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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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発砲美人(はっぽうびじん)

発砲美人考——麗しき面差しの内に、火薬の匂いを秘めし者

挿絵(By みてみん)

(『西部無頼女列伝』民明書房刊・一九九七年/著者・硝煙堂麗子)


「発砲美人(はっぽうびじん)」——見目麗しき女性であっても、清楚で大人しい人柄とは限らず、時にその内に烈火の如き気性と胆力を秘めていることを指すこの言葉。先述の「発泡美人」が泡立つ酒を担いで売り歩く華やぎの女性を指すのに対し、こちらは引き金に指をかける女性を指す、音は同じくして意味を全く異にする成語であることを、まずもって明らかにせねばならぬ。単なる洒落と侮る者は多いが、この言葉が西部開拓時代の末期、実在の女性無法者の存在に由来することを知る者は、今日ほとんど残っていないのである。


事の起こりは十九世紀末、テキサスの荒野である。当時、開拓の熱狂も峠を越え、法の網が次第に西部の隅々にまで及び始めた頃、一人の女が無法者の一団に身を投じていたと『西部無頼女列伝』は伝える。名をボニーという。


ボニーは絹のように滑らかな肌と、憂いを湛えた大きな瞳を持ち、初めてその姿を目にした者は皆、深窓の令嬢か、教会の聖歌隊の乙女かと見紛うほどであったという。ところがこの女、ひとたび銀行の扉を蹴破るや、可憐な微笑を浮かべたまま拳銃を抜き、行員たちに「お静かに願いますわ」と囁いて金庫の鍵を求めたと記録は語る。その所作はあくまで優雅にして、しかも銃口は微塵も揺れなかったというから、居合わせた者どもが震え上がったのも無理からぬことである。


保安官たちは当初、目撃者の「美しい女であった」との証言を聞き、「そのような女に強盗が務まるはずがない」と捜査の網から外していたと伝えられる。この見込み違いが、ボニーの一味に幾度もの逃走を許す一因となったことは言うまでもない。ある老保安官は後年、こう嘆じたという。「顔だけ見て人を測ったのが、我が生涯の不覚なり。あれは美人にして発砲する女、すなわち発砲美人であった」と。これが「発砲美人」の初出であることに、もはや疑いの余地はない。


注目すべきは、この故事が単に「美女は怖い」という短絡的な教訓を説くものではない点である。保安官たちの過ちは、外見の印象から性格や能力を決めつけるという、人間の根深い思い込みにあった。清楚な面立ちであれば大人しかろう、麗しければ荒事とは無縁であろう——この予断こそが、最も危険な盲点となる。外見と内実とは別個のものであり、両者を短絡的に結びつける先入観こそが真の敵であることは、人間観察を学びし者であれば当然知っているであろうが、あえて詳述する次第である。


ボニーの最期については諸説あり、追手に囲まれて壮絶な銃撃戦の末に果てたとも、名を変えて東部へ逃れ静かな余生を送ったとも伝えられる。いずれにせよ、その名は「麗しくも引き金を引く女」の代名詞として、西部の語り草となったのである。


現代においても、おっとりとした外見の内に、驚くほどの気骨と決断力を秘めた人物に出会うことは珍しくない。かかる時、人はこの西部開拓末期の女無法者・ボニーの逸話を思い起こすべきであろう。見た目の麗しさと気性の烈しさとは、決して相反するものではないのだから。

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