第三話 ニート(ネコーズ)VSニート(アダム)
アダムが家に侵入すると、ネコーズは獣の勘を働かせます。
「ジェシカさん、冷蔵庫の中に美味しいケーキが入っているね?」
「ええ、昨日の残りがまだありますけど……」
「食べよ、食べよ! 緊張すると疲れちゃうニャン。
そうなると、甘い物が食べたくなるよね!」
「じゃあ、冷蔵庫から取って来ますね。しばらくお待ちください」
「ワ―イ、ケーキ、ケーキ!」
都会の生活に慣れ、ネコーズの勘はにぶっていた。
いや、元々悪いのかもしれない。
「手伝いますよ、奥さん!」
ジェシカさんがキッチンに行くと、モコソンが手伝いに行く。
モコソンの方が、美女が危機に瀕している勘が働くのだ。
(グヘヘヘ、どさくさに紛れてオッパイを触っちゃおう。
これは、D、いやEカップはあると見た!)
モコソンのエロい勘により、ジェシカに新たな危機が迫りつつある。
しかし、幸いなことに、マイナスにマイナスを掛けるとプラスになる様に、今回はモコソンのエロが結果的にジェシカさんを守る事となった。
アダムは、ジェシカさんが一人になると思い込み、キッチンで待ち伏せしていたのだ。
(好きだ、ジェシカちゃん! 俺の第二の妻にしてやるぜ、デヘへ……)
「いやん、力強い腕! モコソン、興奮しちゃう♡」
アダムは間違えて、モコソンのお尻を揉みまくっていた。
尻を揉みながら、五秒ほど立って間違いに気が付いた。
(しまった! アベルの飼っている羊だったか。
私とした事が、とんだちょいミスをしてしまった。
まあ、計画には支障がない。
さっさと、ジェシカを私の物にして、監禁するとしますか)
アダムはモコソンをポイ捨てし、ジェシカに迫る。
「うおおお、好きだ! ジェシカちゃん!」
「待て! この変態モグモグ、その人にこれ以上モグモグ、近付くなモグモグ」
ネコーズは、アダムの隙を突き攻撃するが、アダムはそれを紙一重でかわす。
ネコーズはジェシカさんを助けるついでに、冷蔵庫にあったケーキを摘み食いする。
その間、わずか一秒にも満たなかった。
「フン、アベルが雇った探偵猫という奴か。
喰うか、喋るか、どっちかにしろ!」
そう悪態を吐くアダムだったが、ネコーズの早業に焦りを感じ始めていた。
(くっそ! この猫の動きが全く見えなかった。
いつの間にケーキを手に入れたんだ?
ジェシカが手にしていたのは、確認していたというのに……。
しかも、私に攻撃までして来るだと! こいつは強敵だぜ!)
たとえ人間として腐っているとしても元完全な人間、ネコーズの強さを的確に判断していた。
今ここで、二匹の獣が戦闘をした場合、このオール電化の家が滅茶苦茶になってしまう事を……。
「フン、ここまでの奴は久し振りだ。
私の本気を出させるのは、アベルとカインが共同で攻めて来た時以来だぜ!
表へ出ろ! 焼き猫にしてやる!」
「フン、少しはやるようだな。
こっちこそ、お前を倒して高級寿司を腹一杯食ってやるニャン!」
こうしてアダムとネコーズ、モコソンは家の外へ行き、激しい戦闘が開始された。
ジェシカさんは、アダムという超キモいストーカーの実力を知り、恐怖で動けなくなっていた。
天使は、ジェシカさんをケルブ達に預け、ネコーズの応援に向かう。
果たして、ニート同士の対決は、どちらに軍配が上がるのだろうか。
ネコーズは、とりあえずお得意のモコソンミサイルで、アダムの実力を測る事にした。
ネコーズにとっても完全な人間というのは未知の生物、いろいろ情報を収集しなければ勝つ事は出来ない。
「喰らえ、モコソンミサイル!」
ネコーズは回転の遠心力を使い、モコソンをアダム目掛けて投げつけた。
本来なら、成人男性であろうと、モコソンの重みと蹄の一点による集中攻撃で気絶するほどの威力である。
「フン、この程度、攻撃の内にも入らんわ!」
アダムは、モコソンの蹄を受け止めず、受け流す様な形でモコソンミサイルを防いだ。
モコソンは、アダムの軌道変更により、後ろの方へ吹っ飛んで行く。
アダムは全くダメージを受けていない。
ネコーズも、アダムの実力を眼の辺りにし、その強さを実感していた。
そんな時に、天使は戻って来たのである。
「くっ、常人ならば、モコソンミサイルをまともに受ければ、腕が吹っ飛ぶはず……。
やはりアダムは強敵だ!」
天使はそう言って、ネコーズを心配していた。
すると、その表情を見てアダムが嘆く。
「フン、この程度で驚いてもらっては興ざめだな。
私には、更に上の段階があるのだ!
見るが良い、闇の力に満たされた私の真の姿を!」
アダムは、黒いオ―ラを発生させながら、異形の姿へと変身させていく。
黒いヤギの頭を持つお馴染みの悪魔の姿『バフォメット』へと変化していた。
さすがのネコーズも、このアダムの変化に驚く。
「ニャニャ、アダムが化け物の姿に変容した。これは一体……」
「何、驚く事は無いよ。この話は、小さいお子様たちも見ている。
正義の味方であるネコーズが、変なおっさんをボコボコにするのは教育上よくない。
しかし、化け物化した怪物ならば話は別だ。
腕がもげようが、脚が吹っ飛ぼうが、頭が消し飛ぼうが問題は無い!」
「ナ―ル、青少年に配慮を払っているというわけか。これで僕も本気が出せるという物だ」
天使の親切なアドバイスにより、ネコーズは妙に納得した。
「グハハハ、闇の力が漲って来るわ! 貴様らを全員ズタボロにしてやる!
そして、教えてやろう、正義のヒーローなどいないという事を!」
「ハン、返り討ちにしてやるニャン! 喰らえ、ネコーズスラッシュ!」
ネコーズの鋭い爪がアダムに斬りかかるが、アダムはネコーズの手を押さえ、ネコーズスラッシュを受け止めた。
「ニャニャ、バカな……」
「フハハハ、私は子供や動物にも手加減はしない。
まして、喋る動物など怒りさえも込み上げて来るわ!」
アダムはネコーズに激しい攻撃を叩き込む。
ネコーズはさながらサンドバックの様に殴られ続けた。
アダムの強力な攻撃が決まり、ネコーズは大きく吹っ飛ばされた。
「ふふん、やるな。この私に傷を負わせるとは……。
手数やスピードは互角だが、腕のリーチと腕力に差があり過ぎるようだ。
だが、なかなか楽しませてくれる! 雑魚にしてはだが……」
「くっちょお、全然手が届かないニャン」
アダムは、優に五十センチ以上の腕の長さがあるのに対し、ネコーズは良くて二十センチ。
腕によるリーチの差は歴然だった。
スピードが互角であるのなら、ネコーズの爪も牙もアダムに致命傷を与える事は出来ない。
ネコーズは徐々にフラフラになって行き、動きも鈍くなって来た。
「ふふふ、捕まえたぞ。これで終わりだ!」
アダムは、ネコーズの頭を捕まえた。
「いかん、ネコーズが……」
モコソンが現場に駆け付けた時にはもう遅かった。
ネコーズの頭が潰され、四肢がだらんと力無く垂れ下がっている。
アダムは、ネコーズの亡骸を地面に投げ捨てた。
「ふふふ、さすがに手古摺ったが、私の勝利だ! さあ、次はどいつだ。
そこの羊かね?
それとも、天使の方か?」
アダムはネコーズを倒し粋がっている。モコソンはうろたえているが、天使は冷静だった。
「ふん、どこを見ているアダム。勝負はまだ終わっていないぞ!」
天使にそう言われ、アダムはネコーズを投げ捨てた場所に目をやった。
そこには、十五歳くらいの人間の美少年が立っていた。
「バカな! これは一体……」
驚き叫ぶアダムに、天使が説明する。
「なーに、ネコーズがピンチになった時、ネコーズは猫モードから人間モードになる様に仕掛けていただけだ。
これが真のネコーズの姿だ! さあ、第二ラウンドの始まりだ!」
「くっそ! こんな反則的な事があってたまるか!
こんなクソ猫が、美少年になるなんて間違っている!」
アダムは焦りを感じ始めていた。腕力、腕のリーチが完全に無くなってしまったのだ。
ネコーズが完全に覚醒する前に決着を付けようと急ぐが、ネコーズはその攻撃を容易く防いだ。
「何、私の全力パンチが効かない?」
「さっきはよくもやってくれたニャ。これは、僕の寿司を食べられなかった怒り!」
少年ネコーズは、アダムに強力な腹パン(腹にパンチ)を喰らわせる。
腕のスピードが速過ぎて、まるで拳が消えたように見える。
「そして、これは僕の肉球を噛んじゃった時の怒り!」
ネコーズは、更に激しい攻撃をアダムに加える。
しかし、ネコーズのスピードが速過ぎて、アダムは吹っ飛ぶ事さえできない。
「そして、これが、僕がボコボコにされた時の痛みの怒りニャン!」
ネコーズの最後の攻撃がアダムに当たり、アダムは岩山にぶつかった。
ネコーズの攻撃があまりにも激しく、岩山でさえも粉々に砕け散った。
アダムがただの人間だったのなら、その攻撃を受けて死んでいたかもしれない。
しかし、アダムが元々強かったからこそ、気絶程度で済んだのである。
「くう、強い……」
アダムは、ネコーズの前に無防備な姿をさらけ出した。
モコソンは、変わり果てたネコーズの姿に怖れさえ感じていた。
「あれはネコーズなのか?」
ネコーズは縄を使い、アダムを縛り上げた。
甲羅縛り(SMプレイに良く使われる縛り方。適度に痛みと快感を得られる)に……。
それを見て、モコソンは確信する。
「あ、やっぱりネコーズだ。間違いないな!」
ネコーズがアダムを縛り上げると、人間モードから元の猫モードになった。
「おお、五分ほどで猫モードになったぞ。
という事は、人間モードは一日五分程度しか成れないのか?」
そう推理するモコソンだったが、天使はこう説明する。
「いや、本来は、一日一時間程度継続できる。
もちろん数回に分けて、能力を小出しして、合計一時間で人間モードを維持する事も可能だ。
ただ、ネコーズは元々人間嫌いだから、ピンチにならないと人間モードにならないし、なろうともしない。
一度、人間にジンギスカンにされて食われた事があるからね」
「そうニャ、ジンギスカンにされたあの日の事を忘れるな!」
ネコーズは未だにジンギスカンにされた事を根に持っているのだ。
その恨みが消えるまでは、自由に人間モードを使いこなせる日が来る事は無いだろう。
「だから決して、ネコーズがボコボコにされるのを楽しんでいたわけじゃないんだ。
決して態とじゃない」
「二度言ったのが怪しいな。
後、ネコーズの今回の怒りの原因は、こいつにあると思うんだが……」
「さあ、次はエバを止めようじゃないか!」
モコソンの言葉を覆い隠すかのように、天使はネコーズとモコソンにそう促した。




