!」
「ごめんなさいお父さん、急用だったもので。。」
「関係あるか!」
なるほど、確かに無許可で車を使われて事故は相当キツイな。。
「大体さっきからお父さんとはなんだ!人の家に勝手に入り込んで車を盗難しといて!!今警察を呼ぶからここで待ってろ!!」
「ごめんなさい。もうしないので警察だけは。。」
まじかよ。。激ヤバじゃないかこいつ。このおじさんが可哀想だよ。。
そんな屋内の様子に聞き耳を立てていると、
カキーーン!!!!!!
バットの芯にボールが当たった音が聞こえた。
きっと隣の公園で劇的ホームランが出たのだろう。ってあれ?あの空にあるのってボール??
そこからは目に映る風景がスローになった。
逆光に照らされ白いボールが黒い影になる。
俺は思う。きっと窓の人生に出来ることなんてほとんどなかったのだろう。
そこに絶対必要なのに、見えるよりも見えない方が価値のある。窓とはそういうものなのだ。
誰に見られなくても良い、誰に気づかれなくても良い。
この俺の後ろにいるおじさんを守るために。俺が少しでも衝撃を和らげなければ。
最後に、、1つだけお願いを聞いてくれ。
あんたのこと、お父さんと呼んで良いかい?
パリーーーン!!ガラスが弾け飛ぶ。
「ばかもーーーーん!!!!」
お父さんの怒鳴り声が初秋の夕焼け空に響き渡った。
今回の俺の人生は、10歳寺島ゆうやのホームランで逝った。




