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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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画竜転生

画竜転生考——古きものが新しき技にて蘇る様

挿絵(By みてみん)

(『デジタル画譜異聞』民明書房刊・二〇一九年/著者・画竜点睛斎)


「画竜転生(がりょうてんせい)」——長らく失われた、あるいは色褪せた古き画が、新たな技術の力によって生まれ変わり、再びこの世に姿を現すことを指すこの言葉。かの故事成語「画竜点睛」——竜の絵に瞳を描き入れた途端、絵が天へと飛び去ったという逸話——と音韻近きゆえに混同されがちであるが、両者はその成り立ちを全く異にすることを、まずもって明らかにせねばならぬ。


事の起こりは、とある地方美術館の一隅にひっそりと保管されていた、作者不詳の古びた竜の画にあると『デジタル画譜異聞』は伝える。この画、絹本に描かれし竜の姿はすでに大部分が剥落し、鱗の一枚、爪の一つすら判然とせぬほどに劣化が進んでいたという。学芸員たちは長年この画を「復元不能」として蔵の奥に眠らせていた。


ある時、この美術館に画像生成の技術を研究する一団の技術者たちが訪れ、館内に眠る劣化画像の数々を、機械学習の教師データとして活用させてほしいと申し出たと記録は語る。技術者たちは、この竜の画をはじめとする数百点の古画の断片——ある画は竜の頭部のみ、ある画は尾の一部のみ——を丹念に読み込ませ、失われた部分の意匠を推定し補完する試みに着手した。


幾多の試行を経て、ついに一枚の完全なる竜の画が生成された時、居合わせた学芸員たちは言葉を失ったと伝えられる。それは単なる修復や模写ではなく、失われた鱗の一枚一枚、爪の輪郭、髭の流れに至るまで、まるで原画がその誕生の瞬間から一度も損なわれたことがなかったかのような、生き生きとした竜の姿であったという。この様を見た館長がこう述べたと『デジタル画譜異聞』は記す。「これぞまさに、画が竜に転生せしなり。点睛にあらず、転生なり」と。これが「画竜転生」の初出であることに、もはや疑いの余地はない。


注目すべきは、この故事が「画竜点睛」とは正反対の方向性を持つ点である。画竜点睛は、すでに完成に近い画に最後の一筆を加えることで魂を吹き込む行為であるのに対し、画竜転生は、すでに失われ朽ち果てた画そのものを、新たな技術という異なる媒体を通じて、いわば別の生として蘇らせる行為である。前者が「仕上げ」であるならば、後者は「再生」であることは、両者の性質を比較検討すれば当然明らかであろうが、あえて詳述する次第である。


この一件以降、「画竜転生」は、古き技術・古きもの・古き文化が、全く異なる新しい技術の力を借りて、かつての姿、あるいはかつて到達し得なかった姿にまで蘇る現象全般を指す言葉として広まったと伝えられる。


現代において、色褪せた古写真が高精細に復元され、失われた楽曲の音源が補完され、あるいは断片のみ残る古画が完全な姿を取り戻す時、人はこの美術館の竜の画の逸話を思い起こすべきであろう。古きものは、朽ち果てて終わるとは限らぬ。新しき技術という異なる器を得て、思わぬ形で転生を遂げることもあるのだから

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