帰還
「力が漲る!」
バリバリと書類をやっつける店主が居た。
…ギィィィ。後ろの本棚のシークレットドアが開いた。ランタンを持った吟遊詩人が長い階段を渡り姿を現す
「おかえり」
店主は椅子から立ち上がり詩人に歩み寄った。
「私は人間ですか?」
「人間や」
「忘れ去られた英雄や神々と会った。危うくイモータルになる所でした。」
「何?イモータル?」
「私の元型は違う次元に置き去りになってはいないですか?事実私はあの次元から生還を果たし。消え去った。私は何処に居るの?」
「名無しの酒場だよ。よくぞ戻ってきた」
店主は詩人と握手した。
「何があった?」
「 また始まった。先生のオープンクエスチョン。何もかも吐き出させて。…秘めた思いまで、白状させる。」
見上げて
「怖く無かった。先生を愛してしまったことを、具現化すれば、底なしの孤独が待っている。それを分かっているから、怖く無かった。何も怖く無かったんです。」涙がぽろり。
「なんとなく、解脱しましたよ。」
ふらっと店主に向かって倒れこむ
「アラヤシキで私は漂い続ける。もう、何があっても。この世がひっくり返っても。存在し続ける。」
「科学的に言えば、命の定義なんぞはまだまだ曖昧なんだよ。お前が何を願ったか分からないけどなあ」
店主は詩人の肩に腕を回した。
「当たり前です。ちゃんと死んでみせます。死んでみせます!」
「悪人ほど長生きする。私は先生のお陰で長生きするでしょうね。でも私は先生より随分若いです。トントンでしょうか」
詩人は店主の腕の中でクスクスと泣き笑いした。
「…と、いうことで。」
店主は詩人の両肩に手を当て顔を覗き込む。
「今からマキナへ行くぞ!」
「はあ?」
あの近未来都市国家。詩人は素っ頓狂な声を上げた。
「何故マキナ?」
「お前を検査するんだ!MRIしたいの!!!」
がばっ!店主は詩人を抱きかかえると、カバンを肩にかけ、書斎から出る。勝手口の乞食に、留守頼むよーと声をかけ、何かに絶望している詩人を抱き抱えたまま。鼻歌なんぞ歌いながら、裏通りを辻馬車の駅まで。朝日眩しい中足取りは軽やかだ。
「お前はカッコイイ!お前はカッコイイ!!!」
ふるふると連呼しながら。




