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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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切羽宅間(せっぱたくま)

民明書房刊『武道語源大鑑』民明全書 第42巻より

切羽宅間(せっぱたくま)

挿絵(By みてみん)

現代社会において「追いつめられて万策尽き、身の置き所を失うこと」を意味する「切羽詰まる」という慣用表現の真の文脈であり、古代中国の極限心理武術に端を発する伝説的戦技の名称。


紀元前二世紀、前漢の武帝の時代。山東省の泰山山麓に「宅間(たくかん)」と称される孤立無援の集落が存在した。この地は三方を絶壁に囲まれた天然の要塞であったが、ひとたび外敵に全周を包囲されれば、内部の者は一切の逃げ道を断たれる死地と化す致命的構造を抱えていた。


この地に生きた流浪の武芸者・趙切羽(ちょう せっぱ)は、窮地に追いやられた人間の生体反応と精神波長を長年にわたり克明に記録・分析した。その結果、人間は極限の絶望に直面した際、自らを絶体絶命の危機に陥れた「強大な敵」に対してではなく、周囲に存在する「最も抵抗力の弱い存在」へと牙を向ける狂暴な衝動——いわゆる「弱者転嫁衝動」を発動させるという恐るべき心理力学の法則を解き明かしたのである。


趙切羽はこの絶対的極限下における人間本能を戦闘体系へと昇華させ、死地に追い詰められた際に発動する独自の武術「切羽宅間流(せっぱたくまりゅう)」を創始。


本流における最大の奧義は、自らの命脈が完全に断たれかけた瞬間に放たれる。「追いつめられた猛獣の爪牙は、自らを脅かす最強の狩人ではなく、傍らに立つ無力な幼子や弱者へと真っ直ぐに向かう」という理に基づき、敵陣の中で最も防御の薄い箇所、あるいは無抵抗な非戦闘員が集中する一角に対し、生命の全エネルギーを爆発させて無差別な惨劇を引き起こすことで、敵全体の戦意を心理的に瓦解させる戦術であった。


絶望の淵に立たされた者が解き放つこの不条理な暴力は、凄惨極まる破壊力を発揮し、かつて「宅間の戦い」において数倍の官軍を極度の恐慌状態へと陥れたと伝えられている。


後年、この戦法があまりに非道かつ倫理を逸脱した不吉なものであるとして、武帝の命により流派に関する一切の記述は破棄・禁書指定とされた。しかし、極限状態に陥った人間が最も弱い部分へ破滅的牙を向ける恐怖の真理は、「切羽宅間」という語と共に後世の兵法書の陰にひっそりと刻み続けられることとなったのである。


― 明暦三年発行 民明書房刊『武道語源大鑑』P.482–486 より抜粋 ―

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