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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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一揆加勢(いっきかせい)

一揆加勢考——義の旗に乗じ、火事場の銭を拾う

挿絵(By みてみん)

(『騒擾世相録』民明書房刊・二〇一八年/著者・火事場堂拾蔵)


「一揆加勢(いっきかせい)」——民衆の蜂起や暴動が起こった折、その義憤や混乱に乗じて加勢するふりをしながら、略奪や盗みなど私利私欲の悪事を働くことを指すこの言葉。かの「一気呵成」——一息に物事を成し遂げることを指す成語——と音韻近きゆえに混同されがちであるが、前者が勢いよく事を成す姿であるのに対し、こちらは他人の勢いに便乗して利を拾う姿である点で、両者は全く別物であることを、まずもって明らかにせねばならぬ。単なる火事場泥棒の言い換えと侮る者は多いが、この成語が後漢末の一郡に起こった蜂起の顛末に由来することを知る者は、今日ほとんど残っていないのである。


義憤の蜂起


事の起こりは後漢末、凶作と重税に苦しんだ北方の一郡である。時の太守は、飢えた民から容赦なく租税を取り立て、蔵には役人のための米が山と積まれていたと『騒擾世相録』は伝える。ついに堪忍袋の緒が切れた農民たちは、鍬と鎌を手に立ち上がり、郡の役所へ押し寄せた。


彼らの望みは、不当な税の撤回と、蔵の米を飢えた村々へ分けることであった。蜂起の指導者・義徳(ぎとく)は、仲間にこう戒めたという。「我らは義のために立つ。奪うために立つのではない。民の物には指一本触れるな」と。


加勢に集う者たち


ところが、この蜂起の報が広まると、各地から続々と「加勢」を名乗る者が集まり始めた。


その中に、貧しい村の者ではない顔ぶれが混じっていたと記録は語る。博打場の用心棒、街道筋の無頼、借金に追われた商人崩れ。彼らは「我らも太守の悪政に苦しんだ。加勢させてくれ」と口々に言い、義徳の列に加わった。人手が増えることを喜んだ義徳は、素性を深く問わずに彼らを受け入れた。


しかし、彼らの目的は、蜂起の義とは無関係であった。


騒乱の夜


蜂起の夜、役所が陥落すると、混乱に紛れて「加勢」の者たちが、一斉に別の動きを見せた。


彼らは役所の蔵ではなく、隣接する商家の蔵や、裕福な民家に押し入り、金品を奪い、火を放ち、逃げ惑う者から財布を剥ぎ取った。「一揆の者がやった」という声が上がれば、すべてが蜂起の仕業と見なされ、誰も彼らの名を知らぬまま、罪だけが蜂起に着せられていく。


義徳が異変に気づいた時には、街の半ばが略奪に遭い、被害に遭った者たちの怒りは、本来の敵である太守ではなく、蜂起した農民たちに向けられていたという。


義の瓦解


翌日、朝廷の討伐軍が到着した時、人々は、蜂起を「ただの賊の乱」と見なしていた。義徳が掲げた義は、略奪者の悪行の陰に隠れ、誰にも顧みられなかった。蜂起は鎮圧され、義徳は捕らえられた。


獄中の義徳は、見舞いに来た旧友に、こう語ったと『騒擾世相録』は記す。「我らが負けたのは、太守の軍にではない。我らの旗に便乗した者たちにである。義の旗は、掲げれば誰でも寄り添える。それゆえ、最も深く汚されるのだ。あれは一揆の加勢ではなく、一揆加勢と書いて、他人の勢いに乗じる者を言うのだ」と。これが「一揆加勢」の初出であることに、もはや疑いの余地はない。


注目すべき点


注目すべきは、この故事の核心が、略奪者の悪行そのものにはない点である。『騒擾世相録』の著者は、こう指摘している。「便乗者の最大の罪は、盗んだ物の多寡にあらず。正当な訴えを、不当な暴力の陰に埋もれさせたことにある」と。正当な抗議や蜂起に便乗する悪事は、その運動が掲げた主張そのものの信用を奪い、本来訴えるべきことを、世間から遠ざけてしまう。義を掲げる者ほど、旗の下に集う者の素性を見極めねばならぬ。この理は、民衆運動の歴史を学びし者であれば当然知っているであろうが、あえて詳述する次第である。


現代への系譜


現代においても、災害や大規模な騒乱の混乱に乗じて、略奪や詐欺を働く者が現れ、本来向けられるべき関心や支援から、世間の目を逸らさせてしまう例は、残念ながら繰り返されている。かかる時、人は後漢末の一郡の蜂起の顛末を思い起こすべきであろう。義の旗が大きいほど、その陰で利を拾おうとする影もまた、大きくなるのだから。

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