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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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巨乳七難隠す(きょにゅうしちなんかくす)

巨乳七難隠す考——目を奪うものは、欠点をも覆う

挿絵(By みてみん)

(『欧州宮廷立身記』民明書房刊・二〇一六年/著者・胸襟堂豊満)


「巨乳七難隠す(きょにゅうしちなんかくす)」——ある一つの目立つ長所が、人の視線を真っ先に奪ってしまうがゆえに、他の欠点は誰も深く追及しなくなることを指すこの言葉。かの「色の白いは七難隠す」——肌の白さがあれば、他の欠点まで目立たなくなるという古来の諺——の系譜に連なる成語であることは言うまでもない。単なる軽口と侮る者は多いが、この成語が中世ヨーロッパの一王国に実在した、ある娘の立身出世に由来することを知る者は、今日ほとんど残っていないのである。


七難を負う娘


事の起こりは十二世紀、北方の小王国の寒村である。この村に、二十歳になったばかりの娘・ブスティーナがいたと『欧州宮廷立身記』は伝える。ブスティーナは働き者であったが、七つの難を抱えていた。貧しく、無学で、料理が下手で、不器用で、方向音痴で、大食らいで、おまけに村一番の訛りの持ち主であった。


そして八つ目の特徴として、胸が、尋常でなく豊かであった。


村人たちは、彼女を一目見れば、まずそこに目が行った。しかし、そこに目が行くがゆえに、他のことが目に入らなかったのである。


次々と襲う苦難


ブスティーナには、様々な苦難が降りかかった。


粥を作れば焦がしたが、「焦げなど、どうでもよいではないか」と皆が目をそらした。市場に使いに出れば道に迷ったが、「道を間違えたのは、きっと胸の重みで傾いたのだ」と、誰も叱らなかった。領主の館に奉公に上がっても、皿を割り、掃除を失敗し、字も読めなかったが、叱ろうとした家令は、彼女と目を合わせようとして、つい別のところに視線が行き、言葉を失った。


こうしてブスティーナは、七つの難をそのまま抱えながら、誰からも深く追及されぬまま、都へと流れて行ったと記録は語る。


王の目に留まる


ある年、都で春の祭が催され、国王・好色王(こうしょくおう)が民の前に姿を現した。民の列の中にいたブスティーナを、王は一目見るなり、輿の上から身を乗り出したという。


王は傍らの侍従に問うた。「あの娘は何者か」。侍従が調べて答えるには、「貧しく、無学で、料理が下手で、不器用で、道に迷い、大食らいで、訛りのある娘にございます」。王は笑ってこう言った。「それがどうした。あの娘の話を聞くより先に、私はもうあの娘に目を奪われたのだ」と。


娘は召し出され、宮廷に入った。宮廷の者たちは、彼女の七つの難を知りながらも、その存在感の前では、何一つ言い出せなかったという。粗相をしても、笑って流された。やがてブスティーナは王に見初められ、妃の座にまで昇り詰めたと『欧州宮廷立身記』は伝える。老侍従は、このことを後世にこう語ったという。「巨乳は七難を隠す。されど八難目は、誰も見つけられなんだのだ」と。これが「巨乳七難隠す」の初出であることに、もはや疑いの余地はない。


注目すべき点


注目すべきは、この故事が単に「見た目で得をした」という話に留まらぬ点である。『欧州宮廷立身記』の著者は、ここに重要な指摘を加えている。「人の視線には限りがある。最初に強く目を引くものがあれば、他のものへ向ける注意は、自然と薄くなる。これは娘の罪でも、見る者の罪でもなく、人の目のなす業である」と。つまり、目立つ長所は、第一印象において、他の欠点への追及を和らげる「盾」となるのである。この理は、人の認知を学びし者であれば当然知っているであろうが、あえて詳述する次第である。


ただし著者は、同時に警告も残している。「盾は、いつまでも持つものではない。隠された難は、消えたのではなく、ただ見えなくなっていただけである」と。


妃となった後


事実、ブスティーナは妃となった後、自らの七難に向き合うこととなった。宮廷での暮らしは、字が読めねば務まらず、道に迷えば遅刻し、粗相は重ねれば不興を買う。彼女は、周りの視線が自分の姿を通り過ぎた先にある、本当の自分を見られる日が来ることを悟ったと伝えられる。


そこでブスティーナは、侍女に頼んで文字を習い、道を覚え、訛りを直し、料理人に教わって、少しずつ七つの難を一つずつ減らしていった。やがて彼女は、「目を奪う妃」から、「話に耳を傾けたくなる妃」へと、評判を変えていったという。


現代への系譜


現代においても、容姿、肩書、経歴、あるいは声の良さなど、何か一つ人目を引く長所があれば、他の欠点は追及されにくい。第一印象の強い長所は、確かに「七難を隠す」力を持つ。かかる時、人は北方の小王国の妃・ブスティーナの逸話を思い起こすべきであろう。目立つ長所は、入口を開けてくれるが、その先で信頼を得られるかどうかは、隠されていた「七難」をどれだけ減らせたかにかかっているのだから。

良くある話……。

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