転生したら鍋敷だった件
主人公は天寿を全うして逝きました。次の人生を決めるためによくある"転生ガチャ"をやるのですが小説や漫画で見る俺ツェぇえ!!!みたいなものを引き当てることは出来ず、なんとも地味ぃなものばっかに転生します。
地味ぃなもの達なんですけど逝き方は派手で美しいのでぜひ最後まで見ていって下さい。
多分あなたも含めて私たちは豪運を持ち合わせていないと思うので99.9999%の人は死後にこの本に共感することでしょう。
四度目の転生だ。前回の転生はロクなことにならなかった。慣れもあり、端折りすぎた。きっとそれがいけなかったのだろう。今回は丁寧に行こう。
「ご機嫌よう天使さん、今日の気分はいかがですか?」
「普通です。後ろも詰まってるんでちゃっちゃっと引いてくださいね〜」天使も忙しいのだ。俺に構ってる暇はないのだろう。
ガチャを前にし神様に祈りを捧げる。
お腹に力を込めガチャを回す。
「オリャァぁぁぁあ!!」コロンっ。ちっちぇ石ころ。「くそぅ!!」心の声が漏れる。
「静かにしてくださいね〜。引いた人はあっちの天使の方へどんどん行っちゃってくださーい」
まだだ、この天使のところで転生先が決まるようなものだ。
「ふぐっ、んぐっ、おれよぉ、実はよぉ、妹を残して逝っちまったんだよぉ」
「そうなんですね〜お気の毒に。あなたの次の転生先は鍋敷です。あちらの光の方へ行ってください。次の方どうぞ〜!」
演技で出していた涙がいつしか本当の涙に変わる。しょぼくれた背中で光に向かう。鍋敷かぁ〜
光に包まれたあと、食器棚の中に俺はいた。少し古風な建物だ。隣にはしっかりと鍋がある。きっと俺はこいつとペアを組むのだろう。
ギィーっと軋む音が鳴り光がさす。早速出番だ。柔らかい手に包まれ埃が落とされる。
テーブルの上に行くと皆キラキラとした笑顔をしている。
俺の上に鍋が乗る。楽しそうな談笑が聞こえ、まるで俺も家族の一員になったようだった。
どうやらこの家庭では、お祝い事の際にすき焼きをする風習があるようだ。俺の出番がある時はいつもみんな幸せそうな顔をしている。きっとこの顔は鍋敷に向けたものではないだろう。それでも俺は幸せを感じていた。
何もないまま20年がすぎた。いつしか俺はこの食器棚の中でも古株になっていた。ギィーっと軋む音が聞こえた。
あの柔らかい手が伸びてくる。徐々に劣化していった俺を見て、俺を撫でた。
そうか、俺の出番はここで終わりなんだな。ありがとう。俺を家族の一員にしてくれて。
今回の俺の人生は寿命で逝った。




